鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
夕食後。
廊下。
一夏たちと一緒に夕食を食べた後、僕はいつも通りドクペが飲みたいと言う衝動(中毒症状)に駆られ、自販機への道のりを歩んでいる。
しかし、僕は大体この道筋を辿ると必ず誰かに出会うんだよね。
『現状、この道筋でのイベント発生率は100%です』
「だよね~。今日は誰に会うんだろうね」
『私の予想では鈴ではないでしょうか? 最近は鈴がらみのイベントが多いので』
「まあ、それが目的の作品ではあるんだけど、ぶっちゃけ過ぎじゃないかな?」
でも鈴ちゃんに会えるのは嬉しいから、僕もそれに期待したいね。
そんな期待を抱きつつ、廊下を進んでいく。その歩みはできるだけ道中を長く歩こうとゆっくりとしたものになっているが、着実に前に進むその足は無慈悲にも自販機に辿りついてしまった。
「……結局何も起こらなかったね」
『おかしいですね。データでは確実でしたが』
まあ、統計だけじゃ偶然の確率性を覆すことなんてできないよね。というか、試行回数が少なすぎる気もするね。
仕方がない……というか、そもそもの目的であるドクペを買うことにした。
「むむっ! 新商品がある」
『ルートビアですね』
ルートビア、アメリカ発祥の炭酸飲料だね。色はどす黒くて見た目は黒ビールだけど、ノンアルコール。
「よくこんな不味いもの飲めるよね」
『ドクペを好む人がよくそんなこと言えましたね』
え、ドクペとルートビアは全然違うよ? ドクペはおいしいけど、ルートビアはおいしくないんだよ。
「何を思ってこれをここに置いたんだろうか……」
『アメリカから来た学生もいますし、その方々では?』
なるほど。そう言えば、上級生に代表候補生もいるし、その先輩が要求でもしたんだろうか?
「まあ、僕はドクペを選ぶけどね」
迷う余地はないし、何しにここに来たかと問われたら、「ドクペを買いに来た」って答えるしね。
そう思って端末をかざすと、バチッと紫電が走り、あろうことかドクペではなく、ルートビアが取りだし口に落ちた。
「……」
『……』
「……ペイルライダー?」
『なんでしょうか?』
何事もないかのような落ち着いた対応。うん、いつも通りのペイルライダーだね。ていうか、AIが取り乱すわけないよね。
「ちょっとペイルライダー、なんてことしてくれるのさ!?」
『私のログにはなにもありません』
「おいぃいい」
……どうしようこれ。え、飲むの? いやいや、そんな馬鹿な。僕はドクペが飲みたくてここまで足を伸ばしたんだよ? ただ喉が渇いたなら寮の自販機でも事足りるけど、ここまで来たのはこの自販機にしかないドクペを買うためなんだよ?
僕はおもむろに缶の封を開ける。炭酸特有の二酸化炭素が抜ける音がプシュっと鳴る。
『でも飲むんですね』
「だってもったいないじゃん」
また買ってもいいけど、なんだか一日に二本以上ジュース買ったら負けた気がするんだよね。
「あ、おいしい」
『よくもそんな不味いものが飲めますね』
ペイルライダーに僕の発言をそっくりそのまま返されちゃいました。
◇ ◇ ◇
廊下。
ルートビアを飲み干して、なんだかちょっと気分が悪くなった気がするけど、おいしいことはおいしかったよ。
ただ、胃に残ると言うかなんというか……。
「うう、慣れるのに少しかかりそうだよ」
そんな感じで少し重い足取りで帰路を辿っていると正面から口論している様な声が聞こえてきた。ええと、なんかそんな感じのイベントが原作であったみたいな気がするけど、なんだっけ? 転生してから40話くらい経っちゃうと忘れそうになっちゃうよ。
「声紋で誰か識別とかできる?」
『少々お待ちを。データ照合……結果を提示。どうやら、ラウラ・ボーデヴィッヒと千冬のようです』
ああ、あの二人が口論ってことは、あれかな? なんでこんなとこで教師なんてしているんですか、ドイツに戻ってきてください、ってラウラが千冬に抗議するシーンだね。
あれ? それはちょっと遅すぎるんじゃない? そう言うのは初日かその次の日あたりで言うべきだよね。
……ちょっと盗み聞きでもしてみようかな。
「ペイルライダー、段ボール出して」
『了解。段ボール、レディ』
僕はそれを被り、二人に近付く。
だんだんと聞こえてくる声がはっきりとしてきて、ラウラの声が聞こえてきた。
「当たり前です。あんな馬鹿を絵に描いたような男を評価するなどできません!」
ははは、誰の話をしてるんだろうね。ん? 男って言ったら二人しかいないよね。……ふっ、一夏、ご愁傷さま。
「そうか。まあ、私もお前に考えを改めてほしいわけではない。確かに篠ノ之は馬鹿だからな」
「……」
『ご愁傷様です、氷雨』
なんでいつも僕ばっかりなんですかねえ。
そんな風にしょげていると、いきなり視界に光が飛び込んできた。
◇ ◇ ◇
廊下。
時間は少し遡る。
ラウラは千冬に不満を訴えていた。
「教官、やはりこの学園は貴女に相応しくありません」
以前もラウラは千冬にドイツの軍にまた帰ってきてほしいと言ったが、その時には断られ、同時にラウラにはこの学園で学ぶことがあるとまで言われた。
それが教官の言葉であるが故に、ラウラは確かに学ぶことがあるのだろうと授業を受け続けた。しかし、数日が経過し、様子を見てきたラウラであったが、やはりこの学園から学ぶものなど何もないという結論に達し、その上周囲の学生のISに対する認識の甘さにも辟易している。
ラウラが初めに感じたように、この学園の生徒はISをファッションか何かと勘違いしている。ISは兵器である。使い方を誤れば、何千、何万という命を奪うことのできる兵器だ。
そんなものを学園という形で一般人に触れさせていること自体おかしい、というのがラウラの考えである。
「教官の言っていた氷雨という男も他のやつらと変わらない。こんな認識の甘い奴ら相手に教えるなんて、意味がありません」
「ほう、ずいぶんな物言いだな」
千冬が口を開く。その鋭い声に一瞬押されるラウラであったが、それでも考えは変わらない。
「帰ってきてください。もう一度、我が軍で我々に訓練を付けて下さい」
「前も言ったが、それはできない」
そもそも、それは誘拐された一夏の情報の対価であっただけである。それを払い終えた今、千冬がドイツ軍に戻る理由など何一つないのだ。
それに、千冬自身はISを兵器として運用する事に良い感情を持ち合わせていない。あれは元来、友人である束の夢を実現させるためのものだ。
「それに、貴様が否定した氷雨だが、本当に他の生徒と変わらないと感じたか?」
その千冬が呈した言葉に、ラウラは少し戸惑う。その言葉の真意が分からないからだ。
「……」
「なに、別に思ったことを言って構わん。お前の解答をとやかく言うつもりはない」
千冬はそう言うも、やはり聞いてくると言うことは何かあるのだろうとラウラは疑うも、その答えがすぐ浮かぶはずもなく、ラウラ自身の感じたままを言葉にする。
「……私は他のどの生徒よりも、氷雨という男は何も考えてないように思えました」
「ふっ」
ラウラの正直な感想に、千冬は思わず噴き出す。
「ああ。お前の言うことは分かる。確かにあいつは何も考えてないように見えるな」
千冬の同意を得られたことに安心するも、どうにもその言い回しに引っかかるラウラ。
「見える、と言うのは、どういうことですか、教官」
「ん? どういうもなにも、そのままだ。そう見えるのは間違いではない。だが、それがあいつの本質ではないさ」
千冬からの過大評価にしか聞こえないその言葉にラウラは苛立ちを覚える。
「納得できていないようだな」
「当たり前です。あんな馬鹿を絵に描いたような男を評価するなどできません!」
「そうか。まあ、私もお前に考えを改めてほしいわけではない。確かに篠ノ之は馬鹿だからな」
そんなことを言いながら、千冬はいつの間にか横に鎮座していた段ボールをおもむろに取りあげる。
そこから現れたのは馬鹿に定評のある氷雨であった。
「っ! 貴様っ!」
「ラウラ、今度の学年別トーナメントでこいつに勝てたら、私はドイツに戻ってやろう」
「なっ!」
「ふぁっ!」
その言葉に驚く二人。それぞれ立場は違うにせよ、考えていることは同じで、そんな大事なことをこんな奴(この印象は両者同じ)に任せていいのか、と。
千冬としてはラウラを諦めさせる良い機会だと考えているからであるが、いくらなんでも思い切りが良過ぎるとは思うが、千冬は氷雨の実力を知っているが故の行動なのである。
「「…………」」
無言で互いを見つめる氷雨とラウラ。その後、氷雨を睨みつけた。
「貴様の様な何も考えていないような能天気な奴には絶対に負けない!」
「遊びでやってんじゃないんだよ!」
売り言葉に買い言葉に聞こえるが、氷雨の方は思わず言ってしまったと言った感じに、しまったと口を抑える。
「教官。その言葉忘れないでくださいね」
「ああ。私は嘘はつかない」
なんとも不穏な空気を残し、その場は解散になった。
ISは兵器であるという着眼点で論議する作品は多々ありますが、
この作品ではあえてそこには触れません
そもそも学園ではスポーツとしてのISを学ぶところですからね
まあ、スポーツは建て前でしかないですが、それは代表候補生だけが認識すればいい話しだと、私は思ってます