鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
記憶を失った氷雨くんが学校に行きました
昼休みに一夏たちから語られた氷雨という人物の断片を得た彼は午後の授業中にそれらを整理しようと頭を抱えていた。
数ヶ月前に世界初の男性のIS操縦者が発見されたということは、私自身がISに触れた期間は3ヶ月にも満たないはず。そんな私が、何年も訓練を重ねてきた国の代表候補生よりも強いというのは、いささかおかしな話です。しかし、皆さんはそれに疑問を抱いていないように見えます。確か、織斑先生の話では私はこのISの開発者、篠ノ之束博士を姉に持つという話でしたが、それを根拠にその強さを納得するのは無理があるでしょう。同じ条件である箒さんは普通の生徒らしいですし……。
彼が引っかかったのはまず氷雨という人物の強さだ。国の代表候補生というものがどれ程のものかを知らない彼であったが、乗り始めて数ヶ月の人間が敵うはずがないと思うのだ。実際のところ、一夏というイレギュラーを除けばそんなことありえない。彼の考えは的を射ているのだ。だが、それは彼の持つ情報の範囲内での思考に過ぎない。故に彼が答えにたどり着くことはない。
そんな出口のない迷路に迷っている彼を見て、真耶ちゃんは少し慌てたような口調で氷雨を慰める。
「だ、大丈夫ですよ。ゆっくり、ゆっくりこの辺の内容も理解していけばいいですからね!」
「え? あ、は、はい。すいません」
真耶ちゃんには彼が授業内容で頭を抱えているように見えたのだが、この時の彼は以前の氷雨同様、授業を聞いてはいなかったのだった。
◇ ◇ ◇
授業を終えた放課後に再び一夏たちは違和感に首を傾げていた氷雨の机に集まってきた。
「氷雨、授業はどうだった?」
一夏が彼に話しかける。
「さっぱりでした。ぼんやりとした知識はあるのですが、生憎山田先生がおっしゃる内容を理解するまでには至りませんでした」
「まるで入学当初の一夏のようだな」
恥ずかしそうに言う彼の言葉に、妹の箒がフォローするように言う。
「確かに入学当初は俺もさっぱりだったからな」
一夏もそれを受けて懐かしむように頷きながら返すが、それを聞いたセシリアが笑みを浮かべる。
「あら、一夏さん。その言い方だと今は理解しているように聞こえますわ」
「え?」
思いもよらぬツッコミに一夏はセシリアの方に顔を向ける。
「そうだね。さっきの授業も氷雨みたいに頭抱えてたしね」
「なっ!?」
笑いながらシャルも便乗する形で追い打ちをかける。そんな二人に一夏は心外そうな顔をして抗議の目を向ける。
「俺だって頑張ってるんだけどなぁ」
「貴様は教官の弟であるという自覚が足りていないのだ」
「ぐっ……」
ラウラに千冬の名前まで出されて一夏はうなだれる。そんな彼らのやり取りを見ていた氷雨はクスリと笑みをこぼした。
「あ、笑った」
その表情の変化にいち早く気づいたのは鈴であった。鈴の言葉を受けて彼は自分の笑みに気づき、手で口元を隠した。
「す、すいません。あまりに皆さんが仲良しなので、なんだか私まで安心してしまって……」
彼の元に集まった彼らは記憶のない彼によそよそしい態度を取らない。それが彼にとっては嬉しいことであり、自分を肯定してくれているようで安心感を覚えるのだ。
「別にいいのよ。氷雨とあたしたちはそんな気を遣うような仲じゃなかったんだから」
「そうだぜ。むしろ笑ってくれてこっちが安心したぜ」
鈴の言葉にいつの間にか復活していた一夏が同意する。他の皆も言葉にはしないが、その表情から同じ気持ちであることが伺える。
「みなさん……ありがとうございます」
先ほどまで持っていた以前の自分に対する不信感は消えた。記憶を失ってなお一緒にいてくれる友人に恵まれている、それだけで彼の『氷雨』に対する不信感を拭うには十分なものだった。
「感謝されることでもありませんわ。それより、今日は氷雨さんの記憶を取り戻す手伝いをしたいと思いますの」
「記憶を取り戻す手伝い……?」
セシリアに彼は問い返す。それに対してシャルが答える。
「あのね。氷雨がなじみ深い場所に行けば何か思い出すんじゃないかと思ってね、これからみんなで回ろうって話になったんだ」
「皆で回った方が昔の話もできるし、何かを思い出すきっかけがあるんじゃないかと思ったからな」
自分のために時間を割いてくれることを彼は嬉しく思った。鈴はその顔を見てする必要はないだろうと感じつつも、一応の確認を彼にした。
「どうする? 気が進まないなら今日は見送ってもいいけど」
「いえ、せっかく皆さんが私のために時間を割いてくれるのですから断る理由はありません。とても嬉しいです」
言葉の通り、嬉しそうな笑顔を浮かべ、彼はその提案を承諾したのだった。
◇ ◇ ◇
氷雨という人間を語る上で彼らが真っ先に出してくる特徴はその強さである。ISの開発者である篠ノ之束の弟というアドバンテージを持っていることを差し置いても、彼と対峙した専用機持ちの彼女たちはその力に一目を置かざるを得ない。
故に一行が訪れたのはいつも放課後の特訓に使用していた第三アリーナであった。各々の専用機を展開した一夏たちを見て、氷雨は目を輝かせた。
「なんだかすごいですね。皆さん、かっこいいですね」
「そ、そうか? なんか照れるな」
一夏は満更でもなさそうに氷雨の言葉に返す。しかし、他の専用機持ちは氷雨の新鮮そうな感想に改めて彼が記憶を失っていることを実感しているのだが、一夏はあまり気にしていない様子である。
「氷雨さんといえばその専用機、ペイルライダーを駆り戦う姿が印象に残っているうちでは一番ましですわね」
「そ、その言い方はどうかと思うけど……」
間違ってない、と続く言葉をシャルは飲み込んで苦笑いを浮かべる。
とはいえ、氷雨の専用機であるペイルライダーは先の襲撃に受けた損傷が激しく、さらにその修復作業を千冬によって止められている状態とあって使用できる状態にはないということもあり、氷雨の前には貸し出し用の打鉄が鎮座していた。
「まあ、確かに一番わかりやすい凄さだしね、あいつの」
鈴は手を組んで頷きながら同意する。
「あの、やっぱり私は、その皆さんの強そうなISに勝ったのでしょうか。どうにも私には信じられないのですが……」
彼がそう思うのは当然なのだが、そうは言われても事実は事実であるので皆、少し返答に困ってしまう。
「お兄ちゃんは強い。それをお前は疑問に感じる必要はない」
しかし、そんな疑問を口にする彼にラウラは真っ向から叩きつけるように断言する。少し敵意を含んだその言葉に彼は少し怯み、一歩後ろに下がる。
「はいはい、そのくらいにしときなさいよ。ここに来たのはISに触れて、記憶を取り戻すきっかけを作るためでしょ。ケンカ腰になってどうするのよ」
そんな二人の間にさっと鈴が割り込み、ラウラから氷雨をかばう。生身の氷雨にとってISを展開したラウラに迫られるのは恐怖でしかない。そんなことでは氷雨も積極的に記憶を取り戻そうと動いてはくれないだろう。
「……そうだな。悪かった」
そう言ってラウラは引き下がる。氷雨が氷雨を否定するという行為に少し感情的になってしまっただけで、彼女は彼の記憶を取り戻すことに協力的ではあるのだ。
ISに対して少しの恐怖を覚えた彼であったが、鈴に庇ってもらっているこの状況に少し情けなさを感じた。自身は生身で相手はISなのだから仕方のないことだと頭では理解しているものの心の端で鈴の後ろにいることを恥じる自分がいたのだ。
彼は鈴の前に出て打鉄に触れる。その光景を一夏たちは固唾を呑んで見つめる。彼が打鉄に触れてから少し経った後、一つ息を吐きだし、彼は一夏たちの方に向き直った。
「これは、どうすれば乗ることができるのでしょうか?」
張りつめていた空気はどこへやら。確かに記憶のない彼が何も教えられないままにISに乗るというのは難しいだろう。なにやら以前の氷雨に似た空気を感じ取った一夏が嬉しそうに笑いながら氷雨の方に近づく。
「そりゃそうだよな。俺ら何も教えてなかったしな。よし、俺が乗せてやるよ」
「助かります」
そうして一夏が氷雨を抱えると、アリーナの出入り口の方から声が聞こえてきた。
「織斑、篠ノ之を下ろせ」
その声の主は千冬であった。どこか焦りを感じさせる千冬の表情を感じ取った一夏はすぐさま自分の行おうとしていた行為、つまり、氷雨を打鉄に乗せようとする行為をやめた。
千冬がそのように言うのだから一夏は分かった。今の氷雨をISに乗せるという行為はしてはいけないものなのだと。しかし、それがどのような理由によるものなのかは測り知ることはできない。それは一夏だけでなく他の皆も同様である。
「教官、なぜISに乗せることを止めるのですか。ISに乗れば、お兄ちゃんの記憶が戻る可能性があります」
「ダメだ」
ラウラの反論を千冬は一蹴する。千冬のその眼は鋭く、ラウラは少し怯んでしまう。しかし、同時にそれほど重大な理由がそこにはあるのだということもラウラは理解する。理解したので、それ以上ラウラは何も言わず、おとなしく下がるのだった。
「氷雨、今から私の部屋に戻るぞ」
「え……。で、ですが、みなさんが……」
「お前の記憶が戻るにしろ戻らないにしろ大事な要件だ。悪いが明日にしてもらえ」
千冬にそう言われると、申し訳なさそうな顔を一夏たちに向ける。
「すいません。皆さんの貴重な時間を割いてもらったのに……」
「気にすんなって。困った時はお互い様だろ?」
一夏が笑ってそういうので、気が楽になった彼は穏やかな表情を浮かべる。
「ああ、それと鈴も今日はもういいぞ」
千冬が鈴に向かってそういうと、鈴は頷いた。
こうして記憶を失った氷雨は千冬の部屋に向かうこととなった。
そして、そこに待ち受けていた人物とは……
「ひぃくぅぅぅぅううん!!」
篠ノ之束。この物語の元凶である人物であった。
……たいへんお久しぶりです、かきなです
モチベーションが久遠の果てに消え去ってしまっていたのと、とあるカードゲームにこの年になって嵌まってしまったこともあって全く執筆ができませんでした(できないというよりはしなかったともいえる
まあ、もちろん色々忙しかったのは確かです
といっても、執筆が全くできないほどの忙しさでもないので言い訳にしかなりませんけど……
ISに、というよりペイルライダー以外に乗ることを千冬に止められた氷雨。これからの彼にとって重要な要件と言われて彼女の部屋に向かうと、そこにはなんと彼をこの状況に陥らせた元凶が……。そして、告げられるあの事件の全貌!
言っちゃなんですが、記憶のない氷雨くんはめんどくさい!
鈴ちゃんと氷雨くんは今後どうなっていくのか。乞うご期待です