鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
自室。
明日は鈴ちゃんと買い物。
いや~、すごく楽しみだね。どんな服を着ていこうかな? て、僕着ていく服がないよ!
生前からそうだけど、ファッションなんて気にしなかったし、お母さんが買ってきた服を着て過ごしてたから服を選ぶって言う行為すらしたことが……。
「これはまずいよ」
「笑顔になったり、絶望した顔になったり忙しそうだね。何かあったの?」
「あ、シャル」
一夏と共に特訓してたはずだけど、もう帰ってきてたんだね。
「特訓は終わったの?」
「うん。僕は先に帰ってきたんだ。一夏はまだやってるんじゃないかな?」
「ああ、瞬時加速の練習?」
確かにあれは難しい部類ではある。というよりも、あれは力技であるが故に制御が難しいという感じで、加速だけならできるけど、それを生かすのにそれなりの技術がいるんだよね。
「うん。僕も付き合ってやってみたけど、結構難しいね」
「だよね」
そう言うと、シャルは鞄から着替えを取り出し、シャワールームに消えていく。あ、シャルは特訓の後で疲れてるだろうし、飲み物でも用意してあげようかな。
冷蔵庫に向かう。中には冷えた麦茶があるけど、これで良いかな?
コップに注いで机に置く。自分の分を飲み干して追加で注ぐ。それを机に置いて僕はまた思案の続きをした。
着て行く服はもう制服でいいや。学生の特権だよね。……いや待てよ。それはあからさまに襲って下さいと言わんばかりじゃないか? 話題の男性IS操縦者……誘拐すれば利用価値は腐るほどある。
僕だけならIS起動して簡単に撃退できるけど、明日は鈴ちゃんやラウラもいる。鈴ちゃんに迷惑をかけるのは嫌だし、ラウラに至っては誘拐犯の方の身を案じる必要性も感じてしまうよ。
「うん。制服は無しだ」
でも待てよ。僕は制服じゃなくても、向こうは制服で来るかもしれない。ラウラなんて私服で来るイメージがないし……となると調和を乱さないように制服の方がいいのでは?
私服の僕の横に制服の女子学生……犯罪臭がするのはなぜだろう。これは通報待ったなしだね!
「となると取れる方法は一つだけか……」
結論が出たあたりでシャルがシャワーを終え、出てくる。この後も食堂に出るので、シャルはまだコルセットを巻いている。
にも関わらず、その湿った髪からは艶やかな色気が溢れている。やっぱりこれを男と言い張るのは無茶があったんじゃないですか、デュノア社さん。
「あ、お茶入れてくれたんだ。ありがとう、氷雨」
「いやいや、ただ冷蔵庫のを注いだだけだからお礼を言われるようなことじゃないよ」
シャルはコップを取り、口を付ける。……って、あ。
「おいしい」
一息をついてシャルはコップを机に置く。
「シャル、ごめん」
「へ? いきなりどうしたの、氷雨?」
不思議そうに小首をかしげるシャル。
「そっちは僕が飲んだ方なんだ。あ、でも入れ直してあるから冷たいとは思うよ」
「え……。わ、あわわわわ」
一瞬思考が止まったかと思えば、一気に顔を赤くし、手をパタパタしながら慌てだすシャル。
「え、ええと。ええと! は、はい、氷雨! こ、これ、返すね!」
「ええ!?」
か、返すって、これを僕にどうしろと?
よく分からないので残りを飲み干してみる。
「ど、どう!?」
「えっと、どうっていわれても……麦茶だね?」
「え、あ、そ、そうだね! 麦茶だよね!」
ど、どうしたんでしょうか、シャルさん。
「取りあえず、もう一杯飲んで落ち着いたら?」
「そ、そうだね!」
そう言うと、何故か空の方のコップに麦茶を注ぎだすシャル。いや、ちょっと待って、あ、そういうことか!
「シャル、ストップ!」
その言葉が届く前に、シャルはコップに口を付け、グラスを傾ける。
「ふう。…………あ」
何かに気づいたかと思えば、シャルは重力に従いベッドに倒れ込む。
「シャル? シャルぅぅぅうう!」
シャルは一夏が帰ってくる頃にはいつもどおりに戻ったという。
◇ ◇ ◇
食堂。
机には僕とシャルのみ。他の人は食器を片付けに行っている。混んでいる食堂では食器を返すのも一苦労だけど、その中で一足先に帰ってこれたのが僕とシャルだったってわけ。
しかし、机に広がるは微妙な空気。自室での一件でちょっとシャルの僕に対する態度がぎこちない。
まあ、それは僕の不徳の致すところであるので仕方ないんじゃないかと思うけど、周りの女子、主に一組のクラスメイト達に、「何かあった!?」「遂に篠ノ之×デュノアかな!?」みたいな勘違いをされている現状は僕にもシャルにも利がない。
だからってわけじゃないけど、関係改善のために僕は明日の買い物にシャルも誘ってみることにした。
「え、買い物?」
「うん。街のショッピングモールに出ようと思うんだけど、どうかな?」
まあ、断られたら凹んで今日は枕を濡らしますけどね。
「い、行く。行くよ!」
わ、すごい食い付いてくれた。良かった。ふふふ、ここで一夏なら何か買いたいものがあるんだろうなって思考に至るだろうけど、僕は違うのさ!
ズバリ、シャルは僕に惚れてるね!
『…………』
あの、ペイルライダーさん? 突っ込んでくれないと僕が痛い人みたいじゃないですか。
『一度、地獄を見てきたらよいかと』
なんで!?
『シャルが可哀想です。私も報われません』
? 本当にどういう意味ですか、ペイルライダーさん。
『よくよく考えれば良いと思われます』
なんだろうか。なにかの謎かけかな?
「あ、そうだ。僕はちょっと用事があるから先に戻っててね」
「う、うん。分かった!」
そんな僕らの元に他の三人が帰ってくる。
「ん、氷雨、どっか行くのか?」
「うん。ちょっと用事があってね」
「了解。じゃ、先帰ってお茶でも用意しておくぜ」
「ありがとう。じゃあ、箒にセシリア、お休み~」
「ああ、お休み」
「お休みなさい」
そう挨拶を交わし、僕は千冬さんの元へ向かった。
◇ ◇ ◇
朝。
シャルが目を覚ました時にはすでに氷雨の姿はなかった。彼女の枕元にはメモ書きがあり、そこには先に待ち合わせ場所に行っているという旨が書かれていた。
「ふふっ、買い物かあ」
私服……で行きたいところではあるが、生憎男物の私服は持ちこんできておらず、女物で着飾るわけにもいかないので、シャルは少し不服ではあるが制服に身を包む。
「(二人で買い物……デートみたいだ)」
そんなことを考え、思わず口角が上がっているのを感じる。しかし、同時にシャルの頭にあることがよぎる。
「(あれ? でも、氷雨は鈴の事が好きで、なのに僕と買い物……?)」
そう。氷雨は鈴に振られてもなお、鈴に好意を抱き続けている。これは日頃の行動を見ているシャルからすれば自明である。
その前提があるので、氷雨との買い物、なんだか疑わしくも思えてしまうのである。
「もしかして……」
その懸念が杞憂であることを願いつつ、支度するシャルであった。
◇ ◇ ◇
正門前。
「…………」
「おはよう、シャルル」
杞憂で終わってくれないのが氷雨クオリティ。シャルは少し予想できていただけになんとも引きつった笑顔を浮かべていた。
「おはよう、鈴、ボーデヴィッヒさん」
鈴は予想できたが、そこにラウラがいたことは想定外であった。
「あのさ、鈴。どうしてボーデヴィッヒさんもいるの?」
「あれ、聞いてないの? 千冬さんに頼まれたのよ。なんでか分かんないけど、千冬さんに言われたら断れないじゃない?」
「ああ、確かに」
千冬が人に頼みごとをする姿を容易に思いつかなかったシャルだが、それが命令とほぼ同義であるなら難なく想像する事ができた。
「それで、肝心のあいつはどうしたのよ」
「え、先に来てたんじゃないの? 僕が出た時にはもういなかったよ?」
そう。ここには先に出たはずの氷雨の姿がない。待ち合わせの時間にはまだなっていないので、咎めるほどではないのだが、シャルは不思議に思った。
そんなことを話していると、校舎の中から駆けてくる音が聞こえる。
「お、お待たせ~!」
声は氷雨である。で、あるのだが……。
「あんた……」
「氷雨……」
「……」
その服装は紛れもなく、女子用の制服であり、頭にはウィッグが付けられ、足は黒タイツで覆われ、その童顔が効してか、災いしてか、パッと見はそのままの女子であった。
「どうかな? 我ながら上出来だと思うんだけど!」
しばしの沈黙。その後、三人はアイコンタクトをし、踵を返し、駅の方に歩き出す。
「さ、行くわよ」
「ああ」
「そうだね」
「え? ちょ、なんで? 無視が一番辛いんだってぇぇぇえ!」
出だしから不安な買い物が始まる。
買い物編は一話で終わらせるつもりだったのに、どうしてこうなった
あ、ちなみに女装は書いていたら何故かこうなっていました
プロット段階では普通に買い物するはずだったのに……どうしてこうなった!
初めて主人公のヴィジュアルに触れましたが、そういうのが嫌いな人がいたら申し訳ないです