鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
自室。
ラウラが退出して、僕らはベッドに腰掛け、机に向かう。一夏のベッドを無断で使うのもどうかと思ったので、僕と鈴ちゃんは僕のベッドに横並びで腰かけている。
「それで、この蒼騎士を作るのね」
「うん。それはいっぱいあるから、正直僕も持て余してたからね」
クローゼットの中には飾りきれない……というか飾る必要がない蒼騎士たちが眠っているだけでなく、大量の積みプラモがある。悲しいけど、これ、全部定価なのよね。財布がぁあああ。
「このパッケージの絵カッコいいわね。あ、これ実写なの?」
「いや、多分イラストだよ。もしくはCGかな?」
僕、こんなポーズ取った覚えないし。プラモのパッケージはどれを見てもそれだけで完成してるくらいのかっこよさがあるよね。
「えーと、この説明書に沿って作っていけばいいのよね」
「うん。基本的にはそれでいいよ。ただ、このパーツを切り取る時に少し気をつけなきゃいけないところがあってね」
うーん、でもこれを口で説明するのは分かり辛いかもしれないね……。
「……」
僕が黙ると鈴ちゃんが不思議そうにこっちを覗きこんでくる。手にはニッパーとランナーにつながったパーツをすでに準備している。
「どうしたのよ、氷雨」
うん、そうしよう。
僕は鈴ちゃんの手に自分の手を重ねた。
「ひゃっ!」
ひんやりとした鈴ちゃんの手の甲に触れると可愛い声が聞こえる。あ、あかん。ちょっと狙ってやったわけなんだけど、まさか僕の予想通りのリアクションが返ってくるなんて……。
「い、いきなり何すんのよ」
「いや、あのね。口頭で説明するのは難しいと思ったからね、こうやった方が説明しやすいと思って、決してやましい気持ちは心の大半を占めてますよ!?」
「普通に暴露してんじゃないわよ!」
と、言いつつも、しかし、鈴ちゃんは僕の手を振りほどくようなことはしなかった。それに疑問を覚えたものの、鈴ちゃんは不思議そうな顔の僕の方を見て恥ずかしそうに言う。
「は、早く教えなさいよ」
「え」
思わぬ返答に僕は間の抜けた声を返してしまう。
「こ、こうしないと教えづらいなら、し、仕方ないじゃない」
ズキューン! ……っていう効果音はこう言う時のためにあるんだね。もうね、ハートを射ぬかれて、今ですら穴だらけのハートにさらにもう一個穴が増えちゃったよ!
「抱きしめていい?」
「後にしなさい」
はーい。
……。
「って、後!?」
「じょ、冗談に決まってるじゃない!」
ですよねー。
◇ ◇ ◇
鈴ちゃんの小さく華奢な手に触れてパーツを切る作業を教える。必然的に近くなった距離。こうして直接触ったほうがやりやすいと言ったけど、緊張して心拍数が上がって逆に教えづらくなっちゃった。
「な、なによ。早く教えなさいよ」
そう言いつつチラチラと僕の方を窺う鈴ちゃんもどこか動きがぎこちなく見える。
いや、このまま恥ずかしがってどぎまぎしてても何も進まないね。鈴ちゃんが折角プラモに興味を持ってくれたんだから、僕はそれに全身全霊で答える義務があるよね!
「うん、じゃあやっていこうか」
触れた鈴ちゃんの手を動かし、パーツを切り放す工程を説明していく。
「まずはね、大雑把に切り取るんだよ」
そう言ってニッパーの刃をゲート、つまり外枠と部品をつなぐ部分だね、その少し部品から離れたあたりに持っていき場所を示す。
「え、そんなのでいいの?」
その一見適当な切り方に鈴ちゃんは僕に疑問を呈す。
「そうだよ。まずはこうやって部品を傷つけないように外枠から外すんだよ」
そうしてところどころ出っ張りがある部品が一つ机の上に転がる。
次に僕は机の横に用意していたデザインカッターに手を伸ばす。デザインカッターって言うのはちょっとおしゃれなカッターです。僕はそう認識してるけど、まあ、普通のカッターより細かい作業がしやすいんだろうと思う。
「で、その外した部品をこのカッターで切り落とすんだよ。こうした方が微調整がしやすくて綺麗にできるんだ」
そう僕が説明すると、鈴ちゃんは納得したようで、何度か頷いて感心していた。
「そんなとこまでキッチリやるのね」
「まあね。どうせなら綺麗に作りたいからね」
「いつも勢いだけのあんたらしからぬ丁寧さね」
「あはは」
まあ、爪切りで作ろうとしたらペイルライダーが怒ったからネットで調べただけなんだけどね。でも、綺麗に出来上がった物を見たら凄く感動したなぁ……。
「まあ、駄目にした部品は数知れないけどね」
「やっぱりあんただわ」
失敬な。これでも頑張ってる方なのに。
「って、鈴ちゃん、僕が言う前に綺麗に切り取ってる!?」
「あ、ごめん。さっきの説明で理解できたからやっちゃったわよ」
そ、そんな……。確かに口頭の説明で十分な作業工程ではあるけど、でもそれじゃあ……。
「鈴ちゃんと合法的にひっつけないじゃないか!」
「な、何言ってんのよ、あんたは!」
顔を赤くして僕を非難してくる鈴ちゃん。あ、危ないから、デザインカッターは危ないから!
「ご、ごめんなさい、僕が悪かったから一旦カッターを置いてください」
ベッドの上に渾身の土下座をする。その様は多分武士のように潔い風格を漂わせているはず!
「……確かに危なかったわね。ごめん、氷雨」
「い、いや、悪いのは僕だから謝らなくても……」
そう言って顔を上げると鈴ちゃんが微笑を浮かべていた。
「でも、それはそれで、これはこれよ」
その次の瞬間、僕はおでこに少しの痛みを感じる。
「いたっ」
「思ったことをそのまま口にするのやめなさいよね」
鈴ちゃんから受けたのはデコピンだったようです。
「……エヘヘ」
その行為が何だか可愛らしくて笑みが零れてしまう。
「あんた、ここであたしがなんで笑ってるかって聞いたらなんて答えるわけ?」
「え、鈴ちゃんが可愛いからって」
あ。
「反省してないじゃない!」
「うわあ、ごめんなさい!」
そんな風に僕と鈴ちゃんはいちいち騒ぎ合って、蒼騎士のプラモを作っていったのだった。
「って、もう夕食の時間だね」
「え、もうそんな時間? 早いわね」
その後、鈴ちゃんは思った以上に楽しんでくれたようで、夢中になってプラモを製作していた。そして、気づいたらもう夕飯時になっていた。楽しい時間はすぐすぎるっていうやつかな? 僕はそうだった。できれば鈴ちゃんにとってもそうであってほしいけど、こればかりは分からないね。ただ、今鈴ちゃんが見せる表情は少し満足げなのでちょっと一安心。
「じゃあ、続きはまた明日にして食堂に行こうよ」
「あともう少しで完成しそうなのよね。でもまあ、時間なら仕方ないわね。また明日にしましょ」
机の上にはもう七割は出来上がっている蒼騎士のプラモがある。鈴ちゃんはそれらを丁寧に箱の中に戻し蓋をした。
「それじゃ、食堂に行くわよ」
鈴ちゃんが立ち上がるので僕も追従して部屋から出る。
そうして食堂へ移動すると先に席についていた一夏たちが手を振ってその所在を主張していた。
「おーい、氷雨に鈴、こっちだぜ」
「りょーかいだよー」
一夏たちの元に行くと、みんなで食券を買いに動き出す。こうして原作アニメ一期のヒロインが勢ぞろいしているのを見るのは意外にもこれが初めてかもしれない。思えば鈴ちゃんと一夏の喧嘩がクラス対抗戦が伸びたせいで長く続いていたような気がする。それのせいかな。
券売機に着く。しかし、券売機に着いてから何を食べようかと思案しようものなら非難轟々だろうから目に付いたものをすぐに押す。
「あ、酢豚だ」
ご飯と中華スープが付いての酢豚定食みたいだ。
「鈴ちゃんは何にした?」
「え、酢豚だけど」
おお、一緒だ。なんだか嬉しいね。
「お前ら仲いいな」
「なっ!?」
「ふふふ、当然でしょ? 僕と鈴ちゃんだよ?」
「調子に乗るんじゃないわよ」
背中を鈴ちゃんに叩かれる。その強さで本気で怒っているわけではないことが分かる。というか、もう僕と鈴ちゃんの中でこんな感じのやり取りは定型化されてるに等しい。
「ほんとに仲いいな」
笑いながら僕らを見る一夏はなんだか年寄りくさい慈愛の目をしていた。更けるにはまだ早いと思うよ、一夏。
「そういう一夏はどうせサバ味噌定食でしょ?」
「どうせってなんだよ。だが、今日の俺は一味違うぜ。ほら」
一夏が差し出す食券には『アジフライ定食』と書かれていた。
「なるほどね、“アジ”フライに一“味”違うをかけたってことだね」
「お、流石氷雨だな」
「当然でしょ」
褒められて悪い気はしないので胸を張る。しかし、一夏以外からはなんとも言えない視線が飛んでくる。
「なんでわかるんだろうね」
「センスが同レベルなんじゃない?」
「一夏さんも氷雨さんもギャグのセンスは悪いですものね」
「? 今の何がギャグなんだ?」
ラウラはそもそもどこがギャグなのかも分かっていないようで不思議そうな顔をしている。
「氷雨、俺の味方はお前だけだ」
「世知辛いね」
この人数になると食事時も騒がしいものだったけど、楽しいひと時だった。
◇ ◇ ◇
鈴の自室。
ちょっとした出来事ではあったが、意識が変わった鈴にしてみると、今日の氷雨とのプラモ作りと言うものは意外にも大きなものであった。
それは自室に戻ってからも気分が高揚して、足なんかをパタパタと動かしている様子を伺えば明らかであった。
ぴたりと止まったかと思えば、また何かを思い出したようにパタパタとせわしなく動き出す。その顔は少し紅潮している。何を想いだしているかなどは説明不要だろう。
「鈴、なにかいい事あったの?」
「え、なんで?」
「いや、なんでって……」
見るからにそうでしょ、と思ったティナであったが、それは口に出さなかった。言えば、絶対怒るだろうと思ったからだ。
「べつに、大したことじゃないわよ」
そう言ってはぐらかすも、ティナはその少し朱に染まる頬から大体のことを察する事ができた。
「(うまくいってるみたい)」
鈴のことだから気持ちとは裏腹な態度をとってしまって関係が悪くなったりしないだろうかと少し心配もしていたティナであるが、それが杞憂に終わったようで一安心である。
そんな時、鈴の端末から呼び出しのコール音が鳴りだした。鈴が端末を手に取り、相手が誰であるかを確認すると、端末の液晶には中国政府からであると映しだされていた。この通信の相手が政府の人間であると分かった瞬間、鈴はなんだか嫌な予感がして先ほどまでの高揚もどこかに消えて行った。
「はい」
そして、その予感は現実のものとなる。
「なによそれ……」
はい、というわけでやっとこさ話が進みます
なかなか話が進まない作品ですいません;;
ていうか、前回と前々回のタイトルがかぶっていることに今気付いた私です