鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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十二話 激闘は誰かの為に

 観覧席。

 

 そこには一夏といつものメンバーが固まって氷雨の戦いを見ていたのだが、一同は試合開始から忙しく表情を変えていたのだ。

 

 まず試合開始直後、氷雨が出てきたと思ったら何故か女の子が出てきた。呆然とする一夏、セシリア、箒の中でシャルだけはなんとも言えない表情をしていた。

 

「……あれはだれなんだ?」

 

「ISは……氷雨さんのものみたいですけど、乗ってらっしゃる方は……」

 

「見覚えがあるような気もするが、心当たりがないな」

 

 三人の感想を前にシャルはやっぱり苦笑い。周りも同じように困惑しざわめいているが、それを鎮めるためにアナウンスがなされる。

 

『お集まりの皆さまにご連絡します。ただいまアリーナ内部にてISを展開しているのは紛れもなく篠ノ之氷雨です。女性に見えますが男性です。お騒がせして、申し訳ありません』

 

 そのアナウンスに観覧席の喧騒は一瞬収まるが、しかし、次の瞬間、また違う方向でざわめきだす。

 

「え、つまりあの子は氷雨なのか!?」

 

「ど、どう見ても女子ですわ」

 

「……氷雨のやつ!」

 

「あ、あはは」

 

 最早笑うしかないシャルであった。

 

 

 

 

 試合が始まってからはパッと見、一方的な試合展開。氷雨が巧みに距離を取り、ガトリング砲を止めどなく撃ち続ける。だが、実際のところラウラのシールドエネルギーは全く削れてはいない。

 

「氷雨さんにしては消極的な立ち上がりですわね」

 

「ああ。氷雨の長所は近接戦闘だ。そこに持ち込まずしてどうしようと言うのだ」

 

 いつも放課後訓練していた二人からすれば、この戦い方に疑問を持たずにはいられないのだった。

 

 それに返事を返したのはシャルだった。

 

「多分、ボーデヴィッヒさんのAICを警戒してだと思う」

 

「だが、それでは決定打に欠けるではないか」

 

「ああ、うん。言葉足らずだったね。そもそもAICは第三世代兵器で、搭乗者の集中力に依存するんだ。だから、ああやって疲れさせてAICの発動を少しでも弱めようとしてるんだと思うよ」

 

 そういうシャルの説明を聞いて一夏はなるほどと頷く。

 

「結局氷雨は接近戦を仕掛けるけど、その前にAICのリスクを減らしておくってことか」

 

「そう言うことだね」

 

 セシリアも箒も理解したが、それでも箒はその戦略に納得はしていなかった。

 

「氷雨なら、小細工を使わずとも勝てるだろう」

 

 自分の兄ならそれくらいできる、と言い放つ彼女は別に兄だからこんな評価をしているわけではなく、前回ラウラとの戦闘で見せた剣戟を鑑みてのことである。

 

「懐に入り込めば、確かに氷雨に分があるよな」

 

「ですが、その懐に入るために今こうしてリスクを減らしているのでは?」

 

 色々意見は浮かぶも、その思考を断ち切るように試合が動き出す。

 

「つ、捕まった!?」

 

 驚きの声を上げる一夏。

 

「なんでしょう、今の動き……」

 

「直線的だったね」

 

 セシリアとシャルはその氷雨の動きが気にかかった。

 

 箒はというと。

 

「………………」

 

 氷雨を心配するように無言でアリーナを見つめていた。

 

 レールカノンが二、三度放たれると、見ていられず、箒は目を背ける。

 

 だが、その次の瞬間には会場からは驚く様な声が漏れた。

 

「ベクターキャノン……」

 

「ここで展開ですの!?」

 

「あれは……」

 

 データだけは知っていたシャルだが、現物を見るのは初めてである。なのであれがどういうものなのかを知らない。

 

 その展開後から発射までの時間にレールガンが放たれる。

 

「間に合うのか!?」

 

「こ、これは、分かりませんわ」

 

「え、え、どうなるの?」

 

 そして、ベクターキャノンが放たれる直前にラウラは射線から離れる。

 

「……AICからは逃れたな」

 

「ですわね」

 

「でも……」

 

 シャルはハイパーセンサーを起動し、氷雨を見る。そこから得られる情報には『シールドエネルギー残量10%』の文字。

 

「あと10%……」

 

「一撃でも受けたら終わりってことか」

 

 

 

 

 

 一方、鈴は二組のクラスメイトとみていたが、その戦いに心中穏やかではなかった。

 

「(な、なんて無茶苦茶なことしてんのよあいつ! 見てるこっちがドキドキするじゃない!)」

 

 そんな風に氷雨を心配するような表情をしていると、隣の女子がそれに気づいた。

 

「お、凰さん、心配してる?」

 

「は?」

 

「やっぱり心配だよね、彼氏」

 

「はあっ!」

 

 その言葉に鈴は過剰反応する。大声を上げてしまったことで図らずも周りからの視線を集める。

 

「え? だっていっつも一緒にご飯食べてるし、毎日いちゃいちゃしてるし」

 

「い、いちゃいちゃなんてしてないわよ!」

 

「だって、篠ノ之くんいつも『かわいい』とか叫んでるでしょ?」

 

「うっ。それは、そうだけど」

 

 それは事実であるため、鈴は反論できなかった。しかし、それは氷雨が勝手に言っているだけであり、鈴はそれを軽くあしらっていただけである。

 

「それって、もうカップル通り越して、バカップルじゃ?」

 

「んなっ!?」

 

「あ、それ私も思ってた」

 

「私も……ヒヒッ……爆発しろって……思ってた」

 

「うちはもうビターチョコ持参してたで~」

 

「浅はかなり」

 

「何勝手な事言ってんのよ!」

 

 周りの女子も会話に参加する。何故か二組の中の共通認識として、鈴と氷雨は付き合っているものとされていた。故に、氷雨は別に代表候補生に囲まれているわけでもないのに他の女子からのアタックがないのだ。

 

 ……いや、確かに一夏より人気がないところもあるけどさ。今はそれはおいといていいよね? ほら、イケメンって……ずるいじゃん?

 

「付き合ってないわよ。あいつはただの友達」

 

「えー、そうなの?」

 

「チッ……爆発……しない」

 

「そこ悔しがるとこちゃうで」

 

「浅はかなり」

 

「なんなのよ、あんたたち……」

 

 そんな中、一人何かを思案するように唸っていた。しばらくそうしていると、何かを思いついたように、手を叩く。

 

「決めた。じゃあ、私篠ノ之くんにアタックしてみる」

 

「は?」

 

「おお~、大きく出たね」

 

「ちょ、ちょっとあんた、何言って……」

 

 突然のことで戸惑いを隠せない鈴。氷雨にアタックすると宣言したクラスメイトは鈴の方を見る。

 

「付き合ってないなら、別にいいよね?」

 

 その言葉で、なんで自分が動揺しているのかという疑問に鈴は気づき、それを悟られないように顔を背ける。

 

「別に。勝手にしたらいいわよ」

 

 そうやって再び、アリーナに目を向ける。

 

「え?」

 

 そこには先ほどまでとはケタ違いの戦いが繰り広げられていた。

 

◇   ◇   ◇

 

 さて、少し講義をしておこう。AIC……つまり慣性停止結界であるけれども、これは僕を動けなくするものではない。

 

 いや、広義的には同じなんだけど、少なくとも僕が動こうとする意志は見せることができる。けれども身体は動かない。それはどうしてかと言われると、この空間内で使用者が捉えた物体の加速度と反対の加速度を同時に与えるからだ。

 

 物理の話みたいになるけど、同じ大きさで反対方向の力が加わればその力は打ち消し合って、力を加えられた物体は動かない。これを空間として全方位から行っているからこそ、対象物の動きを止めることができるのだ。

 

 まあ、イナーシャル(慣性)をキャンセル(打ち消す)というよりはアクセラレート(加速)をキャンセルしてる気がするけどね。

 

 で、これは第三世代兵器だから使用者の集中力に依存するわけだけど、捕らえてしまえばあとはなかなかに楽なものだ。じゃあ、どこで使用者の技量が必要か。

それは初速度。

 

 初速を止めて制止させてしまえば、後は結界が加速を阻止する。なら、その初速を見せなければ捕まらないわけだ。

 

「ペイルライダー、ミサイル全弾、ラウラの前方足もと!」

 

『了解。三連ミサイル、全弾発射』

 

 両足から全弾6発のミサイルが放たれる。それは地面に着弾し、視界を覆う広範囲に砂煙を作る。

 

「ふん。こんなもの目眩ましにもならん」

 

 その通り。ハイパーセンサーには熱を検知して視覚化するシステムもある。

 

 だけど、これで正確な初速は測れない……かもしれない!

 

『適当ですか』

 

「突っ込むよ!」

 

 加速しラウラに迫る。もちろんラウラは僕の位置を把握している。もしかしたら、熱探知の位置情報から速度を求めているかもしれない。

 

「もらった!」

 

「二度も突っ込むわけないでしょ!」

 

 距離感はもう分かっている。その効果範囲のぎりぎりで地面を蹴りあげ、砂をラウラの顔に飛ばす。

 

「ちっ」

 

 本来ならISを装着している上で砂なんてものは大した障害ではない。

 

 だが、乗っている人間の反射がそれを許さず、ラウラは目を閉じる。

 

「懐に入らせてもらったよっ!」

 

「小賢しい真似を!」

 

 小細工上等だよ!

 

 低い姿勢から振りあげるようにビームブレードで切り払う。

 

 ラウラは展開したビームトンファーでそれを弾き上げる。

 

 僕は振った勢いのまま回転し、逆の手に持つビームブレードで再度同じ方向から切り払う。

 

 ラウラも逆の手のビームトンファーを弾き、肩からワイヤーブレードを放つ。

 

 それを避け、片腕のビームブレードを収納し、ワイヤー部分を掴む。

 

「はいだらー!」

 

「くっ!」

 

 掴んだワイヤーを思いっきり引く。少し体勢が崩れたラウラの腹部にその勢いのまま蹴り飛ばす。女の子のお腹蹴るなんて最低な行為だけど、試合だからね!

 

「ごめんね!」

 

 ワイヤーを放し、再度展開したビームブレードで切り裂く。

 

 蹴り飛ばされ、距離が開いたままのラウラが低い軌道でワイヤーブレードを放つ。その二本のワイヤーブレードをビームブレードで下に弾き、踏みつけ、ワイヤーを断ち切る。

 

「ペイルライダー、出し惜しみはなし。ホーミングランス起動」

 

『了解。ホーミングランス、レディ。目標、ロック。BT偏光射撃、適応』

 

「ファイヤー!」

 

 通常はマルチロックオンに対応している砲門数のレーザーが弧を描き、一斉にラウラに振りかかる。

 

「こんなものまであるとは!」

 

 懸命に回避するも避けきれず、レーザーはラウラのシールドを削る。

 

 AICにBT兵器は相性がいい。何故か。それは最初に述べたように、初速を止められないからだ。BT兵器はその性質上、一つの物体ではなく、無数の粒子の流れがレーザーとして放たれている。よって、それを止めるにはその全てに運動量と逆の力を加えなければならないのだ。

 

 しかし、ラウラもやられているだけではない。レールカノンが僕をロックし、放たれる。

 

「それに当たる僕じゃないよ!」

 

 横向きに瞬時加速を行い、その射線からずれる。反撃をさせないよう、すぐさまホーミングランスを放ち、手元でビームブレードを連結させる。

 

「ヘアッ!」

 

『なんですか、その声』

 

 左手のマニピュレーターで高速回転させたブレードを振りかぶり、レーザーを追わせるようにラウラに向けて投げつける。

 

「くっ。だが、この程度っ!」

 

 AICは使えずとも、ラウラは千冬さんに鍛えられたパイロットだ。いくら偏光射撃といえど、二度は当たらない。

 

 レーザーを避けきったラウラは手をかざし、回転するビームブレードをAICによって止める。

 

「これで、貴様の得物はもうないぞ」

 

「それはどうかな?」

 

 ブレードと共に接近していた僕はラウラから引き裂いたワイヤーブレードの端を振り、突き出された右腕に巻きつける。

 

「カモン、ラウラ!」

 

「なっ!」

 

 引くとラウラのAICは効果を失い、ビームブレードは落下を始める。

 

 その落ちるビームブレードの柄を蹴り飛ばす。

 

「ぐっ」

 

 右手を引かれ、体勢の崩れた所に来たビームブレードを防ぐことはできず、シールドエネルギーを減らしていった。

 

 ワイヤーを手放し、ラウラに肉薄する。シールドに弾かれたビームブレードを受け取り、篠ノ之流双剣術の舞をラウラに刻む。

 

 その剣は舞であり、その剣は流れを作る。流れに逆らおうと足掻けば足掻くほど、その足は深みにはまり、足もとを掬われる。あらがっていると思っていたら、気付けば流れの一部になっている。その流れを遮るは線では不可能。故に、剣と剣の戦いに置いて篠ノ之流双剣術を止められるものはいない。

 

 ラウラの振るう剣戟は全てが意味を成さず、ただ流される落葉と同義だ。

 

「だから、気付けば追いつめられる」

 

「シールドエネルギーが……」

 

 それに気づき、ラウラは一旦距離を取ろうとする。

 

 それに続くように僕も加速するが、その加速は思わず止められてしまう。

 

 そう。停止結界に阻まれたのだ。

 

「はぁはぁ。ようやく、捕まえたぞ」

 

「……」

 

 ラウラはもう何が来ても勝てるようにレールカノンを構えている。そこにはきちんとリロードされた弾が入っており、後はラウラの任意のタイミングで放つことができる。

 

「チェックメイトだな……篠ノ之氷雨」

 

「……」

 

 




長すぎぃぃい

と言うわけで、トーナメント(ほぼ)決着です!
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