鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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二十話 氷雨、語る

 屋上。

 

 夕日がきれいに空を染めるこの時間。それが見えるこの場所は何ともロマンチックだと思う。

 

 感動的だな。だが無意味だ。

 

 何で無意味かって? それは唐変木の一夏だからだよ!! こんなところで告白したって意味ないでしょ!

 

「呼び出してどうしたんだ、箒」

 

「…………」

 

 一夏が来たことを一瞥し確認した後、視線を落とし、一夏と目を合わせようとしない。恥ずかしがっているみたいだ。

 

「どうして篠ノ之さんは不機嫌そうなの?」

 

「え、別に不機嫌じゃないよ。ただ、緊張して表情が強張ってるだけだよ」

 

「へ~、さすがひさめん、お兄ちゃんだね」

 

「それほどでもある」

 

「あれ既視感が」

 

 シャルはループでもしてるのかな? これが……シュタインズ・ゲートの選択だよ。

 

「あの……箒?」

 

「来週の学年別トーナメント」

 

 箒がぼそりと呟く。

 

「ん? トーナメントがどうかしたのか?」

 

「わ、私が優勝したら……その……」

 

 そこまで言って、箒は口を噤む。今の空のような朱に頬を染め、少しして決意したように顔を上げ、一夏を見据える。

 

「……つ」

 

「つ?」

 

「氷雨、静かに」

 

 すいません。

 

「つ、付き合ってもらう!」

 

 言ったぁぁ!! この上ないくらいあからさまに言ったああ! でも、告白ってそういうもんだっけぇぇえ!!

 

 一夏も目が点になってるよ。そりゃね、一夏視点ではこんなところに呼び出して、言われたことが『買い物に』付き合ってもらうだもんね。そりゃそうなるよ。

 

「て、やばい。さっさと撤退しよう」

 

「え、う、うん」

 

 なんでシャルまで紅いのさ。

 

「おお~、しののん、やる~」

 

「……言っておくけど、のほほんさん。このことをみんなに言ったら、怒るからね」

 

「うわ~、ひさめん怖~い」

 

 後日、優勝者が一夏と付き合えるという噂が広まったのは言うまでもなかった。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 食堂。

 

「…………」

 

「いや~、私は何も言ってないよ? ただ、しののんがおりむーと一緒に屋上に居たっていったら、勝手に誘導されちゃったのだ~」

 

「のだ~……じゃないよ、のほほほんさん」

 

「一個多いよ、ひさめん」

 

「失礼、噛みました」

 

「わざとだね~」

 

「かみまみた」

 

「わざとじゃないかも?」

 

「なにこれ」

 

 シャルの言い分はもっともだ。けれど、僕はこの情報漏洩の疑いのある大佐を尋問にかけなければならないのだ!

 

「妹の告白がばらされる。これを問い詰めなくて、何が兄ですか!」

 

「……元凶は氷雨だよね」

 

「僕は兄として妹の秘密を! ……え、僕?」

 

 いやいや。僕悪いことしてないよね。

 

「そうだー。ひさめんが覗きに行こうっていうのが悪いんだよ~」

 

「いやいや、あれは兄として当然の責務だし――」

 

 ……いや、まて。客観的に見てみよう。

 

 ………………アウト。

 

「あ、ごめん。僕が悪いわ」

 

「あっさり認めたね」

 

 僕は正気に戻った。ごめんよ、箒。こんなダメなお兄ちゃんで。

 

「まあ、それはいいんだけどさ」

 

「いいのかな?」

 

「いいみたいだね~」

 

 その噂には続きがあるのだ。

 

「優勝賞品は一夏だけじゃなくてね」

 

「優勝賞品って……」

 

「まあ、言い方はこの際置いといて。で、優勝したら付き合えるって噂にさ、僕とシャルも入ってるんだよね」

 

「ええっ!」

 

「そうだったね~」

 

 シャルは原作通りだから分かる。なんで僕も?

 

 いや、なんでもくそもないなぁ。うすうす気づいてたけど、どうやら僕にもそこそこの人気があるみたいだ。ぶっちゃけ僕に一夏以上の魅力はないんだけどね~。あ、ギャグのセンスは一夏よりあると思うよ! ただ、一夏の「事実は小説よりも奇なり、ラノベは小説よりも絵なり」っていうのは笑ったけどね。

 

「そ、それはまずいよ!」

 

「ん? そこまで切迫した問題じゃないでしょ? どうせ一年で優勝は僕だし」

 

「ひさめん、いうね~」

 

 まあ、それは冗談としても、極論はそうだよね。優勝候補は専用機持ちに限るし、ラウラ以外は一夏に行くだろうし、ラウラの場合はまだそういうことに興味はないだろうからね。

 

「……それもそうだね」

 

「あれ? 納得しちゃうんだ」

 

 シャルからも突っ込みを受けるものと思ったよ。

 

「うん。だって氷雨だもんね」

 

「……うん?」

 

 まあ、よく意味は分からないけど、納得してもらえるならそれでいいか。

 

「でも、氷雨はあのボーデヴィッヒさんのAIC攻略できるの?」

 

「え? あれはまあ、懐に入っちゃえば発動させる暇与えないし、大丈夫なんじゃないかな?」

 

 まあ、そこに行くまでで捕まっちゃうとジエンドだけどね。

 

「あ、お昼休み終わりそうだね」

 

「そろそろ戻ろうか」

 

「おー」

 

 ちなみに昼食は鯖味噌定食だった。うまかった~。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 噂話をペイルライダーと共にいろいろと聞き耳を立てている。

 

「なんかすごいね。三人とまとめて付き合えるとかいう話まであるよ?」

 

『逆ハーレムですか。そういうのはお花畑の頭の中にとどめておいてほしいですね』

 

「あ、ええと……なんかごめんなさい」

 

 この作品もそういう罵倒の対象だと思うんだけど。鈴ちゃんといちゃいちゃしたいって……。ん? その割には未だに出てきてくれないんですが。

 

『……その中国の代表候補とはどのような人物なのですか?』

 

「え?」

 

 ペイルライダーからいきなりの質問にびっくりする。

 

『時折思考に上がってきていますが、そんなに好きなのですか?』

 

「ちょっと僕にプライベートとかないの?」

 

『必要ですか?』

 

「いや、まあ、ペイルライダーならいいけどさ」

 

 なんたって相棒だからね。ちなみに僕は亀山くんが一番よかったと思う。頭脳系と肉体系が合わさり最強に見える。僕とペイルライダーはどっちも亀山くんだけどね。

 

『……なんでそう嬉しいことを』

 

「え、なんて?」

 

 音量小さすぎて聞き取れないよ。

 

『何でもありません。しかし、メモリーには会った記録がないのですが』

 

「あ、うん。まだあったことないよ」

 

『? それではなぜ?』

 

 なんて答えるのがベターなのかな? ペイルライダーになら転生したことを言ってしまってもいい気がするけど……。

 

「あ、今の思考も聞こえた?」

 

『いえ。私に聞こえるのは特別強い思いに留まります。ですので普通の思考は聞こえません』

 

 なんと都合のいい設定だ。さすが天災、げふんげふん。

 

『篠ノ之博士に報告します』

 

「ほんと都合がいいね!」

 

 なんでそんなとこだけ聞こえてるのさ。

 

『冗談です』

 

「抑揚がないからわかりづらいよ……」

 

『それよりも先ほどの答えはいかに?』

 

 先ほどの……なんで好きかって?

 

「前世からの宿命かな?」

 

『敵なのですか?』

 

 いや違うよ。

 

『それで、その鈴という人物はどのような方なのですか?』

 

 え、鈴ちゃんがどんな娘かって?

 

「鈴ちゃんは一年で中国の代表候補生に成り上がった天才少女なんだけど、それを鼻にかけることない明るくて元気で快活な性格で、周りを笑顔にしてくれて、人を貶めるようなことを言わない誠実な心の持ち主で、容姿は小さくて可愛いツインテールの似合う女の子なんだけど、小さな胸のことを気にしてたり、あ、でも全然コンプレックスに感じる必要はないと思うんだけど、そういうところを気にする女の子らしさも魅力の一つで、それでいてその小さな体に似合わずしっかり者で行動力があって、それにぶっちゃけ貧乳はステータスだと思うので――」

 

『うるさいです』

 

「ええー」

 

 聞いてきたのはそっちなのに。

 

『よく見ているのですね、会ったこともないのに』

 

 まあね。会ったことないけど、鈴ちゃんを一方的に見つめてたよ。あれ? ある意味ストーカー?

 

『氷雨は時折私の知らない場所にいるように見えます』

 

「そうかな?」

 

 転生前の原作知識があるからね。

 

『……どこかに消えたり、しないですよね』

 

「……? さすがにそんなことはないよ」

 

 

 

 

「そういえば二組に転校生が来るらしいよ」

 

「へーそうなんだー」

 

「どんなこ?」

 

「中国の代表候補生なんだって」

 

『…………』

 

 ペイルライダーは己の胸に生まれた少し小さな感情によって、その声を氷雨から遮断した。

 

 




あ、あれ? これはまさか……

次回、『城之内死す』
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