鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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最終回の後日談になります



シアワセのカタチ

 

 僕と鈴ちゃんは恋人の関係へとなったわけだけども、それを機に変わったことはあまりなかった。鈴ちゃんがデレデレになるわけでもなく、僕らは付き合う前と同様の日常を過ごしていた。まあ、僕からしたらその日常が幸せだったわけだから、不満なんて微塵もないんだけどね。

 

「鈴ちゃん」

 

「何よ」

 

「好きだよ」

 

「はいはい、あたしも好きよ」

 

 変わったことを強いて言うなら、肩書が恋人に変わったことで、鈴ちゃんの僕に対するあしらい方が少し変わったくらいかな。何気ないやり取りの中で鈴ちゃんからの好意を受け取ることができるなんて、幸せすぎるね。

 

 そんな風なやり取りを食堂のテーブルで行う。机の上に置かれた学食のメニューも鈴ちゃんと食べると、格別においしく感じられるね。え、病気だって? 違うよ、脳内麻薬だよ。あ、どちらにせよヤバい奴には変わりないね。

 

「なんか安心するわね」

 

「何が?」

 

 息を吐きながら鈴ちゃんがそう言うので僕は首を傾げて見せる。

 

「あんたがいつも通りだからよ。さっき屋上での緊張が嘘みたいよ」

 

 なるほど。鈴ちゃんは先ほど告白を受けて間もないにも関わらずに相も変わらない僕の振る舞いに安心感を覚えたということだね。

 

「しかし、鈴ちゃん、それには理由があるんだ」

 

 僕の言葉に鈴ちゃんはキョトンとした顔をする。

 

「じ、実はテンションが上がりすぎないようにするために……」

 

 僕は机の下に隠していた左手を鈴ちゃんに見せる。

 

「太ももにペンを突き刺してたんだよね」

 

「何やってんのよ、あんたは……」

 

 いやー、漫画とかでよく見る手法だから試してみたけど、なかなかに効果はあるようだね。ただ、強いて悪い点を上げるなら物凄く痛いってことくらいかな。太ももに痺れるような激痛が走るのを無視できるならおすすめできるよ。僕はもう二度としないけどね。

 

「あ、そうだ」

 

 そうやって落ち着いてくると、鈴ちゃんに聞こうと思っていた疑問を思い出す。

 

「鈴ちゃんに告白されてすっかり忘れてたけど……」

 

 告白……自分の言葉にさっきのことを思い出す。あの時、鈴ちゃんにキスされたんだよね。鈴ちゃんの温もり……。

 

“ズブリ”

 

 嫌な効果音が頭に響き、再び僕は冷静さを取り戻した。危うく鈴ちゃんへの思いを大声に乗せて叫ぶところだった。というか、ペイルライダーさん。そんな効果音が付くほど刺してないので変な音を僕に伝えないで下さい。

 

『気持ちだけでも致命傷にしておきました』

 

 気持ちだけでも致命傷にはして欲しくないんだけど!?

 

「どうしかした?」

 

 鈴ちゃんが不思議そうにこちらを伺う。そうだった。鈴ちゃんに聞きたいことがあったんだよね。

 

「いや、なんでもないよ。それより、鈴ちゃん一週間くらい学校休んでたでしょ?」

 

 今日だって休んでたし。だから、突然連絡があって驚いたんだよね。

 

「ああ、そうね。明日からは普通に授業出るわよ」

 

「そうなの? じゃあ、またお昼誘いに行くね」

 

 ラウラとお昼を食べるのもいいけど、やっぱり鈴ちゃんがいないとね!

 

「あ、それでね。そのなんで休んでたのかなーって」

 

 千冬さんに聞いてもはぐらかされ、「本人に聞け」と言われるばかりだった。もしかしたら束さんにちょっかいかけられてるんじゃないかと思って確認しに行ったら束さんは関係ないって言ってたし……。あれ? 関係ないってことは、束さんはもしかして鈴ちゃんが休んでた理由知ってたのかな? だったら教えてくれてもよかったのに……。

 

「ちょっと中国に帰ってたのよ」

 

「え? あ、そうだったの」

 

 それなら一週間くらい休んでもおかしくないね。あれ? いや、この時期に中国に帰る理由って何?

 

 そんな疑問に首を傾げていると、鈴ちゃんが口を開く。

 

「実はね。あたし、代表候補辞退してきたのよ」

 

「あ、なるほどね。それでいったん中国に戻って……」

 

 だいひょうこうほじたい? 代表……候補……。

 

 僕は勢いよく立ち上がり驚愕を浮かべた顔を鈴ちゃんに向ける。

 

「ど、どどど、どういうこと!?」

 

 どこか軽い口調で紡がれた鈴ちゃんの言葉。しかし、それが意味するのは鈴ちゃんが学園から居なくなるかもしれないということだった。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 鈴はワールド・パージから目覚めた後、千冬に連れられ病院で検査を受けた。検査の結果は異状なし。診断結果を受け取り、外で待っていた千冬の元に向かう。千冬に結果を告げると、千冬は「そうか」と答えた後、車に乗り込んだ。

 

「千冬さん、頼みがあるんです」

 

 千冬に続いて車に乗り込んだ鈴は運転席に向かって話しかけた。

 

「織斑先生と呼べと、何回言えばわかるんだお前たちは……」

 

 そのお前たちには氷雨も含まれているのだろう。千冬の中で鈴と氷雨はもうひとくくりの存在なのだ。故に、今回の件が解決したことに安堵している。しかし、鈴の中ではまだ解決していないのだ。

 

「いえ、千冬さんに頼みがあるんです」

 

 どこか含みのある言い方に千冬は眉を顰める。千冬が沈黙で促すと、鈴が話し始める。

 

「篠ノ之博士に会わせてほしいんです」

 

 それを聞いた千冬はアクセルを踏もうとした足を浮かせ、助手席の鈴の方を見た。

 

「それは確かに、私にでないと頼めないことだな」

 

 鈴の意図を理解した千冬がそういう。しかし、分からないのはその目的だ。むしろ千冬としてはもう束には鈴と接触させないつもりであったし、鈴もそれを望んでいるものだと思っていた。

 

「理由が知りたいな」

 

 判断するのはそれからでも遅くないと千冬は考えた。

 

「知りたいんです、氷雨のことを。あの女の子の言葉の真意を……」

 

 あの女の子というのはクロエのことだろうと、千冬は理解した。そして、ワールド・パージを受けた時に接触した彼女に何か言われたのだろう、と。

 

 その言葉がどのようなものであるかは分からない。しかし、鈴の真剣な眼差しに応えないでいられるほど、千冬は無関係ではなかった。二度目の強襲を止められなかったのは自身にも非がある。なら、鈴の頼みを無下することはできない。

 

「……わかった」

 

 そう答えると、千冬は端末からどこかへ連絡をする。おそらくは束だろう。しばらくの通信を経て、千冬は鈴の方に向き直る。

 

「今から会いに行くぞ」

 

 その言葉に鈴は強く頷いたのだった。

 

    ◇   ◇   ◇

 

 二人が向かったのは織斑宅であった。現在は誰も住んでいないこの家だが、週末には帰っているのか、少し生活感が残っている。

 

 しばらく待っていると、玄関が開く音がした。

 

「やっほー! ちーちゃん久しぶりだねー!」

 

 そんな風に騒々しい声が部屋に響く。その声に千冬はため息を吐いた。

 

「昨日も会っただろう。しかも、うちの生徒を襲わせて」

 

「えー、でもよかったでしょ? ひーくんの記憶も戻ったんだし」

 

 すでに束が知っていることに千冬は驚かない。そういう情報だけは早いのだ。興味のないことにはとことん疎いが、彼女の興味があるモノに関しては知らないことがある方がおかしい。

 

「でさ……」

 

 楽しそうだった声色が何かに気づき一転する。その眼が捉えたのは鈴の存在だった。

 

「なんでチャイニーズがこんなところにいるのさ」

 

 それは明らかに鈴がここにいることを咎める口調であった。それに気づかない鈴ではないが、そもそも自分を襲ってきたのだ。自分に対して好意的でないことは百も承知。今更それに怖気づくこともなかった。

 

「あなたが氷雨のお姉さんね」

 

「はあ? なにひーくんのこと名前で呼んでるの? お前のその汚染された息でひーくんの名前を呼ぶんじゃねーよ」

 

 そんな束の罵倒を咎めようとした千冬だったが、彼女が咎める間もなく、鈴がそれを意に介した様子もなく束の隣にいた少女、クロエに問いかけた。

 

「あの時あんたが言った言葉の真意が知りたい」

 

 クロエはその言葉を受け口元に笑みを浮かべる。鈴は彼女の姿を見た時、やっぱりと納得していた。あの時の少女が氷雨と繋がる人物だろうこと、そして、あの言葉を考えると、この場にいないはずがないと。

束がクロエの方を見る。そのどこか嬉しそうな表情に束はクロエの気持ちを察した。

 

「なるほど、くーちゃんはそっち側だったのね」

 

「申し訳ありません、束様」

 

「別に怒ってないよー。くーちゃんがそう考えてるなら、束さんもちょっと対応を変えようかな」

 

 そう言うと、束は再び鈴の方に向き直る。しかし、その眼は先ほど前の敵意剥き出しの目ではなく、少しの興味を秘めた視線であった。

 

「凰鈴音……うん、とりあえず鈴でいいかな。鈴はさ、ひーくんのことどう思ってる?」

 

 突然名前で呼ばれたことに少し戸惑う鈴であったが、束の問いかけに答える。

 

「大好きよ」

 

「あ、違う違う。そういう感情的なことじゃなくて、ひーくんの立場とかって意味だよ」

 

「えっ、あっ。あぁ……」

 

 そう束に訂正されると、鈴は顔を真っ赤にして羞恥に顔を隠す。

 

 鈴は紅潮した頬を手でぺしりと叩き気を取り直すと、束の方に視線を戻した。

 

「氷雨はただの男性操縦者ってだけじゃないんでしょ? 政府と関われば、それこそ世界が変わるような何かがある」

 

 そこまで言うと、束は頷く。

 

「そこまで分かってるなら話は早いよ、鈴」

 

 その言葉に鈴は束の口から答えが聞けるものだと思った。しかし、帰ってきたのは鈴が知りたいと思っていた言葉ではなかった。

 

「ひーくんと関わるのをやめて。それは二人ともが不幸になる」

 

 しかし、束の言葉は当然のものだった。国家の代表候補生である以上、鈴と氷雨が交わることは面倒が付きまとうのだ。

 

「ひーくんはね、別に特別じゃないよ。特別なのはペイルライダー」

 

 そして、束は語りだす、鈴が知りたかったことを。

 

 鈴は知った。氷雨が乗っているペイルライダーの特異性を。そのコアが持つこの世界の前提を覆す搭乗条件が氷雨と自分を引き合わせていたことを。

 

「それで?」

 

 話し終えた束は鈴に問いかける。

 

「これを聞いて、鈴はどうするの?」

 

 それは鈴を試しているような言葉。

 

 現状を維持する選択はない。どちらかを取るしかないのだ。その選択は彼女にとって決定的なことだ。彼女だけではない。その選択が及ぼす周囲への影響力は個人のレベルにとどまらない。そんな重圧の中、彼女は決断を下したのだった。

 

「あたしは……」

 

    ◇   ◇   ◇

 

「で、そう言うことがあって、一旦中国に戻って代表候補を辞退してきたってわけ」

 

「えー」

 

「なんで、あんたが不満そうな声出してんのよ」

 

 いやいや、確かに嬉しいよ? 政府と僕を天秤にかけて、僕を取ってくれたってことでしょ? 確かにそれは嬉しいことだし、僕だってそうすると思うけど、これは本当に正解なの?

 

「あ、ちょっと待って、それって問題だらけじゃないの?」

 

「なにがよ」

 

 若干鈴ちゃんは不機嫌そうに返事をする。え、何か怒らせちゃった?

 

「だ、だって、代表候補生じゃなくなったら国からの支援が無くなっちゃうわけだし、学費とか、生活費とかどうするのさ」

 

「俺が養う! くらい言ってくれるでしょ?」

 

「もちろんさ! ……いやいや、無茶でしょ」

 

 僕の顔は知れてるわけだから就職も難しいだろうし、第一この学園を辞めるって僕個人の意見が通るとも思えないし。

 

 僕がうんうん唸っていると鈴ちゃんの笑い声が聞こえてくる。顔を上げるとおかしそうに笑う鈴ちゃんがいた。

 

「冗談よ。そんな真剣に考えなくてもいいのに」

 

「え、だって、いずれは本当に養うわけだし、その時期が早まっただけなのかなって……」

 

 僕の言葉に鈴ちゃんは顔を紅くする。

 

「き、気が早すぎるのよ、あんたは」

 

「そうかな……」

 

「そうよ……」

 

 鈴ちゃんはそう言った後、深く息をして頬の熱を冷ました。

 

「お金に関しては問題ないわよ。あんたのお姉さんが支援してくれるらしいから」

 

「なんだ。そうだったんだね」

 

 束さんが鈴ちゃんにお金を出してくれるのか。それなら安心だね!

 

「…………いやいやいいあいやいやいあ」

 

 焦りすぎて回らない呂律に鈴ちゃんは笑う。しかし、僕はその可愛らしい笑顔に一瞬和んだものの笑ってられる心理状態ではなかった。

 

「どうゆうこと!?」

 

「何が疑問なのよ」

 

 だって、束さんですよ? 身内以外には冷徹無関心の外弁慶ですよ? それがどうしてつい最近まで命を狙っていた鈴ちゃんに対して金銭的な支援を……。

 

 ん? 身内以外?

 

「え、ええと。つまりは、その……。束姉が鈴ちゃんと僕が付き合うことを認めたってこと?」

 

「……そう言うことよ」

 

 少し恥ずかしげに言うのは改めて付き合っていると明言したからだろうか。恥じらう鈴ちゃんに悶えつつも、僕は納得する。鈴ちゃんが代表候補を辞退してきたのは束さんに認めさせるためだ。そうなると、束さんが身内である鈴ちゃんを支援しないわけもないし、そう言うことなんだろうね。

 

「束姉が支援してくれるなら何も問題はなさそうだね」

 

「信頼してるのね」

 

 僕が安堵に胸を撫で下ろすと、鈴ちゃんが少し嫉妬のようなものを含んだ目でこちらを見てきた。

 

「悪い意味でだけどね」

 

 おそらく嫉妬の原因はあの襲撃時の僕の対応と比べてだろう。自分にそれほどの信頼は置いてくれないのに……という感じかな? いやー、でも束さんに感じている信頼を鈴ちゃんにするのは嫌だなー。

 

「でも、鈴ちゃんのことだって信頼してるよ?」

 

「どうかしらね」

 

「僕のこと好いてくれてるって確信してるしね!」

 

「それ別に信頼と関係ないじゃない」

 

 どこか呆れたような声だったけど、その顔は嬉しげに笑っている。それが嬉しくて僕もつられて笑顔になる。

 

「あ、でも今は信頼しなくてもいいわよ」

 

「えっ。なんで?」

 

 な、何か隠し事でもしてるのかな?

 

「代表候補辞退したから、甲龍取り上げられちゃったのよね。だから、またあんな襲撃があったらあたし、頼りにならないわよ」

 

 軽い口調で鈴ちゃんは言ったけど、それって鈴ちゃんにとって大切なものじゃないの? 鈴ちゃんが努力して手に入れたものなのに……。

 

 そんな僕の思考を読み取ったのか、鈴ちゃんは笑いながら僕に言い放つ。

 

「カタチあるものに囚われていたくないのよ。あんなもの無くたって、あたしはここに立っていられる。それに、本当に大切なものはカタチのないもの。そうでしょ?」

 

 鈴ちゃんの言葉には迷いがなく、僕はそれに納得させられた。こういう前向きなところも鈴ちゃんの良いところだよね。

 

「まあ、鈴ちゃんは今座ってるけどね」

 

「うっさいわね。言葉の綾でしょ」

 

 そんな軽口で笑いあう。そんな鈴ちゃんの笑顔が、これからの未来でシアワセのカタチを二人で見つけられる、そう確信させてくれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、代表候補の辞退したって、なんだか中国にいる鈴ちゃんの家族が心配になるんだけど……」

 

「あ、大丈夫よ。やめる時に束さんとの繋がりをほのめかしといたから」

 

「ああ……」

 

「本当に大切なのはカタチあるものじゃなくて、カタチのない『ツナガリ』でしょ?」

 

「間違ってないけど……」

 

 なんだかなーと思ってしまうのだった。

 






今更感がありますが、私です
感想であっさり終わりすぎではないかと言われました
その通りですね!
ですが、あれの方が綺麗な終わり方だったと私は思っています
まあ、色々すっ飛ばしたことは自覚していますので、元々後日談は書くつもりでした

一夏とか箒とかラウラとかの反応は?と思う方もいると思いますが、それは鈴ちゃんに関係ないので書きません
ご了承ください

後もう一話だけプロローグという名の後日談があります
付き合ってくれたら幸いです

あ、後、活動報告にてリクエスト受け付けてます
コメントしてくれると、狂喜乱舞します、私が
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