グレイラット家の傷になる少女   作:エナジェティック

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風邪をひきお医者さんにみせたら喉が赤すぎて引かれました、、、、


第6話 別れ

 パウロの浮気騒動から1年。妹が生まれた。ゼニスは逆子だった。本来なら難産だがブエルが大活躍をした。ブエルは2人の赤子の声を聞いていると頭の向きが逆なことに気が付いた。それが予定日より早い段階で分かっていたためパウロが町まで行き逆子に対応できる人を雇ったのだ。

 

 リーリャ、村の産婆、町の助産師。3人の協力がありゼニスの子供は無事に生まれた。ルーデウスとブエルも治癒魔術師やサポートとして活躍した。ゼニスの子供が生まれた直後、リーリャも産気ついた。早産になったためパニックに一瞬なったがベテラン2人が活を入れたためすぐに持ち直してお産に入りリーリャも無事に生まれた。

 

 2人とも女の子だった。ゼニスの子供はノルン、リーリャの子供はアイシャと名付けられた。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 グレイラット家には今日も剣のぶつかり合う音が聞こえる。日課である稽古だ。

 父、パウロに対してルーデウスはブエルと2人で戦っている。2人は徐々に役割を決め始めた。基本、前衛はブエル。水神流を駆使してパウロの攻撃を受け流す。そして隙を見つけルーデウスが決める。この流れでパウロから何とか1本を取ろうと考えていたが実力・経験の差が大きく手は届いていない。

 

 「よし、そこまで」

 

 結局この日も1本も取れずに稽古は終わった。パウロはさっさと着替えて仕事へ向かった。

 

 「また勝てなかったね。ルディどうしよう」

 

 「うーん」

 

 午後になり妹2人の面倒を見ながら策を練る。妹たちが起きないようにあーでもないこーでもないと策を出し合っていたが剣術でパウロを超えられるイメージが湧いてこなかった。

 

 「もう魔術使っちゃえばいいのよ」

 

 2人の会話を聞いていたゼニスが助言を入れた。

 

 「でも母様。あれは剣術の稽古なので反則では」

 

 「いいのよ。調子に乗っているんだから一度くらい痛い目を見れば」

 

 「そうですよルーデウス様。子供相手に本気で戦っている人です。子供が本気をだして文句を言うのであれば甲斐性がないってものですよ」

 

 ゼニスに続いてリーリャも言う。あの事件以降リーリャはルーデウスに対する接し方を友好的なものに変えた。それと同時にパウロの扱いも雑になった。これは正式な家族になったとプラスに考えるべきなのだろう。

 

「ルディやってみようよ」

 

「うーん、よし!やるか」

 

 そこから2人は魔法を軸とした作戦を立てる。

 

 

 次の日

 

「ほらほらそんなんじゃいつまでも初級のままだぞお前ら」

 

 パウロは作戦には一切気がついておらず煽り油断している。ブエル達は一度距離を取りアイコンタクトをしてから動き出した。

 

 ルーデウスがブエルの背中に手を当てて風魔法を使う。ブエルはその力により一気に距離を詰める。

 

「うぉ!」

 

 パウロは意表を突かれたため声を上げて一度動きを止める。そこにルーデウスが泥沼を発生させ足を沈める。ブエルは体制の崩れたパウロに上段からの一撃を振り下ろした。

 

 カンと乾いた音が響く。確実に意表はついたがパウロは対応した。ブエルの剣を受け止める。だがブエルは動揺しない。離れることなく渾身の力を込めてパウロの剣に体重を乗せた。

 

 次の瞬間パウロの木剣に火がつく。

 

「うぉ!」

 

 火は一瞬で柄にまで周りパウロは思わず剣を落とした。

 

 ブエルは剣神流で攻める。ここで落とせなければ今回の作戦に意味が無い。ルーデウスも接近し果敢に攻める。パウロも剣に当たるまいと避ける。

 ブエルはルーデウスが接近したのを見てパウロの背後へ回った。挟み撃ちにされたパウロは笑いながら愛する子供たちの太刀を受けた。

 

 稽古が終わった後、パウロは2人を思いっきり褒めた。剣術の稽古で魔術を使ったことは苦言を呈されたが意表の付き方、魔術を使った連携に関してはパウロ目線でもすばらしかったらしい。パウロは「本気を出せば避けれた」と言っていたがどこまで本気なのかは分からない。ただ工夫をして自身に1本取ったことはすごいと言い2人を抱きしめて頭をなでていた。ブエルは「はずかしいからやめて」と言いつつ一切抵抗していなかった。表情は柔らかくルーデウスは少し笑みを浮かべながら父親の抱擁を受け入れていた。

 

 

 次の日から魔術を取り入れた戦い方をするようになった。ただし魔術ばかりを使っていると剣術が成長しないということで魔術が禁止になる時間もある。パウロとの試合ではブエルが前衛でパウロの剣を受ける。そしてルーデウスは魔術で援護をしブエルが決定打を与えられる隙を作るという戦い方だ。

 

 2人の連携は上手い。ルーデウスは魔術の天才。ブエルの邪魔にならないような術、範囲を設定しパウロだけに不利を押し付ける。一方ブエルはルーデウスが何を考えているかある程度分かるため魔術のタイミングに完璧に合わせて効果的に立ち回っている。しかしパウロは強かった。素のフィジカルに差がある上冒険者としての経験値も合わさり2人は最後には負けている。ただ追いつめられるときもあるようで稽古が終わればいつもほめてくれるようになった。

 

 

 ――――――――――

 

 ルディはシルフィとどんどんと仲良しになっていく。2人はすごい。無詠唱魔術をドンドンと習得していっている。私もある程度使えるがシルフィはあっという間に追い抜いてしまった。2人はできることが同じになってきて一緒にいる時間が増えていった。シルフィの中のルディへの感情はドンドン大きくなっていく。近くにいる私は押しつぶされてしまうのではないかと思うほど。他の感情だったら頭が痛くなって近くにはいられないくらい大きい。

それはルディも同じだ。この前、ロキシーお姉ちゃんからの手紙を渡しにパパと行った時ルディは枕に顔をうずめて何かをしていた。パパはからかっていたがあれが何を意味しているのか分からない。ただその時の感情はパパとママが夜に出している心の声に似ていた。

 

 そして先日、ルディはパパに頼みごとをした。魔法大学に行くためにルディとシルフィの分のお金を出してほしいとのことだ。だけどパパはダメと言った。剣術が途中なこと。まだ子供なこと。お金はそんなにないことを挙げた。するとルディは自分で仕事を探すと言った。パパはそれには納得した。

 

 

 一週間後。家の中では変化が起こっていた。大人たちのルディを見る目が変わっていた。みんなの声が流れ込んでくる。

 

 「ルディがいなくなる……」

 

 私が呟くとママと目が合う。私の目を見たママはパパにこそこそとお話をした。するとパパは私を部屋に連れて行った。

 

 パパは話してくれた。ルディを少し遠くの貴族のところで働かせることを。理由はルディとシルフィが依存し始めているからと言っていた。依存が何か分からなかったので聞いたら2人ともどちらかがいないと駄目な状態になることらしい。なにがダメなのかと聞いたらどちらかがいなくなったら立ち直れない状況になるからと言われた。そして立派な人間になるために必要なことだと言う。パパは続けた。一生の別れではないこと。どうか理解してほしいと言われた。パパは私の目をまっすぐ見続けた。家族を思ってくれる声が聞こえた。私には全部は理解できなかった。でもパパが真剣に考えた結果なことはなんとなく分かった。

 

 「ルディに話はしたの?」

 

 「いや、していない。話をすれば言いくるめられるだけだからな」

 

 パパはここで初めて私から目をそらした。何も伝えず送り込むことをよくは思っていないのだろう。

 

 「パパはルディが1人で大丈夫だと思うの?」

 

 私がそう言うとパパはきょとんとした顔をした。その質問は思いがけないものだったようだ。

 

 「ルディは天才だぞ。大丈夫に決まっているだろ。」

 

 パパは私の頭をなでながらそう言った。まるで明日も朝日が昇ると分かりきっているような言い方だった。でも私にはそうは思えない。まだロキシーお姉ちゃんがいたころ。外に出ることがなかったころ。ルディは外を見てはいつも何かにおびえていた。パパたちは気が付いていなかったけどルディはいつも怖がっていた。何かに苦しんでいた。最近はそんなことないけど昔のルディは怖かった。ずっと苦しんでいるが分かっていたから。

 

 

もしかしたら家族の中でルディの弱さを知っているのは私だけなのかもしれない。

 

 

 

 ――――――――――――

 

 「「「お誕生日おめでとう!!!」」」

 

 私の5歳の誕生日パーティーは1か月前倒して行われた。パパはルディに仕事を探す関係で少し村を離れなきゃいけないからと噓をついていたが私の誕生日を迎える前に貴族の元へ送られることを私は理解した。せめて家族全員が揃っているときに祝おうとしてくれたのだ。

 

 テーブルの上には私の好きな料理、さらにちょっと高い肉がのっていた。

 

「!――」

 

 ママとリーリャの料理はいつもおいしい。でも今日はいつも以上においしく感じて声を上げる。

 

 「そんなに焦らなくても料理はあるわよ」

 

 ママはそんな私を見て笑っていた。

 

 ご飯の後はプレゼントをくれた。

 ママはかわいい服を、リーリャはハンカチ。ルディは魔術で作ったペンダント。真ん中にはきれいな石が埋め込まれていた。パパは剣をくれた。

 

 「ブエル。誕生日おめでとう。俺からは剣をやろう」

 

 「ありがとう」

 

 「さて、ブエル。ルディの時にも話したが力は威張るためのものじゃない。剣をあげるがそれを使うのは大事な人を守るためだ。いいな」

 

 「はい」

 

前回長いと突っ込まれたのを反省したのか今回は短くコンパクトにまとめた。普段からこれくらいだといいのにと思ってしまった。

こうして私の誕生日会はあっという間に終わる。

 

 

 

 

 そして1週間後ルディは旅立った。

 

 

 (まさか気絶させて行かせるとは……)

 

 心が読める私でも冗談だと思っていた作戦が本当に決行されて驚いた。




次回、ルディがいなくなってからのブエルを書いていよいよ、、、いよいよです。

自分としてもやっと書ける!といった感情です。

感想、お気に入り等よろしくお願いします。
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