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まだの人ぜひお願いします。
「ブエルは呪子かもしれません」
ロキシーがそう告げた時の反応は三者三様だった。
リーリャは不安そうな表情をしていた。
特に顔を歪めたのはパウロとゼニスだった。呪子を2人は知っている。
この世には時々体内に特殊な魔力を持つものが現れ超人的な力を持つことがある。その力がプラスに働けば神子。マイナスになれば呪子になる。実際に違いはあまりない。
「ブエルは恐らく人より気配などを強く感知できる力を持っています。だから視認することの出来ない範囲にいたパウロさんや魔物に気がつくことが出来たのでしょう。以前、ゼニスさんは外に出ると体調を崩すと仰っていました。多分、外にいる植物や生物の気配も感知してしまうため情報量が多くなりすぎてしまい体調を崩してしまうのです」
「でもそれだけなら神子となるんじゃないか?」
パウロはロキシーにそう言った。
「ブエルは悪意に強く反応します。私が話しているときは特に問題ありませんでした。ですが私を見ていないときに私は攻撃の意思を見せたのです。その瞬間にブエルは反応しました。相手の無意識の悪意でさえも察知してしまいます。想像してみてください。目の前の人がどのような感情を持っているか分かる。笑顔で話しかけてくる人が悪意を持っているとわかる状態を。それだけじゃありません。外に出れば人間だけではなく植物、昆虫、動物、魔物。全てから視線を向けられているような感覚を味わうことを。私には呪いにしか思えません。」
ロキシーの言葉に誰も返す言葉が見つからなかった。ゼニスが1人涙を流しているだけだ。
「大丈夫さゼニス。エリナリーゼだって上手く付き合っていただろ。」
「そんな無責任なことを言わないでよ!エリナリーゼだって力と付き合ってても苦労し続けていることなんて知っているでしょ!それにまだ2歳なのよ」
パウロはイケメンムーブをしようとしたがゼニスの怒鳴り声に折られてしまった。家の雰囲気が一気に地獄へと変わった。2歳の子が背負わされた重荷に全員が胸を痛めていた。
「父様、少しいいでしょうか?」
「どうしたルディ?」
「気になったのですがどうしてブエルは家だと平気なんでしょうか?」
sideルーデウス
妹は呪子と言われる存在らしい。ロキシーが調べた結果、気配を感知できるそうだ。見聞色の覇気みたいなものだろうか。ロキシーの言葉を聞いたゼニスは目に涙を浮かべた。パウロも苦虫を潰したような表情をしている。呪子がどのようなものか分からないが呪いとついているくらいだ。ロクなものじゃないのだろう。我が家の空気は一気に最悪なものになった。
だが話を聞いていて腑に落ちない点がある。俺はまだこの世界を知らないから誰も指摘しないだけかもしれないが聞いてみよう。
「父様、少しいいでしょうか?」
「どうしたルディ?」
「気になったのですがどうしてブエルは家だと平気なんでしょうか?」
俺の質問にパウロは言葉が詰まった。聞いてはいけないこと聞いてしまったのかと思ったがパウロの視線がロキシーの方へ流れているところを見るに分からないのだろう。
「ブエルが気配を強く感じるのは家でも同じはずです。庭にも庭の外にも植物と動物どっちもいます。外に出れないのはおかしんじゃないでしょうか。家でも気配は感じれるはずです。外に出た時だけ体調を崩すのは違和感があります」
「つまりブエルの体調に悪影響を与えるにはなにか条件があるということですか?」
「はい。その可能性はあると思います」
「……そうですね。ルディの言う通りです。なんにせよブエルの力はまだまだ分からないことだらけです。私たちが悲観するにはまだ早いと思います。」
ロキシーの言葉で家の雰囲気が変わるのが分かる。
まだ分からないことだらけなのだ。希望捨てるには早い。
その後いくつかの仮説を立てて実践することになった。
能力の範囲は?家が大丈夫なのは精神的なものなのか。慣れている場所なら平気なのかなど。
それから検証が始まった。まずブエルにさらに詳しく話を聞いた。曰く家が大丈夫なのは視線を向けてくる人は自分が慣れていて安心できるからだそうだ。そして気配を感じるだけでなく声を聞けるらしい。どんな感じか聞いたがブエルの語彙力ではうまく説明できていなかった。
ということでひとまず外の感覚に慣れさせることとした。最初は家の周りを散歩させる。人や動物がいる場所にはなるべく近づかないようにさせた。
この日に関しては特に問題なさそうでご飯も元気に食べていた。むしろ元気が余っているせいで中々寝ずそちらの方が問題だった。
それからは少しづつ移動する範囲を拡大させていった。畑の近くは感知するものが多く体調を崩しやすかったようだが何回も通っていくうちに慣れていった。
そのうち、ブエルははっきりと言葉を話せるようになり自分のことをパウロたちに言えるようになった。そのおかげでブエルの力とどう対処をしてあげればいいのかも分かってきた。今の所、1番苦手な場所は治療院らしい。なんでも色々な気配が出入りするのが苦手だそうだ。
ブエルは集中するものがないと感知に意識がいってしまい落ち着けないらしい。逆に集中できるものがあればそれほど気にならないらしくパウロとの稽古を熱心にやっていたのはその間は色々な情報が入ってくる状態から解放されるからだそう。
それを知った結果パウロは今まで以上にブエルのけいこの時間をとってあげるようになった。だからといってロキシーとの授業がなくなったわけではない。力を使いすぎたときの症状は頭痛と吐き気が主にある。これらは両方とも魔術で緩和できることが分かった。そのためブエルの1日は治癒魔術と解毒魔術をできるようになることが最初の目標となった。そのため午前中は3人で魔術の訓練。俺は火などの攻撃系をメインにブエルは治癒などをメインに練習をする。午後にパウロが帰ってきたら稽古の開始だ。ブエルの稽古は少ししたら一度終わる。そしたらゼニスと散歩の時間。このようになった。
数か月後
努力の結果、ブエルは1日治療院にいても問題ないくらいには力に慣れた。その日はお祝いでブエルの好きなものをみんなで食べた。またブエルの力は治療院で特に役に立つらしい。まだ言葉の喋れない赤子や何を言っているのか分からない老人の声を聞くことができるようで不調な箇所をゼニスにこっそり教える形で助けているそう。
その話を聞いたロキシーは少し顔色が悪いように見えたが気のせいだろう。
それだけじゃないブエルに友達ができた。
呪子と分かった時から一変し我が家は元の明るい空気が戻っていた。
sideブエル
私は普通の人とは違うみたい。世界はいつもうるさかった。ママたちの声とは別の声が聞こえていた。それだけじゃない。常に周りには誰かがいるような感じがした。どこで何をしているか分かっていた。常に見られているような感じがした。外に出るとそれは特に強くなった。怖くて気持ちが悪い。なんでママたちは平気なんだろうと思っていた。おかしいのは私だけだった。
ママたちは最近、外によく連れだした。最初は怖かった。でも外にいても見られている感じがするだけでなんともないと分かると外に出ることが怖くなくなってきた。ママたちは少しずつ色んな場所に連れて行ってくれた。時にはパパが馬に乗せてくれた。馬に乗っているといつも感じる視線が気にならなくて気持ちよかった。
私とママは治療院という困っている人が来る場所にいる。ママはかっこいい。困っている人をあっという間に助けちゃう。でも私より小さい子が困っているとママも困っちゃう。小さい子のママも困ってた。私はその子が何で苦しんでいるかすぐ分かった。ママたちは何で分からないんだろうと不思議だった。分かった。これが私にしか分からないものなんだ。
私はパパと指切りをした。力のことは周りに話しちゃダメなこと。悪いことには使わず正しい使い方をすることを。だから私はママを呼んでこっそり教えた。するとママはすごくほめてくれた!私は嬉しかった。だからママが困ったら必ず助けてあげた。私はママとこの場所へ来るようになった。いつもはお庭で遊んでいて困ったらママが呼びに来る感じ。
ある日、視線を感じた。ポワポワした気持ちがのっかった視線だ。見てみると同じくらいの女の子がいた。その子が何を考えているか分かっちゃった。
「一緒に遊ぼ」
「ほんと!」
私がそう言うとその子は近づいてくれた。
「私、マーガレット!最近、パパの仕事場に来るのなんで?」
「ママがここで働いているの。あ、私ブエル。」
「ブエルちゃんね!今何してるの?」
「絵を描いているの」
「いいね。私もやる」
私たちはしばらくお絵描きをしていた。
「ねぇそろそろ別のことで遊ばない?おままごとしましょ」
マーガレットは私の手を取って中へ入れてくれた。案内されたのはマーガレットの部屋だった。私も持っている羊のぬいぐるみとかがあった。おままごとを知らなかった私にマーガレットは教えてくれた。すごく楽しくてあっという間に時間が過ぎていた。ママに呼ばれるまで気が付かないくらい。
「ブエルー、ってあらすっかり仲良しね」
「マーガレットここにいたの。いつの間に仲良くなって。まぁ」
ママたちはお昼になったので私たちを呼びに来ていた。ママたちは私たちが遊んでいるとことを見つけた。仲のいい人たちを友達って言ったりするらしい。
この日私に初めての友達ができた。
ブエルに友達ができたことで一日のサイクルに変化が訪れた。それまで魔術の勉強に剣の稽古があったが時々剣の稽古は友達と遊ぶに変わった。グレイラット家はそれをよろこんだ。約束の日にいってきますと元気に挨拶をして飛び出していく娘をほほえましく見ていた。
呪子と判明した時は普通の生活ができないのではないかとパウロたちは心配したが友達を作り遊びに行くブエルを見てどうにかなるのではないかと安心した。
ブエルは毎回約束を守り時間通りに帰ってきた。危険な場所へ行った話も聞かない。帰ってきたらその日にしたことを夕飯の席で楽しそうに話していた。その時の表情は太陽のようで順調に成長している娘を見て大人たちは安心していた。
その日、ブエルは約束の時間になっても帰ってこなかった。最初はそういう日もあるだろうと考えていた。だが日が暮れたにもかかわらず帰ってくる気配はなかった。パウロたちは何かあったと確信し焦った。家にルディとリーリャを残し全員で探しに行った。
パウロは森など危険な場所へ。ゼニスは家々を回り情報を集めることに、ロキシーは2人が回れなさそうなところを中心として探し回ることにした。そして時間を決めて合流することを決めてそれぞれの場所へ動き出した。
家を回る中でゼニスはブエルが村の子供と集まって遊びに行ったことを知った。ゼニスは遊んでいた子たちの家へ行き居場所などを聞いたが目を逸らし「知らない」と口を揃えて言った。
ブエルがいなくなった。
ロキシーの心臓は痛くなるほどドクドクと強く鼓動を奏でていた。全速力で走っているわけでもない。歩いているだけなのに息があがった。「ねぇね!」ブエルの声が頭の中で響く。まだ幼い少女がいなくなった。この村は治安がいいが決して安全ってわけでもない。村の人はいい人だが魔物が近くの森には現れる。人さらいが静かに村に近づいて攫う可能性もある。嫌な想像ばかりが頭の中に膨らんでいった。
ロキシーは畑や川など子供が事故を起こしやすいところを重点的に探した。とにかく手がかりが欲しかった。靴の1つでも見つかれば進展するのにと。
そうして歩き回っていると風に乗って何かが聞こえたような気がした。ロキシーがそちらの方へ行くと草むらの方から声が聞こえた。誰かが泣いている声だ。
「ブエルいるんですか?」
ロキシーが声をかけると泣き声がピタリと止んだ。ロキシーがのぞいてみると膝を抱えた少女がいた。
「ブエル!よかった……でもどうしたんですか?」
ロキシーがそう言ってブエルをだっこし草むらからだした。
草むらから出したブエルの状態は異常だった。全身ボロボロだったのだ。
遊んでいたらなる範疇を超えていた。服はボロボロになり所々で肌が露出していた。その露出部分からは擦り傷が見える。靴もなかった。裸足になっており石を踏んだのか血が出ている。
そして何より頭から血を流していた。
ロキシーはブエルの状態を見てすぐにヒーリングをかけた。ひとまず傷は塞がったはずだ。
「ねぇね。んぇね。うわぁぁぁん」
ロキシーの顔を見て安心したのか泣き声がさらに大きくなった。ロキシーは泣いているブエルをそっと抱きしめて背中をトントンと叩いた。ブエルも短い腕で抱き着こうと必死に伸ばしていた。ロキシーは事情を聞くのは後と考えブエルを抱きかかえて歩き出した。
何があったのか分からない。けど生きていてよかった。寝てしまった腕の中で感じる温かい体温を離さないように家へ戻った。
「ブエル!」
家に戻るとパウロもゼニスも帰ってきていた。ブエルとみると2人はホッとした表情を浮かべて駆け寄ってくる。
「さぁ家の中へ」
そう言って明るい家に入るとブエルの状態が異常なことに気がつき顔を青ざめた。
「ロキシー、何があった。」
パウロが尋ねるがロキシーは首を振る。
「私にも分かりません。ただ私が見つけたときは全身に傷を負っていて頭からも血を流していました。ゼニスさん、私もヒーリングをしましたが一応診てあげてください」
ゼニスは全身に傷を負っていたという言葉に反応したがすぐに切り替えて診はじめた。
幸い大きな怪我に繋がる様子はないと判断できた。
一同はひとまず生きていたことに安堵し目覚めるのを待ってから話を聞くことにした。
ほどなくしてブエルは目を覚ました。
「ブエル、無事でよかった」
ゼニスはブエルを優しく撫でた。ブエルはまた泣き出した。
「ママ……ママ……」
「よしよし。大丈夫だよ」
子供をあやす母親という光景は先ほどまでの緊張感を忘れさせてくれる。だがグレイラット家はこのまま一件落着で終わるわけにはいかなかった。これまで一度も約束を破らなかったブエルが、ボロボロになって帰ってきた。その原因は有耶無耶にできない。
「ママ……私ね……」
何が何でも問いただそうと考えていたゼニスとパウロだったがブエルから話し始めそうだったので傾聴の姿勢になる。
「私、化け物なの?悪い子なの?」
「え……」
ブエルは泣きじゃくりながら、途切れ途切れで言葉を紡いでいった。その場にいた全員がブエルの言葉に血の気が引いた。
「私、ソマルが嘘ついてたからダメって言ったんだよ。パパとの約束守ったよ。そしたら化け物って石投げられてもう来るなって」
そこまで話すとブエルはまた泣き出しゼニスが落ち着かせようとする。だがパウロ達はおおよその事情を理解した。
ブエルは他の子供が嘘をついたことを指摘したのだろう。そしてその結果いじめられた。ただ言葉を浴びせられたならまだマシだったろう。ブエルは石も投げつけられた。それがロキシーが治療した頭の怪我だった。
「ママ……ママ、私普通じゃない、普通じゃないから化け物なの?悪い子なの?みんないなくなっちゃうの?」
ブエルの言葉は先ほど湧いてきた怒りをかき消した。代わりにあるのは目の前の子供が背負った呪いの重さに対する同情である。胸が痛かった。5歳すら迎えていない子供がどれだけの苦悩を抱えることになったのだろう。彼女は感情を強く感知する。向けられた悪意はどのように感じたのだろう。ロキシーに見つけられるまでの間はどれだけ孤独だっただろう。
今回の件は彼女を生涯縛り付ける呪いとなる。
あぁ、神よ。ロキシーよ。どうですか?目の前の少女を見て。
かつての自分はほかの人が何を言っているのか自分だけ分からないことで苦しんでいましたね
そして今、自分を慕ってくれる子供がほかの人の考えていることが分かってしまうがためにかつての自分と同じように孤立していますよ。
普通は聞こえない声が聞こえるってことでかつての自分を思い出し、ちょっと羨ましいと思ったりしませんでしたか?ここでは他者の考えていることが分かるのは辛いことです
。羨ましいと思った力でブエルは傷つきましたよ
初の曇らせ回でした。いかがでしたか?自分も初めて曇らせ書くので外観だけ書いてキャラの心情はみなさんに任せる形にしました。キャラの心情を詳しく書いてほしいとか書き方で何かあったら感想で教えてほしいです!