鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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第五話

 鈴は目を覚ました。どうやら自分は意識を失っていたらしいというのを覚醒しだした頭で理解した。しかし、目を覚ました場所は寮の廊下ではなかった。

 

「自販機……?」

 

 そう、ここはアリーナの近くにある休憩所である。ずらりと並んだ自販機の中にはおそらく購入者が限られているであろう飲み物も置いてあった。

 

「あ、これ、氷雨がよく飲んでたやつじゃない」

 

 一口飲んでみたことはあるも、鈴はお世辞にもおいしいとは思えなかった。しかし、それを嬉々として飲んでいた氷雨の表情が思い出されて彼女は自販機のボタンを押した。取り出し口からドクターペッパーを取り出し、口をつける。こくり、と喉を鳴らし、一口飲みこむとすぐに口を離す。

 

「やっぱりおいしくないわね」

 

 そう言って少し笑う。残りを捨てるわけにもいかないので少しずつ口に含み飲み込んでいく。長椅子に座りながらそんな動作を繰り返していると、向こうの廊下から誰かがやってくるのが見えた。

 

 そちらに視線を向ける。それは見慣れた人物であった。

 

「あれ、鈴ちゃん?」

 

 その言葉に鈴は驚いた。驚き、そして、それを理解したときにはすでに頬に涙が伝っていた。

 

「ひ、氷雨……」

 

「ど、どうしたの、鈴ちゃん!?」

そこに居たのは氷雨だ、間違いなく。

 

「氷雨っ!」

 

 しかし、正しくもなく……。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 千冬の部屋

 

 氷雨が聞いた声の正体。それは専用機であるペイルライダーのものであった。

 

「そ、それで、私はどこに行けばいいのでしょうか」

 

『今すぐ鈴の元へ向かいましょう』

 

 ペイルライダーは間髪を入れずに氷雨の問いに答える。

 

「凰さんのところ……ですか?」

 

『はい』

 

 唐突に出てきた鈴の名前に首を傾げる。しかし、ペイルライダーは何故鈴なのかを説明しようとはしなかった。鈴が彼にとってどういう存在かを知ることが別段重要なことではないからだ。

 

『鈴は今、クロエと接触中です』

 

 クロエという名前に氷雨は覚えがない。しかし、ペイルライダーが名指しするのだから知り合いだったのだろうと理解した。

 

「そのクロエという方と、凰さんが接触していることに何か問題があるのでしょうか」

 

『急がなければ、取り返しのつかないことになります』

 

 氷雨は一瞬どういうことかわからなかった。何故二人が出会うことで取り返しのつかない事態になってしまうのか。しかし、それを理解できないまでも、鈴に危険が迫っているということだけは呑みこむことができた。

 

「た、大変じゃないですか! 早く、凰さんの元へ向かわないと!」

 

 氷雨は急いで廊下へと出る。しかし、鈴の元と言ったはいいが、どこにいるかの当てもない。せめて、鈴の部屋の場所を聞いておけばよかったと、後悔した彼であったが、どうしてか彼の足は迷うことなく動いていた。

 

 氷雨は戸惑う。自分は鈴の部屋を知らないはずだ。しかし、どうだろうか。今自分の足が向いている方向に、鈴の部屋があるという確信が今、彼の頭の隅には存在するのだ。思い返せば、不思議なのはそれだけではない。鈴の身が危ないと聞いて、衝動的に走り出したのは何故なのか。本来ならば、単身で駆け付けようなどと思うだろうか……。

 

 しかし、そんな疑問も次第と湧いてこなくなる。どうでもよくなるのだ。今はただ、鈴の身を案じる気持ちで胸が満たされているからだ。

 

「凰さんっ!」

 

 廊下の角を曲がる。そこで見たのは倒れ込む鈴と、もう一人の少女の姿であった。

 

 先ほどのペイルライダーの話からその少女がクロエであろうことが分かる。少女はこちらに顔を向ける。

 

「何をしたんだ!」

 

 そう叫んだ氷雨を見て、クロエは興味深そうに閉ざされた瞳を氷雨に向ける。

 

「まだ“少し”と言ったところでしょうか」

 

 クロエの言葉に氷雨は眉を顰める。

 

「どういう意味ですか!」

 

「やはり彼女は必要でしたね。分かりやすい人で助かりました」

 

 クロエの言葉は氷雨との会話ではなく、独り言に近いものだ。そんな言葉たちは氷雨に奇怪な印象を彼女に持たせる。それが近寄り難さを氷雨に感じさせ、鈴の元へ駆けようにも、できなくさせていた。

 

「ああ。私がいてはヤリ難いですね」

 

 どこか引っかかる物言い、彼女は姿を消した。いや、正確には氷雨には見えなくなったと言った方が正確である。

 

「それでは叔父さん、また会いましょう」

 

 そんな捨て台詞を残し、クロエはその場を去った。そして、氷雨は鈴の元へ駆け寄る。

 

「凰さんっ!」

 

 肩を抱き起こし、鈴の安否を確認する。

 

「よかった。息はしてます」

 

 そして、生存を確認すると氷雨は安心する。だが、ペイルライダーがそれを否定する。

 

『鈴は現在ワールド・パージによる精神攻撃を受けています。このままでは意識は戻らないでしょう』

 

 ペイルライダーの言葉に氷雨は驚愕し、慌てる。

 

「ど、どうすればいいんですか!?」

 

 その問いに、ペイルライダーは答えを返すのではなく、問いを返す。

 

『どうしたいですか』

 

 その言葉は簡潔で、しかし、今の氷雨にとって鋭いものだった。

 

「……」

 

 氷雨は考え込む。

 

 

 

1 凰さんを助けたい

 

2 自分の手で凰さんを助けたい

 

 

 

 

 

 

 

 そうだ。先ほどから自分はおかしい。冷静さを欠いているのも原因であるだろうが、それだけでは説明できない。

 

 少し前までの自分にはなかった感情だ。しかし、どうしてか湧き上がってくるこの気持ち。これが偽りの気持ちであるわけがない。ならば、この感情を否定することはできない。この衝動に正直になること、それが……

 

「私が、私たる為に……」

 

 今、私がしたいと思うことなんだと。

 

「私は凰さんを、私の手で助けたい」

 

 それは声に出してみると、簡単なことだった。簡単であるが故に重要だった。

 

『分かりました。では、参りましょう』

 

 ペイルライダーがそう告げると、氷雨の体は抱きかかえた鈴と共に廊下に倒れる。氷雨は向かったのだ。鈴が待つ、理想郷へ。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 自販機で買った飲みきれないドクペを片手に鈴と氷雨は長椅子に並んで座っていた。

 

「びっくりしたよ、鈴ちゃん突然泣き出すんだもん」

 

 泣き止んだ鈴に笑顔を向ける氷雨。

 

「うるさいわね。元はと言えば、あんたが悪いんじゃない」

 

 そんな鈴の言葉に氷雨は謝罪しつつも、どこか嬉しそうな笑顔を見せる鈴を見てつられて笑顔になる。

 

「そう言えば、僕たちが最初にあったのってここだったよね」

 

「あーあの時ね」

 

 それは鈴がこの学園にやってきた初日のことだった。

 

「あの時からそうだけど、あんたってデリカシーなかったわよね」

 

「その節は本当に申し訳ないと思っています……って、進行形!? 僕ってそんなにデリカシーないかな?」

 

 心外そうな表情をする氷雨であったが、鈴は構わず続ける。

 

「ないない。あんたも一夏も、乙女心ってものが分かってないのよ」

 

「い、異議あり! 一夏と同列で語られたくはないよ、僕!」

 

「その異議は認められないわね」

 

「がーん!」

 

 鈴の言葉に氷雨は項垂れる。本当に落ち込んでいるようにも見えるが、鈴は氷雨の切り替えの早さを知っているのであえて慰めるようなことはしない。

 

「それで、仲直りしたのもここだったわよね」

 

「仲直り……ていうのかな、あれ? 結構一方的な謝罪だった気もするけど」

 

 そんなことを本人が言うのだから少し面白くて鈴は笑う。

 

「まあ、でもあたしはここで許したのよ。でも、正直関わりたくないとは思ってたけどね」

 

「ひどくない!?」

 

「どっちが?」

 

「……僕だねっ!」

 

 潔く宣言する氷雨だったが、自分の言葉に「あれ?」と首を傾げた。

 

「あんたはいつも一生懸命だっただけなのよね」

 

 振り返ればいつもそうだ。氷雨は全てにおいて一生懸命であった。時に方向を間違え、時に度を超えてしまっても、それは全て悪意のない全力を向けた結果だったのだ。

 

 故に危惧していたのだ。いつか怪我をするのではないかと。

 

「だから、責めるのはお門違いだって、分かってるのに……分かってたのに」

 

 鈴の頭をよぎるのはあの日の氷雨だ。自分の前でゴーレム三体と対峙し、自分の限界も顧みず守ってくれた彼の姿だ。

 

 顔を見られたくなくて鈴は俯く。

 

「心配かけないって……約束したじゃない」

 

 それは指切りした約束。

 

「……」

 

 氷雨は黙って鈴の頭を撫でる。

 

「心配かけて、ごめんね」

 

 氷雨は鈴に謝る。そして……

 

「もう、あんなことしないから」

 

 そう言って、自分を否定したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違うっ!」

 

 その声はどこからか聞こえた。

 

 二人は驚いて声のした方へ顔を向ける。二人の視線の先にいたのは氷雨だ。コアネットワークから鈴が取り込まれたワールド・パージの世界へと辿り着いた氷雨だ。

 

「私なら……、氷雨なら、そんなことは言わない!」

 

 彼にとって、氷雨という人物は自分とは別の人間である。しかし、ここに来るまででこれだけは理解できた。

 

「凰さんを守るという行為を、否定なんかしない!」

 

 その言葉で鈴は目覚める。ここが現実ではないこと、そして、隣にいる氷雨が本物ではないことを。

 

「だとしてもっ!」

 

 不意に鈴の体は宙に浮く。そして、気づけば鈴は鳥かごの中に囚われた状態になる。

 

「凰さんっ!」

 

「氷雨っ!」

 

 鳥かごはワールド・パージが作り出した虚像の氷雨の後ろに移動する。

 

「鈴ちゃんを守れるのは僕だけだ! 決してお前なんかじゃないっ!」

 

 そう言って、虚像は専用機を展開する。

 

「もう鈴ちゃんを危険な目には合わせない。ここが、ここだけが全てから鈴ちゃんを守れる理想郷だ!」

 

 両手にビームブレードを持ち、虚像は切っ先を氷雨に向けて言い放つ。

 

「鈴ちゃんを連れ出したければ……僕を倒して、証明してみろ! 鈴ちゃんを、守れるとっ!」

 

「望むところです!」

 

 展開されたペイルライダーに包まれ、氷雨は虚像と対峙する。自分であるはずのそれは、とてつもなく強大に見えた。

 





後二、三話で終わりそうですね

選択肢、実はバッドエンドも作ってたんですが、皆さんに選択してもらってのバッドはあまりにも酷いのでボツにしました
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