鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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|ω・`)<もう忘れられたかな? 五日ぶりくらいの更新ですね


リクエスト内容
「鈴ちゃんとの念願のデートにシャルと箒とワンサマが隠れてつけていく話」
「女装ひさめんが男装鈴ちゃんとデートしてるところ」


     ―注意―
    /Pale Rider\
<この短編にはネタではありますがTS要素が含まれます。本編に関わらない番外ですので苦手な方は読むのを控えて下さい>


その3 変化を望まぬ平穏

 そういうわけで、前回のあらすじだよ。

 

 束さんと作者の暴走により、僕は女になりました。

 

「はぁ」

 

『どうしました?』

 

 僕のため息にペイルライダーが声をかける。

 

「いくらタイツをはいていても、このすーすーする感じは嫌だなーって思って」

 

 スカートをはくだけならまだ僕も許容できる。でも、女性用の下着をつけちゃうと布面積の少なさに凄く心もとなさを感じる。

 

「世の女の子はよくこんな下着でミニスカートなんてものに手を出せるね」

 

『男と女では感性が違いますからね』

 

 まあ、逆に女の子がトランクスとかはいたらやっぱり嫌なんだろうなとは思うけど。

 

「うっ、酔ってきた」

 

『まあ、これだけ揺れればそうでしょう』

 

 僕の現在の状況は、ステルス性の高い無人ISによって担がれて、学園まで運んでもらっています。

 

 え、なんで来た時みたいに蒼騎士で帰らないかって?

 

「女だからだよ!!」

 

『いきなり大声出さないでください』

 

 あ、ごめんね。

 

 女だからってどうしてだよ? って思う方もいるかもしれないですけど、そもそも僕はこの世界にあるISのほとんどに乗れません。なのになんで蒼騎士もといペイルライダーに乗れるかと言うと、蒼騎士のコアは唯一男が乗ることのできるコアだからです。

 

 つまり、女になった僕は起動させることができないのです。

 

 え、じゃあなんでペイルライダーが話しかけてきてるのかって? ……話しの都合上です。いや、嘘だよ。ラウラの時に見たように、ある程度なら自立稼働ができるんだよ。それでも僕がリンクしないと制限があるからハイパーセンサーくらいしか稼働できないけどね。

 

『そろそろ到着です』

 

「はーい」

 

 地に着いた無人ISが僕を下ろす。手を振って見送ったら手を振り返してきた。ん? 無人だよね?

 

 しかし、千冬さん、制服まで束さんに送っていたとは……。おかげでこうして違和感なく帰宅できましたけどね。

 

「……」

 

「……」

 

 無事じゃなかったです。千冬さんに見つかりました。

 

「話は聞いている」

 

「あ、そうなんですか」

 

 千冬さんは腕を組んでなんとも言えない表情を浮かべる。

 

「……正直、すまないと思っている」

 

「ほんとですよ……」

 

 うなだれてる僕の頭を撫でて、千冬さんは去っていった。え、フォローなし!?

 

      ◇   ◇   ◇

 

 その後、何人かのクラスメイトとすれ違うも誰も気にも留めなかった。そうか、誰も僕だって気付かないのか。外見はあんまり変わってないと思うけど、前の女装もばれなかったし、案外この女装は諜報に使えるかも?

 

『どこを諜報するのですか?』

 

「え? う~ん、思いつかないけど、更衣室とか?」

 

『ナチュラルに犯罪者ですね』

 

 あ、いや、違う! 思いついただけだから! やらないから!

 

 自分の部屋の前に立つ。さて、一夏になんて説明しようかな。

 

「あ、別に取り繕う必要ないね、一夏だし」

 

『そうですね』

 

 何言っても納得しそうだし、ぶっちゃけても受けとめてくれる器の大きい男だからね。

 

 そう考えて、躊躇いなくドアを開ける。

 

「おう、氷雨。おそかっ……え、どちらさまで?」

 

「いや、氷雨であってるよ」

 

 呆気にとられる一夏はなんとも間の抜けた顔をする。

 

 ちなみにこの部屋にもうシャルはいない。簡易ベッドもなくなって、部屋が広くなったように思える。いずれ慣れると思うけど、ちょっとまだ違和感があるね。

 

 少しして状況を飲み込むと一夏は再度僕に問いかける。

 

「は? え、どういうことだよ!?」

 

「そうなるよね。実はさ……」

 

  ◇  少女(誤字ではない)説明中  ◇

 

「た、大変だったんだな……」

 

「そうなんだよ! もう、色々むちゃくちゃで可笑しなことになってたよ」

 

 ねー、ほんとにカオスだったよねー。

 

「そういうことだから、明後日までフォローよろしくお願いします!」

 

「ちょ、土下座はやめろよ。女の子に土下座されると罪悪感すげー来るから」

 

 そういわれると絵的にまずいから僕は起き上がる。シオニーちゃんじゃあるまいしね。

 

「ま、助けないわけないだろ? 俺と氷雨の仲だろ?」

 

「おお、一夏ぁ」

 

 感動的だね。僕の周りは僕に優しい人が少ないんだよ……。

 

「心の友よぉ!」

 

「うおっ!」

 

 勢いで一夏に抱きつく。すると何故か一夏は固まってしまう。

 

「? 一夏どうしたのさ?」

 

「い、いや、その……」

 

 なんだろう。なにに動揺しているのか……。う~ん……はっ!

 

「まさか、一夏、ホモなの!?」

 

「違うだろ!」

 

 え、違うの? じゃあ、なんで男に抱きつかれて鼓動を早めてるのさ。

 

「ひ、氷雨、その、柔らかいものが……」

 

「?」

 

 柔らかいもの? ……あ、そっか。僕、女だ。

 

「ほほう。一夏は男であるはずの僕のおっぱいに興奮していると?」

 

「ばっ! そ、そんなわけないだろ!?」

 

 ていうか、おっぱいあったんだ。失意のあまり無心で着替えたから見てなかったや。

 

 あ、耳まで赤い。引き際かな。

 

「うん、ごめんね、一夏。からかい過ぎたかな?」

 

「まったくだ。そういうの止めてくれよ?」

 

 止めてくれ? 押すなよ、絶対押すなよ? = 押せ。

 

「うん。分かった」

 

「なんだ、その満面の笑み。嫌な予感しかしないぞ」

 

 身構える一夏。

 

 僕が何もしてこないのを確認して一夏は息を吐き、立ち上がる。

 

「お茶でも入れようか?」

 

「ありがとー。じゃ、僕はお茶受け探そうかな」

 

 そう言ってベッドを横断するようにうつ伏せ、ベッドの横にある僕のバッグを漁る。たしか、十蔵さんにもらった神父も絶賛、激辛麻婆煎餅があったはずなんだけど……。あれ? ない? もっと奥の方かな?

 

 そんな風に鞄を漁っていると後ろからガシャガシャと食器がぶつかる音が聞こえる。

 

 僕は煎餅を探しつつ、一夏に声をかける。

 

「一夏、大丈夫?」

 

「あ、ああ。危うく落ちるところだったけどな……って、氷雨! その格好は止めろ!」

 

 なに? 僕何かしたの?

 

「お、お前、スカートが捲れてきてるんだよ!」

 

「あー」

 

 バランスとるため足バタバタしたのが悪かったのか……。

 

「ていうかさ、男だった時と同じように振舞ったらもうほとんどでアウトだよね」

 

「そうだな。で、早く起き上ってくれ」

 

 むー。なかなかに不自由だ……。

 

「あ、煎餅あった」

 

「でかした、氷雨」

 

      ◇   ◇   ◇

 

 二人して唇を真っ赤にしてせんべいを食べきると、牛乳を飲んで一息ついた一夏が口を開く。

 

「しかし、そうなると明日のあれは諦めるしかないな」

 

「? 明日?」

 

 何を諦めるんだろう。

 

「おいおい、忘れたのか?」

 

「えっと……ごめん、昼のごたごたの印象が強すぎて……」

 

 性転換とか、インパクトの強さじゃ生涯で一位二位を争うレベルだよ。

 

「お前、鈴とデートだーって張り切ってたじゃないか」

 

「……うわっ! 本当だ!」

 

 なんてことを僕は忘れていたんだろうか。そうだよ、明日は鈴ちゃんとデートじゃないか! 昨日鈴ちゃんが遊びに行こうって誘ってくれたのを大はしゃぎで一夏にも言ってたじゃないか。

 

 ……まあ、デートって言うのは僕が勝手に言ってるだけで、鈴ちゃんの方は純粋に遊びに行くってだけだと思うけどね。

 

「ど、どどど、どうしよう、一夏!」

 

「お、おい。肩を揺するなよ」

 

「今それは重要じゃないでしょ!」

 

「いや、重要かどうかの問題じゃなくてだな」

 

 こ、こうなったら束さんのところに殴りこんで今すぐ薬を作らせるか? いや待って、束さんの場所分からない上に、僕は今ペイルライダーに乗れないじゃないか。だったら、この状態で行くしかないの? え、僕が女になったのを鈴ちゃんに知られるの?

 

「い、いやだー! そんな格好悪いこと知られたくないぃい!」

 

「お、落ちつけよ、氷雨。あと、肩放してくれ。がっくんがっくん首が揺れてるから」

 

 いや、待てよ……。

 

 一夏にそう言われたからではないけど、僕はぴたりと動きを止める。それはある考えに行きついたからだ。

 

 女装だと言えばばれないんじゃないだろうか。そもそも、女装した時も誰にも男だとばれなかったわけだし、そうなると逆に女になったからと言って女装でないと見抜くことは千冬さんくらいにしかできないのでは?

 

「なるほど……女装ってことにすればいいのか」

 

「は? いや、まあ……氷雨が納得してるならそれでいいけど。いや、それでいいのか?」

 

 一夏は自分の口にした言葉に首をかしげる。

 

 そうと決まれば、明日鈴ちゃんに見せても恥ずかしくないように念入りに身体を洗わねば。

 

『服を着れば関係ないのでは?』

 

 気持ちの問題なんだよ、ペイルライダー。そういう指摘は野暮って言うものさ。

 

 一夏から離れ、僕は束さんから渡された鞄を漁る。そこにある下着の数々だけど、自分が女の身体だからかな、全く抵抗なく触れる。

 

 そうして、着替えを用意し、バスタオルを持った僕は立ち上がる。

 

「じゃ、お風呂行ってくるね、一夏」

 

「おう、いってらっ、いや待て待て!」

 

 慌てて手を掴み引きとめてくる一夏。

 

「いくらなんでもそれはまずいだろ」

 

「だよね~。大丈夫、冗談だって」

 

 決して、鈴ちゃんと裸のスキンシップがしたかったわけではない! 決して鈴ちゃんの背中を流したいとか思ってない!

 

『煩悩が漏れていますよ』

 

 せやね。

 

「仕方ないから、シャワーにするよ」

 

「仕方ないってなんだよ……」

 

 そんな感じで、初日は乗り切ったのでした。

 

◇   ◇   ◇

 

 翌日。

 

 朝食を鈴ちゃんと待ち合わせてとる。鈴ちゃんの意向でみんなが食べ終わったであろうちょっと遅めの時間になったけど、理由は教えてくれなかった。なんでだろう?

 

「で、あんたはなんでまた女装なのよ」

 

「あはは、いや、これには深いわけがあるんだよ」

 

 やっぱり突っ込まれるのはそこだよね。

 

「よく考えてみて、僕は世界で二人しかいない貴重な男性操縦者と言う名のモルモットだよ? それが、制服を着てこれ見よがしに『私研究材料です』と街を歩いていたら、怪しい組織か、怪しい国家に連れ去られるか、もしくは女性の権利団体的なものに刺殺されちゃうでしょ?」

 

「モルモットって自分で言っちゃうのね」

 

 え、まあ、間違ってないからね。

 

「そこで出てくる解決策が女装なんだよ!」

 

「その答えが出るあたり、あんたらしいけどね」

 

 いやいや、そんな褒められると照れるなあ。

 

「褒めてないわよ」

 

「え?」

 

 そんな僕を見つつ、鈴ちゃんは呆れ顔だ。

 

「はあ、緊張して損したわよ」

 

 鈴ちゃんが小声でつぶやく。

 

「え、緊張してたの?」

 

「な、なんでもないわよ!」

 

 ? まあ、何でもないならいいんだけどね。

 

「全く。で、なんで今回はそんなに気合の入った女装なのよ」

 

「え? き、気合なんて入ってないけど?」

 

 メイクだってしてないしね。まあ、しなくても女の子に見えるからいらないというのが正しいね。

 

「だって、あんた……パッドまで入れてんじゃん」

 

 そう言って鈴ちゃんは僕の方に手を伸ばし、胸に触れる。

 

「んぁあ」

 

「……」

 

 あ、変な声でちゃった。まずいまずい。

 

 内心で焦っていたら、対応が遅れ、鈴ちゃんは触れた手で僕の胸を揉む。

 

「んっ。……くぅ」

 

「あんた……」

 

 ああ、鈴ちゃんの目が凄く冷たい! 止めて! そんな目で僕を見ないで!

 

「はぁ、はぁ。じ、事情を話すので、その豚を見るような目を止めて下さい」

 

「そ、そんな目して無いわよ」

 

 この際、格好なんて気にしてられない。変態と言うレッテルよりはましだ!

 

『そちらは時すでに遅いような……』

 

      ◇   少女(疑問は残るも事実)説明中  ◇

 

「と言うわけなんです」

 

「あんたも苦労してるわね……」

 

 ああ、豚を見る目から同情を向ける目になってる。

 

「そう言うことは最初に言いなさいよ」

 

「だって……」

 

「なによ」

 

「女になったなんて、格好悪くて言いたくなかったんだよ……」

 

 そう言って項垂れる。女の子になったなんて、好き嫌い以前に恋愛対象にならないじゃないか。

 

「あんたの中で、女装はいいんだ」

 

「え、だって女装は結局男でしょ?」

 

「よく分かんない基準ね」

 

 顔を見せたくないので机に突っ伏す。デートはしたいけど、こんな状態を鈴ちゃんに見せ続けるのは嫌だなあ……。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 そもそも、なぜ鈴は氷雨を遊びに誘ったのか。その理由は先日のクラスメイトの告白にあった。

 

 その告白したクラスメイトに言われた言葉、ちゃんと向き合え。そう言われた鈴はどうしたものかと少し思案した。だが、ただ悶々と考えていても答えは出ない。氷雨から向けられた好意、それは素直に嬉しいものだとは思う。だが、果たして自分はどう思っているのか。

 

 その答えを探すべく、鈴は自分らしい方法を取った。それが、今日のデート(仮)であったというわけだ。

 

 やはり、近くで本人と接してみないことには答え何てでないだろうというのが鈴が最後に至った考えである。

 

 そんな、少しの決心と共に迎えた今日であったにも関わらず、正面で突っ伏しているのは、よく分からない基準で恥ずかしがっている氷雨であった。

 

「(これじゃ、答え何て出るはずないわよね……)」

 

 自分が悩んでいても、変わらない氷雨の行動に、ある種の安心を鈴は感じ取っていた。

 

 変わらなくていいなら、それが一番楽だからだ。

 

 だから、鈴は言葉を紡いだ。氷雨が、いつも通りであるように、それを続けてもらうために。

 

      ◇   ◇   ◇

 

「しょうがないわね」

 

 そんな言葉から鈴ちゃんは始めた。

 

「あんたが女なのを見られて恥ずかしいなら、あたしも男の恰好してあげるわよ」

 

 一瞬何を言っているのか分からなかったけど、何となく察した。

 

「あたしも恥ずかしいから、お相子でしょ?」

 

 その優しさに僕は笑う。

 

「鈴ちゃんの貴重な男装が見れるってこと!?」

 

「いきなり元気になったわね……。今回だけだからね」

 

 女の子状態の僕を見られることには変わらないけど、鈴ちゃんの男装が見れるなら、我慢するしかないよね?

 

『単純ですね』

 

 男はみんな、そんなもんだよ……今は女だけどね!

 

「さ、食べ終わったなら支度して遊びに行くわよ」

 

「うん!」

 

      ◇   ◇   ◇

 

 正門で待っていると、遅れて鈴ちゃんがやってきた。

 

「お待たせ」

 

「あ、鈴ちゃ……」

 

 その姿を見て僕は絶句した。

 

「ちょ、ちょっと、どうしたのよ」

 

「……」

 

 なぜなら、鈴ちゃんの男装が、男装が……。

 

「可愛い!」

 

「え?」

 

 何ですか、僕の貸した男性用の制服を着て、ツインテールを下ろしただけじゃないですか! そんなの、そんなの!

 

「男装じゃないよ!」

 

「そ、そうなの?」

 

「ただの可愛い鈴ちゃんだよ!」

 

「お、大声で恥ずかしいこと言ってんじゃないわよ」

 

「あんっ!」

 

 ビンタされた。ごめんなさい。

 

「たく。ほら、早く行くわよ。映画見るんだったら早くいかないと良い席取れないでしょ」

 

「あ、う、うん!」

 

 鈴ちゃんの男装を見て思った。

 

 どんな格好をしていても、鈴ちゃんは鈴ちゃんなんだ。だから、僕だって、女の子になったって、僕であることに変わらないんだ。なにも、恥ずかしがることはないんだね!

 

 そんなことを教えてくれた鈴ちゃんに感謝しつつ、僕は横を並んで、歩くのだった。

 

『ただの開き直りでは?』

 

「しー」

 

      ◇   ◇   ◇

 

 そうして支度を終えた二人は歩き出したのだが、その後ろから、三つの影が二人を追うように動いていた。

 

「ねえ、止めようよ。こんなの氷雨に悪いって」

 

 一つの影はシャル。一時期は男装をしていた彼女だったが、今は女として学園に在籍しているので、女性用の制服を着ている。

 

「いやでも、何かあった時のフォローを頼まれたしな。ついて行くのは氷雨に悪いから、こういう形になったけど」

 

 もう一つの影は一夏。だが、彼の目的は正当なもので、昨日頼まれたそれを完遂するべく来たのだ。決して面白そうだったからではない。

 

「わ、私も別に面白そうだとか、氷雨の念願のデートがうまくいくか気になったとか、そういう理由でついてきてるわけではないぞ。ほんとだぞ?」

 

 最期の影は、氷雨の妹である箒だ。一夏から聞いて気になったとかそういう理由ではない……多分。

 

 そんな箒を訝しむように見るシャル。

 

「な、何だ、その目は。ほんとだぞ!? 決して興味本意ではないぞ!?」

 

「うん、分かったから」

 

 そういうキャラだったな、と思い出すように目を細めるシャル。

 

「おい、二人とも。氷雨と鈴が動いたぞ」

 

「なんか、一夏ノリノリだね」

 

「ああ、昔見た刑事ものみたいでちょっと楽しいぞ」

 

 そんな子供のように笑う一夏に、シャルも笑い返す。

 

「どこに向かっているのだろうな」

 

「氷雨は映画に行くって言ってたぞ」

 

「映画か~。うん、定番だね」

 

 氷雨にしては無難な選択にシャルはちょっと苦笑する。それだけ氷雨は本気なんだろうとも思ってしまい、なんだか複雑な心境になる。

 

「……」

 

 そんなシャルを一夏はじっと見つめる。

 

「ん? どうかした、一夏?」

 

「あ、いや、なんでもないぞ」

 

 シャルは視線に気づくも、一夏は誤魔化すように笑う。

 

「映画館に入ったぞ」

 

「お、どの映画見るかもちゃんと確認しなきゃならないからな、急ぐぞ」

 

「う、うん」

 

「ああ」

 

 一夏に促され、三人は映画館に駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 ……ちなみに、セシリアとラウラがいないのは、高度な政治的(以下略

 

 

      ◇   ◇   ◇

 

 映画館に着くと、僕たちはまずどんな映画があるかを見ていた。

 

「結構いろいろあるわね」

 

「そうだね~。最新作から定番のまで。古いのもやってる映画館って少ないよね」

 

 大体は最新作ばっかり何だけどね。

 

「ジャンルも多いわね……あ、見てよ、ホラーもあるわよ。『リング』だって」

 

「へ、へ~。ほ、ホラーもあるんだね~」

 

 泳ぐ視線を追って鈴ちゃんが回り込む。

 

「……もしかしてあんた、ホラー苦手なの?」

 

 なっ!

 

「そ、そそそんな馬鹿な話があるわけないよ! だ、だってそんな、どうせフィクションでしょ? げ、現実にさもあったかのような作り方してるけど、結局は嘘なんだから、そ、そんなものにどうして僕が怖がってるって証拠だよ!」

 

「ふ~ん」

 

 あ、鈴ちゃんの目が玩具を見つけた子供のように輝いてる。わ~、鈴ちゃんが嬉しそうだと僕も嬉しいな~。

 

「氷雨、今、あんたの後ろに」

 

「な、なにを馬鹿なことを。こんな、真昼間から幽霊なんているわけ……」

 

 そう言って後ろを向くと目があった。なにと? いや誰と? うん、それはね。

 

「「「……」」」

 

 こっちを窺ってる三人とだよ! なにを「やっちまった」って顔してるのさ一夏!

 

「ちょ、ちょっとトイレ言ってきていいかな?」

 

「え、良いけど」

 

「すぐ戻るから!」

 

 そう言って駆けだす。

 

      ◇   ◇   ◇

 

「(トイレってそっちにあったかな?)」

 

 駆けだした氷雨を見送りつつ、ふと疑問に思う。

 

「(あ、そう言えば、あいつどっちのトイレに行く気なのかしら。流石に、今は女性用かな?)」

 

 まあ、どっちでもいいか、と言うなんとも鈴らしい結論に至ると、彼女は少し悪い顔をする。

 

「氷雨って、ホラー苦手だったのね」

 

 そう言って、先ほど氷雨が目を逸らした映画のポスターを見る。

 

「良い席を取るために先に券を買ってあげるあたしって優しいね」

 

 そんなことを言いつつ、悪い顔の鈴はホラー映画の列に並ぶのだった。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 ……見失った。まさか、この僕から逃げ切るとは、一夏たちもなかなかやるようになったね。

 

『何様でしょうか』

 

「いやあ、それにしても、胸がそんなに大きくなくてよかったよ」

 

『? なぜ今それを?』

 

「え、だってこの大きさでさえ揺れると違和感があるのに、もっと大きかったら痛くて走れないよ」

 

『……変態ですね』

 

 いやいや、純粋な感想だから。別に自分の身体に欲情するほど、僕は落ちぶれちゃいないからね?

 

「あ、鈴ちゃん。お待たせ~」

 

 そう言って近づくと、鈴ちゃんは一枚の券を手渡してくる。

 

「はい」

 

「え、なにこ……れ……」

 

 その紙には、なんとも形容しがたい、おどろおどろしい女性の霊が写っていた。

 

「ひぃ!」

 

「いや~、運がよかったわよ。ちょうど真ん中の席取れたしね。さ、行くわよ」

 

「待って、待って待って。おかしいよ!」

 

 な、なんでよりにもよってホラーなのさ。恋愛映画とかありませんでしたか?

 

 あ、いや待てよ? 怖がった振りして鈴ちゃんに抱きつくというのはどうだろうか? いけるんじゃないかな? だって、鈴ちゃんは僕が怖がっていることを承知の上でこの映画を選んでるわけだし……。

 

「よし、行こう!」

 

 そんな感じで、僕らはドリンクを買って、席に着いた。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 いやああああああああ、無理無理無理無理。怖がった振りして抱きつく余裕もありません。

 

「いやああああ、後ろ! 志村! 後ろ後ろぉおおお!」

 

「あんた、ほんとは余裕あるんじゃないの?」

 

 そんなわけないじゃないですかぁぁぁああ! この感嘆符のつき方を見てもらえれば分かるじゃないですかぁぁああ!

 

 

 

 終始、そんな感じで、手を握るという思考さえ浮かばなかったんです。くぅ、一生の不覚!

 

      ◇   ◇   ◇

 

 氷雨に追われた後、一夏たち三人は無事、二人の見る映画を確認した後、二つ後ろの席を確保したのだった。

 

「その登場の仕方は卑怯だよぉぉぉおお!!!」

 

「ははっ。氷雨、すげえ怖がってるな」

 

「う、うむ。ぶ、武士として、な、情けないな」

 

「あの、箒。手を握るのはいいけど、ちょっと力を緩めてね?」

 

 似た者同士の兄妹であったことにシャルは笑みを浮かべる。氷雨の新しい一面を知ることができたことをちょっと嬉しく思うも、氷雨の隣が自分じゃないことに、少し表情は影を落とす。

 

 怖がる氷雨を見て微笑んでいる鈴。そこに自分が居ないのがたまらなく悔しいのだ。そして、鈴が自分では気づいているのか分からないけど、確実に氷雨に好意を示していることに気づいてしまい、自分の恋が叶わないものだと分かった。

 

「……」

 

 そんな沈んだ顔をするシャルを見るのは、一夏だった。なぜそんな顔をしているのかは大体想像がついた。自分に対する好意には鈍いが、周囲のそれに関しては鋭いのが彼である。

 

 そんな中、映画はラストのクライマックスを終え、エンドロールが流れ出す。

 

「氷雨たちが席を立つ前に帰るぞ」

 

「う、うむ。そうだな」

 

「え、後ろから追わなくていいの?」

 

 そのシャル問いに一夏は頷く。

 

「もう十分だからな。氷雨をからかうネタもできたし」

 

「……目的が変わってないか?」

 

 まだ、映画の余韻でシャルの服の裾を掴む箒の指摘に一夏は笑って答える。

 

「いいんだって。それに、よく考えたらあの氷雨だぞ? 俺のフォローなんて必要ないだろ」

 

「そ、そうなのかな~」

 

「そうだって」

 

 一夏の無理やりな言葉にシャルは察した。自分に気を使ったのだと。

 

「……一夏」

 

「うん? なんだ、シャル」

 

 暗がりで振り返る一夏にシャルは笑顔で言う。

 

「ありがとう」

 

「……おう」

 

 そのシャルの目に溜まる涙はこの暗がりでは誰も気づかないだろう。ハイパーセンサーがなければ……。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 映画が終わり、氷雨は喉をからしていた。

 

「り、鈴ちゃん。ぜ、全然怖くなかったね!」

 

「あんだけ叫んどいて、どの口が言うのよ」

 

 氷雨の虚勢に鈴は笑う。

 

 鈴はこの空気が好きだ。

 

 氷雨の馬鹿みたいな言動が創る、何も考えなくていい空気が気を張る必要がなくて心地がいいのだ。

 

 それは友達だから。友達として、好き。だから、居心地がいいのだと。

 

「映画館の次と言えばゲーセンだね!」

 

 その何も考えてなさそうな、屈託のない笑みが鈴を自然と笑顔にさせる。

 

 そんな関係は、もはや恋人なのでは? そう言われても、鈴はピンとこないだろう。

 

「先にお昼じゃない? 時間的にちょっと遅いけど」

 

 ちゃんと向き合う……その答えが、これなのだろうか。

 

「それじゃあ、お昼御飯食べたら、ゲーセンに行こう!」

 

 分からないけど、今はもう少し、友達でいたいと、鈴は思った。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 蛇足。

 ゲーセン。

 

「鈴ちゃん! DDRやろうよ!」

 

「なにそれ」

 

「え、大好きな男装姿の鈴ちゃんの略かな?」

 

「だとしたら、DDRをやるって言うのは余計わけが分からないけど……」

 

「よし、鈴ちゃんに僕の華麗なダンスを見せつけてやるよ!」

 

「よく分かんないけど、見とくわよ」

 

 ダンス開始。

 

「ちょっとあんた、スカート! スカート気にしなさいよ!」

 

「え? あ、大丈夫だよ。タイツ穿いてるし」

 

「大丈夫じゃないわよ! ちょっと、あんた! 何見てんのよ!」

 

 鈴ちゃんが大変でした。

 

 

 

 

「鈴ちゃんはレースゲームとかやる方?」

 

「うーん、やらないわけじゃないけど、ISの訓練の一環だったから、こんな車のやつは知らないわよ?」

 

「そうなんだ。じゃあ、初めてだね? 一緒にやってみない?」

 

「望むところよ!」

 

 レース開始。

 

「え、ギア? マニュアル? ちょ、ちょっとなんであんたはそんなに速度でるのよ!」

 

「アハハハハッ! いーじゃん! 盛り上がってきたねぇ!」

 

「ちょっと、教えなさいよ!」

 

 鈴ちゃんが大変でした。

 

 

 

 

「さてさて本命ですよ、鈴ちゃん」

 

「あ、プリクラね」

 

「そうそう。鈴ちゃんは撮ったことある?」

 

「当たり前じゃない。それくらい普通にあるわよ」

 

「くっ。その普通が僕には……うう」

 

「プリクラごときでどんだけ落ち込んでんのよ」

 

「ま、まあ、女の子同士のプリクラに妬くほど、僕は小さい人間じゃないからね!」

 

「え、一夏とだけど?」

 

「この劣等感は留まるところを知らない!!」

 

「はいはい、一緒に取ってあげるから、それでいいでしょ?」

 

「ほんと? やったーって、今の僕、女じゃないかぁ!」

 

「撮ったことに変わりないでしょ?」

 

「確かにそうだけど……」

 

「ほら、撮るわよ」

 

 ~少女(もはや疑う余地はない)撮影中~

 

「わあ、何これ? 目が光って気持ち悪いね!」

 

「そういうものなのよ」

 

「うわぁ、落書きとかあるの? よし、『鈴ちゃんLOVE』と」

 

「ちょっと!」

 

「フレーム? フレーム……あ、このラーメンどんぶりのふちに描いてありそうな模様にしようよ!」

 

「もう、それでいいわよ……」

 

 結論、鈴ちゃんが大変そうでした。

 





いや~、超超難産でした;;
短編ってやっぱり難しいとしみじみ思いました
書きたいこと詰め込もうとするとアウトですし、かといって話の流れがなければカオス(前話参照)ですし


氷雨「でも詰まってたのはそもそもどんな話にするかだよね?

……

氷雨「短編かどうかって関係なくない?

せやな



あ、今回も長いです 10000字です
本編の三話分です
なんてこったい
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