鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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お久しぶりです


三話 カワルミライ

 ???

 

 ここは何処だろう。

 

 なんだか暖かい場所だね。心が落ち着く。先を見ても曖昧な暖色系の靄が視界に広がるばかり。なんだか陽に包まれているような気分だ。

 

 あれ? あそこに居るのは誰だろう。

 

 気品のある佇まいの少女。

 

 溢れる光が眩しいからか、この場所の視界が曖昧だからか、少女の顔の細かい所はよく見えない。

 

 ただ、少女の顔はこちらに向けられ、僕を案じてくれているようだ。自意識過剰かな? 分かんないけど、そんな気がするんだ。

 

 そんな場所に立つ僕はどうしたんだろう。たしか、食堂でご飯を食べていたような……。いや、喉を通らなかったから食べれてはいないね。恋って言うのは存外難しいものなんだね。

 

 目の前に広がる風景が食堂には見えない。と言うことはここは現実ではないんだろう。

 

選択肢

 

 戻る

 

 留まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◇   ◇   ◇

 

 なら戻ろう。居心地はいいし、なにも考える必要はないけど、ここに長居はできない。

 

 だって、早く鈴ちゃんに謝らないといけないからね。あの場ではすぐに口に出すことができなかった。嫌悪を含んだ眼差しを向けられた瞬間、胸が張り裂けそうになって、動機が高まり、言葉はついに出てこなかった。思考が停止し、その痛みを味わい続け、呑み込んだ。でも消化しきる前に感情は涙になって溢れてしまった。だけど、泣きたいのは僕ではないから、もう行かなきゃ。

 

「行くのか」

 

 少女は残念そうな声をだす。顔は見えないけど、寂しげな雰囲気を漂わせる。

 

「うん。ちょっと現実逃避し過ぎたね」

 

 一回フラれたからなんだというんだ。そもそも、好感度0じゃ、成功するはずないよね。

 

「いつまでもうじうじしててもしょうがないしね」

 

「そうか。それは氷雨らしいな」

 

 その声に懐かしさを覚え、思い出す。

 

「ありがとう、蒼騎士。僕はいくね」

 

「ああ。私はお前の剣だ。いかなる時も先の道を切り開いてみせよう」

 

 これが素の蒼騎士だ。まさに女騎士って感じでかたい。でも今はそれが心強い。

 

 僕はゆっくりと目をつぶる。瞼の裏には残光が残るも、それも次第に消えていき、僕の意識はまどろみに溶けていった。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 保健室。

 

 目を覚ますと、知らない天井があった。

 

 このセリフはいつか言ってみたかったんだよね。でもまさか、失恋って図星を指摘された衝撃で気を失ってしまうとは……自分のメンタルの弱さにびっくりだよ。

 

「! 氷雨、気が付いたのか!」

 

 ベッドの隣で座っていた箒が僕の立ち上がりこちらを伺う。その両手は僕の手を握っていて、温もりが何ともうれしい。何度かその握られている左手で箒の手をにぎにぎと確かめ、笑う。

 

「心配かけてごめんね、箒。ありがと」

 

「兄妹なのだから当然だろう」

 

 箒が優しげに見つめてくる。緊張が解けて安堵しているようにも見える。ほんとに心配をかけていたみたいだ。それもそうか。いきなり兄が失神したんだもんね。

 

「せっかくの一夏との夕食を邪魔してごめんね」

 

「軽口を叩けるくらいには回復したようだな」

 

 左手を握る手に力が込められる。締め付けられるその握力は剣道で培われた全国一位のそれだ。めちゃくちゃ痛い。

 

「……それでもやはり全快ではないのか」

 

 僕がリアクションを取らなかったから、箒はそう感じ取ったのだろう。

 

「まあね。まだ、何も解決してないから」

 

 とりあえず、マイナスの好感度を零にするところまでいかないと、始まってすらいないからね。それに、ひどいことを言ってしまったんだから、謝るのは当然だ。

 

「何があったのか、話してくれないか?」

 

 恰好のいい話じゃないから話したくないんだけど、心配かけちゃったからなぁ……。

 

「失恋しただけだよ」

 

 かと言ってすべてを話すわけにもいかない。もしそれが一夏の耳に入っちゃったら、鈴ちゃんに迷惑がかかるからね。

 

 箒は僕の答えが何か薄々感じ取っていたのか、さほどのリアクションもなく頷いた。それはそれで、なんだかさみしいね。あれ、僕、芸人みたいだね。

 

「そうか。セシリアは当たっていたのだな」

 

 そのタイミングだしね。僕が気を失ったのって。

 

「どうせ、氷雨のことだ。その告白も非があったのだろう」

 

「さすが僕の妹だなぁ」

 

 正解した箒の頭を撫でる。と同時にぺしりと頭をはたく。

 

「もう少し兄を労わってよ」

 

「その必要があるのか?」

 

 なんてこった。気を失った兄ですら労わる必要がないと判断するとは……。

 

 そんな風に項垂れると、不意に頭に手が乗っかり、僕の髪を撫でた。少しくすぐったいけど、その手に安心感を覚える。ずっと剣道をやってきて掌の皮は固くなった箒だけど、優しくなでる手はやはり女の子のそれだった。

 

「私は、そんなものがなくとも氷雨が立ち直ることを知っている。だから、信じていつも通り接しているだけだ。何も問題はない」

 

 そんな風に素直な感情を伝えてくれている時点で、気を使ってくれているのはバレバレなんだけどね。

 

 箒のやさしさに僕は微笑みで答える。まだ、仮面のような仮初めの表情だけど、僕は兄なんだ。妹の信頼を裏切るようなことは絶対したくない。だから、早く立ち直ろう。そう決心させてくれた箒には感謝だね。

 

「ありがとう、箒」

 

「しつこいぞ、氷雨。兄妹なら当然だ」

 

 そんな会話に割って入るように、保健室の扉が開く音が聞こえた。

 

 その方向に目を向けると入ってきたのは僕のクラスの担任である千冬さんであった。

 

「意識は戻っているようだな」

 

「あ、ちふ……織斑先生、お騒がせしました」

 

 ここで千冬さんなんて言ってまた殴られたら堪ったもんじゃないので、反射的に訂正する。だが、千冬さんはそれについて別にいいと言ってくる。

 

「ここには担任としてもあるが、個人的にお前の心配をしてきただけだ。名前で呼ばれたところで咎めたりはしない」

 

 あ、千冬さん心配してきてくれたんだ。ああ、弱っている時にこういつもされない優しさに触れるとすごくうれしくなっちゃうんだけど。涙出てきそう。

 

「だが、その様子なら体は大丈夫のようだな」

 

「そうですね。さすが千冬さんですね」

 

 体は、と言っているあたり、本当に心が読めるんじゃないかというくらいの洞察眼があるね。あの眼にどれだけ剣の動きを読まれたことか。

 

「何があったというのは聞かん。明日の授業も無理する必要はない。ゆっくり休んで回復に努めろ」

 

 千冬さんの気遣いはうれしいけれど、明日は休むわけにはいかない。僕の回復は休息をとるだけでなせるような類のものじゃないからだ。 

 

「いや、大丈夫です。明日も行きます」

 

「そうか」

 

 そういうと、手に持っていた紙袋を僕に渡してきた。

 

「だが、今日のうちはここで休んでいろ。鞄は一夏にでも届けさせる」

 

 中には僕の寝巻が入っていた。

 

「千冬さん、勝手に鞄漁らないで下さいよ」

 

「気にするほどでもあるまい。それとも、見られて困るものでも入っているのか?」

 

 え、思春期男子ですよ? 入っていないとお思いで?

 

 でも実際には何も持ってないんだよね。ほぼ女子高のIS学園にそんなもの持ち込む勇気はないよ。

 

 箒が疑うような眼で僕を見てくる。持ってないよという意思を表示するように首を振るも、信じ切ってはもらえないみたい。兄を信じているんじゃなかったっけ?

 

「箒ももう出るぞ。もうすぐ消灯時間だ」

 

「はい。分かりました」

 

 二人は部屋を後にする。

 

 出る前に千冬さんは僕に休むよう念を押し、箒は手を振ってまた明日とあいさつをしていった。

 




選択肢(選択させるとは言っていない

あ、もし留まるを選んでも起きるので作品は変わらず進みます。
ただし、その場合ヒロインはペイルライダーになりますけどね


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