鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

75 / 90




十四話 侵入者につき

 アリーナ。

 

 上空に張られたシールドバリアーを容易に破壊し、侵入してきた三機のISに千冬は顔をしかめる。

 

「山田先生、会場に避難アナウンスを。生徒会に避難誘導の指揮をとらせ、教員は直ちにIS搭乗、侵入者の鎮圧に当たれ」

 

「は、はい!」

 

 突然の出来事に茫然としていた真耶は千冬の声で思考を再開させる。

 

「み、みなさん、お、落ち着いて、避難してください。あ、慌てず、生徒会の人の言うこと聞いてください」

 

 真耶自身が落ち着いていないではないかと、ため息を一つ千冬はついたのだった。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 アリーナ内部。

 

 砂煙に紛れて相手はまだ見えない。しかし、それの正体を僕は知っている。ならば、とるべき行動は一つだ。

 

「鈴ちゃん!」

 

「な、なによ」

 

 僕は鈴ちゃんのもとに駆け寄り、その手を取る。

 

「逃げるよ!」

 

 そういって僕はハッチの方へ走ろうとするが、鈴ちゃんの手を取った右手に抵抗を感じてその歩は止められた。

 

「ど、どうしたのさ鈴ちゃん。早く逃げなきゃ危ないよ!」

 

「待ってよ、氷雨。逃げるって言っても、今あたし達が逃げたらあいつらが野放しになるのよ? 他の生徒の避難も終わってないし、教師が来るのももう少しかかるでしょ」

 

 そういうと、鈴ちゃんは僕の手を振りほどき、侵入者の方に向き直る。

 

「だったら、少しの間、あたしたちが足止めすべきじゃない?」

 

 確かに鈴ちゃんの言うことは専用機を持つ者として当然の意見だろう。だが……。

 

「絶対にダメ!」

 

 僕はそんな鈴ちゃんの正面に回り、感情に任せて怒鳴りつけてしまった。

 

 そんな僕の大きな声に鈴ちゃんは驚いたようで、少し怯えたような目で僕を見ていた。どうやら僕は必死のあまり剣幕な表情で鈴ちゃんに迫っていたらしい。

 

「あ……。ご、ごめん。いきなり大声出しちゃって」

 

 そう謝るも、僕は再び鈴ちゃんの手を取った。

 

「でも、それだけは認められない。例え、鈴ちゃんの言うことの方が正しいとしても、僕は鈴ちゃんが危険に冒されるのを正しさで割り切ることはできないよ」

 

「氷雨……」

 

 捲し立てる僕に鈴ちゃんは反論しない。中央の侵入者は未だに動いていないとはいえ、ここで時間を使っていたら状況は悪化するだけだよね。

 

「だからお願い。ここは避難して」

 

 僕が鈴ちゃんの目を見てそういうと、鈴ちゃんは何も返さず、ただ僕を見つめて小さく頷いた。鈴ちゃんの肯定の意志を受け取った僕はすぐに鈴ちゃんの手を引き、ハッチの方へ向かった。

 

 後ろを伺ってみるが、徐々に晴れつつある砂煙の中の無人機が追ってくる様子はない。それに嫌な予感がするも、僕はピットへとつながるハッチへたどり着くと、横に設置されている開閉ボタンを押す。

 

「?」

 

 しかし、ハッチは僕の期待した通りの反応を起こさなかった。何度もボタンを押してみるけど、一向にハッチは開く気配がなかった。

 

「どうしたのよ」

 

 その状況に焦る僕の様子に鈴ちゃんが不思議そうに尋ねる。

 

「もしかして、開かないの?」

 

「そう……みたい」

 

 学園側のシステムが乗っ取られているのかもしれない。しかし、それならば!

 

「ヒュージキャノンでハッチを破壊すればいいだけのこと!」

 

『お言葉ですが、ヒュージキャノンは現在装備されていません』

 

 ……は?

 

 待って、なんでヒュージキャノンが装備されてないわけ? 僕、その辺の設定いじった覚えないよ?

 

『外部アクセスにより、拡張領域からヒュージキャノンが外され、HADESシステムがインストールされました。おそらく篠ノ之博士が行ったのでしょう』

 

 た、束さん、こんな時に限ってなんてことしてくれてるのさ。……いや、こんな時だからかな?

 

 多分、この襲撃の目的がそれなんだろうね。HADESシステム使用時のデータをとるため。それが束さんの目的。それならば、僕が逃げられないように出口を塞ぐのは当然だよね……。

 

「開かないなら壊せばいいんじゃない? あんたのその、ヒュージキャノン? はないかもしんないけど、あたしの龍咆ならいけるんじゃないの?」

 

「いや、そもそもヒュージキャノンを使ってもダメだったかも」

 

 そう答えると、鈴ちゃんは首をかしげる。

 

「アリーナは安全のために半球状にシールドバリアを張ってるからね。当然、壁も内側は同じように張られてると思う」

 

 だから、破壊するなら一夏の零落白夜を使うか、外側から壊してもらうしかない。

 

「多分、救援に先生たちが来てるはずだから、それまではやっぱり時間を稼ぐしかないみたいだね」

 

 そう言うと、僕と鈴ちゃんはアリーナの中央に目を向ける。砂煙はとうに晴れ、そこには三機の全身装甲のIS、ゴーレムが鎮座していた。

 

 直立不動の三機はよく見ると、原作で乱入してきたゴーレムと酷似しているものの、違いがあった。背部にコンテナのようなものを背負っているのだ。そこから伸びる二本の発達した機械部分は何かを発信するアンテナの様にも見える。

 

「鈴ちゃんはここで救助を待ってて。僕が前に出て、あいつらを対処するから」

 

 しかし、そう僕が言うと鈴ちゃんは不満げな表情を見せた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「さっきはあんたに圧されて頷いたけど、やっぱりあたしだけ逃げるのは嫌」

 

「ええ!?」

 

 そう答える鈴ちゃんは真剣な目つきで僕を見ていて、そこに強い意志を感じた。

 

「言ったでしょ、あたしは対等でいたいって。守られるだけなんてまっぴらなのよ」

 

「い、いや、でもね。危険なんだよ? ISに乗ってるからって言っても、あのビームを受けたら死ぬかもしれないんだよ? そんな危険にわざわざ晒されに行くなんておかしいよ」

 

 確かに足止めは必要な役目かもしれない。でもそれは本来生徒である僕らがやるべきことじゃないはずだよ。

 

「それはあんたにも言えることでしょ?」

 

「でも……!」

 

 なんとしても、鈴ちゃんを危険に晒したくはなかった。しかし、それ以上の言葉は鈴ちゃんに遮られる。

 

「あたしはあんたの隣が良いの。後ろじゃない。それじゃ、あたしがあんたにしてあげることがない。だから、支え合える隣が良いの」

 

 恥ずかしさからその頬は少し紅く染まっていたが、鈴ちゃんは真剣なまなざしで僕を見つめて、語った。こんなことを言われて嬉しくないわけがない。こんな状況じゃなければ飛び跳ねて喜んでいたところだけど、目の前の死の危険性がそれを阻む。

 

「……」

 

 複雑な気分だよ。嬉しいのに、素直に喜べない。危険を分かち合う、それが対等でいてくれる鈴ちゃんの想いなんだろう。けど、僕はやっぱりそれを拒みたいという気持ちがあった。だってそうでしょ? どこの世界に好きな子を危険に巻き込みたがる人がいるのさ。

 

 しかし、そうしていつまでも膠着し続けるはずもなく、状況は動き出した。

 

『警告、前方の正体不明機より強力な妨害電波発生』

 

「え?」

 

 外部との通信が遮断されるってことだよね? まずいですよ!

 

 鈴ちゃんもそれに気付いたようで、それを止めるべく前に飛び出る。

 

「ちょっと! 一人で前に出るのは危ないよ!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

 

 そう言って先行する鈴ちゃん。僕も鈴ちゃんの後を追い、ゴーレムとの距離を詰めようとした。

 

 しかし、それを拒むかのようにペイルライダーの動きが鈍る。それはさながら水の中を進むかのように強い抵抗を受けていた。

 

「どうしたの、ペイルライダー!」

 

『コアネットワークより強力な命令信号を受信』

 

 その時、僕の視界にとんでもない光景が映り込んできた。

 

 ISスーツに身を包む鈴ちゃんの姿。纏っているはずの甲龍が粒子になり、宙に放り出された鈴ちゃんの姿だった。

 

 僕はそれに唖然とした。目を疑うしかなかった。

 

『命令を拒絶。コアネットワークとの接続を解除。独立起動モードに移行します』

 

「鈴ちゃん!」

 

 抵抗がなくなり軽くなった体で、鈴ちゃんを庇うようにゴーレムとの間に回り込む。

 

「ひ、氷雨、ISが……突然!」

 

 僕は鈴ちゃんの言葉に何かを返す前に、鈴ちゃんを抱えてゴーレムから距離をとる。先ほどまで動きを見せなかったゴーレムたちがここに来てこちらに砲門を向け、その敵意を明確なものにしてきた。

 

 相手は三機。そのどれもがシールドバリアーを貫通するだけの武器を持つ。そして、ISの絶対防御を失った鈴ちゃん。目の前の死の危険性に鈴ちゃんは無防備で晒されているのだ。

 

 この絶望的な状況に僕は嫌な汗をかく。

 

「ペイルライダー、これ、どういう状況?」

 

『ISの強制終了命令を受け、それを拒絶するためにコアネットワークとの接続を切断。よって、コアネットワークからのバックアップを受けることができず、戦闘能力は著しく低下しています』

 

 ISの強制終了……それで、鈴ちゃんの甲龍は待機状態に戻っちゃったわけだね。

 

 僕はハッチのある壁際まで移動すると、鈴ちゃんを下ろした。

 

「鈴ちゃん、絶対そこから動かないでね」

 

 庇うように鈴ちゃんの前に立ち、ゴーレムたちを見据える。

 

「射撃系の武器は使えないと考えていいのかな」

 

『そうですね』

 

 相手は射撃系の武装を持つゴーレム。あっちから僕の方へ近づいてくるようなことはしないだろう。けれど、僕の方からゴーレムの方へ近づけば、鈴ちゃんが無防備になる。

 

 だから僕のできることは一つしかない。

 

「ここで、相手の攻撃を全部防ぐ」

 

 二刀のビームブレードを展開し、ゴーレムたちを見据える。

 

「あ、あたしのことは良いから、行きなさいよ」

 

 後方で鈴ちゃんがそんなことを言う。

 

「足手まといになんてなりたくないの。だから……!」

 

「断るよ!」

 

 ISがなくなって弱気になってるのは分かるけど、それだけはできない。

 

「それじゃあ、何のために力を手にしたのかわかんないよ。守りたい人がいて、守れる力がある。なら、僕のやるべきことは決まっているでしょ?」

 

 鈴ちゃんの方を振り返り、安心させるために笑いかける。震える鈴ちゃんの体を見て、今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるも、僕の手は鈴ちゃんを抱きしめるにはあまりにも物騒なものが握られている。

 

「安心してよ、鈴ちゃん。絶対に守るから。僕、約束は守ることに定評があるんだよ?」

 

 鈴ちゃんに触れるのにこんな武器は必要ない。だけど、これは守るために必要な武力。大切なものを守りたいという、僕の意志を貫くための矛。

 

 ならば、すべてを終わらせて、束さんをぶん殴って、それからにしよう。

 

「いくよ、ペイルライダー」

 

『了解。全力でバックアップいたします』

 

 鈴ちゃんに背を向け、ゴーレムと対峙する。待っていたかのようにそのセンサーアイを光らせるゴーレムたちに宣戦布告するようにビームブレードの切っ先を向ける。

 

「束さん、見てるか! 貴様の望み通りだ! だがそれでも……」

 

 切り捨てるようにブームブレードを振り下ろす。そして僕は宣戦布告する。

 

「勝つのは僕だ!」

 

 それを皮切りにゴーレムたちはその搭載された砲門から粒子砲を放つ。それら全てをビームブレードで弾いたのちに、僕は束さんの思惑通り、それの起動を宣言する。

 

「HADES!!」

 

 それは死を司るペイルライダーの側にある死の世界の名であった。

 





この章の終盤につき、少しコメディ要素は減っています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。