グレイラット家の傷になる少女   作:エナジェティック

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いよいよ始まります。

お待たせしました!!!

前回感想・誤字報告をくださった方ありがとうございます!!


ターニングポイント 1

「ここは……」

 

 目の前に広がっていたのは先の見えない森だった。

 少しづつ状況を思い出しながら現状を確認していく。先ほどまで確かに家で家族といた。そして空から光の柱が降り注ぎ自分たちを飲み込んだ。気が付いたら今に至る。

 

 訳がわからない。なぜいつの間にか森にいるのか。まさか爆風で飛ばされた?その可能性を考えたが爆風に巻き込まれたにしては服がきれいすぎる。その可能性はないだろう。辺りを見渡してみるとブエナ村とは植物の種類は違うような気がする。意味不明な状況に頭が痛くなりそうだった。

 

「お姉ちゃん……?」

 

 腕の中から不安そうな声が聞こえてきた。視線を向けるとノルンが私の服を握り見つめてきていた。そういえばノルンを抱っこしていたんだった。

 

 私でもまったく意味が分からないのだ。ノルンはもっと不安なはずだ。ひとまず動こう。人に会わなきゃ。

 

「ノルン、行こう。大丈夫絶対に」

 

 私はそう言うとノルンの頭を一撫でして歩き始めた。

 

 

 どれくらい歩いただろうか。全く状況が分からない。ここはどこなのか。

 

 でも何となく分かったことがある。ここはブエナ村じゃない。やっぱり爆風で森に飛ばされたとかそういう次元の話じゃないことを理解し始めた。

 

 理由はいくつかある。まず暑い。しばらく歩いているととにかく体が暑いことに気が付いた。村で走っていてもここまで暑くなることはなかった。これは異常だ。

 

 他にも植物が違う。お父さんに連れられ魔物を狩りへ行った時に森へ入った。その時色々冒険者だった時の知識と一緒に、村近くの森について教えてもらった。その時に見聞きした植物と特徴が全く合わない。

 

 そしてもう1個。私の力で感じる声がブエナ村のものじゃない。これが一番の決め手だった。

 植物、魔物。全ての声が違う。

 

 歩いているうちに冷静になれて色々と整理ができた。お父さんたちが冒険者だった時、迷宮には転移という現象が起こるらしいという話をしていた。光と共にまったく別の場所へととばされるらしい。私たちが経験したことと全く同じことが起こっている。本当か分からないけど多分私たちは転移した。

 

 私の考えが合っているかはともかく今は情報を集めなければ。どこにいるのか分からない。近くに人が住んでいるのかも分からないまま進んでいく。

 

 

 

 

 気がつくと日が暮れ始めている。

 

 何時間も歩いてノルンもだいぶ疲れたため、手ごろな洞窟で少し休憩することにした。魔術で水を作り出しノルンに飲ませる。今ほど魔術が使えてよかったと思ったことはない。ルディとロキシーお姉さんにはまた会えたらお礼を言おうと心の中で誓う。

 

 ノルンは疲れたためぐったりしているが私も限界が近かった。呪いの力。あらゆる声を聞く力を全開にして歩き回った。それで魔物がいない場所を通り、人か建物がないかを探っていたが一向に見つからない。

 

 この力は特定の対象に絞ることができないから使う時はあらゆる声を聞き続けなければいけない。おかげでさっきから頭がとても痛い。力の代償だ。でも緩めるわけにはいかない。ここで人を探すのをやめたら私たちが死ぬのは容易に想像できる。だけど今は動く気になれなかった。

 

 

 

 「はっ」

 

 目が覚めると辺りは暗くなっていた。

 

 (ノルン!!)

 

 ノルンのことを思い出し探そうとするが洞窟の少し奥で寝ていた。無事だったことにホッと息を吐く。

 

 〈飢えと殺意〉

 

 (ヤバい、、)

 

 気がつくと魔物がかなり接近していた。寝ていたことで見逃した。向こうもこちらに気がついている。こちらを獲物として見る声が聞こえる。戦うしかない。

 

 胸が痛い。手も震えている。村の外に言ったことはない。外の魔物がどれだけ強いのか私は知らない。死ぬのだろうか……いや私が死んだらノルンも死ぬ。今死ぬ訳にはいかない。

 

 息を大きく吸い洞窟の外へ出る。

 

 

 剣を抜き魔物がこちらに来るのを待つ。この森では魔物の方が地の利がある。こちらから仕掛けるのは危険だ。

 

 

 草むらから出てきたのは村の近くにもいるイノシシのような魔物だ。

 

 〈飢え〉

 

 先程より強い飢えの感情が突き刺さる。あいつにとって久しぶりの獲物なんだ。飢えに満ちた魔物は決して諦めない。飢えを満たすために獲物を仕留めにかかる。

 

 こいつも変わらない。魔物は私を見るなり突進してくる。私は進路上から横に逸れることで攻撃を避ける。

 

 魔物はそのままの勢いで木にぶつかった。

 

 (今だ!)

 

 魔物の動きが止まった瞬間、踏み込んで剣を振り下ろす。剣は魔物の肉を裂く。だが命までは奪えなかった。

 

「うわ!」

 

 魔物は体を大きく震わせて暴れたため私は吹き飛ばされる。

 地面に叩きつけられて肺の空気を吐き出す。すぐに体勢を立て直すも息をする度に胸が痛かった。

 

「ブルゥォォ!!!」

 

 〈痛み・怒り〉

 

 魔物からは飢えが消えた。傷を負わせたことにする怒りが心を占め始めていた。

 魔物は雄叫びをあげて突進してくる。でも先程よりずっと遅かった。さっきの攻撃が効いていた。

 

 私は冷静に剣を握り魔物の攻撃に合わせて水神流を使う。お父さんとの稽古で何度も使った技だ。剣は急所を裂き今度こそ魔物は死んだ。

 

 

「ファイヤーボール」

 

 気を集めて焚き火を作る。火の周りには先程倒した魔物の肉を棒で串刺しにしたものを刺してある。食べられるのか分からないけど今はこれしかない。空腹は限界だった。それにノルンは私より先に限界が来る。何かを食べさせなきゃいけない。そのためにもまずは毒味を私がしなければいけなかった。

 

 お母さんに肉を焼く時のコツを教えてもらった時を思い出す。しっかりと火が通っていることを確認してかじりついた。

 

 臭い

 

 美味しくなかった。形容しがたい臭いが口いっぱいに広がる。吐き出したいと思ったがこれしかない。鼻をつまんで食べた。

 

 少ししたらノルンが起きてきた。ノルンもお腹が空いていたので食べさせた。一口食べると吐き出した。もう食べたくないと言っていたが無理やり食べさせた。ノルンは泣いていた。

 

 

 

  ごめんね

 

 

 

 

 

 あれから3日くらい経った気がする。

 いつまで経っても魔物しかいなかった。ジワリジワリと心の中で黒い感情が広がっていく。疲労と義務感の中にいたが諦めかけていた。その時、何かが探知に引っかかった。その気配に気が付いて私は一気に覚醒した。

 

 人だ。

 

 

 私はノルンを抱きかかえてその人の方へ向かった。人がどのような感情を持っているのかそれは近づかないと分からない。もしかしたら人さらいかもしれない。しかし望みをかけずにはいられなかった。2人とも限界だった。このままでは魔物に殺されるかそれとも衰弱死かどちらにせよ助からない。かけるしかなかった。

 

 そこには2人の男がいた。近くには馬もいる。私たちが物音を立てると持っていた剣と弓で警戒し始めた。これでは飛び出た瞬間殺されかねないと感じたので警戒を解くところから始める。

 私がその人たちに近づくと弓を向けられた。でも人だと気が付いてくれたようですぐに降ろしてくれた。狩人の恰好をしていた。こちらへの感情を読み取る。

 

 〈困惑と心配〉

 

 悪い人ではなさそうだった。

 

 「君、こんなとこで何をしているんだ。森の奥深くだぞ」

 

 一番にお説教がとんできた。言葉が分かる。安心感が募ってきた。

 

 「ブエル・グレイラットです。助けてください。私たち、気が付いたらここにいたんです。」

 

 事情を正直に話した。前にお父さんが困ったらグレイラットの名を出すように言っていたのをとっさに思い出した。貴族の名前だから親切な人なら助けてくれる可能性があるそう。逆に人さらいには逆効果とも言われたが。

 

 「グレイラット?聞いたことがない」

 

 どうやらアスラ王国ではなさそうだ。いやグレイラット家の支配が行われていない領地の可能性もあるが……

 

 2人は事情を話すとひとまず村まで連れて行ってくれると言ってくれた。私は当然その提案にのり移動することになった。

 

 森を抜けた先に平野が広がっていた。家々が立ち並んでいる。ようやく人の領域に入ったことを確信できた。

 

 私たちはひとまず村長の家へ案内された。

 

 

 私たちはひとまず村長の家の一室を貸してもらえることになった。ノルンは久しぶりのベッドで寝息を立てている。

 

 (村長、いい気分じゃなかったな)

 

 私たちは村長と話した。村長は事情を聞いても信じてくれなかった。私も信じられない。当たり前だろう。村長は一応笑顔で友好的な態度で接していたが内心は真逆だった。なぜ今来た?といった感じで不機嫌な感情が読み取れた。

 

 その理由は少し感知範囲を広げたからすぐに分かった。この村は今、食料がギリギリらしい。そんな中私たちがきてため余計食料の分配に困る。そんな感じだった。連れてきてくれたあの2人はいい人だったのだろう。

 

 下の階では村長たちが話し合っている。

 

〈慈悲・哀れみ〉

 

 〈疑心暗鬼・責任感・嫌悪感〉

 

 私たちをどうするか意見が分かれている。子供だから保護するべきと考える人・食料を考えてここに置いておけないとする人呪いがなくても聞こえてきそうなほど大きな声に私は吐きそうで吐けない感覚を覚えて枕に頭をうずめた。

 

 

 下の声は夜のずっと遅い時間まで聞こえた。結局、私たちはこの村にはいられないらしい。でも3日後に来るキャラバンに乗せて街へ送ってくれるらしい。

 

 

 もう一度森へ送られるよりは100倍マシだ。

 

 私たちがこの村でどうなるのかだけ知るとまぶたは自然と重くなった。





 目の前には2冊の日記がある。
 俺はそれを開くのを躊躇していた。日記の内容が酷いものなのは容易に想像がつく。どんな酷い内容なのか考えると不安で胸がざわつき痛くなる。でもあいつは日記を見ろと言った。そのために持ってきたのだと。

 あいつが言っていたことは本当だったんだ。完全に信じられるわけではないが一定程度聞く価値がある。家族のために何が起こったのか知る必要がある。

 俺は意を決して日記を開いた。





 日記は――への謝罪文から始まった。

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