気が付いたらお気に入り数が100を超えUAも5000を突破しました。
本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
フィットア領ブエナ村。その近くにある森に5人の人間が入り込んでいた。5人は陣形を組み辺りを警戒しながら物音を立てないように歩く。大人たちと比べると体の小さい、金髪の少女が警戒するように回していた頭を一点に集中させる。
「お父さん、9時の方向300メートル。ゴブリンの群れだ。」
「よくやったブエル。他にはいるか?」
「ほかの魔物は結構離れてる。騒いでもこっちには来ないと思う。」
お父さんと呼ばれた茶髪の男は少女の頭を撫でた。そしてパーティーは全員がそちら方向へ警戒心を強めた。
少女の名前はブエル・グレイラット。今年9歳になるグレイラット家の長女だ。ブエルは生まれつき能力を持っていた。それは生物の声を聞くことができるといったものである。その力は彼女を蝕んでいた。普段から多くの音にさらされる彼女はストレスを抱えやすかった。また意図せず人の考えていることを読んでしまう。その結果ほかの子供からは冷遇されてしまっていた。
しかしそんな力を役立てている時もある。それが今だ。他の村人からの通報で森に魔物が湧いていることを知ったパウロはブエルと共に森へ入った。索敵において彼女の力は無類の強さを誇る。魔物には探知できない距離でこちらは捕捉し奇襲を仕掛けられる。
「全部で6匹か」
パウロは気が付かれないように様子をうかがいながら情報を集める。
「よしブエル。行ってこい。」
パウロがそう言うとブエルは頷き腰の剣に手を添える。今回、パウロが自分の仕事にブエルを連れてきたのは実戦経験を積ませるためだった。ルーデウスがボレアス家へ行った後も2人の稽古は続いていた。その中で変な型が身に付き始めていることに気が付いて自身としか戦っていなかったのが原因であると悟ったパウロは弱い魔物でも戦うことで解消されるのを狙っていた。
「よしじゃあ作戦だ。ブエルが突撃しゴブリンを殲滅しろ。万が一の時は俺が援護に入る。だから安心しろ。ロールズ。2人はブエルのサポートを頼む」
パウロの作戦を全員が理解したところでそれぞれが配置につく。全員が準備完了の合図を出したところでブエルは勢いよく飛び出した。
「グギャ」
奇襲を仕掛けられたゴブリンはギリギリでブエルの存在に気が付いたがその時にはすでに遅く首をはねられていた。ここでようやく攻められていることに気が付いたゴブリンは戦闘態勢に入る。ブエルに一番近いゴブリンは棍棒を振り上げブエルの頭へと振り下ろす。ブエルは棍棒を受け止め水神流を発動。カウンターで切り伏せた。
そのままの勢いで4体のゴブリンをあっという間に切り伏せた。ブエルは「ふぅ」と息を吐き姿勢を整える。すると背後から最後の1体が奇襲を仕掛けていた。しかしブエルは動く気配を見せない。この様子を見たゴブリンは殺したといわんばかりの笑みを浮かべ棍棒を振り下ろす。その棍棒があたると思われたその時どこからか岩砲弾が飛んできてゴブリンを吹っ飛ばす。間髪入れず炎に包まれ絶命した。
ブエルは背後の敵に気が付いていた。気が付いて何もしなかった。親友が何とかすると信じていたから。
「ナイスシルフィ」
草むらの方へ手を振ると緑髪の少女が顔を出して同じく手を振り返した。
「これで全滅だな」
「いやー流石ブエルちゃん。あっという間に制圧してしまうなんてね」
「シルフィの魔術もすごかったよ。ロールズさん。戦いやすかった」
ブエルが得意げな顔をするとシルフィの頬は少し赤く、そして顔の筋肉が緩んでいた。
今回は2人に経験を積ませるのが目的だったためそれぞれに父親がつき後は帰りの荷物を持つために村の青年がついてくるパーティー構成になっていた。だがゴブリンだったこともあり2人の娘は父親の力を借りることもなく倒し切った。
「話すこともいいがやることをしなきゃダメだぞ。問題だ。魔物を殺したらその後必ずしないといけないのはなんだ?」
パウロが質問をすると2人は顔を合わせる。そして小さく「せーの」というと火葬すると答えた。
「そうだ。よく分かっているな。じゃあ作業をするぞ!」
2人は大人たちに負けないようにせっせこと働いた。
――――――――――――――
sideブエル
ルディが連れていかれた後シルフィはよくうちに来るようになった。なんでか聞いたら「将来ルディを支えられるようになる」と言っていた。ロールズさんに説得されたとき「このままでルディに守られるだけでいいのか」と言われたそう。そしてシルフィはうちに来てはママに料理を習い、リーリャに礼儀作法を習ったりしていた。いつの間にか私も参加することになっていた。
お父さんとの稽古は前より大変になった。お父さんは私しか教える人がいないから全力出しルディがいないから1本も取れなくなった。そこで私はシルフィを呼んだ。また2対1でやろうとした。お父さんは模擬戦ならいいと言ってくれた。私が前衛、シルフィは魔術しかできないので必然的に後衛になる。だがお父さんには全く歯が立たなかった。お父さん曰くルディと違いシルフィは近接で攻めてこないから集中しやすいのとルディの魔術は厄介度が今まで見てきた魔術師と比べても段違いだから対処しやすいらしい。
ちょっとどや顔で言ってきて悔しかったのでシルフィとウソ泣きをしていたらお母さんが目撃してお父さんにすごく怒っていたので慌てて誤解を解き二度としないように決めた。
シルフィがうちへ来るようになり稽古以外もやっている。魔術の練習だ。ルディがいなくなって改めてルディのすごさが分かった。私はそれほど得意じゃないからロキシーお姉ちゃんからもルディからも難しい内容は教わっていない。だからシルフィが先生になっていろいろと教えてくれた。
妹たちも大きくなった。アイシャはもう家の手伝いをしてくれるくらい。
「お母さん、遊んでくるね」
「行ってきます。ゼニスさん」
「分かったわ。ノルンとアイシャをお願いね」
私とシルフィは妹たちを間に挟んで外へでた。アイシャはリーリャの子供だからメイドでいいとリーリャは言っていた。でもルディだったらそんなのは許さないと思う。それに私にはそんなこと関係なかった。2人とも可愛くて大事な妹だ。だから一緒にいられる時は3人でいた。遊びに行ったりおつかいに行ったりする時どちらかの手には必ず妹がいた。
私たちは昔ルディと魔術を練習した大木に来た。
「何して遊ぶ?」
「かくれんぼ」
シルフィが聞くとアイシャが手をあげて答える。
「よしじゃあじゃんけんで勝った人が鬼だ!」
「「「じゃんけんぽん!」」」」
勝ったのはシルフィだった。私たちは大木からの範囲を決めてチリジリになった。
(よしここでいいかな?)
私は草むらの中に隠れる。ここなら近づかれてもすぐに逃げられると思った。
すると背後で草むらをかき分ける音がする。入っていた時から気が付いていたが先客がいた。
「あー!私が先なのに!」
先に隠れていたのはアイシャだった。
「もーいいかい!探しに行くよ」
シルフィの声が耳に響く。すでに動き出したなら私は今更場所を移動することはできない。
「ごめんね、一緒に隠れよ」
「いいよ」
アイシャは小声で言った。
私たちは息をひそめていた。ああ見えてシルフィはかくれんぼの鬼は強い。剣で例えるならお父さんだ。ロールズさんは狩人で森の獲物を探すのが得意だ。この前ゴブリン退治に行った時も追跡の仕方を惜しまずに教えてくれた。シルフィはその技術をすでに取得している。おかげで追跡となると勝てる見込みがないのだ。
そんなことを考えているとすでに草むらの近くから足音が聞こえた。考えに没頭していたら接近していたことに気が付かなかった。アイシャと顔を見合わせて互いに指をたててシーっとした。
そうこうしていると足音は段々と遠ざかっていることに気が付く。よし勝った。そう思った瞬間アイシャがなんとくしゃみをしてしまった。音を立てたことでシルフィに気が付かれ私たちは捕まった。
「ごめん、お姉ちゃん」
アイシャはしょんぼりしていた。ただでさえ小さな体がさらに小さく感じられた。私たちは大木で待機していてアイシャの頭をなでながらノルンが捕まるのを待っていた。
ほどなくしてノルンも捕まった。そして次の鬼を決めていた。
私たちは全員姉妹のように仲良く日々を過ごしていた。
――――――――――――
「ルディのところへ行こう」
ある日の夕食の席でお父さんは突然そう言った。
「あなた、でもルディとは12歳まで接触しないって」
「俺もそのつもりだったんだが」
お母さんがそう言うとお父さんは1通の封筒を出した。中には2通の手紙が入っている。片方の字はとても汚くて読みにくい。だがもう1通はとてもきれいな字で書かれていた。
「フィリップからだ。」
お父さんはそう言って読み始めた。ルディは上手くやっているらしい。そしてお嬢様に気に入られた結果、お嬢様主催でルディの誕生日パーティーを開くらしい。今回の手紙はその招待だそう。
「ルディ、流石ね」
お母さんは嬉しそうに言った。
「ルディの10歳の誕生日は祝ってやろう。ということでみんな準備をしてくれ」
そんなわけで私たちはルディのいる街に向かう準備をし始めていた。ただそんなに距離が離れているわけではないみたいで準備はむしろパーティーで恥ずかしくないようにという方が重要だった。私はいつもより厳しくリーリャに礼儀作法を学び、お母さんはパーティー用の可愛いドレスを用意してくれた。
久しぶりの家族との再会に胸を躍らせていた。
だが
「すまない。ルディの誕生日パーティーに行くのは諦める」
お父さんは1週間後のお昼ご飯の席で頭を下げた。先ほどまであったムードは一気に霧散した。だけど誰もお父さんを責める人はいなかった。理由をみんな察していたからだ。
「やっぱり魔物?」
私が聞くとお父さんは「あぁ」といいうなずいていた。ここ最近村周辺の魔物が活発になっている。被害はすでに拡大していて村や街をでて移動する際今まで以上に襲われる被害者が続出しているらしい。騎士として村を守るのが仕事なので離れられなくなってしまったとのこと。私たちだけで行く案もあまりの魔物の多さにお父さんなしで街へ行くには無謀と判断された。
だけど誕生日なのになにもしないのは可哀そうということになりそれぞれのプレゼントは送ってもらうことになった。
「ブエル、すまない。また来てくれるか?」
「うん。任せて」
私はそう言うと剣に防具を着て先日の魔物狩りの恰好になった。魔物が多い今私の探知の力は効率よく討伐を行うのに重要になっている。
「それじゃあ行ってくる」
「気を付けてねあなた。それにブエル、あなたもよ。いざとなったら自分のことを第一に考えるのよ」
そういってママは私を抱きしめてくれた。
「息子の誕生日くらい祝ってやりたかったぜ」
外に出たお父さんがそうぼやいた。
帰ってくるとノルンが泣いていた。家に入る前にお母さんがスペルド族の話をしていてからかったら泣いちゃったみたい。
「よしよしノルン大丈夫。お姉ちゃんが守ってあげるよ」
お母さんからノルンを受け取って抱っこをすると私の首に短い腕を回して抱き着いてきた。ノルンは私の肩に顔をうずめて泣いている。私が頭を撫でているとだんだんと落ち着いてきた。
「なんだありゃ」
お父さんがそう呟いた。窓の外をみるとずっと向こうの遠い空が変な色になっている。赤、なのか黄色なのか色々な色が混ざってきたない感じ。なんにせよ、私の心の中は穏やかではない。胸騒ぎ、あれはマズイという警告を全身から感じ取っていた。
ただ異変が起こっているのはずっと先の空。ここからでは見ていることしかできない。
「あ」
誰かが声を出した。でも誰のかは分からない。その瞬間、空の異変は1つの光の柱になりなす術もなく飲み込まれた。
次回からいよいよ転移事件編です!!!
ブエルは無事生き残れるのかぜひ楽しみにしていて下さい。
そういえば私は最初、月曜日、金曜日投稿にしようとしていたら気が付いたら木曜日、日曜日になってますね。ということで投稿は木曜、日曜のどちらか18:00に固定しようと思います。パワーがあまり更新できる時は最大週2回と思っていてください。
前回6:00だったのはミスです。
小説の進み方
-
早い
-
普通(そのままでいい)
-
遅い