鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
二組。
一夏との喧嘩も解消し、気が軽くなったように思える鈴の表情は何故か微妙なものだった。
それもそのはず、周りを囲むはいつもの仲良し4人。彼女たちは今朝、清々しい笑顔で教室に入ってきた鈴を見て、確実に何かあったと察したのである。
故にこのように鈴の机を取り囲み、事情を聞く、もとい吐かせるために迫っているのだ。
「それで、何があったの? 言ってみ? このティナさんに言ってみ?」
「ネタは上がってんだ! さっさと吐け! 吐かないと、うひひ、酷い目に合うよ」
「途中まで刑事やのに、最後ただのエロおやじやん」
「浅はかなり」
とはいえ、彼女たちは大体の予想を付けている。連日の鈴の悩みと言えば氷雨のことに関してであるので、今日、このような晴れやかな表情で登校するということは、その悩みが解消されたが故のものであることは確定的に明らかなのである。
「べ、別に何もないわよ」
そうはぐらかすも、別に鈴は自分の気持ちを打ち明けたくないわけではないのだ。仲良くしている彼女たち。時に相談に乗ってもらったりもした恩もある。だが、それ以上に友人として隠すような感情ではないという認識が鈴にはある。
しかし、目が泳ぐのはそれを口に出して、自分の気持ちを明示する事が恥ずかしいからだ。
「何もない人はそんな顔しない!」
「ふひひ、いい事言った」
「その通りやね」
「うむ」
ティナの的確な突っ込みに鈴は諦めたような表情をする。それを見て、4人はようやく話す気になったのかと、近過ぎる顔を離した。
「ほんと、何があったってわけじゃないんだけどさ、ただ自分の気持ちに整理が付いたって言うか、気づけたというか……」
ゆっくりと紡がれる鈴の言葉にティナがもどかしそうな顔をする。
「別に、今までの気持ちが間違ってたわけじゃないんだけど、ええと、ちゃんと自分で理解できてなかったというか……」
「ああもう!」
そこまで来て、ティナが声を上げる。
「まどろっこしい! つまり、鈴は篠ノ之くんをどう思ってるの?」
ティナの言葉に他の三人も頷く。四人の視線が集まる中、鈴は徐々に染まる自分の頬を自覚しながら口を開いた。
「…………好き」
鈴の口から零れたそれに、ティナは心底うれしそうな顔をする。
「よかったね、鈴。答えが出たんだね」
「うん。色々ありがとね、ティナ」
感謝の言葉を述べる鈴。
鈴自身、いつからこの感情があったのかを知らない。だが、傍から見ればなかなかに長い期間、その感情を抱えていたように見えていた。そんな長い時間をかけて、ようやく鈴はスタート地点に立ったのだ。
「リア充誕生目前。ふひひ、火薬を用意しないとね」
「気が早いやろ。気持ちに気付いたのはええけど、これからどうするかが肝心やで?」
「浅はかなり」
これに関してはどうにも鈴は実感が湧かなかった。
そもそも、氷雨からは常にと言っても過言ではないほど好意を伝えられている。ここからどうするも何もないように思えるのだ。スタート時点かと思えば、一歩先がゴールである。しかし、そのスタートの合図が明確でないので進めない、と言った状態である。
その合図にするためにクラス対抗戦で負けた方が勝った方の言うことを聞くという、子供みたいな約束を氷雨としたわけである。
本当にただの合図。どっちが勝っても、結果は変わらないようなものであるが、鈴にはその後押しが必要だったのだ。
「で、で? いつ告白するの?」
「こ、告白……。そ、それは……ええと」
言い淀む鈴にティナは怪訝そうな目を向ける。
「なに? ここまで来て告白しないの?」
「くふふ、恋愛成就の藁人形でも作る?」
「それほんまに成就するんかいな」
「浅はかなり」
なんだか行動を起こさないと怒られそうな空気に鈴はどう答えるべきかと思案する。
「まだ、告白は保留……かな」
「「「…………」」」
一同はその回答に呆れた顔をする。その一方で鈴らしい、と納得している様にも見えた。
「な、なによ」
そんな彼女たちの視線に鈴は抗議の声を放つも、一向にやれやれといった呆れ顔を止めなかった。
「先は長そうね」
「浅はかなり」
◇ ◇ ◇
放課後。
自室。
「私のシュバルツェア・レーゲンの停止結界の前に、お兄ちゃんの龍砲は無意味だ」
「なんだって! くっ、相性が悪かったか」
え、ペイルライダーにそんな武装ついてたかって? いやいや、ついてませんよ? それに付いてたって寮の自室でIS展開しちゃったら千冬さんにどれだけ怒られるやら……。いや、怒られる程度じゃ済まないね。専用機の無断展開なんて、そうそうやっちゃいけないことだよ。もし街中でそんなことしたら、すごいよ。詰まる所、街中に一国の軍隊が突然現れるってことだしね。そんなのがたびたび起こったら安心してコンビニにもいけないよ。
じゃあ、どういうことかって言うと、僕とラウラの手にはISのプラモデルが握られているのだ。いわゆるごっこ遊びだね。
ちなみに、龍砲とか言っていたのはこの間の買い物の時にラウラと共に買った甲龍だよ。
「相性が悪いのは百も承知だよ!」
そう言いつつ、僕は手を動かして甲龍がもつ双天牙月の連結を解き、両手に持たせる。次に、双天牙月を固定する透明なスタンドを取りだし、ラウラの手に持つシュバルツェア・レーゲンに向け、投げつけるように宙で固定する。
「同時に龍砲を撃ちながら突進するよ!」
「ふん。お兄ちゃんらしい戦法だな。同時に多重攻撃を仕掛ける。大抵の相手なら対処に困り、被弾するだろう」
しかし、言葉とは裏腹に余裕ありげな表情をするラウラ。シュバルツェア・レーゲンの両肩の装甲の一部を開け、そこにある穴に付属のワイヤーブレードを差し込む。そのワイヤーの向く先はもちろん、スタンドで固定している双天牙月だ。そして、フリーであるその手はこちらに向けられて、僕の手にある甲龍の動きは止められる。
「だが、私にかかればこれくらい造作もない。勝負あったぞ、お兄ちゃん」
下ろされたレールカノンが僕の甲龍を捉える。
「バーンッ!」
「うわぁ、やられたぁ!」
甲龍の膝を折って、崩れさせる。
「むー、やっぱり甲龍じゃ相性が悪いね」
「AICが龍砲を完全に封じてしまうからな。例えお兄ちゃんといえど、近距離戦に持ち込まなければ難しいだろうな」
満足そうな顔をして腕を胸の前で組むラウラ。なんだろう。褒めてほしいのかな? 頭を撫でるのが正解かな?
「いやー、ラウラは凄いね」
頭を撫でる。
「い、いや、別に撫でてほしいわけじゃないんだが……」
「あ、そうなの?」
正解ではなかったみたいだ。むう、僕に女の子の思考を読む才能はないみたいだ。一夏のことは言えないね。
言われて撫でるのを止めて手を引こうとすると、引いた手の方向にラウラの頭が動く。
「や、やめろとは言ってないぞ、お兄ちゃん」
「え、え?」
そう言われると、止めるわけにもいかないので撫で続けてみる。するといつものように目を細め、気持ちよさそうな顔をする。
そんな表情をされると、撫で甲斐があるというものでなんだか嬉しくなってさらに撫でる。
「仲いいわね、あんたたち」
「うわっ! び、ビックリした」
いつの間にか入ってきていた鈴ちゃんが声をかけてきたので驚いて変な汗がでちゃったよ。
「む、お兄ちゃんは気づいていなかったのか。戦闘中に入ってきてたぞ」
「ほんとに?」
「うん。あんたはそれに夢中で気付かなかったみたいだけど」
そう言って鈴ちゃんが指差すのはさっきまで遊んでた甲龍のプラモデルだ。
「なんで私の持ってるのよ」
「え、そりゃ鈴ちゃんの専用機だからね」
当然のことのように答えると、何だか鈴ちゃんは安心したような顔になる。
「はいはい。まったく、あんたらしい答えね」
そんな鈴ちゃんの反応にラウラが胸を張る。
「当然だ。なんたって私のお兄ちゃんだからな」
ベッドの上に立ち上がりフンスと鼻を鳴らす。
「なんであんたが誇らしげなのよ」
「む? お兄ちゃんを褒めたのだろう? なら、妹として誇らしいのは当然だろう」
当然なのかな。いや、それが標準ではないとは思うけど、自信満々で一切の疑いを抱いていないラウラの顔を見ると何となくそれが正解なんじゃないかと思えてくる。不思議だね。
そんなラウラを見て、鈴ちゃんが耳元で囁く。
「あんた変な教育してない?」
「だから、僕じゃないってば、ラウラに変なこと吹きこんでるのは」
クラリッサだよね。どんな少女漫画を読めばこんな風になってしまうんだ……。いや、漫画とかラノベとかは、作者の欲望がてんこ盛りだからそれが情報源なら偏るのは必然なのかも。
「それにしても、これってこういうふうに遊ぶもんなの?」
ベッドの上にある甲龍のプラモデルを拾い上げ、鈴ちゃんもベッドに腰掛ける。
「正しい遊び方なんじゃないかな? 多分プラモデルを作った人は誰しもが通る道だと思うよ」
僕はそのおかげでEz8を破壊しちゃったからね。高かったのに……。
「ふーん」
僕の言葉を聞きながら、鈴ちゃんは自分の期待である甲龍のプラモデルを眺める。
「これ、意外と細かいとこまで作りこまれてるのね」
「ああ、私も初めはスパイの存在を疑ったほどだ」
「そんなこともあったね」
ちなみに今ラウラが持ってるシュバルツェア・レーゲンは先行製造モデルをラウラが受け取ったのである。一応、前のトーナメントでシュバルツェア・レーゲンの公式発表は済んだわけだから、もうすぐ発売するんだろうね。
「あ、そういえば、鈴ちゃんは何か用があってここに来たの?」
「ん、別にないけど? 遊びに来ただけよ」
あ、そう言えば鈴ちゃんが僕と一夏の部屋に遊びに来たのってこれが初めてじゃないかな? 今までは一夏との喧嘩もあったし、来にくかったと思うけど……。あ、と言うことは一夏とのけんかは解決したのかな?
「じゃあ、僕飲み物でも入れてくるね」
「別に気を使わなくていいわよ。押しかけたのこっちだし」
そう言って立ち上がった僕を手で制す鈴ちゃん。そうはいっても、せっかく遊びに来てくれたのに何も出さないのはね。僕が許さないよ。
「いやいや、そういうわけにはいかないからね」
「そ、そう?」
鈴ちゃんも僕の性格を分かっているのか、すんなりと引く。まあ、そんなに意地になることでもないしね。
「とっておきのドクペを振る舞うね」
「あ、私のど渇いてないからいいわ」
「ええ!?」
今明らかにドクペって聞いてやめたよね。
「それよりもさ、あたしもこういうの作ってみようかなって思うんだけど、何かない?」
「あ、鈴ちゃん興味湧いたの?」
「まあ、そんなところね。玩具といっても侮れないディティールの精巧さだしね。案外、造ってるうちにそのISの特性が分かったりしそうだし」
なるほど。こんなところにまで技術向上を見出すなんて、さすが中国の代表候補生だね。
「それじゃあ、一緒にこの蒼騎士のプラモでも作る?」
取り出したるは以前の買い物の時、ペイルライダーに無駄に購入させられた未開封のプラモだ。買ったはいいものの、甲龍を作って満足してしまい放置していた所謂積プラモである。
「蒼騎士って、あの蒼騎士? そんなものまであるのね」
「まあ、公開されてる機体じゃないから細かいところは違うけどね」
「ふーん」
僕の言葉にそんな返事をした鈴ちゃんだったが、ラウラは僕の言葉に違和感を感じ取ったらしい。
「なぜお兄ちゃんは違うと分かるのだ?」
「ううぇっ!?」
鋭いツッコミだー!
『失言ですね』
その通りですね。
だがしかし、待ってほしい。僕はその蒼騎士の製作者、篠ノ之束の弟である。つまり、蒼騎士というISを知っていたところで何ら問題はないじゃないか。
「い、いや、束姉に見せてもらったことがあるからね」
その言葉にラウラは納得したように頷く。
「そうだった。お兄ちゃんは篠ノ之博士の弟だったな」
ふう。ちゃんと納得してくれたみたいで安心だよ。
ふと時計を見てみると、針はもう夕食時を示していた。一夏はまだ特訓から帰ってきてないけど、この調子なら直接食堂へ向かったのかな?
「今日はもうこんな時間だから、プラモ作るのはまた今度かな」
そう言うと鈴ちゃんも端末で時間を確認する。
「確かにいい時間ね」
「うむ。お腹も空いてきた。お兄ちゃんよ、食堂へ急ぐぞ!」
そう言ってラウラが袖を引く。それに抗わず、扉の方に踏み出す。
「鈴ちゃんも行こっ」
そう言って手を差し出す。その手に鈴ちゃんは少し戸惑う様にしたけれど、最後には僕の手を取ってくれた。その手の柔らかさに頬が緩む。
「何わらってんのよ」
「え? いや、なんだか幸せだなって思っただけだよ」
「……はぁ」
「なぜにため息!?」
◇ ◇ ◇
差し出された氷雨の手を取った鈴は少し浮かれていた。なぜかというと次に会う約束を取り付けたからである。
そんなことをしなくても氷雨の方から鈴のもとへ毎日来るとは思うのだが、約束というものがあると鈴は安心するのだ。いくら氷雨が鈴のことを好きとはいえ、現在の鈴には氷雨を束縛する権利を持ち合わせていない。故の約束である。
「幸せだなって思っただけだよ」
そんな思ったままの気持ちを口に出してくる氷雨に鈴はため息を吐く。いや、氷雨に対してというのは語弊があるだろう。素直な感情を吐露する氷雨と気持ちを伝えることにしり込みしている自分を比較して、自分に対して鈴はため息を吐く。
「(これくらい素直になれたら、生きやすいのかもね)」
自嘲気味の笑顔を浮かべる。
だが、今はまだ、この心地のいいぬるま湯に浸かっていたいと願ってしまうのが鈴であった。
「今日は金曜日だし、夕飯はカレーだね」
「? お兄ちゃんよ、金曜とカレーは何か関係があるのか?」
「軍人なら金曜はカレーなんだよ?」
「そうなのか!」
「あんたは軍人じゃないでしょ」
他愛のない会話が嬉しくて、永遠に思えて……。紡がれる言葉に、鈴は安堵で微笑むのだった。
皆さんお久しぶりです
前回から約一か月の間が空いてしまって、私自身話を忘れそうになっています;;
今回はリハビリっていうことで比較的展開に起伏のないものとなってしまいましたが、嵐の前の静けさとでも思ってもらえればいいと思います(ゲス顔