鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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おいおいふざけんなよ、鈴ちゃんどこだよ!


十六話 ReStart

 その日の夜。

 

 帰ってきた時間はもう夕食時を過ぎていた。

 

 ペイルライダーから学園の状況を聞く限りでは、ラウラの暴走により、学年別トーナメントは中止。しかし、スカウトなどが関わる大事な行事である点を鑑みて、一回戦だけは全て行ったらしい。

 

 つまり、鈴ちゃんと一夏も戦ったみたいだけど、結果は一夏の勝利。何がどうということはない。実力で勝ってしまったのだから驚きだ。

 

 最後の決め手は弾かれた零落白夜の柄を蹴って切りつけるという。あれ? それ僕がやったやつじゃない? 一回見ただけでとっさに真似たの? ニュ、ニュータイプとでもいうのか……。バナージぃぃぃい! あ、リディお前絶対許さない。マリーダさんのことは絶対に許さない。

 

 それは置いといて、なんか、既視感のある戦いだけど、ゴーレムは現れなかった。

 

 まあ、その元凶である束さんは一緒にいたわけだから、何もないのが当たり前なんだけどね。

 

 あの後の束さんからの頼みごとで疲れ切った僕は未だ食堂に居るのか、誰もいない自室のベッドに倒れ込み、まどろみを楽しむ。

 

「ああ~、気持ちいい~」

 

 二度寝が気持ちいいのはこの半分意識があるかどうかって言う感覚があるからだと思うよ。なかなかやめらんない。

 

「寝ちゃってもいいかな」

 

『今日は色々ありました。寝てもいいでしょう』

 

 ありがとー。なんでペイルライダーの了解をもらってるのか分からないけど。僕はこうして眠りについた。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 夜。

 

 自室。

 

 どれくらい寝ていたのか分からないけど、起きたら目の前にシャルがいた。

 

 うん。正面。真正面。眼前。

 

「……おはよう、シャル」

 

「お、おはよう、氷雨」

 

 あ~、これって僕の顔色をうかがってた感じかな? 朝の一件の後、いきなりいなくなって、今になってここでばったり倒れてたらそりゃ心配してくれるよね。

 

 ……いやいやいや、ちょっとこの距離は無理があるわ。どう見てもあれだよ。ラブコメに良くある、寝ている間にキスしようとしたら寸前で目が覚めて気まずくなるあの展開だよ。

 

「あの~、シャル?」

 

「な、なに!?」

 

 驚き、顔を赤く染めているシャル。

 

「なにをしようとしてたの?」

 

「え、えっとその……さっき、アルカディア社って言うところから連絡が来てね」

 

 アルカディア社? えーと、話しの流れからしたらフランスで二番目に大きいIS関連企業のことかな? アルカディアって……ついに作者も頭をやられてしまったのかな?

 

「第三世代機のテストパイロットをしてくれって」

 

 おお、束さんの言った通りだね。

 

「それで、色々説明を聞いて、ああ、これが氷雨の言っていたことなんだって」

 

 これでシャルはデュノア社に囚われることもなくなったわけで、一安心ってところかな。

 

「だ、だから、その……お、お礼を……」

 

 あ、ああ、なるほど。

 

 そこまで聞いて、僕はシャルの肩を掴んで距離を放す。

 

「お礼なんていいよ、シャル。僕が直接やったことじゃないし、友達を助けるのは当たり前だもん」

 

「氷雨……」

 

「それに、シャルは自分のことをもっと大事にした方がいいよ?」

 

「え?」

 

 身体を起こし、シャルと対峙する。顔が赤かったのは恥ずかしいのに無理してたからかな? そこまでしなくていいのに。

 

「男は狼だからね。そんなことしたら、襲われちゃうかもしれないよ~」

 

 手を上げて襲うようなポーズをとる。

 

「いいよ」

 

「……え?」

 

 笑ってくれるかと思ったら予想外の解答が飛んでくる。

 

「氷雨なら、いいよ」

 

 赤らんだ頬に上目使いで僕を見つめてくるシャル。な、ななな。

 

「え、あ、え!? い、いや、あの……あれ!?」

 

 そうして見つめていると、なんだか僕も恥ずかしくなってきて、頬が熱くなるのを感じる。

 

 思考停止してどれくらい経ったのか。いや、実際にはそれほどの時間も経っていないのかもしれない。でも、僕はその無限にも感じられる時間、息もできず固まっていた。さしずめ蛇に睨まれた蛙だ。いやいや、逃げなさいよ、と言われても蛙の足では逃げられません。ご愁傷様でした。

 

 この状態ではどちらもが蛙で、どちらもが蛇だ。どっちも動けない、というか動かない。

 

 そんな時間の止まった空間の針を動かしたのは扉の開く音だった。

 

「お風呂上がったぞ~って何してんだ二人とも?」

 

「な、なななななななななんあななななんあ」

 

「日本語で話してくれよ、氷雨」

 

 そんな動揺する僕を見て、シャルが息を吹き出し、笑った。

 

「あはは、冗談だよ、氷雨」

 

「ななな……へ? あ、冗談?」

 

 や、やられた。まさかシャルにからかわれるとは。

 

「でも、感謝の気持ちはほんとだからね」

 

「もう……お礼なんていいのに」

 

「なんか分からないけど、氷雨見てたか? 俺、勝ったぜ!」

 

「うん、全然見てなかったよ!」

 

「おい、堂々と言うことかよ、それ!」

 

「あはは」

 

 ともかく、この平穏は守られたということで、今回の騒動は幕を閉じたのでした。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 朝。

 

 一緒に登校しようとしたらシャルは職員室に用事があるようで先に行ってしまった。

 

「わたくしの相手は一般生徒でしたから、本気が出せませんでしたわ」

 

「仕方ないんじゃない? 専用機持ちは少ないしさ」

 

 昨日のことを心配してくれる人はあんまりいない。ていうか、『氷雨なら大丈夫だろう』って感じでみんな避難誘導にしたがってたらしい。おいおい……。

 

「って、そういえば氷雨さん。昨日はBT偏向射撃をしておりませんでしたか?」

 

「うん」

 

 そう言うとセシリアはぐっと僕に迫ってきた。近い近い! なんなの? 最近流行ってるの? 僕のATフィールド無視されまくりじゃないか。

 

「何故教えてくれませんでしたの!? わたくしがどれほど苦労していることか」

 

「い、いや、でもさ。セシリアも分かってると思うけど、あれ教えるどうこうの技術じゃないからさ」

 

「……まあ、そうですわね」

 

 僕の言葉に冷静になったのか、セシリアはちょっとしょんぼりした感じで離れた。怒られた時のわんちゃんみたいだね。

 

 教えてあげたいけど、BT偏向射撃はホントに精神力に左右される技だからね。教える教えないってものじゃないんだよね。

 

「じゃあ、そんなセシリアに簡単な精神修行法を教えてあげよう」

 

「ほんとですか!」

 

 ぱあ、と表情を明るくするセシリア。

 

「うん。簡単だけど、究極の精神修行だよ」

 

「きゅ、究極……」

 

 真剣な顔になり、息を飲むセシリア。表情がころころ変わって面白いなあ。

 

「千冬さんの悪口を、言うことだ」

 

「お、織斑先生のですの!? ほ、本人の前でですか?」

 

「いやいや。目の前で言ったら駄目だよ。それだと後の結末が分かりきっているから修業にならない」

 

 僕の言葉に困惑の表情を浮かべる。え、セシリア、この短時間で哀以外の表情コンプしてない?

 

「この始業手前の時間帯に、入口に背を向けて言うのさ」

 

「それだけでいいんですか?」

 

 あ、セシリアは分かってないな、この修行の恐怖を。

 

「いい。これは千冬さんだから効果があるんだ。千冬さんは気配もなく教室に来る。だから、僕らは視認以外に千冬さんが教室に来たことを認知できない。その視覚すら奪って悪口を言う」

 

 僕の語気に押され、セシリアが真剣に耳を傾ける。

 

「言葉を発し、それが千冬さんに届いているかいないか分からない。背後から出席簿が来る恐怖、緊張感。それが最後まで分からないからずっと気を張っていなければならない。つまり、筋肉で言えば遅筋を鍛えるトレーニングと言わけだ」

 

「な、なるほど!(遅筋?)」

 

 あ、これあんまり分かってない顔だ。

 

「……つまり、瞬発力のある筋肉じゃなくて、持続力のある筋肉を鍛えるってこと」

 

「い、言われなくても理解していましたわ! ち、チキンですわね! クリスマスに食べますわ!」

 

 もも肉だから一応間違ってない。

 

「まあ、何でもいいから始めようか」

 

「わ、分かりましたわ」

 

 さてさて、セシリアはどんな悪口を言ってくれるのかな?

 

「お、織斑先生、いつも寝癖付いてますわよ!」

 

「弱い!」

 

 悪口のレベルが低い! それにあれは寝癖じゃなくてウェーブだから! ……ん? 千冬さんが自分でウェーブをかけるかな? 面倒くさがりだし、もしかしてほんとに寝癖……。

 

「……や、やりましたわ。織斑先生に聞かれてませんわ!」

 

 満面の笑みで振り返る。

 

「そうか。それは良かったな」

 

 からの絶望の表情。

 

 出席簿による制裁を受け、セシリアは涙目になる。あ、哀の表情。

 

「まったく。教師の悪口を言うとはな」

 

「ちなみに織斑先生」

 

 手を上げて質問を投げかける。

 

「なんだ」

 

「その髪は自分でウェーブかけてるんですか?」

 

「……」

 

「それとも寝癖ですか?」

 

「HR始めるぞ。全員席に着け」

 

 スルーされた。

 

 席に戻る時セシリアに睨まれたのは僕もスルーしよう。

 

 皆が席に付くと千冬さんは教卓の前に立ち、話しだす。

 

「転校生が一人来た。まあ、皆も知っている奴だ」

 

 それ転校生じゃないですよね。ある意味僕と同じ『転性者』なんちゃってね。……面白くないですか、そうですか。

 

「入ってこい」

 

 扉が開き、現れたのは女生徒用の制服に身を包んだシャルの姿であった。

 

「シャルル・デュノア改め、シャルロット・デュノアです」

 

 その自己紹介に、一同は驚きを隠せない。まあ当たり前だよね。男だと思ってちやほやしてた相手がいきなり女でした~って言われてもね。

 

「ど、どういうことですか!?」

 

 その質問はもっともだ。

 

「……シャルには男性操縦者ということで狙われる可能性のある二人の警護という形で男装してもらっていた」

 

 その答えにざわつく。なるほど。学園はそういう形でシャルを処理するつもりなんだね。考えた物だね、流石十蔵さん。

 

「だが、外の人間が多く学園に来訪する行事である学年別トーナメントは終わった。よって、その任を終え、こうして再度挨拶しているということだ」

 

 そこまで言い終えるとシャルが謝罪のため口を開く。

 

「今までみんなを騙すようなことをしてごめんなさい。厚かましいかもしれないけど、これからも仲良くしてくれると、うれしいです」

 

 そう言って頭を下げるシャル。それに対するみんなの答えは拍手によって肯定が表された。

 

「逆に話しかけやすくなってラッキーって感じだよね」

 

「でゅっちーはでゅっちーだからね~」

 

「私は女の子でも一向に構わない!」

 

「涎拭きなさい」

 

「僕がガンダムだ!」

 

「これからもよろしくねー」

 

 快く迎えられたことにシャルは嬉しそうな顔をする。

 

 そうして、シャルは元々の自席に座った。

 

 僕と一夏は顔を見合わせ、受け入れられたことに安心して笑いあったのだった。

 

 




――完――

うそです
重要なところがまだですね

次章はこの章の反動で鈴ちゃんばっかりになる予定です
……プロットではそうなってます
氷雨くんが暴走しなければこのままなんですが……
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