真剣で命を賭けなさい!   作:ポロロン

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ep8

 ここ最近は平和なものである。いつも通りの鍛錬、いつも通りの授業。あのマルギッテの試合以降からは特段大きな出来事というのは無かった。

 

「フハハハハ―!我、顕現である」

 

 学校からの帰り道。謎の少女が話しかけてきた。隣には、見たことのあるガタイの良い男性もいる。これは恐らく関わってはいけない類いのものである。直感的にではなく控えにいる男を見て判断した。

 いや、待てよ?顕現であるとか言っているが挨拶をされたわけではない。つまり俺に声を掛けてきたわけではないのでは?そう、ボッチの俺に話しかける人など一子と心ちゃんと榊原しかいないのである。

 勝手に自己解釈をして少女と男を素通りしようとしたところ。

 

「まぁ待て赤子よ」

「・・・・・・」

 

 肩を掴まれた。金髪の男、ヒューム・ヘルシング。学園長と同じ最強の男と評される存在である。数多くの技を習得し、多くの挑戦者を屠ってきた。ビームも出せる規格外の男。

 

「何でしょう」

「そこの喫茶店で話そうじゃないか」

 

 男は素通りしようとしたことに対して何を言うまでもなく、脅しをかけてきた。世界最強の男からのご招待である。隣にいる少女、どこか雰囲気が似たような者がいた気がする。

 実際の戦闘を見たことはないが、ヒューム・ヘルシングが噂通りの男であるならば、よっぽどの事が無い限り逃げる事はできないだろう。男の威圧感に飲まれ汗が噴き出している中、喫茶店に入った。

 まだ夏には入っていないが、中は程よく涼しかった。

 

「それで?」

「我はパフェを所望するぞ!」

「・・・」

 

 パフェとブラックコーヒーを頼む。これ誰が奢るのだろうか。店員も異様なスピードでパフェを出してくる。店員のメイド服がやけに目に映った。メイド姿、似たような気配持つ少女。

 

「えーと、すみません。九鬼家の方ですよね?」

「うむ!我の名は九鬼紋白。今日は聞きたいことがあってきたのだ!」

 

 うわ、絶対面倒事だ。九鬼英雄の存在だけでも面倒だと言うのに、何を聞いてくるのだろうか。

 

「川神百代と戦闘したという記録があるが、やつはどれほど力があるのだ?」

「うん?」

 

 俺が川神先輩と戦ったことがあるとか何を言っているのだろうか。川神に一度戻った時に簡単な稽古をしたときの事を言ってるのか。

 

「それは九鬼揚羽さんに聞けば分かるのでは?あの人は一度試合をされてますし・・・。何より・・・」

 

 隣に控えているヒューム・ヘルシングを見る。彼と川神先輩が試合をしたという話を聞いたことは無いが、壁超えなら壁超えの意見が聞けるはずだ。

 

「私は今回参加しないことになっている」

「はぁ・・・」

 

 参加って・・・。

 

「我々はとあるプランを進行しようとしている!」

「川神先輩に関するプランですか。ついにKAWAKAMI波の原理でも調べるんですか?」

 

 ちなみにビーム出せる原理は気らしいのだが。正直有り得ないよね。気を使えるけれども、正直今でも原理が分からない。

 

「いいや、それは気なのだから原理は不要だろう。それよりも、我は川神百代を倒すプランを探してる」

「計画段階としては、始まったばかりだ」

 

 はぇ~。無茶な事をする人もいるもんだ。地球破壊できる存在を倒すだなんて。あの人ブラックホール使えるって聞いたことあるぞ。

 

「対戦相手は用意したが、まだ準備段階でな。今は倒せないという判断になってる」

「今は・・・ねぇ」

「うむ!だから戦闘経験のある者を調べて話を聞いているのだ!」

 

 いや、稽古を試合と思わないで欲しい。それなら風間ファミリーなら毎日毎日付き合ってるのだから、どんな技を使うとか知ってるだろうに。まぁ彼らファミリーが情報を出すとは思えないが。

 

「川神院の技は門外不出だから、教えることはできないよ」

 

 あれが完全回復する存在で、ビーム撃ってブラックホールを使えるとかの話は出てくるのだが、そもそも川神院は門外不出だ。

 

「うーむ・・・」

「一つ良い方法はあるけど」

「方法とは?」

 

 あ、でも参加しないんだっけか。まぁ良いか。とりあえず言ってみよう。

 

「ヒューム・ヘルシングさんに川神学園の先生になってもらえばいいんですよ。そしたら近くで川神先輩の様子を見れるでしょう?あの人変態橋でいつも戦ってるし、稀に決闘もしてるし」

 

 まぁ決闘の言う名の可愛がりなのだが。まぁ学校のイベント関係であの人技使ってる所見たことあるし。以外と情報を探れそうだ。

 

「なるほど!」

「教師になってしまえば、紋様の警護ができなくなってしまうでしょう。他の案を考えては?」

「いいや!更に良い案を思い浮かべたぞ!」

 

 何を言っているのか分からないが、九鬼紋白が思い立ったが吉日と言わんばかりに喫茶店から出ていった。ヒューム・ヘルシングもその後ろに着いていく。まぁ巻き込まれなかっただけ、こちらとしてはラッキーだろう。

 

「ん・・・?」

 

 おいおい、あいつら。まさか会計していないのでは・・・?恐る恐る会計をしようとすると、いつの間にか全額支払われていた。まさかあの金髪さん。あの一瞬で会計を?

 とにかく嵐が去った後、また一人悲しく帰宅をする。全く、試合と鍛錬を間違えるだなんて、本当に川神先輩に勝とうと思ってるのだろうか。




 板垣竜平はいつも通り親不孝通りの寂れたビルの一角にいた。周りは薬物でハッピー状態になった連中ばかりである。いつもなら表立って出ようとはしないが、最近の親不孝通りは過ごしにくい状態になっていた。
 ひょっとこの仮面をつけている襲撃者だけでなく、執事やメイドやらと意味不明な輩が秩序の名のもとに制裁を加えているのだ。

 今回は襲撃者を狙うための撒き餌を用意した。ヤツは現段階では中毒者と売人しか狙っていない。ならばわざわざ探すのではなく来てもらうことにしたのだ。これもマロードの指示だった。板垣竜平の傍にいるのは板垣辰子、板垣亜巳、板垣天使の3姉妹だ。竜平は一人で大丈夫だと豪語していたが、相手はどうやら武芸者らしい。安全策として4人で仕留めるようにと指示を受けている。

 誰か一人が悲鳴を上げた。中毒者が倒れたのを見て悲鳴が上がったらしい。どうやら案外簡単に来てくれたようだ。天使がゴルフクラブを持ち意気揚々と攻めにいく。ひょっとこの仮面は微動だにしない。天使が頭を撃ち抜こうとゴルフクラブを掲げた瞬間、いきなり後ろに下がった。
 ひょっとこの仮面はそれを見て、周囲の中毒者を気絶させていく。

「何をしてるんだい、天」
「あいつ・・・師匠と似たような気をしてやがる」

 へぇ、亜巳はひょっとこを見た。少しの距離しか開いていないが、気を感じない。ただ、天使は何かを感じ取ったようだ。辰子と亜巳、そして竜平はひょっとこを囲う。逃げる素振りすら見せないことから、ひょっとこは負けるとは思っていないようだ。
 気を感じ取れる3姉妹は、じりじりと距離を近づける度に敵の気が禍々しいモノであると身体全体が警告を出していた。

「辰、本気で―――」
「お、この娘が一番危険っぽいな」

 亜巳が辰子にリミッターを解除しようと声を掛けた瞬間、ひょっとこが動いた。

「超加速」
「・・・っ!」

 辰子は狙われていると察知し、ほぼ直感的に後ろを振り向いた。超加速の速度にギリギリ目が着いていったのである。

「富士砕き!」

 ひょっとこから人間が出すべきではないエネルギー波が辰子を貫いた。ビルの壁がエネルギー波に当たった瞬間爆散する。一番強い辰子が負けた、そう理解した瞬間に竜平が後ろから襲撃をする。死角からの攻撃を、まるで見えているかのようにひょっとこは簡単に避けた。
 竜平は自身の気を感知することはできないし、相手の気も分からない。ただ人一倍の度胸があった。だからこそ攻撃を仕掛けることができたのだが・・・。

「川神流!蠍撃ち!」

 腹に一撃を入れられた。内臓を破壊する技、それは師匠である男が使っていた技に似たものだった。強く撃ち込まれたせいか、ゆっくりと意識が薄れていく。薄れていく中、他の姉妹たちも同様に沈められていく様子が見えた。
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