日が開いてしまいすみません。リアルが忙しく執筆に時間がさけませんでした。
この10日間でバーがオレンジ色になり感動しています。
本当にありがとうございます。
グレイラット家の庭で戦闘の音が鳴り響く。
「ほら2人とももっと来い!このままじゃいつまでも俺から1本なんて取れないぞ」
パウロが2人を相手とり稽古をしていた。2人は息の合ったコンビネーションでパウロに攻めかかるがそれを軽くいなしている。
「よしやめ」
パウロの掛け声で3人は止まる。ルディとブエルは地面にへたり込み大きく息を整えていた。
「父様、もう少し手加減を……」
「パパ強い」
2人が小さな声で弱音を吐くと得意げな顔をしてる。魔術においてルーデウスは間違いなく天才。ブエルもその年では十分すぎるほどの習得している。パウロとしては父親の威厳を見せられる剣術は楽しい時間に他ならない。
「よし、休めたな。そしたら次は2人で試合だ」
2人は剣を中段で構え向き合う。庭は静寂に包まれた。
「はじめ!」
パウロの掛け声でお互いに距離を詰める。ブエルが剣を振り上げてルーデウスへ力強く振り下ろした。一方ルーデウスは攻撃をせずガードに徹する。鍔迫り合いになるが動きがないと判断したブエルは打たれないようにルーデウスの剣を上から抑え込んで距離をとった。
今度はルーデウスが攻め込む。剣神流の型を使いなるべくすばやく打ち込んだ。だがどれもブエルに容易くいなされる。ルーデウスは隙を与えないように攻め込んでいる。そしてルーデウスがブエルの右肩めがけて袈裟切りを繰りだそうとした瞬間、ブエルの水神流が決まり剣を弾かれる。剣が体の中心から外れてが崩れたところで逆に胴に一閃を入れられてルーデウスの敗北が決まった。
ルーデウスは肺から息を吐きだし倒れこむ。パウロはそれを見て稽古を止めた。
「ルディ、大丈夫?」
ブエルは倒れたルーデウスに手を差し出した。
「うん、大丈夫だよ」
ルーデウスは立ち上がって体についた汚れをパンパンと払った。ここまでやったらこの後は反省会。いつもの稽古はこんな感じだ。
ルーデウスはまだまだだがブエルは少しづつ剣術が上手くなってきた。特に水神流はぴか一だ。すでに中級に達している。元々相手の考えていることなどが分かる力を持っているおかげで専守防衛のスタイルと適合し本気で守りに徹すればパウロも崩すのが少し面倒になるレベルだ。ただし力を最大限使えば疲れるため持久力の差で最終的にはパウロに負ける。おまけに脳を休ませるためにしばらくは動けなくなるのでまだまだ伸びしろだらけだが。
そしてもう1つ。ブエルは力の制御が本当に少しだけできるようになった。ロキシーとの魔術の訓練の結果だ。今までブエルは常に全開の状態で能力を使っていた。だから頭が痛くなるようだったが魔力を抑えれば少し軽減されるらしい。もっともゼロにはできないため声自体は今でも聞こえるらしいが。
――――――
お昼ご飯を食べた後ルディの部屋へ行くと着替えて準備をしていた。
「今日も行くの?」
「うん。約束だからね」
最近、ルディに友達ができた。5歳の誕生日を迎えて少し後、外で散歩をしているところに昔私をひどい目に合わせたあいつが別の子をいじめている現場に遭遇したらしい。ルディはそいつらを見事に撃退して仲良くなったらしい。
名前はシルフィエットちゃん。緑髪のショートカットな女の子だ。2人は一緒にいるようになった。私も紹介してもらって仲良くなった。3人でいるとあいつが絡んできたけどそのたびにルディが撃退してくれた。私自身最初はあいつらをみているだけで怖くて動けなかったがルディが撃退する光景を見ていたらいつの間にか怖くなくなっていて一緒に戦えるようになった。
ルディは最初、シルフィを男の子と勘違いしてた。正直、最初は私も男の子だと思ったけど名前ですぐに分かった。
ルディは私たちの雰囲気で察したらしいがその時に「女の子だったの?!」と大声で言ってしまったせいでシルフィが泣いてしまったり、その後ぎこちなくなったりしてたけど今では3人とも仲良しになった。
――――――――――――
「ママが変」
ある日、ブエルはゼニスとリーリャに向かって突然そう言った。そこからブエルは大騒ぎしだした。ゼニスのお腹の中に虫がいると言い出した。
「どこにいるの?」
「ここ」
ゼニスがブエルに尋ねるとブエルは下腹部を指さした。ゼニスは服の中に入りこんでいると思いリーリャに確認させる。しかし虫と思えるものはいなかった。
「どうしたのかしら」
「今までこのようなことありませんでしたね」
ゼニスとリーリャは困惑した。ブエルは子供らしく認識のズレで話が通じないことはよくある。例えばこの前もブドウが食べたいと言い出したけど彼女の言うブドウはブルーベリーだった。
いくら力があってもまだまだ子供だ。だが力を通じて知ったことを話す時は必ず意味がある。だからお腹の虫も何か意味があるはずだ。
「ブエル、虫がいるのは服の中?」
「体の中」
「虫がいるの?」
「小さい何かがいる。」
ここで何かを考えていたリーリャがゼニスにそっと耳打ちをする。
「……奥さま、少しよろしいですか?」
「えぇ……」
「アレ、今月はきましたか?」
リーリャの言葉に目を見開きあっと驚いた表情をする。
「もしかしてそういうこと?」
「小さな声というのと虫がいる場所からしてもしかしたらと……」
「明日、行ってみるわね」
ブエルに聞こえない声での会話が終わるとゼニスはブエルを抱き抱える。ブエルは首を仰け反ってゼニスの顔を見ていた。
「ブエル」
「何?ママ」
「もしかしたらお手柄かもよ」
ゼニスはブエル頭を撫でながら言った。
次の日
ゼニスの妊娠が確定した。
「ルディ、貴方に兄弟ができたら嬉しい?」
「もちろんです!」
ルーデウスがそう言うとゼニスはお腹に手を当ててニンマリと笑う。
「実はね、赤ちゃんがいるの」
「ほんとうですか!?」
「本当か!ゼニス」
ゼニスの報告を聞いたパウロが食堂から飛び出してくる。
「えぇ、ホントよ貴方」
「やったな、ゼニス」
「えぇ❤貴方」
先程までルーデウスと話していたはずなのにそっちのけでイチャイチャし始める。
とにかくこの報告にグレイラット家は沸いた。
ゼニスは2人目が出来ないことに悩んでいた。ブエルがいるとはいえ、ルーデウスに兄弟を作ってあげたいという気持ちはあった。
みんなで盛り上がっているとブエルがトテトテと降りてきた。
「ブエル!おいで」
ゼニスがパウロとの抱擁を解いてブエルに向けて両腕を広げる。
「実はね、ブエルが教えてくれたの」
「ブエルはそんなことも分かるのか」
パウロはブエルの力に関心してジッと見ていた。ブエルはそんなパウロの視線はお構いなしにゼニスのお腹を凝視している。その視線は敵を見るように鋭いものだった。
「ブエル、貴方が教えてくれた虫は虫じゃなくて赤ちゃんなの」
「赤ちゃん?」
「ええ!お姉ちゃんになるのよ」
「お姉ちゃん!」
虫の正体を知ると先程までの鋭い視線から目をキラキラさせてまん丸な目に変わる。
「ほら、撫でてあげて」
「いい子いい子」
「ありがとう。ブエルは優しいお姉ちゃんになるわね」
ゼニスの妊娠が発覚してから1週間が経過したころ。家の中にはブエルとリーリャだけがいた。
リーリャは1人で夕飯の支度をしているとトテトテと音を立てながらブエルが来た。
「お嬢様、危ないのでこちらには近づかないでください」
リーリャがブエルに言うがブエルはリーリャのお腹を凝視するだけで返事がこない。
「お嬢様?」
ブエルは何も言わずお腹を凝視し続ける。リーリャもどうしたらいいのか分からず困惑しているとブエルはリーリャのお腹に手を伸ばす。
「いい子いい子!」
ブエルはそう言ってリーリャのお腹を撫でる。
そしてブエルはリーリャに優しく抱きつき「リーリャおめでとう」ニパっと笑いながら言った。
「………………………………え」
言われたリーリャは笑顔になるとこはなくむしろその表情は氷のように冷たく固くなった。手に持っていたおたまを落としそうになった。体から熱という熱が消えたように全身の感覚がなくなっている。
「ただいま〜」
そこへパウロが帰ってきた。ブエルの意識はパウロの方へ向けられ「パパー」と走っていった。
食堂にはリーリャだけが残された。先程の行動の意味、ウソであって欲しいと願うしかなかった。
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1ヶ月後
「申し訳ございません。妊娠致しました」
リーリャは家族が揃った席で淡々と報告し頭を下げた。
「リーリャ!おめでとう!」
ブエルは満々の笑みで椅子から立ち上がり言った。
「ね!マ……マ……?」
全身で喜ばしいとばかりの表現していたブエルだが次の瞬間、異変に気がついた。ブエル以外の家族は凍りついていた。
リーリャは勤勉なメイドだ。家に尽くしてくれていた。誰かと親しいという話は聞いたとこがない。相手は誰?そんなこと聞けなかった。ブエルは知っていたから喜んでいた。そのことが悪いと知らないからだ。ゼニスは感づいてパウロを見た。
「すまん、俺の子だ」
パウロはゼニスが視線を向けてきた瞬間アッサリと頭を下げた。日頃からルーデウスとブエルに偉そうに講釈垂れていた手前、素直にならざるを得なかったのだろう。
ゼニスは立ち上がり閻魔のような表情でパウロに平手打ちをした。
「ヒィ」
その光景を見ていたブエルが椅子から転げ落ちた。ゼニスの妊娠とは真逆の雰囲気、そしてゼニスの怒りを強く感知してしまい本能的に逃げようとして足を滑らせたのだ。ルーデウスが呼びかけるが返事はなく完全に意識を失った。
グレイラット家はもうすぐ訪れる季節より早く寒波が到来した。
こうして緊急家族会議が勃発した。
「それでどうするつもりなの?」
ゼニスは冷静にリーリャへと問い詰める。この会議は当然ゼニス主導になっているが冷静だった。感情を爆発させればブエルへ悪影響があるからだ。ゼニスはこの状態になってもブエルのことを考えられる視野の広さを持ち続けられていた。
パウロは居間にいた。席から立つことを許されず項垂れているだけ。父親、家長としての威厳は一切なくいたずらが見つかった男児と変わりなかった。
ブエルは目が覚めるとパウロの方へ行こうとした。怒りの感情が強いゼニスより空っぽの心のパウロの方が安全であると感じ取ったのだ。
「ブエル、そっちには行っちゃダメ。こっちにいなさい」
そろりそろりと歩いているとそれに気が付いたゼニスがピシャリと言い放つ。その覇気にブエルは捕食者に睨まれた小動物のように固まり、父と母双方の顔を見て食堂へと戻った。壁際にいた兄が手招きしていたのでそこへ向かい後ろに隠れた。
ブエルは困惑していた。ちょっと前、ゼニスが妊娠した時はこんなではなかったはず。なのにゼニス、パウロ、リーリャからはマイナスの感情しか感じられない。
「ルディ……」
ブエルが袖をつかむとルーデウスは頭をなでる。ルーデウスからは呆れの感情があるが普段とあまり変わらないためブエルにとっては安心できる場所になっていた。
「ルディ、なんでママ怒っているの?」
ブエルはゼニスを刺激しないように小声で話しかける。
「うーん、悪いことをしたからだね」
ルーデウスは頭を上げて考え込むような仕草をしながら答える。ルーデウス自身もどう答えたらいいのか迷っていた。
「あなたは黙っていなさい」
2人が話しているとゼニスがパウロを一喝する。発言権のないパウロはゼニスに意見しようとして叩き落された。パウロは塩をかけられたナメクジのように縮んでしまった。一方ブエルはその大きな音と激しい感情に震えていた。
「ブエル、リーリャは好きか?」
「うん」
ブエルがそう答えるとルーデウスはブエルの頭をやさしくなでる。そして「任せろ」といいゼニスの元へ話しかけに行った。
その後ルーデウスの立ち回りにより全ての罪をパウロは被ったことでリーリャは家に残ることが許された。
最後にゼニスはパウロに向かい「後で話がある」といいブエルを抱えて寝室へ向かった。
「ごめんなさいブエル。怖い思いをさせてしまったわね」
寝室でゼニスはブエルを思いっきり抱きしめ頭を撫でながら言う。最初はおびえていたブエルだったが段々と怒りの矛先が向けられないと分かったのか落ち着いて今は小さな手足を使ってゼニスに抱き着いていた。
そこへ部屋の扉がノックされる。その音を聞いたゼニスの感情はまた荒れ始める。それを感じたブエルが震えているのでゼニスは深呼吸をした。
「ブエル、外にいるのは誰?」
「ルディ」
パウロでないことを知ったゼニスはすぐに扉を開けた。
「母様。先ほどのは僕のウソです。父様を嫌いにならないでください。」
ゼニスは優しい笑顔を浮かべてルーデウスの頭を撫でた。
「分かっているわよ。あの人、馬鹿で女に目がないからいつかこうなるって分かっていたもの。ルディ、怖い思いをさせてごめんね。今日は久しぶりに一緒に寝ましょ」
「父様は?いいのですか?」
「いいのよ。あの人、今日は馬小屋で寝たいらしいわ」
ゼニスは笑顔で言っていたが内心は全く笑顔ではなくブエルとルーデウスは震えあがっていた。その日は3人で川の字になって寝た。
ペースを上げるためというのと原作と違う点がないためシルフィ回は割愛しました。
感想、評価等モチベに繋がるのでよろしくお願いします。