鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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多分、シャル回


星合の七夕祭り その4

 

 

 一夏の部屋

 

 廊下で扉の前まで来た箒はそのノブに手をかけることを躊躇っていた。カギはある。中に入ることは問題ない。しかし、一夏と二人きりで会った後、冷静でいられる自信が無いのだ。

 

 自分が冷静さを欠いて暴走してしまう癖があることを箒は自覚している。故に踏ん切りがつかないのだ。

 

「(こんな時、氷雨ならなんて言うだろう)」

 

 氷雨がここに居れば、笑顔で自分の背中を押してくれるだろうことは容易に想像できた。そして、それが自分にとってどれほど大きな安心感になるかも。しかし、それが分かっても本人がいなければその安心感は得られない。高まる鼓動は抑えようのないものになっているのだ。このまま一夏と目が合えば間違いなく自分は冷静さを失い、一夏の一挙動に反応し、不快なことをしてしまうだろう。

 

「(どうすれば……)」

 

 そんな風に悩み、立ち往生している箒のところへ自室へ向かおうとしていたセシリアが近づいてきた。

 

「あら、箒さん。どうしましたの?」

 

「あ、いや、そのだな……」

 

 どうしてセシリアがここに居るのかという疑問や自分がしようとしていることがばれるのではないかという危惧から、何とも覚束ない返答になってしまった。

 

 そんな箒の様子を見てかセシリアは状況を察して、箒が何をしようとしていて、何を躊躇っているのかを大体理解したのだ。

 

「はあ、貴女はもう少し兄を見習った方がいいですわね」

 

「な、なに!?」

 

 いきなりそんなことを言われた箒はどういう意味なのか図りかねていた。

 

 そうしていると、セシリアは箒の両肩をがしりと掴みしっかりと箒の目を見据えた。

 

「良いですか、箒さん。こんなところで自分の思う通りの行動ができないのであれば、いざ大事な場面になった時にとっさには動けませんわよ」

 

 それはどこかで聞いたことのある言葉だった。

 

「失敗するかもしれないと恐れるのは、本当に後戻りのできないときだけにするべきですわ。今失敗したところでその代償は数日間気まずくなるだけで済みますわ。二度と会えなくなるわけでもないのでしたら、やって後悔した方が得ですわよ」

 

 セシリアは真剣な顔で箒にそう諭した。その言葉は箒の中にすんなりと入ってきて、どことなく知っている安心感を与えた。

 

 しかし、箒は不思議だった。この様子であれば、セシリアは自分が何をしようとしているかも理解しているように見える。にもかかわらず自分の背中を押すようなことをしているのはどうしてか。セシリアも一夏のことを好きなのではないのか……。

 

「セシリア、お前は……」

 

「勘違いしないで下さる? わたくしは借りを返しただけですわ」

 

「借り?」

 

 身に覚えのない借りに箒は首をかしげるも、セシリアは平静を取り戻した箒を見て離れた。

 

「うまくいくといいですわね」

 

「あ、ああ」

 

 訳も分からないまま、箒はセシリアを見送った。見送ったのちに、セシリアの言葉がどうにも氷雨が考えそうな言葉であると思い、それが関係しているのかとも考えた。

 

 しかし、それも憶測に過ぎないので箒はそれ以上考えることをやめた。

 

 ふと立ち返ってみると、セシリアのおかげで大部分を占めていた不安が消えていることに気が付いた。

 

「セシリア……ありがとう」

 

 箒は思い切ってノブをひねる。そして、開け放ったドアの先にはこれから浴衣に着替えようとしている下着姿の一夏の姿があった。

 

「「あ……」」

 

 時が止まる。二人の間には何とも言えない気まずい空気が広がり、箒は一夏の姿を見て動けなくなっていた。

 

「う」

 

「う?」

 

「うわあああああ!」

 

 勢いよく閉められたドアの音はセシリアの部屋まで届いてたという話だった。

 

     ◇   ◇   ◇

 

 会場

 

「?」

 

「どうしたの、氷雨?」

 

 なにやらどこかで大きな音がした気がしたのだけれど、その音の方に視線を向けてみたところで特筆して何かがあったわけではなかった。

 

「気のせいだったみたい。なんでもないよ」

 

 後方にいたシャルにそう答えてから僕は視線を目の前の水槽に戻した。今僕は、金魚と死闘を繰り広げている最中だ。

 

「しかし、この金魚掬いというのは面白いものだな」

 

 隣で熱心に金魚を目で追っているラウラがそう答える。

 

「ただ金魚を掬うだけでは面白くないと、わざわざ水に耐性のない紙で行うとは。合理的ではないが、計算されているな」

 

 いや、多分店の売上的な問題が一番の要因だと思うんだけど。そんな無粋な回答も浮かんできたけど、祭りの場にそれはふさわしくないよね。楽しめているならそれ以上の何かはいらないのですよ。

 

「って、鈴ちゃんすごい手馴れてるね」

 

 ラウラとは反対側の隣に座る鈴ちゃんが持つ器にはすでに何匹もの金魚が跳ねていた。

 

「そう? まあ、日本にいたころはこれで一夏と競ったりもしたからね」

 

 そう得意げにポイを掲げ笑顔を浮かべる鈴ちゃん。なるほど、確かに一夏はこういうの好きそうだし、よく行ってたんだろうね。

 

「僕も負けてられないね。神社の息子として、縁日で鍛えられたこの腕、見せてあげるよ!」

 

「へえ、見せてみなさいよ。言っとくけど、あたし結構自信あるからね」

 

 そんな挑戦的な鈴ちゃんを見て、後ろからシャルがあることを提案してくる。

 

「じゃあ、とった数が一番少なかった人に罰ゲームとかどう?」

 

 自分は参加していないからって面白がってない? まあ、僕も面白そうだから全く問題ないけどね!

 

「ふふ、あとで吠え面かいても知らないよ?」

 

「言ってなさいよ。実力の差っていうのを見せてあげるから」

 

「何故か私まで巻き込まれたが、無論負ける気はないぞ」

 

「みんな頑張ってねー」

 

 よし、罰ゲームはともかくとして、ここで一つ鈴ちゃんにカッコいいところを見せてやろう!

 

『金魚掬いに格好良いも悪いもないでしょう』

 

 ……そういえばそうだね。

 

 いっぱい金魚が取れてモテるのは、ただ足が速いだけでモテた小学生までのステータスだよね。

 

「しかし、ここで漢を見せないでどこで見せるというのだ!」

 

「金魚掬いとはそこまですごいものなのか、お兄ちゃん」

 

「そんなことないから安心しなさい」

 

 漢氷雨、この一投にすべてをかける!

 

『数を競うというのに全てをかけるのですか』

 

 大きく振りかぶった右腕がうなりを上げて水面近くを泳いでいた一匹の金魚の真下を潜り抜ける。その素早いポイの動きが作り上げた水流により、その金魚は上へ飛び上がる。跳ね上がる金魚の真下に器を持っていき、僕は金魚を確保したのだった。

 

「ふふ、決まったね」

 

「……決まってないわよ」

 

 隣の鈴ちゃんからなにやら怒りの色が含まれる声が聞こえてきた。え、怒り?

 

 恐る恐る横に視線を向けると、そこには水を滴らせる鈴ちゃんの姿があった。前髪が濡れて額に張り付いている感じにどことなく艶めかしさを感じて僕は少し頬を紅くする。

 

「み、水も滴る可愛い鈴ちゃんだね!」

 

「そうじゃないでしょ!」

 

「真っ先に出てくる言葉がそれな氷雨に驚きを通り越してもう称賛しちゃいそうだよ、僕は」

 

「さすがお兄ちゃんだな」

 

「なんであんたらは肯定的なのよ……」

 

 え、でもなんで濡れてるの? ……あ、僕が勢いよく掬い上げた時に水が顔にかかったってこと? う、うわああああああ、GJ! じゃなかった!

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

 人目をはばかることなく僕はその場で謝罪の意を込めた土下座をする。前に一夏に

「お前、土下座好きだな」って言われたけど、好きなわけじゃない。ただ、首を垂れるこれが一番僕の謝罪の意思を伝えやすいだけなんだよ。

 

 と、謝ってるだけじゃだめだ。僕はすぐさま頭を上げて巾着に手をかけて鈴ちゃんの顔を拭くものを探す。

 

 しかし、ハンカチはさっきセシリアに貸したので手元に拭く物はなくなっていた。

 

「しまった。ハンカチがない! 仕方ない。僕の浴衣をちぎって、その布きれで応急処置を……!」

 

「やりすぎよ、馬鹿」

 

 鈴ちゃんに頭を小突かれて僕は袖にかけた手を止めた。顔を上げ、鈴ちゃんの方を伺うと、自分のハンカチで顔を拭いているところだった。

 

「うう、ほんとにごめんなさい。調子乗って、ごめんなさい」

 

「あんた毎回反省するけど、毎回失敗してるわよね」

 

 そう言って鈴ちゃんはため息を吐いた。うう、これやっぱりすごく怒ってるよね。そんな空気がひしひしと伝わってくるもん。

 

「お、怒ってますよね?」

 

「んー、どうかしらねー。ちょっと機嫌は悪くなったかもしれないわねー」

 

 あれ? あんまり怒ってない?

 

「じゃ、あたしの機嫌がよくなるように、罰ゲームで焼きそば人数分買ってくること。いい?」

 

 少し意地の悪い笑顔を浮かべながら鈴ちゃんは僕を指さしてそう言った。本当は怒ってないけど、僕の罪悪感をなくすために罰を与えてくれたのかな。なんというか、鈴ちゃんらしい気の使い方で僕は表情を明るくする。

 

「もちろん! ……ってあれ? 罰ゲーム?」

 

 僕は手元のポイを見る。そこには確かに破れたポイが握られていた。

 

「あれだけ水の中速く動かしたらそりゃ破けるわよ」

 

 ぐぬぬ。漫画とかだとああいう表現でいっぱいとってるのに……。

 

「あ、でもでも、僕一匹とったよ? 流石に初めて金魚掬いをやるラウラは失敗してるでしょ」

 

 そう言いながら振り返ると、器いっぱいに掬われた金魚と慣れた手つきで次々掬うラウラの姿があった。もはや掬われた金魚が可哀想なくらい器の中はすし詰め状態だ。

 

「ん? ああ、最初は苦戦したが慣れてみれば簡単なものだな。ナイフの扱いに似ているところもある。これはクラリッサに報告だな」

 

 完敗してました。

 

「で、なんだっけ? 縁日で鍛えたんだっけ?」

 

「ぐぬぬ」

 

 嬉しそうな笑顔で煽られると腹が立つどころか、可愛いとか思ってしまう。

 

「わかったよ! 買ってきますよ! 青海苔と鰹節は乗せてもらっていいよね!」

 

「うん。お願いね」

 

 そういって鈴ちゃんに笑顔で見送られる。鈴ちゃんもラウラもまだポイは破けてないみたいだし、続行するようだ。

 

「あ、僕も行くよ」

 

 後ろからシャルが駆け寄ってくるので僕は振り向いた。

 

「待っててくれてもいいよ? 罰ゲームだし」

 

「四つも持てないでしょ? それに見てるだけじゃ手持無沙汰になっちゃうもん」

 

 そういってシャルは僕の隣に並ぶ。まあ、確かにずっと見てるだけじゃ面白くなくなっちゃうよね。

 

「そういうことなら、一緒に行こうか」

 

「うん」

 

 そんなわけで僕とシャルは焼きそばの屋台へ歩き出した。

 

     ◇   ◇   ◇

 

 焼きそばの屋台につく前に綿あめを買ってシャルに渡した。最初は遠慮していたシャルだったが、ついてきてくれたお礼だと言って半ば無理やり渡すと受け取ってくれた。

 

 故にシャルの手は空いていないので受け取った焼きそばはすべて僕が持った。

 

「な、なんかごめんね。半分持つためについてきたのに」

 

「いやいや、気にしないでよ。どうせ蓋付きだから重ねても問題ないしさ」

 

 まあ、それを狙って綿あめを渡したわけだし、全く咎める気にはならないよね。

 

 鈴ちゃんたちのもとへ戻るべく、僕らは来た道を引き返していく。その道中で僕はみんなに聞いてる話題を出した。

 

「シャルは七夕で何をお願いするの?」

 

「え、お願い? うーん、そうだなぁ……」

 

 そんな感じでシャルは綿あめを摘まみながら思案顔になる。どうやらまだお願い事は決めていなかったようだ。

 

「考えてなかった?」

 

「うん。というより、思いつかないかな」

 

 笑顔を浮かべながらそう返すシャル。思いつかないとは、何とも無欲なんだなぁ。

 

「なんていうかね。僕はもうこの現状に満足しちゃってるんだ」

 

 そんなことを言いながら、なぜかシャルの表情は少し曇る。屋台からの光の加減でシャルの表情に影が落ちているだけかもしれないけれど、俯き加減になっているのは確かだった。

 

「お母さんが死んでから、毎日苦痛でしかなかったからね。ここに来て、一夏や氷雨に助けられて、やっと日常に戻れた気がするんだ。みんなと一緒に過ごしてるだけで、すごく安心する。僕がいていい場所がここにあるんだってね」

 

 シャルは少しずつ千切って綿あめを口に運んでいく。

 

「でも、それもずっと続くわけじゃない」

 

 そうして少しずつ減っていった綿あめは最後には割り箸だけになっていた。

 

「いつかみんなここを卒業したら、別々のところに行かなきゃならない。そしたら、僕はまたあの頃に戻ってしまう……」

 

 シャルはその割り箸を近くにあったゴミ箱に捨てに少し僕から離れる。手からするりと抜けるように落とされた割り箸は段ボールにビニール袋を張り付けた簡素なゴミ箱に吸い込まれる。

 

 それを見送ったシャルは再び僕の方に駆け戻ってきた。

 

「だから、あえてお願いするなら、いつまでもみんなと一緒にいれますように……かな。えへへ、おかしいよね」

 

 自嘲気味に笑うシャル。でも僕はその願いが自嘲するような願いには思わなかった。

 

「なんで? いいお願いだと僕は思うよ?」

 

「そ、そうかな?」

 

 僕が肯定したことにシャルは少し驚いたような顔をする。

 

「でも、叶わない願いだよ」

 

「いやいや、そんなことないさ」

 

 シャルの言葉を僕は即座に否定する。一緒に居たいという願いはそんなに難しいことだろうか? 僕はそんな風には思わなかった。

 

「ありきたりな言葉に聞こえるかもしれないけどさ。どれだけ遠くに居ても僕らは繋がってるんだよ」

 

「ふふっ。もしかして、心で?」

 

 シャルが少しからかう様な口調で答える。まあ、それもありと言ったらありだよね。

 

「模範解答だけど、僕的には不正解」

 

 シャルは不思議そうな顔をする。他に何があるのかと言いたげだ。

 

「正解はネットワークでしたー」

 

「え」

 

 予想外だったのか、シャルは呆然とする。というより、そういうものを期待していたわけじゃないという顔をしているようにも見えるね。

 

「居場所っていうのはね、別に現実の世界になきゃいけないってわけじゃないんだよ? どんなに辛い日々でもね、逃げられる場所が一つでもあればそれだけで戦えるんだからね」

 

 心の支えになるなら居場所のカタチなんてどうだっていい。ただ自分を受け入れてくれる、そんな場所が一つでもあれば、それは原動力になる。

 

「辛いことがあったらメールでもすればいい。何ともないつまらない日なら電話すればいい。予定のない休みがあれば訪ねればいい。四六時中一緒に居られなくても、こんな繋がりでも、多分それは居場所って言っていいものになるんじゃないかな?」

 

「氷雨……」

 

「思い出話に花でも咲いたらそれでもう元気になるはずだよ」

 

 まあ、僕の思い出話の大部分は誰にも伝わらないけどね。え、それを後悔してるかって? 前の僕には咲く花もないし、咲かせる友人もいないよ?

 

「だから、今はその思い出話になるような思い出をいっぱい作ろうね!」

 

「えっ?」

 

「今が楽しくなきゃ、思い出話も楽しくないしね! シャルは今に満足してるっていったけどね、僕はまだまだ満足してないよ!」

 

 僕は焼きそばを持ったままの両手を高く突き上げる。

 

「もっともっと楽しまないと気が済まない! 残念だけど、僕と一緒にいたが運の尽き。シャルにも付き合ってもらうからね!」

 

 そういって僕はシャルに笑いかける。すると、シャルは一瞬キョトンと呆けた顔になり、その後、満面の笑みで頷いた。

 

「うん!」

 

「よし。それじゃあ、ひとまずはあのあんず飴を食べよう! その次はラムネを飲んで、次にいか焼きも食べようね!」

 

「もう、なんだか食べてばっかりだね」

 

 シャルは呆れたように言う。しかし、その顔は楽しそうだ。

 

「食は文化だからね。人の食事なんて、最早娯楽でしかないからね!」

 

「あはは、そうだね!」

 

 先ほどの曇り顔はどこへやら、楽しそうな笑顔になるシャルを見て僕はほっとした。あのままだったら、いつかその不安が大きくなって、一人になった時に本当に絶望しちゃいそうだったよ。

 

 空を見上げる。快晴の夜空には綺麗な月がよく見えた。

 

「やっぱり晴れてた方がいいもんね」

 

「早くいこうよ、氷雨!」

 

 シャルに急かされ、僕は歩き出した。僕だって、みんなと一緒に居たい。だから、今を楽しまなきゃね!

 

 

 

 

 

 その後、冷めた焼きそばを手に、僕とシャルは鈴ちゃんに怒られたのでした。

 

 

 






案の定終わらない、エンドレスセブン!
長くする予定はなかったのに、気づけば20000弱……


あ、どうでもいいですがTwitterを始めようと思いました
一応個人的なアカウントもあるんですが、なんとなく分けてみようかなと

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垢はプロフに書いておきます
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