グレイラット家の傷になる少女   作:エナジェティック

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前回感想をくださった方ありがとうございます!!!

感想やお気に入りが増えていることは自分にとってモチベーションに繋がっています。


さていよいよ転移事件が始まりました。ブエルはノルンと転移。ブエルはルディほど天才ではありません。果たして二人の運命は、、、、


第9話 いざ街へ

目が覚めると目の前に広がっていたのは森ではなく天井だ。ハッとなり体を起こすがすぐに昨日のことを思い出した。

 

 「そうだ。村に着けたんだ」

 

 そのことを改めて確認できると「ハぁー」と大きな息を吐いて肩から力が抜けた。

 

 

 (もう大丈夫なんだ。生き延びたんだ……)

 

 

 もう寝ている間、魔物に襲われる心配もない。毎回毒じゃないかと心配しながら食べる必要もない。その事実を噛みしめると再び布団に倒れこんだ。

 

 

 

 横を見るとノルンが寝ている。ノルンは一定の間隔で胸を上下させ寝息を立てている。この数日間の疲れはまだ取れないようだが今は安心して寝ているようだ。

 

 

 

 ノルンの顔を見ると心が落ち着く。なんでだろう。気が付いたら私はノルンの頬に手を添えていた。ノルンの体温が手に伝わる。ノルンの頬は柔らかかった。

 

 

 

 今、生きていることを実感できた。

 

 

 コンコンコン

 

 

 

 ノルンの顔を見てボーっとしていると部屋の扉がノックされた。扉を開けると村長の奥さんがいた。

 

 

 

 「おはよう。ゆっくり眠れたかしら」

 

 

 〈友好〉

 

 

 

 「はい!ありがとうございます」

 

 

 

 「あら、妹ちゃんはまだ寝ているのね。もう朝ごはんができるわ。起こしてあげて」

 

 

 

 「わかりました」

 

 

 

 奥さんはそう言うと下へ降りて行った。私はそれを見送った後扉を閉めてノルンを起こした。

 

 

 

 朝ごはんは辛いスープと見たことのない白い粒が丸く握られたものだった。「おにぎり」と言っていた。

 

 

 ここ最近の食事と考えるとこの朝ご飯は涙が出そうになるほど美味しかった。

 

 

 

 でも泣くわけにはいかない。

 

 

 

 あまり弱みを見せられない。

 

 

 

 私たちをあまりよく思っていない人たちだ。

 

 

 

 

 強く見せなきゃ

 

 

 ご飯を食べ終わるとノルンは部屋に連れていかれた。今は奥さんに髪をとかしてもらっているらしい。私は村長と部屋に二人っきりだ。

 

 

 「さて改めて聞こうかのう。どこから来たのじゃ」

 

 

 

 「アスラ王国、フィットア領、ブエナ村です」

 

 

 

 「昨日と変わらずか……」

 

 昨日と変わらずと言われたが記憶があまりない。疲労とかのせいで忘れてしまった……

 

 〈警戒?緊張〉

 

 「あの、ここはどこですか?」

 

 

 「ここは王竜王国。お前たちがいたのはその密林地帯だ」

 

 

 

 「王竜……」

 

 

 

 どこだろう。全く分からない。こんなことならルディみたいにいろんなことを勉強しておけばよかった。

 

 

 「中央大陸の南だ。アスラからは半年はかかる」

 

 

 「半年……」

 

 

 

 知らない土地の名前。そして家へ帰るために必要な時間。村長から伝えられた内容はどれも夢にしか思えなくてなんて返せばいいのか分からなくなる。

 

 

 

だが村長の中にあった警戒心は私と話していく内に消えていくのが分かる。

 

 

「ホントなんです」

 

 

「あぁ分かってる」

 

 

 

「え、なんで?」

 

 

 

「喋り方だ。お前らの喋り方は確かにアスラの訛りだ。向こうから来た商人が同じような話し方をしている。お前の言っている意味が分からないがそこは信じよう」

 

 

 村長はそう言うとお茶を一口飲んだ。そして話を続ける。

 

 

「さて、お前たちだが街へ送ることにする。街なら情報が手に入りやすい。ここにいるよりずっといいだろう」

 

 

「街ですか?」

 

 

「あぁ冒険者ギルドもある大きな町がある。数日以内に商人が来る。そいつに乗せてもらう」

 

 

 私たちのことを考えている風を装っているが昨日揉めていたように村には置いておけないから街に送るってことだろう。体のいい口実だ。

 

 でもそうだ情報。今必要なのはお父さんたちの情報だ。このままこの村で暮らしていけないなら探す必要がある。それに何が起こったのかも知りたい。それなら街に行くのは正しい選択だ。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 私はお母さんたちに教わった通りの礼をする。お金もない私たちに今すぐ出来ることはこれくらいだった。

 

 村長からの話が終わって部屋に戻る。部屋ではノルンが奥さんに髪を結ってもらっているところだった。

 

 「おかえり!お姉ちゃん」

 

 

 「ただいまノルン」

 

 

 「今ね、髪を結んでくれてるの」

 

 

 ノルンが私の方に体を向けて話しかけてくれた。奥さんは体を急に動かしたせいで手元が乱れるとノルンにコラといった感じ言っている。それに対しノルンは言うことを素直に聞いた。

 

 

 数分後、髪を結われたノルンがこっちに来た。

 

 「どう?」

 

 

 ノルンはクルリと一回転して私に見せてきた。

 

 

 「うん!とっても可愛いよ」

 

 

 

 「えへへ」

 

 

 私がほめるとノルンははにかんだ。

 

 

 「せっかくだからあなたもやってみましょ」

 

 

 

 奥さんの一言で私もノルンとお揃いの髪形になった。

 

 

 ――――――――

 

 

 村を出発するまでの3日間、私はなるべく村の手伝いをした。ご飯を食べさせてもらいベッドも用意してもらっている。

 

 私たちに対して邪魔者という感情を向けてくる人がいる。拒絶感、昔私が1人になった感情。無視しちゃいけない。

 

 今、森に捨てられたら私たちは今度こそ生きていけない。少しでも貢献してそんな感情が大きくならないようにしなきゃ。

 

 洗濯、薪割り色々やった。段々と話していくうちに私たちに対して悪意を持つ人は減ってきた。

 

 最初から仲良くしてくれる人もいる。それがマリオさん。最初に私たちを助けてくれた狩人の人だ。

 

 その人はあの後も何回か顔を出して様子を見に来てくれた。

 

「昨日は眠れたか?」とか「手伝ってて偉いな」とか。会う度に一言声をかけてくれた。そこには純粋な気持ちしかなかった。

 

 そして3日後、商人たちが村にやってきた。早速村長たちは交渉を始めた。

 商人たちは私たちを見ると嫌そうな顔をした。実際、こちらに向けられる感情は初日の村長たちと同じものだった。このままだと村では居場所がなく行く当ても失う。仕方がないので切り札の魔術を見せることにした。

 

 魔術を使える人間は限られる……はず。村では私たちしかつかっていなかったし 

 

 そう信じてみた結果は大成功。商人たちは私たちに興味を示した。ついでに村長たちも興味を示していた。その結果、町まで行く間に私たちは旅の手助けをすること。これを条件に連れて行ってもらうことになった。

 

 連れて行ってくれる商人は3人、髭のおじさんポール。お父さんくらいの年齢の男の人ピエール。そして唯一の女の人マーガレットさんだ。

 

 3人は村の人と違い悪感情なく私たちと話してくれた。

 

 そして知らない土地へ飛ばされてから1週間、私たちは村を出発した。

 

 

 

 森の中を馬車で進む。呪いの出力は抑えている。今は少し整備された道を進んでいるから迷う心配もないしここの人たちはいい人が多い。心配ことは村に比べると少ない。

 

 「嬢ちゃんたちはなんで街に行くんだ?」

 

 髭のすごい男の人が話しかけてきた。

 

 「実は私たち気が付いたら森にいてなんとかあの村に着いたんですけど村にもいられないって言われて街に行くことにしたんです」

 

 〈憐み〉

 

 私が事情を伝えるとそんな感情が向けられた。

 

 「そうか、親にも村にも捨てられたんだね。悪かったな。魔術が使えるからてっきり冒険者になるのかと……」

 

 この人は村長から話を聞いているはずだが悪意は感じられないので話のきっかけが欲しかったのだろう。お父さんたちに捨てられたわけではないのだが否定すると余計慰められてこじれそうなのでやめておいた。

 

「しかしまぁ、偉いな。そんな小さな妹を連れて旅なんて」

 

 おじさんの話題はノルンの方へ移っていった。ノルンはまだおじさんに慣れていないので怖がって私の背中に隠れてしまった。

 

 「ごめんなさい……ほらノルン、怖くないよ」

 

 「いいんだよ。このおっさんの髭はおっかないもんな」

 

 馬を捜査しているピエールさんがポールさんに言った。

 

 「なんだと?もっかい言ってみろ!」

 

 「きゃーこわーい」

 

 「まぁさっきのは冗談だ。実際、お姉ちゃんいるとはいえ怖いだろうしな」

 

 ピエールさんと芝居をしていたポールさんがこちらを向きながら言った。

 

 「そうですね。私が守ってあげないと……」

 

 ノルンの頭を撫でながら言う。髪は少しパサついて指が所々でひっかかった。

 

 「まぁ、この馬車にいる間は任せな」

 

 ポールさんは真っ白な歯を見せつけ笑った。

 

 食事の時間になったら私の仕事が始まる。集めてもらった薪に火をつける。次に渡された鍋に魔術で水を作って満たした。魔術以外で火を起こすのは大変だし水も限られている。こういう時は一人が水を汲み一人が火を起こすのが相場だと教えてくれた。でも今回は私のおかげでかなり早く準備ができたそう。ポールさんが私の頭をなでながら教えてくれた。

 

 ご飯を食べたらまた動き出す。そして日が暮れた手ごろな場所で野宿をする。森で彷徨っていた時には考えられないくらい順調に、快適に進めていた。

 

 

 2日目

 

 お昼ご飯を食べて少しした頃、私の探知に魔物とは違う気配がひっかかった。5人、こちらへ悪意を向けながらひっそりと近づいている。盗賊だ。

 

 「ポールさん」

 

 「どうした」

 

 「人が森の中から近づいてきている」

 

 その言葉だけで察してくれてマーガレットさんとピエールさんにも合図を送っていた。

 

 各々が武器を手に取り戦闘への準備を整えていた。私も参加しようと剣に手を伸ばすとポールさんが止める。

 

 「お前さんは妹を守れ」

 

 そう言った瞬間、一人が馬を狙い矢を飛ばすのを感じた。私はとっさに飛び出し弾く。

 

 「おいおい……なんで今のが分かった?」

 

 奇襲が失敗したと思った盗賊たちは姿を現す。ご丁寧に全員出てきてくれた。この近くにいるのは5人。少し範囲を広げてももういない。

 

 「荷物を置いていけ。そうすれば見逃してやる」

 

 リーダーらしき人が剣を抜きながら脅してきた。仲間たちは馬車を囲みながらニヤニヤしている。こいつからは気持ちの悪い感情が向けられていて気分が悪かった。

 

 「ふん、渡すわけないだろ」

 

 ポールさんは今まで聞いたことのないような低い声を出し自分の武器を構えた。

 

 「そうか。やっちまえお前ら!!」

 

 リーダーの号令を機に他の人たちも一斉に駆け出した。

 

 

 私の方にも一人来る。木でできた棍棒を持っている。私は剣を抜いた。

 最初の攻撃は体をそらして避けた。お父さんとの稽古でもそうだったが受けに回っては力の差で絶対に負ける。だからまずは避けるのだ。

 

 私の頭を狙った攻撃は当たらず棍棒は地面に刺さる。私はその瞬間に火魔術を使い棍棒を燃やした。まさかの出来事と突然手に伝わる火の熱さに驚いて盗賊は棍棒から手を離してひるんだ。

 

 私はその隙を逃さずに剣神流を使い切りかかる。盗賊はあっという間に気絶した。

 

 周りを見ると基本的にポールさんたちの方が強いみたいだが倒せる決定打がないみたいだった。

 

 ひとまず一番近いマーガレットさんを助けることにする。魔術を使えば遠距離でサポートできるけどルディみたいに正確には使えないので多分味方に当てちゃうから剣でサポートに入る。

 

 鍔迫り合いになっていた盗賊を後ろから袈裟切りした。隙のできた盗賊はそのままマーガレットさんに止めの一撃を入れられた。

 

 ホッと息を吐いたのもつかの間、私を狙う〈声〉が聞こえ体をねじる。先ほどまでいた場所には矢が刺さっていた。最初に撃ってきた弓使いだ。

 

「あいつは私がやるから妹と2人の援護を」

 

 こいつを倒さなきゃ、と思っていたらマーガレットさんが森の方へ走っていた。弓使いを倒しに行った。

 

 私も自分のできることをしなければ。ノルンはまだ存在自体に気が付いていないからセーフ。残り戦っている2人もピエールさんとポールさんに集中しているせいでこちらに攻撃ができる隙がない。なら私がするべきなのは2人の援護。

 

 そう考えていたその時2人とも敵と少し距離を取っていた。

 

 (今だ!)

 

 私は地面に手を置き魔術を発動させる。

 

 「うお」

 

 私は泥沼を作り出した。

 盗賊たちは突然ぬかるんだ足場に意識が持っていかれた上体勢も崩れる。2人はその隙を逃さないでくれた。あっという間に2人の意識を奪い、マーガレットさんも帰ってきたことで私たちは勝利した。

 

 その後、「子供なのに戦わなくていい」と怒られたり「ナイス援護だった」と褒められたりもみくちゃにされた。

 

 

 その事件から丸一日ついに私たちは街に到着した。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想・お気に入り、一言でもいいのでお願いします。

次回は間隔が少し空くかもしれません。次回の投稿楽しみにしてくれると嬉しいです。

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