鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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短めで申し訳ないです


第四話

 氷雨が千冬に連れていかれた後、一夏はせっかくだから最近行っていなかった特訓を再開しようと提案してきた。その提案に箒やセシリア、シャルは賛成だったが、そもそも参加していなかった鈴とラウラは参加せず、アリーナを去った。

 

 ISのスーツから制服へと着替える間、二人は言葉を交わさなかった。どことなく気まずさを感じていたのだ。いつもならそんなことはなかった。しかし、今はいつもいたはずの氷雨が二人の間にいない。そんな些細なところにも、彼の存在はあったのだ。

 

 着替えを終えた二人は寮へと歩き始める。その道中で鈴は口を開いた。

 

「ねえ」

 

 語りかけるも、視線は交わらない。それくらいの距離感が、どうしてかそこにはあった。

 

「どうしてあんなこと言ったのよ」

 

 それは責めるような口調ではない。純粋な疑問から来たのだ。ラウラは賢い人間だと鈴は知っている。氷雨と一緒にいる時は子供っぽさが先行しがちだが、今の氷雨がどういう心情であるかを分からない人間ではない、と。だから、先ほどの言動が気になったのだ。

 

 ラウラはすぐに返事をしなかった。それは言い淀んでいるという感じではなく、何かを思い返していると言った様子であった。

 

「お兄ちゃんは、私の過去を否定しなかった」

 

 どこか寂しげな声でラウラは答える。

 

「忘れても、その過去が今の私を、これからの私を支えてくれるのだと、そう言ってくれたんだ」

 

 それはVTシステムの暴走時にラウラに手を差し伸べた氷雨の言葉である。彼女にとってこの言葉が彼との絆であり、『氷雨』なのである。

 

「その言葉を、否定されたような気がしてしまって……」

 

 その口調から悔いていることが伺える。衝動的になってしまったのであろう。それを抑えるには少し彼女は幼かったようだ。

 

 そんな彼女の言葉を聞いて鈴は納得した。氷雨に『氷雨』を否定されるなんて、とても耐えられるものではないだろう。

 

「そう言うことね。気持ちは分からなくもないけど、あいつもあいつで辛い状態だからね。そこは分かってあげなさいよ?」

 

「当然だ。もう、あんなことは言わない」

 

 素直なラウラに鈴は少し安心して、頭を撫でる。そんな鈴の行動に少し驚いたラウラであったが、悪い気はしないのかそれを咎めることも止めることもしなかった。

 

「お兄ちゃんの記憶は戻らないのだろうか……」

 

 鈴は答えることができなかった。

 

「またこんな風に、頭を撫でては……貰えないのだろうか」

 

 ラウラの声は震えている。氷雨が目を覚ました嬉しさも、次第に記憶がないことの悲しさで薄れていき、気づき始めるのだ。欠落した、日常の断片に。

 

 鈴は慰めるように、より強く頭を撫でる。それは、鈴の部屋の前につくまで続いたのだった。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 ラウラは鈴と別れて一人、廊下を歩いていった。去り際の寂しそうな表情に鈴は気づいたが、それに付き合えるほどの余裕は彼女にはなかった。

 

 角を曲がりラウラの姿が見えなくなると鈴は一つ大きな息を吐いた。他人の感情に触れてしまったから、自分の中で蓋をしていた感情が溢れそうになってしまったのだ。再び大きく息を吐き、鈴はそれを呑みこむ。ここで零せば、ルームメイトのティナに要らない心配をかけてしまいかねない。

 

 落ち着きを取り戻した鈴は扉に手をかける。その時、彼女の視界の端に見慣れない影が映る。

 

 そちらに視線を向けると、そこに立っていたのは凛とした佇まいで、どこかラウラと似た雰囲気を持つ少女であった。

 

 少女の瞳は閉ざされているものの、その意識は確かに自分に向けられていると感じ取った鈴は彼女に問いかける。

 

「あんた、誰?」

 

 その問いを受けても少女は名を返してこない。その問答は彼女にとって必要ではないからだ。

 

「あなたは篠ノ之氷雨の何ですか?」

 

 突然の問いに鈴は戸惑う。この少女は誰なのか、なぜそんなことを聞いてくるのか。明かされた情報は少女が氷雨を知っているということだけ。そんな怪しげな少女に深く刺さる問いを投げかけられる。この状況で冷静にいられるわけがない。

 

「なんなのよ、あんた」

 

 再びの問い。しかし、やはり少女が答えることはない。

 

「あなたは氷雨と結ばれるべきではない」

 

 代わりに返ってきた言葉は鈴の中から戸惑いを追いだした。しかし、冷静になれたわけではなく、今度は怒りが彼女を満たした。

 

「あんたに何が分かるのよ!」

 

 声を荒げる鈴に少女は物怖じすることなく、鈴に言葉を投げかける。

 

「政府と繋がるあなたと、政府に触れられてはならない氷雨。交わることは許されない」

 

 その言葉に鈴の怒りは急激に萎んでゆく。鈴はその少女の意味するところが分からないわけではなかった。当然である、氷雨は世界でたった二人の男性操縦者である。国と繋がるということがどういうことなのかは分からないわけではない。しかし、それをこの少女が言う理由が分からないのだ。

 

「あ、あんた、一体……」

 

 少女は少しの間顔を逸らし、何かを確認するかのような素振りを見せてから鈴の方へ向き直った。

 

「そろそろ時間ですね」

 

 そう呟くと、彼女は手に持つ杖を少し前に掲げた。

 

「あなたはどちらかを捨てなければならない」

 

 閉じていた瞳を少し開き、その焦点の定まらない瞳が鈴を射抜いた。

 

「願わくば、叔父さんの望む結果であってほしいですが」

 

「ちょ、それって、どういう……」

 

 しかし、鈴の言葉は途中で遮られる。いや、遮られるという表現よりは紡げなくなったと言った方が正しいのだろう。

 

「ワールド・パージ」

 

 その言葉と同時に鈴の体が崩れ落ちたのだから。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 千冬の部屋

 

 嵐の去った部屋の中で、記憶を失った氷雨が項垂れていた。それは精神的疲労から参ってしまっているからだろう。

 

 記憶喪失。

 

 多くの場合は次第に記憶が戻ってきたりする。それが断片的であったり、不完全であったり、個人差はあるものの、記憶は意識の奥底に眠っているのだ。

しかし、彼は違う。束の説明では記憶を消したというのだ。これでは思い出す思い出がそもそもないではないか。

 

 彼は知っている、いや、知ってしまっている。氷雨という人物の帰りを待つ人たちの期待を。彼らが望むのは今の自分ではない。彼らの記憶に存在する『氷雨』という人物なのである。彼らの期待に応えたいとは思う。彼らが良い人であることはなんとなく分かる。だが、それは叶わないのだ。

 

 そんな風にしていると、氷雨は不思議な感覚に襲われた。この部屋には誰もいないはずである。しかし、どこからか自分に語り掛ける声が聞こえた……いや、聞こえたわけではない、感じたのだ。

 

「誰かいるのですか?」

 

 そんな風に問いかけるとやはり発生源の分からない声が聞こえた。

 

『初めまして』

 

 それはシステム音のようであり、しかし、どこか人間味のある声であった。その声の主の居所を探すように氷雨は視線を右へ左へ動かすが、そこに映るのは誰もいない空虚な部屋だけであった。

 

「あ、あなたは誰ですか?」

 

 その問いに声は答える。

 

『あなたの道を切り開く剣、ペイルライダーです』

 

 自身の専用機の名を名乗る声に氷雨は戸惑う。

 

『行きましょう』

 

 しかし、唐突にその声は氷雨を駆り立てようとする。どこに? そんな氷雨の疑問に答えるように、ペイルライダーは続ける。

 

『あなたがあなたたらん為に』

 

 それは確かな回答ではなかった。だが、その言葉は彼が求めていたものであった。

 




クロエちゃんの口調思い出しがてら番外編のTS回読み直したら意外と面白かったです
書いてた当初は「何だこれ……」って思ってたんですけど、最近硬いのしか書いてないからかな?

エイプリルフール皆さん嘘つきましたか?
私はその日が4月1日だということに気づかず嘘をつき損ねました
勿体ない
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