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sideルーデウス
ブエルが生まれてから2年がたった。その間に我が家には大きな変化が訪れた。
俺に家庭教師がついたのだ。名前はロキシー。ミグルド族という魔族らしく、小柄で青髪が特徴的だ。彼女はとても優秀で俺の魔術の腕はメキメキと上達した。無詠唱で魔術が使える俺を見て時々自信をなくしている様子だが俺は彼女を尊敬している。
さてブエルだが俺と比べて話せるようになるのも歩き始め遅かったため両親はとても心配していた。一方リーリャはそんな風には思ってない。2人が心配を吐露する度に「ルーデウス様が特別なだけです。彼女の成長は普通の範囲ですよ」と励ましている。
実際リーリャの言う通り俺の成長が早いのは中身がおっさんだからであり中身が普通の子供であるブエルの成長が俺より遅いのは当たり前だ。まぁそんなこと両親が分かるはずもないのだが。
そんなブエルだが今はパウロと外で遊んでいる。パウロが小さな木剣を投げてブエルがとってくる遊びだ。
全く犬じゃないんだから……
ブエルは俺と比べて外が好きなようでよく庭に出ては服を汚してゼニス達に怒られる。部屋で魔術を勉強する俺とは正反対だ。最も魔術を使う際はロキシーと庭に出てやるため完全に引きこもっているわけではないが。
そんなブエルだが俺同様、庭より先に出ようとはしない。外好きもあくまで俺よりはってところだ。彼女自身完全な拒否感があるわけではなく、外は好きなようだがあくまで庭までらしい。
以前、ゼニスに連れられて治療院へ行った時は時間が経つごとにどんどんと体調が悪化し帰りに道端で吐いてしまったそうだ。その後は2日ほど食欲もなくなりほとんど食べられなくなってしまった。その後何度か家の外に出してみても必ず体調崩していた。村の医者に見せても何も分からないらしい。本人は「うるさい」と一言だけ発していた。両親はそんな彼女をとにかく心配していた。
「ルディ行きますよ」
「はい!よろしくお願いします。師匠」
外を眺めていたら後ろからロキシーに声をかけられた。今日の授業が始まるらしい。
外に出るとちょうどブエルが木剣を拾い戻ってきたところだった。
「ねぇね!」
ロキシーを見つけるとパウロなんかお構いなしに駆け寄ってくる。ブエルの家庭内順位は1位がパウロ外でよく遊んでくれるから。2位がロキシーらしい。
ブエルはロキシーにかなり懐いている。ロキシーはあまり子供が得意ではないようで最初のころはロキシーの後ろを常にトテトテと追い掛け回してはうんざりさせていた。そっけない態度をとっていたロキシーだが言葉を話せるようになり「ねぇね!ねぇね!」と言うようになってからはもうメロメロだった。
ちょろい
「じゃあロキシー。ブエルのこと頼んだぞ」
「えぇ、お任せください」
そう言うとパウロは馬に乗って仕事へ向かった。
「いってらっしゃいませ父様」
「ばいばーい」
俺とブエルが手を振り見送るとパウロは気分のよさそうな笑顔を浮かべ馬を颯爽と走らせた。この村で急ぐほどの仕事など滅多にないのに今日は格好つけるためやったに違いない。それはさておきロキシーとの授業が始まった。
ブエルもロキシーの隣にちょこんと座り見ている。ロキシーが魔法を使うと「すごい!」と目をキラキラさせほめる。ロキシーはちょろいので毎回照れてにやける。その顔は心なしかパウロに似ているかも……いやそんなことはない。あの男とこの美少女が同じはずない。
「ルディ、今日はこれでおしまいです。お疲れさまでした。」
今日の授業が終わった。毎日2時間程度俺らは魔術を練習する。そのあとは雑談だ。ロキシーは色々な場所を旅してきたようで冒険の話をよくしてくれた。俺はこの村を出たことがないので外がどうなっているのか知らない。そんな俺にとってロキシーの話は飽きずに興味を引き続けるものだった。
ところが今日は気に入らないお姫様がいた。ブエルは魔術を見ているときはおとなしかったが俺らの雑談はつまらないらしく露骨に機嫌が悪くなり「んー!」とうなり声をあげながら俺たちの服を引っ張っていた。
「ねぇね!にぃに!遊びたい!」
「そうですね。ブエルにはつまらない話でした。ルディ、この話はまた今度でいいですか?」
「えぇ。もちろんです。」
「では何をしましょうか」
「……師匠!ブエルに魔法をやらせてみるのはどうですか?」
「え?ブエルにですか?まだ2歳ですよ!いや、でもルディも2歳で……やってみますか」
ロキシーは少し悩んだようだがものは試しとやらせてみるとこにした。
まずはロキシーがお手本を見せる。
「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール」
流れるような詠唱の後出来た水の玉は直線に飛んで行き塀にぶつかって消滅した。以前のように木にぶつけて折るような失敗はしなかった。
「魔術は詠唱をするのが普通です。あなたのお兄さんはしませんけど」
ロキシーのジト目がこちらに向けられる。ロキシーは俺がどんどんと吸収するせいで自信をなくしている時がある。よくないところがでたようだ。
「まぁいいです。ひとまずやってみましょう」
「……」
ブエルはロキシーを見つめているだけで特に何かをするでもない。何をすればいいのかを分かっていないようだ。
「手を前に出してください」
具体的な指示を出すとブエルはすっと動く。
「では私の言葉を繰り返してください。
汝の求めるところに」
「汝の求めるところに」
「大いなる水の加護あらん」
「大いなる水の加護あらん」
「清涼なるせせらぎを」
「清涼なるせせらぎを」
「今ここに、」
「今ここに!」
「ウォーターボール」
「ウォーターボール」
するとロキシーの杖からは先程と同じように水ができた。ブエルの方は特になにも起こらなかった。
「やはりダメでしたね。」
「仕方ないですよ」
俺らがそういう会話をしていると出来なかったのが悔しいのかリベンジを催促してきた。ブエルはまだ諦めていないようだ。
数時間後、
魔術の練習は続いていた。魔術が発動した訳ではないが魔力の起こりは何回か起こせていた。もしかしたら出来るかもしれない。そう思い反復させていた。
「汝の求めるところに……あ!」
ブエルが詠唱をしていたところ中断してあさっての方向を向いた。
「ブエル、詠唱をしなければ使えませんよ。どこを見てるんですか?」
「パパ!」
ブエルは自分が向いていた方向に指を指した。俺たちが指の方を見るが広がるのは黄金色に輝く小麦の田園風景でパウロどころか人っ子一人いない。
「ブエル、パウロさんは今お仕事です。もう少ししたら帰ってきますよ」
ロキシーもブエルの言ったことは勘違いと考えてそう諭した。
「パパきた!」
ブエルはロキシーの言葉に反発しビシ!っと指を指す。
よーく見てみると遠くに豆粒みたいなのが動いていた。段々とこちらへ近づいてくる。数分経って俺らはようやくそれがパウロだと確信できた。
「パパー!」
パウロが馬を繋ぐと一目散に駆け寄る。ブエルはパウロの足元へ行くと両手を大きく広げた。
「おぉ!パパですよ〜。ほーら」
パウロはブエルを脇から抱え抱っこした。
「ロキシー、面倒みてくれてありがとうな」
「え、えぇとんでもないです」
「ん?どうした?お前ら腑に落ちない顔して」
「いえ!なんでもないです」
ブエルは確かに今、俺たちが視認できない距離にいたパウロを認識した。不思議な現象に俺らは互いに目を合わせた。
「まさか……」
ロキシーはパウロ達が家に入るとそう小さく呟いた。
sideリーリャ
お昼すぎ、皆さんが食べ終わり一段落しているとお嬢様が私の服をツンツンと引っ張り話しかけてきました。
「どうしましたかお嬢様?」
「リーリャ、雨。雨。」
お嬢様は窓の外を指しそう言いました。しかし窓から見える空は快晴。少しだけ雲が浮いている程度で雨雲になることは無い程度でしょう。
「お嬢様、あれは晴れです。雨というのはお空から水が降ってくることをいうのですよ」
私がそう言うとお嬢様は頬をプクーと膨らませていかにも不満気な表情をしていました。あまりにも可愛らしい姿に思わず笑みがこぼれます。
「リーリャ!リーリャ!」
「お嬢様、そうは言ってはあれは晴れなんですよ」
「んー!」
「どうしたのブエル?」
私たちが問答をしてるとゼニスが入ってきました。不機嫌なお嬢様を見つけるとサッと抱えなだめるように体を揺らします。
「ママ、雨!」
お嬢様は私へ言ったようにゼニスへ同じことを言いました。やはり空は快晴でゼニスもお嬢様へ私と同じことを言いました。
私たちはお嬢様が晴れと雨を勘違いしていると思いほほえんでいました。
2時間後
外は土砂降り。先程の快晴とは打って変わり外は打たれればパウロですら風邪を引きそうな程冷たい雨が降っています。
午前中に干した洗濯物は全てびしょ濡れになってしまいました。ひとまず洗濯物を避難させ落ち着いた頃に頭の中は不思議な現象に関することでいっぱいになっていました。
先程お嬢様は雨と言っていた。私たちは空の様子を見て否定したが実際には雨が降った。私とゼニスは顔を見合わせた。この不可解な現象に底知れぬ恐ろしさを感じた。
ある晩、ブエルは泣き出した。突然の出来事でみんなが驚いた。
「いやぁ、やだぁ」
「どうしたのブエル大丈夫よ」
ゼニスはブエルを抱きかかえあやそうとするが暴れるブエルに叩かれてしまう。
「どうしましたかお嬢様?」
ゼニスではどうにもできないということで多くの子供を見てきたリーリャがあやそうとするも一切効果はない。なにか病気にかかっているのかと考え魔術を使うも効果なし。
「食べないで!殺さないで!いやぁ!」
ブエルは何かに怯えているようだった。皆が声をかけてもそれが届かず叫び続けている。
結局数十分かけなんとかブエルをなだめることに成功し事情を聴くことができた。
「ブエル、落ち着いて教えて。どうしたの?」
「声」
「声?」
「森から声が聞こえる。お腹が空いた。何でもいいから食べたいって」
「森ってどこから?」
ゼニスが聞くとブエルは指を指した。
「あっちの方角は……」
「街道ね。ブエル大丈夫よ。あそこは見回っているから」
パウロの呟きにかぶせる形でゼニスが反応するが声の方角が街道と知り先ほどよりも表情を和らげる。街道はパウロたちが日々見回りをしているため変な声が聞こえるはずない。そもそもこの家は街道まで少し距離があるためたとえ何かあっても聞こえるはずがない。ただの勘違いだろうとゼニスは考えた。
ルーデウスはなんの事かさっぱりだった。探知系の魔法かと思ったがロキシーですらブエルの状態に当てはまる魔法を知らないらしい。
だがブエルの怖い声はパウロに心当たりがあったようだ。
「怖い声ってのは魔物のことじゃないか?時期的にそろそろ増えてきて狩りに行く頃だ」
「貴方、魔物だとしてなんで見た事のないブエルが怯えるのよ。きっと怖い夢でも見たのよ」
パウロとゼニスの考えは真逆だった。パウロはブエルの話を信じていた。ゼニスは信じていなかった。いや信じたくないといった様子だ。
その日はパウロとゼニスがブエルを挟んで寝ることで安心できたのか眠ることができた。
次の日、パウロは何人かと森に入った。怪我をして帰ってきた。
「あなた、どうしたの?」
「ブエルの言う通りだった。魔物が街道の近くに巣を作っていた。かなりの数だった。誰も気がつかなかった。もしブエルの言っていることを信じていなければ物資の輸送時に壊滅的な被害がでていた。」
魔物はかなり厄介だったようで何人かが怪我を負っていた。その日ゼニスは村の人の治療に奔走することとなった。
ブエルには特別な力がある。皆が薄々勘づいた。
ブエルの力について大学で勉強をし多くの経験を持っているロキシーが調べることになった。
「恐らくですがブエルは呪子です。神子ではなく」
ロキシーは色々と調べた結果ブエルを除いた家族にそう言った。
ブエルはまだ自我が目覚めてないのでもう少し待っててください。
次回、ブエルの力の詳細を?
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