真剣で命を賭けなさい!   作:ポロロン

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プロローグ

 世界一の男になりたい。そう思ったことはあるだろうか。これまた適当な走り書きをしてしまったものである。

 適当に勉強し、適当に人付き合いし・・・。自身の手元に残ったものは何だったのだろうか。気がついた頃には惨めなことに何も無かった。

 もし・・・もしも・・・。生まれ変わる事ができるなら、何か一つ成し遂げられるような人になりたかった。それは勿論どのようなものでも構わない。まぁ、人の道を外れることはしたくないが。

 

 そう思って気付いた頃には、男は赤子になっていた。文字通り赤ちゃん。ベイビーになっていたのだ。気付いた頃には・・・ということなので、お母さんからスポーン!と出てきた瞬間とかではなかった。

 

「ふおぉ!びっくりした!」

 

 うんこ垂れ流しで泣きじゃくっていた赤子が、突然無表情になってしまったことで、母親と思しき女性が面食らったような顔をして言う。

 親も親で、まぁそういうこともあるのかと考える。それよりもご飯の用意や洗濯もしないといけないのだ。驚きはしたものの、すぐに忘れてしまうほどの多忙さだった。

 

 それだけなら良かったのだが、それが続くと話が変わってくる。

 

 今まで泣くのが仕事です!と言わんばかりの状況だったというのに、その日を境に泣かなくなったのだ。言葉は発するコトは無いが、ただ少しばかり不気味な雰囲気を発しているように思えた。食事の時は子供用椅子前で出待ち。トイレの時はハイハイしてお手洗い前の扉で待機する。それだけでも奇妙なのだが、それよりも1歳未満の子がテレビのニュース番組に傾倒している姿を見たことだろうか。

 何に興味を示すか分からないし・・・。両親は悩む。ウチのコもしかして天才!?と言う考えも至ったが、まだまだ赤子だし・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 早速時が流れる。小学生になる頃。少年は現状を理解していたが、決して口には出さなかった。

 これ、多分アニメか漫画の世界なのだ、と。そう、これは・・・何だったか。宗教的に言うと転生的なものである。

しかし、テレビニュースを見て思ったのは、西暦2000年にもなっていない転生だったことだ。

 転生ではなくタイムスリップということだ。もう意味が分からない。西暦知った時は変な声出たわ。

 それ以降はニュース番組を観る日々。はぇ〜、この時代ってこんな感じだったか〜。あぁ!タイムスリップするなら万馬券でも覚えておくべきだった!

 

 おっといけない。これがアニメか漫画か。それが問題なのである。どうやらこの世界。驚くべきことに最終兵器とも呼ばれる男がいるようだ。

 川神鉄心。地上最強の男。なんか気弾とか出してる特番を見て、あぁ、ここ現実世界じゃないわ。それが分かった。あんな爺さん人間じゃないもん。気弾出すとかサイヤ人じゃん。どうやらこの世界。そんな馬鹿げた人間がゴロゴロいるらしい。だからこそ確信したのだ。

 

 育ててもらっている両親は、奇妙な自身を何とか理解してくれている。この身体で転生する前にいたはずであろう、いわゆる持ち主がどうなったのかは分からない。こんなオッサンが乗っ取ってしまったのだ。この身体を返すことができない以上、いったんは大人しくするしかないのだろう。

 

 ご両親からの紹介で、一度スポーツを嗜んではどうかと催促された。クラブ活動みたいなやつかな?そう思っていたのだが、学校帰りで連れてこられた所は残念ながらクラブ的な生易しいものではなかった。

 

「川神・・・院?」

 

 あの川神鉄心が開いている道場、いや、住込み寺に連れてこられたのである。

 

「本当に良いのかの?」

「えぇ、毎日ニュースで川神鉄心さんが流れると食い入るように見てまして。勿論、音を上げて帰ったり見込みが無いと思えば切り捨てていただいても構いません」

「ふむ、父君。その思いは理解できますがな。正直に言いますと、このお子さんには色々な道が広がっておる。それを川神院で学校の帰りとはいえ、道を狭めても良いものか」

 

 父と川神鉄心が話す。母はそれを見守るような目をして立ち会っていた。残酷な話をしているが、愛ゆえの言葉なのだと理解できる。有り難い話である。

 そうやって後方息子面をしていると、川神鉄心と両親が俺を見た。つまり、子どもの考えを聞きたいということであろう。

 

「お、お手柔らかに」

 

 これは恐らく、人生の分岐点かもしれない。もし、自身の身体の持ち主が復帰したときに備えて鍛えておくのもいいかもしれない。んまぁ、小学生になる子どもなんだから、部活とかクラブ活動的なことしかしないでしょ。楽ちん楽ちん。

 目覚めたらぶくぶくの子だったら悲しいもんな。両親はその答えを聞いて、全くこの子は・・・と、呆れた顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラブ的なものではなかった。いやキツイ。小学校の勉強なんぞたかが知れている。その後の川神院での修行、これなキツイわ。子どもとか関係なく鍛え続ける方針。小学生になったばかりなので、それなりに修行は抑えられているらしい。ただ、これがいけなかった。

 

「オラァ!そんなへっぴり腰してんじゃねぇぞ!」

「押忍!」

「腰落とせ!馬鹿、突きってぇのはよ、お前空気椅子みたいに腰を落としてするんだよ、こう!こう!」

 

 川神院にいた釈迦堂刑部。彼は時折少年に稽古をつけていた。稽古をつけている釈迦堂にルーは咎めるべきかと悩むが・・・。

 

「本当に危険ならば止めに入れば良い」

 

 川神鉄心がルーを咎める。それは少年の意固地な性格が釈迦堂の凶暴な性格を中和しようとしていたからだ。

 その気になれば釈迦堂が本気で少年を痛めつけようとした時は止めに入れる。分かってはいる。分かってはいるのだが・・・。

 

「釈迦堂は突然どうしたんでしょうネ」

「あの子が釈迦堂に食って掛かったそうじゃ」

 

 ほぅ・・・。あの強面に挑むとハ。ルーとしては子どもが叩きのめされないか不安であるが、あの指導に食いついている限り度胸はあるのだろう。

 

「彼を院に入れて良かったですネ」

「本当は住込みしか認めんが、あぁも面白い気を持っておるとな・・・」

 

 川神鉄心とルーの二人は釈迦堂の行動を見ている。あの暴れ馬が子どもに対して物を教えるというのは珍しいというか百代にしか見せなかったものだ。あの少年が百代と同じ才能を持っているわけではないが、何か見出したものがあるのだろうか。

 

「クソぉ!あんな事言わなきゃ良かった・・・!」

「何がロボとーちゃんだ。意味分かんねぇことばっか言って」

 

 足臭そうとかも言ってすみませんでした。でも仕方ないと思うわけですよ。なぁんか、ここいらの人達は聞いたことのあるような声質をしているんだよな。声だけは二児の父親と思ったのに、蓋を開けたら化物だった。

 少年は無茶な練習に対して諦め半分だったが、父母の期待の眼差しには答えなければならない。やれる限りのことはやらないといけないだろう。

 

 

 

 

 

 

 ・・・そう思っていたのに。

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