鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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完結
七夕っていつだっけ?


星合の七夕祭り その5

 

 会場

 

 着替え終えた一夏と共に箒は七夕まつりの会場に戻ってきた。一夏の下着姿を目の当たりにしてしまったことにより、二人の間には何とも言えない気まずい空気が流れていた。

 

 どうやら目覚ましはしっかりと一夏を起こしていたようであるが、起こし方が目覚ましから出ていたアームにより宙吊りにされるというものであったので、そこからの脱出に時間を食われて一夏は遅れていたようだ。

 

 やっと抜け出して着替えようとしたところに箒が入ってきたのであのような形の対面になってしまったのだった。

 

「(くっ。氷雨の奴が余計なことをしていなければ……)」

 

 決心していざ踏み出してみればあのざまであったのだ。恨み言の一つも垂れたくなるというものだった。

 

「おお、結構本格的な屋台をやってるんだな」

 

 そんな箒の気を知ってか知らないでか、一夏は祭りの会場に立ち並ぶ屋台を見て嬉しそうな声を上げていた。昔と変わらぬ一夏のノリになんだか安心してしまった箒は少し笑う。

 

「なんだよ、箒」

 

「いや、お前が子供みたいな反応をするものでな。お前も変わらないな」

 

 二人の間にあった気まずい空気は気づけばなくなっていた。

 

「祭りってそう言うもんだろ。……なんだか昔を思い出すな」

 

 そう言って一夏は少し遠い目をする。その表情がなんとも年寄り臭く見えた。

 

「また年寄りみたいな顔しているな」

 

「そうか?」

 

「ああ。お前の癖だぞ」

 

「うーむ。自分ではそんなつもりはないんだけどな。氷雨にもよく言われるけど、そんなに年寄りくさいか?」

 

「否定はできないな」

 

 そう答える箒の言葉に一夏は大げさに落ち込む。そんな一夏の反応に少し言い過ぎたかと思う箒であったが、一夏はすぐに顔を上げ冗談めかした笑顔を浮かべた。

 

「なんてな。それより、箒」

 

 一夏は箒の方に向き直ると、手に持っていた綺麗に包装された箱を差し出した。

 

「誕生日おめでとう」

 

 その言葉を受けて箒は驚くとともに、一夏が自分の誕生日を覚えていてくれたことを嬉しく思った。

 

「お、覚えていたのか……」

 

「当たり前だろ? 長い付き合いなんだ。忘れるわけないって」

 

 そうあっさり答えるもので、箒は嬉しさを隠しきれず笑顔になる。

 

「あ、ありがとう、一夏。その……開けてもいいか?」

 

 受け取ったプレゼントに視線を落としたのち、箒は一夏にそう尋ねた。

 

「もちろん」

 

「そ、そうか……」

 

 はやる気持ちを抑えて箒は丁寧に包装をはがしていく。そうして現れた箱のふたを開けると、中には綺麗な赤色のリボンが入っていた。

 

「こ、これは?」

 

「箒、今でも昔俺が上げたリボン使ってくれてるだろ? だから、どうかと思ったんだけど、だめだったか?」

 

「い、いや、そんなことはないぞ。あ、ありがとう」

 

「おう。喜んでもらえて何よりだ」

 

 そう嬉しそうな笑顔を浮かべる一夏に、箒もつられて笑顔を浮かべる。

 

 そして、箒は心の中で氷雨に謝りながら、簪を外し、リボンをつける。

 

「どうだ? そ、その……に、似合っているか?」

 

 そう問いかけると、一夏はその頬を赤らめてこちらを伺う箒に少しドキリとする。

 

「お、おう。似合ってるぜ」

 

 照れくさそうにそう答える一夏に、箒は嬉しくなった。

 

 一夏は照れ隠しをするように屋台の方へ視線を移す。

 

「それじゃ、行こうぜ。せっかくの祭りなんだし、楽しまなきゃ損だからな」

 

 一夏は箒の手を取って引く。その一夏の行動に少し驚いた箒であったが、しっかりと一夏の手を握り返した。

 

「……ああ。そうだな!」

 

 そうして、二人の七夕は始まったのだ。

 

     ◇   ◇   ◇

 

 会場

 

 ひとしきり遊んだ後、僕らは最後にグラウンドの一角に設置されたイベント会場に足を運んだ。そこには昼間に僕が切り刻んだ笹が並んでおり、そこから伸びる枝には生徒たちの願いが書かれた無数の短冊が飾り付けられていた。

 

 別行動をしていた一夏と箒、セシリアともそこで合流し、最後にみんなで短冊を飾ろうという話になっていたのだ。

 

「いやー、なかなかに楽しかったね。昼間に頑張ったかいがあるってものだよ」

 

「氷雨は反省文書いてただけだろ?」

 

「いやいや、そんなことないからね? この笹切ったの僕だからね?」

 

 なんだか設置されている笹が予定されていた数よりも多いのはきっと気のせいだろう。元々こんなもんだったはずだよね。

 

 用意されている短冊を手に取り、僕らは各々の願い事を書き込んでいく。

 

「そういえば、氷雨はどんなお願い書くの?」

 

 自身の短冊に願いを書き終えた様子のシャルが僕に尋ねてくる。ああ、みんなに聞いておいて、僕の願いは言ってなかったね。

 

「そんなこと決まってるじゃないか」

 

 そう答えると、まだ言ってないのに何故かシャルは納得したような顔つきになる。ちょっと待って、気が早いよ、シャルさん。

 

「僕の願いはもちろん、鈴ちゃんといつまでも一緒に居られますように、だよ!」

 

「うん、知ってた」

 

「予想はしてましたわ」

 

 シャルもセシリアも予想通りだった僕の回答に頷く。まあね、何のひねりもないお願いだからね。でも、僕の中では一番のお願いだからね。面白くないと言われても変えるつもりはないよ。

 

「そんな風に想われてる鈴の願いは何だ?」

 

 そうラウラが問いかけると、鈴ちゃんは慌てたように自身の短冊を取り上げ、見られないように後ろ手に隠してしまった。

 

「あ、あたしのは別にいいじゃない。そ、そんなことより早く飾るわよ。後ろもつっかえてるんだから」

 

 その鈴ちゃんの指摘通り、まだ短冊を書いていない生徒たちが僕らが退くのを待っていた。

 

「それもそうだな。じゃ、みんな飾ろうぜ」

 

 一夏が先に笹のもとへ移動するので、僕らもそれを追って移動する。

 

「? どうしたの、鈴ちゃん。行くよ?」

 

「わ、分かってるわよ」

 

 何故か鈴ちゃんは少しの間動こうとしなかった。まだ書けていないのかな?

 

「先に行った方がいい?」

 

「え……。あ、うん。そうして。後で追いつくから」

 

 みんながいたから書きづらかったのかな? そう思ったら邪魔するのも悪い気がして、僕は一夏たちのもとへ先に行ったのだった。

 

     ◇   ◇   ◇

 

 みんなが飾り終えたころに鈴ちゃんも追いついてきたけど、その時にはもう短冊を持ってはいなかった。

 

「あら、鈴さん、短冊はどうしましたの?」

 

「あー、あまり見られたくなかったから、別の場所に飾ってきたのよ」

 

 そう答える鈴ちゃん。そんな鈴ちゃんにシャルが不思議そうな顔をした。

 

「そんなに見られたくなかったの?」

 

「い、いいじゃない、別に。あたしの勝手でしょ?」

 

 なんだか様子のおかしい鈴ちゃんだったけど、本当にどんなお願いしたんだろう? ちょっと気になるね。

 

 気にはなるけど、隠すってことはあまり追求してほしくないんだろうから、僕はその話題を終わらせるようにみんなに問いかける。

 

「これからどうする? 祭りが終わるまではもう少し時間あるけど、みんなでまた屋台を回る?」

 

 結構堪能したからここで解散してもいいけど、せっかく集まったんだからもう少し遊んでいたいという気持ちもある。

 

 僕が問いかけると、鈴ちゃん以外のみんながなぜか顔を見合わせ、何かを確認し合う様なアイコンタクトをとった。

 

 すると、何やら突然一夏が芝居掛かったように声を上げた。

 

「しまった! 俺はこれから会場の片づけを会長に頼まれてたんだ!」

 

 え、いや、まだ終わるまで時間あるけど?

 

「えっと、あ、ぼ、僕も!」

 

「あ、わ、私もだ」

 

 それに便乗する形でシャルと箒もそんなことを言い出す。

 

「私はこれからクラリッサへの提示報告があるから、別行動させてもらう」

 

「わたくしはテニス部の屋台に顔出しに行きますわ」

 

 と、後の二人も何やら別行動を望んでいる様子だった。ん? となると、必然的に残った僕と鈴ちゃんは二人きりになるってこと?

 

「じゃ、そういうことだから」

 

 そう言って一夏と箒とシャルはステージ横にある運営テントの方へ走り去っていった。

 

「では、わたくしもここで失礼しますわ」

 

「お兄ちゃん、今日は楽しかったぞ」

 

 そんなことを言ってセシリアとラウラもどこかへ行ってしまい、笹の前に僕と鈴ちゃんだけが取り残される。

 

「……」

 

「……」

 

 僕と鈴ちゃんはお互いを伺うように視線を交わした。

 

「鈴ちゃん、どうする?」

 

 そう尋ねてみるも、何か考え事をしているのか、鈴ちゃんは答えなかった。

 

 疲れているのかもしれないね。結構歩いたし、お祭りって楽しいけど、なんだかんだ疲れるからね。

 

「じゃあ、僕の部屋に行って二次会でもしようよ」

 

「えっ?」

 

 僕の提案に鈴ちゃんは驚いた顔を見せる。

 

「お祭りは堪能したしね。一夏ほどじゃないけど、おいしいお茶入れるから一息つかない?」

 

 鈴ちゃんは笹の方をちらりと見る。それが何を意味しているのか、僕にはわからなかったが、視線を戻した鈴ちゃんは頷いて肯定の意を示してくれた。

 

「それじゃ、行こうか」

 

「うん」

 

 そうして、僕たちは寮の方へと歩き出した。

 

     ◇   ◇   ◇

 

 会場の外に出ると、祭りの賑わいとは対照に人気のない、夜道が続いていた。 照らすのは月明かりだけ……ってわけでもなく、街灯は設置されてるけどね。

 

 人の目が無くなったのを確認すると、横を並んで歩く鈴ちゃんがそっと僕の手を握ってくる。その細い指先を確かめるように、僕も握り返した。

 

「今日は楽しかったね」

 

「そうね。あんた、いつも以上にはしゃいでたもんね」

 

「そうかな? 自分で言うのもなんだけど、いつもあんな感じじゃない?」

 

「ま、確かにそうかも」

 

 そんな風におしゃべりする。涼しい夜風が鈴ちゃんの髪を撫でるように通り抜け、それを鈴ちゃんは手で押さえる。その一連の動作がなんだか儚げに見えたのは、鈴ちゃんの表情故だろう。

 

「……何かあったの?」

 

 そう僕が尋ねると、鈴ちゃんはやっぱりばれたかと少し苦い表情を浮かべる。

 

 一つ息を吐いてから、鈴ちゃんはそっと話し始めた。

 

「あたし、結局短冊は飾れなかった。お願いとかはあるのよ? でも、それを短冊に書いて笹に飾るっていうのは、なんか躊躇っちゃって」

 

 そこまで言って鈴ちゃんは口調を変える。少し明るく、それでいて寂しげに。

 

「織姫と彦星ってすごいわよね」

 

「どうして?」

 

 鈴ちゃんは空を見上げる。つられて僕も見上げてみる。

 

「だって、年に一度しか会えないのに、お互いがお互いを一途に想いあってさ……」

 

 そう言いながら、鈴ちゃんの手は少し震えていた。それは何かを恐れているように僕には思えた。

 

「鈴ちゃん……」

 

「……でも、あたしの願いは去年と違うものになってた。この想いはずっと変わらないって思ってたのにね」

 

 鈴ちゃんは視線を落とし、自嘲気味に笑う。

 

「今、あたしが抱いてる気持ちだってそう。来年にはまた変わってるかもしれない。そう思ったら、怖くなって……」

 

 震えていた手に力がこもり、細い指が僕の手を強く握った。

 

「だから、短冊には書けなかった」

 

 それは鈴ちゃんが真面目だから抱いてしまった不安だろう。一途な二人と比べて、自分の気持ちはなんて移ろいやすいんだろうか、と。

 

 都会の空じゃ二人を隔てる天の川なんて見えやしないのに、どうして鈴ちゃんを苦しめるんですかね? どうせみんなに隠れて毎日会ってるんでしょ? 変に一途なんて気取ってるから、鈴ちゃんが傷付くんだよ! 宇宙進出したら真っ先に星を割りに行きたいよ。

 

 とはいっても、鈴ちゃんが不安に思っているそれは、別段に気にすることでもないと思う。

 

「そんなの、僕だって同じだよ」

 

「え……」

 

 それに鈴ちゃんは驚きを露わにする。

 

「あんたが?」

 

「そうだよ。僕の想いだって変化してるよ。別に一途なんかじゃない」

 

 そういうと、鈴ちゃんは少し不安げな顔になる。

 

「初めて会った時の僕、覚えてる?」

 

「忘れるわけないじゃない」

 

「だよね」

 

 あの時の自分を思い出して自嘲する。我ながらバカだったなーって。

 

「あの時の僕の好きは押し付けるような好きだった。でも、鈴ちゃんに怒られて、僕の好きは変わっていった」

 

 変わったというよりは、新しく芽生えたっていう方が正しいかな。

 

「僕の好きは、目の前で反応が返ってくる鈴ちゃんへの好きになった」

 

 それはまた違う好きという感情だ。

 

「目の前で照れる鈴ちゃんへの好きに変わったり、俯いて不安げな顔をする鈴ちゃんが好きだったり、男装した鈴ちゃんへの好きだったり……」

 

 そんな僕の言葉に何故か鈴ちゃんは呆れたような顔をする。

 

「今は浴衣姿の鈴ちゃんへの好きかな」

 

「ふふっ。なによ、それ」

 

 笑顔を見せてくれたことに僕は安堵する。

 

「変わらない想いなんてない。だって、人は時間と共に変わっていくものだもんね。でも、それでも僕は鈴ちゃんが好きって声を大にして言えるよ。だって、鈴ちゃんが変わっていくように、僕の好きも変わっていくからね」

 

 そう言い終えると、僕は鈴ちゃんの方に視線を向ける。

 

「だから、僕は鈴ちゃんの気持ちが変わっても、僕の方を見てくれるように、ずっと変わり続けるだけだよ」

 

 変わらぬ想いが良いわけじゃない。いつまでも好きでいられるなんて安易なことは言えない。もし鈴ちゃんが変わってしまったら、その時の僕の気持ちがどうなっているかなんてわからない。

 

 だから、いつも伝えたい。

 

「今、僕は目の前にいる鈴ちゃんが好きだよ」

 

「……バカ。恥ずかしいじゃない」

 

 そう言ってくる鈴ちゃんであったが、その表情は穏やかであり、さっきまであった不安の色は見えなかった。

 

「……あたしだって、今感じてるこの気持ちを否定する気はないもん。だったら、不安になるのはおかしいわよね」

 

「そうそう。それにもし愛想が尽きたってことになったら、それは僕のせいだしね」

 

 そんな風に笑いながら言う。

 

「だからこそ、愛想尽かされないように頑張らないとね!」

 

「はいはい。頑張ってね」

 

「なんで他人事!?」

 

 僕と鈴ちゃんは二人で歩く。

 

 歩幅を合わせて、同じ景色を見ながら、同じ道を進んでいる。

 

 いつまでもそれが続いてほしいと、願いながら。

 

「短冊、飾りに戻る?」

 

「別にいいわよ」

 

 不安がなくなったら短冊も飾りたくなるかと思ったけどそうではないらしい。

 

「なんで?」

 

 僕がそう問いかけると、僕の顔を見上げて肌を仄かに紅く染めながら微笑む。

 

「願わなくても、あんたとなら叶うって、確信しちゃったからね」

 

 そんな天使のような微笑みに、僕は悶えてしまう。

 

「やっぱり鈴ちゃん可愛い!!」

 

「はいはい」

 

 そうあしらいながらも笑顔な鈴ちゃんに、本日も惹かれっぱなしであった。

 





はい。鈴ちゃんヒロイン回でした
なぜ、すべての話が鈴ちゃんヒロイン回じゃないんですかねぇ(呆れ


七夕はもう先週の話だというのにようやく完結しましたよ
ちなみにですね
この話の氷雨くんと鈴ちゃんの関係に違和感を持たれた人もいると思いますが、時系列的に考えると七夕時点で二人は……だったのでこうなりました
まあ、直接表現は避けましたが、これは本編時空の延長線にあるという風に思ってください
(代わりに福音戦が少し早くなります

蛇足
ちなみにこの二人の後ろに新聞部がいて、翌日学園の新聞に写真が載るのは秘密
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