ZOIDS sequel 二人の英雄   作:なゆ太

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バタバタしていて更新が遅れてすみません。
会議シーンって結構好きなんですが、書くの難しいですね。


第4話 会議

 ソルラの街では、ロウの言葉により五大氏族の族長が集まり、緊急会議の開催が目前となっていた。

 緊張感が漂う中、会議室に向かう直前で、カイは父親に呼び出される。

「なんでしょう、父上。」

 不安を隠しきれない表情のカイに対して、ロウは落ち着いた声で言う。

「この地には間もなく、嵐がやってくる。お前はベルル族を率いる身。覚悟を決めておけ。」

「はい。…でも、そういうお話なら、なぜ兄さんを同席させないのですか?」

「あやつ自身が嵐の一つの原因ではあるからな。…お前も薄々勘付いておるだろう。」

 その言葉にカイは戸惑ったような表情を見せる。

「お前は昔からゾイドにはあまり興味を示さなかったが…外の世界の情報には人一倍興味を示した。あやつのことも…」

「父上!」

 カイが上げた声に、ロウは一瞬驚いた顔をみせる。気性の穏やかなカイがこんな大声を出すのは、確かに驚くべきことだった。

「ジュード兄さんはオレのたった一人の兄です。血は繋がっていなくとも、オレにゾイドの乗り方を教え、いつも守ってくれた人です。そしてもちろん、我々ベルル族の誇りある一員です。その事実だけで、オレには十分です。」

 一気にそう言い終えてから、カイは少し落ち着いた口調で続ける。

「それに…父上の仰る通り、俺はゾイド乗りとしては凡庸な人間です。幾つかの戦いで勝てたのは、兄さんがゾイド乗りとしても指揮官としても優れていたからです。あの人を失ったら、どの道ベルル族はお終いです。名誉のためにも、命のためにも、取るべき道は自ずと明らかだと思います。」

 カイの言葉に、ロウはしばし黙ってから、ふっと笑って言う。

「お前に説得される日が来るとは思わなかった。いつまでも子供では無いのだな。」

 それから、ロウは覚悟を決めたような表情を見せて呟く。

「…我らは、我らの誓いを守ろう。誇りのためにも、生き延びるためにも…」

 

「急な呼びかけにも関わらず、今日はよく集まってくれた。まずは礼を言わせて頂こう。」

 ロウがそう言って席を立って一礼し、隣に並ぶレイヴンとカイもそれに倣う。ロウの着席に合わせて席につきながら、レイヴンは会議室の中を見回す。ケイオン半島五大氏族…ベルル族、ロウラン族、レムリア族、ネスト族、ジャシー族の代表が一堂に会するのはなかなかに壮観だった。

「あなたがあれほど強く呼びかけをなさるとは珍しい…さぞ、一大事なのでしょうな。」

 ロウラン族の族長、ホウメイが丁重だが少し冷ややかさを感じる声で言う。レイヴンは、いささか居心地の悪さを感じながらも、出来るだけ取り澄ました表情で顔を上げる。

「五日前、ガイロス帝国の特使がレウス山脈の我が氏族の商館に接触を図ってきた。本土で続発している軍基地襲撃事件の犯人が半島に潜伏している可能性があるため、捜索部隊を派遣したいとのことだった。…捜索範囲は、半島全域とのことだ。」

「なっ…」

 会議の出席者に、一様に驚きが走る。「本土」の勢力がここまではっきりと半島に介入するのは、数十年ぶりのことだ。驚くのも無理はない。しかし、その原因が恐らく自分にあると分かっているレイヴンとしては、無表情を取り繕いながらもその内心は苦い。

「帝国及び共和国は、平和的交渉によりこの申し出が受け入れられるよう努力するが、犯人捜索のためにはあらゆる手段を行使する用意があると。特使からは、そのような発言があった。」

「それでは、まるで脅迫ではないか!」

 レムリア族の代表がそう言うと、ロウも微かに頷いてから続ける。

「私も同感だ。しかし、帝国の決意は相当強いようだ。この回答、私の一存では決められん。よって、皆さんに集まってもらった。」

「我らはこの話をいま聞いたばかり。まずはロウ殿のお考えを伺いたいですな。」

 ホウメイの言葉に、ロウは落ち着いた表情で他の参加者を一瞥してから、ゆっくりと口を開く。

「私個人としては、断固このような申し出は拒絶すべきだと考えている。今更言うことでもないが、この地には様々な理由で本土から逃れた来た者が多く住む。本土から罪人が逃げ込んだ可能性があるからと捜索隊の受け入れなど認めたら、この地はあっという間に蹂躙されてしまうだろう。そもそも、一方的にこのような要求を突きつけ、脅迫まがいの物言いで受け入れを迫るなど、あまりにも我らを見下している。この地に住む者の矜持にかけても、本土の要求に屈するべきではない。」

 ロウの言葉を、レイヴンは微かに俯きながら聞く。この結論は、会議の直前に聞かされた。それを聞いて、その場で何も言えなかったし、無論この場でも言えない。

 本土の要求を拒絶すると言うのは、レイヴンにとって悪い話ではない。もし捜索隊などが来たら、半島最大の都市であるソルラは真っ先に狙われ、一貫の終わりだろう。だから、ロウの結論は歓迎すべきものだ。

 しかし、一方で危惧もある。本土が「本気」なのではないかということだ。元帝国軍人であるレイヴンは、帝国軍や共和国軍がどれだけ強大な存在かよく分かっていたし、個人的な経緯もあってガーディアンフォースの精強さも身に染みて知っている。地の利があると言っても、どこまで対抗できるか…

「レムリア族はロウ殿のお考えに賛同します。このような要求に屈すれば、我々は本土の傀儡と化してしまう。」

「我がネスト族も賛成します!本土の者達など、一歩たりとも半島に入れるべきではない。半島全域の捜索など、絶対に認められない!」

 ベルル族と伝統的な同盟関係にあるレムリア族の代表が賛意を示すと、ネスト族の代表がそれに続く。ネスト族は宗教的な理由から本土を追放された者達がその祖となっているため、本土に対する敵愾心は一際強い。

「半島を荒らされたくないというお気持ちは分かります。しかし、軽々に結論を出すべきではないのではないでしょうか。本土と全面対決となれば、どれほどの被害が出るか分かりません。」

 ロウラン族のホウメイがそう言うと、ジャシー族の代表も頷いて言う。

「我々としては、招かれざる客を歓迎はしないが、そのために争う必要があるかは疑問だ。我がジャシー族には、よそ者は一人もいない。探られて困るものもない。」

 ジャシー族の代表はそう言って、レイヴンに冷ややかな視線を向ける。半島奥地に暮らすジャシー族は、他の氏族と比べても閉鎖性が強い。交易を生業とし、半島の氏族の中では比較的開放的なベルル族とは、元々そりが合わない。

「何を悠長なことを言っているのか!罪人の捜索などと言っているが、半島侵攻に向けた偵察かもしれないではないか。丸裸にされて地の利を失ったら、勝てる戦も勝てなくなるぞ!」

 ジャシー族の言葉にネスト族が激しく反発する。それに更にジャシー族が反論しようとするが、ロウは手で制して言う。

「我がベルル族は長く本土と交易している。元より、交渉を拒否する気持ちなどない。しかし、本土の要求が法外なものとなれば話は別だ。」

「しかし、帝国が求めているのは罪人の捜索でしょう。もし我々の方でその罪人を見つけ、引き渡すことが出来れば、先方も納得するのでは?」

 ホウメイの言葉に、レイヴンは内心ぎくりとする。実際、それは最も効果的で穏便な解決策だった。

「帝国側は、容疑者に支援者がいることも想定しているようだ。まとめて摘発するためにも、捜索部隊を出したいと。…そもそも彼らは、我々を信用していないからな。」

「それでも、交渉次第で妥協点を見つけられるのではないでしょうか。結論を出すには早すぎると思いますが。」

 食い下がるホウメイに、ロウも動じずに言う。

「交渉が始まれば、我らの立場の違いがすぐ露呈するだろう。向こうは当然、そこを突いてくる。元より、我らは帝国や共和国に比べれば遥かに弱小な存在。団結出来ねば、赤子の手をひねるように潰されてしまう。それを避けるためには、我らが一致してこの要求を跳ね除ける必要がある。それが結果的に、争いを避けることにも繋がるのではないか。」

 ロウの理屈はある意味で強弁と言えるところもあったが、堂々とした口調も相まってなかなかの説得力がある。ホウメイは少し気圧されたような顔を見せながらも、尚も論陣を張る。

「理屈は分かりますが、なぜそこまで強く交渉を拒絶されるのか。あなた方ベルル族こそ、本土との対立で失うものが多いはず。そのお考えをお聞かせ願いたいものです。」

「言うまでもなく、本土と対立して、我が一族には何の益もない。しかしそれでも、この地で我々皆が生きていくために、これが最善の道だと考える。」

「本当にそれだけが理由ですかな。」

 ホウメイはそう言うと、レイヴンの方を見て続ける。

「ご嫡男のカイ殿の義理の兄君であるジュード殿は、5年前にどこかから忽然といらっしゃった。…今回の件での強硬姿勢は、それが一因ではないのですか。」

 その言葉と共に、全員の視線がレイヴンとロウに集まる。ホウメイのやり口は卑劣だったが、間違いなく効果的だった。結局のところ、皆内心では薄々思っていたことを口にしたのだから。

「確かに、この者は血族ではない。しかし、この5年、献身的に戦い、愚息をよく鍛えてくれた。いま、この者は完全に一族の一員となった。それを疑うのであれば、それは我が一族への侮辱とみなす。ホウメイ殿はその覚悟がお有りか。」

「いえ、そのようなつもりは…」

 ロウの気迫に、口達者なホウメイも思わず視線を逸らす。そんなホウメイを見ながら、ロウは静かな口調で言う。

「時にホウメイ殿。5年前と言えば、我が一族とそなたの一族の間で争いがあった年。あの戦いでロウラン族は敗れ、お主と、当時の族長であったコウダイ殿は我が部隊に包囲された。あの時、二人して砂塵となってもおかしくなかったのだ。それが今でも永らえている、その理由はご存知か。」

「…存じません。父は何も言いませんでしたので…」

「あの戦いの後…お主の父は単身、この城を訪れたのだ。全ての責任は自分にある、命を賭して詫びるので、どうか息子のお主は助けて欲しいと。そして、もし許されるなら、半年後に控えるお主の成人の儀を見届けてから死にたいと。私も人の親だ。コウダイ殿の気持ちは痛いほど分かる。だから、コウダイ殿の引退と賠償金の支払いのみという、寛大な条件で和睦したのだ。」

 ロウの発言を、会場中の誰もが黙って聞き入っている。レイヴンにとっても初耳だ。

「これはコウダイ殿と私の間の事柄。他言するつもりはなかった。だが、敢えて言おう。いまの私は、ある意味で5年前のコウダイ殿と同じ立場だ。我が息子、カイは間もなく成人。だが、5年前のホウメイ殿と比べても、カイは些か頼りない。息子には、守り導く兄が必要なのだ。どうか私の気持ちを汲んでくれないだろうか。」

 その言葉に、全員の視線がホウメイに集まる。大きな恩があると明かしながら、敢えて下手に出る…ロウの交渉術は巧みであり、年若いホウメイに逃げ場を無くしてしまう。ホウメイは一瞬天を仰ぐような仕草を見せてから頭を下げる。

「…分かりました。大恩あるロウ殿がそこまで仰るなら、ロウラン族は従いましょう。」

「感謝する。他の皆様も、依存ありませんかな。」

 レムリア族、ネスト族の代表がすぐに頷き、ジャシー族の代表も渋々といった様子で頷く。

「では、我ら五氏族は団結して、帝国による不当な要求を断固として拒絶する。その伝達は、私が代表して行おう。」

 ロウはそう言うと、部下に命じて書類を用意する。帝国の要求を拒絶する旨を記した文書に、五人の代表がサインして、会議はお開きとなった。

 

「ロウ殿。ご迷惑をお掛けしました。」

 会議が終わってから、レイヴンはロウに深々と頭を下げる。レイヴンを守るためにロウが言葉を尽くしたのは明らかで、感謝の気持ちは無論あったが、あまりいい言葉が出てこない。

「お主を我が一族に迎えると決めたのは私だ。気にせずとも良い。だが、もし今日のことに恩を感じているなら…これからも愚息のことを守ってやってくれ。あれは聡いところもあるが、戦士としては半人前だ。お主の助けが必要だ。」

「全力を尽くします。」

 レイヴンが短く答えると、ロウは満足した表情で自室に戻っていく。その背中を見送ってから、思わず深々と吐息を吐き、どっと疲れたなと考えていると、カイが駆け寄ってくる音が聞こえる。

「兄さん!父上は何か言ってましたか?」

 なぜか妙に不安げなカイの表情を疑問に思いながら、「お前のことを守れと言われただけだ」と答える。カイは安堵した表情を見せてから、窓の外に視線を向ける。

「…戦いになるのでしょうか。」

「本土の出方次第だろうな。」

 淡々と答えるレイヴンに対して、カイは勢い込んで言う。

「でも、こちらには地の利があるし…最強のゾイド乗りである兄さんがいる。負けるはずがありませんよね!」

「…いつも言っているが、油断が一番の敵だ。本土にも強いゾイド乗りはいるだろうしな。」

 バンの姿を脳裏に浮かべながら、思わず手のひらを握りしめる。あの傷は、今でも完全には消えていない。

「もし戦いになったら、俺の傍を離れるなよ。お父上から、お前のことを任されたからな。」

「勿論です!兄さんの隣で、武勲を上げてみせます!」

「余計なことを考えるな。お前は生き延びることが先決だ。」

 そう言って嗜めてから、レイヴンも窓の外を見やる。窓の向こうには、レウス山脈が見える。その向こうで、本土の軍が…バン・フライハイトが牙を研いでいるのだろうか。




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