鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん 作:かきな
僕と鈴ちゃんはどういうわけか束さんに呼び出しを食らった。どうやら束さんのラボで僕らに用事があるらしいけど一体なんだろうか。僕一人ならともかく、鈴ちゃんも連れて行くとなるとペイルライダーで行くのは難しいなと思案顔になっていると、どこからか少女の声が聞こえてきた。
「氷雨叔父さん」
「その呼び方をするのはクロエちゃんだね」
僕は自室の壁に向かって呼びかける。すると虚空から徐々にその肢体をさらし、見えてきた少女の姿はやはりクロエちゃんだった。
「鈴をどうやって連れて行こうかと思案してますね」
「その通りなんだけど、よくわかったね」
「叔父さんが頭を使うのは鈴関係の時だけですから」
その通りだから反論しないけど、明らかに馬鹿にしてるよね?
『事実では反論できませんね』
「どっちに対してかな? 少なくとも馬鹿であることは反論するからね?」
「えっ」
「なんで予想外みたいな表情してるのさ!」
この二人が揃うといつも馬鹿にされている気がするね。あれ、もしかしてキャラ被ってるのかな?
「それはそうと、困ってる僕にクロエちゃんは何か解決策を提示してくれるの?」
「気乗りはしませんが、束様に頼まれたので」
気乗りはしないんだ……。
「ゴーレムを連れてきたのでそれに鈴を運んでもらいます」
「あ、なるほどね」
束さんの作ったゴーレムはステルスついてるもんね。それに無人機だから余剰のエネルギーを鈴ちゃんの保護バリアに当てられるから安全だね。
「じゃあ、鈴ちゃん呼んでくるね」
「?」
クロエちゃんは首を傾げる。あれ? 僕、何か可笑しなこと言ったかな?
「呼びに行くとは?」
「え? いや、だから鈴ちゃんの部屋に行ってゴーレムのところに連れて行こうって意味で……」
「鈴はすでに束様のラボですが?」
「運んだ後なの!?」
先に言ってよ!
「では、行きましょうか」
「……そうだね」
なんだかクロエちゃんに振り回されてる気がするね。
「でも僕はクロエちゃんの叔父さんなんだし、これくらい平気だよ!」
「早くいきましょう、“叔父さん”」
強調しないでくれるかな!?
◇ ◇ ◇
外に出るとペイルライダーもとい、蒼騎士を展開した僕の前に両手を広げた状態でクロエちゃんが立ちはだかった。
「……あの、どういうつもりですかね?」
「見てわからないのですか?」
見てわかったらその意図に従うつもりだけど、生憎僕の頭では理解できないよ。
「ゴーレムは鈴を送りました」
「うん」
「私はここにゴーレムで来ました」
「うん」
「さあ」
いや、だからそこで手を広げられても困るんだよ……。
「発言の意味が不明なんだけど……」
「分からないのですか? 私はここにゴーレムで来ました。そのゴーレムは今はいません」
「なんで?」
「鈴を連れて行ったからです」
「2体用意しようよ!」
最初から必要だって分かってたじゃないか!
「2体で来ると警備に発見される可能性が上がります。一機であれば黒鍵が光学迷彩をつけることができますから」
最初からゴーレムに光学迷彩つけとけばいいのにね。
「そういうわけなので」
つまりこれは僕に運べと言っているのだろう。
いや、だけど、考えてみれば僕に体を預けるという行為は僕を信頼しているからできることで、クロエちゃんが僕のことを認めてくれていると解釈することはできないだろうか?
「それは嬉しいことだね」
「私の体と接触することを嬉しがるとは、少し身の危険を感じますね」
『110番の準備はできています』
「待って! そういう意味じゃないから!」
どうしてこうも僕の言葉はねじ曲がって伝わってしまうのだろうか。あれかな、僕とクロエちゃんの間で思考の屈折率が違うのかな? もう角度付きすぎて全反射してるんじゃないかってくらいに意思疎通ができないよ……。
「冗談です」
クスリと笑いクロエちゃんは再び両手を広げる。本当に振り回されてばっかりだよ。
まあ、ここで問答を続けるのも楽しいけれど、鈴ちゃんを待たせているわけだしそろそろ出発しようかな。
「じゃあ、クロエちゃん行くよ?」
「はい」
了解も得たところで僕はクロエちゃんの腰に手を当てた後にもう片方の手を膝の裏に回し、持ち上げた。
「ひゃっ」
「ん?」
何やら可愛らしい悲鳴が聞こえたような気が……。
あたりを見回してみるも周囲にそれらしい人影はなく、夜の静けさが立ち込めるばかりだった。
ということはあの声の主は……。
僕は抱き上げた少女の方を見る。少女はどういうわけか、そっぽを向いており僕と目を合わせない。
「クロエちゃん……」
「……」
「首に手を回さないと危ないよ?」
「!」
クロエちゃんは少し驚いたような顔を僕の方に向ける。どうやら僕がさっきの悲鳴でクロエちゃんのことをいじると思っていたようだね。
まあ、仕返しでやってもいいけど、クロエちゃんはそう言うことされるのは苦手っぽいし、あえてやる必要もないよね。
そんな僕の対応に驚きつつも、クロエちゃんは僕の指示に従いしっかりとしがみついてきた。しっかり……し過ぎで苦しい!?
「ちょっ! クロエちゃん!?」
「叔父さんに気を使われるなんて……屈辱です」
「なんでっ!?」
『分かります』
「分かっちゃったの!?」
やっぱり僕の意図はねじ曲がっちゃうようだった。
◇ ◇ ◇
そうしてたどり着いた束さんのラボでは束さんと鈴ちゃんが話をしていた。
「おーい、束姉来たよー」
僕の声に二人が振り返る。
「ひーくん、いらっしゃーい」
「遅かったじゃない」
まあ、遅かったのはクロエちゃんに原因があるんだけどね。
それにしても、二人の声色から険悪な感じはしないからどうやら本当に束さんは鈴ちゃんを身内として認めているようだね。それに鈴ちゃんの顔を見るとなんだか嬉しそうである。
「鈴ちゃん、何かいいことでもあったの?」
「え? なんで分かったの?」
鈴ちゃんは驚いた様子だったけど、依然として口角は上がったままだ。
「りっちゃんは表情に出るからねー。今も口元が緩んでるよー」
「え、ほんと? あー、なんか恥ずかしいな」
束さんが鈴ちゃんの頬をつつきながらそう指摘すると鈴ちゃんは恥じらうように笑った。
「え、なにこの仲の良さ」
いつの間にか鈴ちゃんのことりっちゃんなんて呼んでるし。
「驚くのも無理ありませんが、壁が無くなれば束様は誰にでもこうです」
その誰にでもが限られすぎてるから今の状況に驚いてるんだけどね。でも、うまくいっているようで何よりだね。鈴ちゃんも満更じゃなさそうだし。
「はっ! まさかここからNTRルート……!?」
「それは鈴が心配すべきでは?」
「え?」
「おっと」
クロエちゃんは口が滑ったと言わんばかりに僕から顔を背け、口元に手を当てる。意味深そうなこと言ってるけど、僕が鈴ちゃん以外になびくことなんてありえないからね。
「それで、束姉が呼んだのって鈴ちゃんが喜んでいることと関係あるの?」
「うん、それが要件の一つだよ。簡単に言ったらりっちゃんに専用機を作ってあげようって話なのだよ」
束さん太っ腹すぎる!
「とは言っても、りっちゃんが元々搭乗していた甲龍のコアは中国に返還しちゃったからねー。戦闘データもないし、どういうコンセプトが良いか聞こうと思って呼び出したってわけ」
「なるほどねー」
ということは、僕が来るまでに二人が話していたのってそれに関してなのかな?
「鈴ちゃんはどんな機体が良いって言ったの?」
「ひ、秘密よ!」
僕が何気なく鈴ちゃんに問いかけると、少し頬を赤らめてそう返してきた。その反応の意図を理解できずに唖然としていると、束さんが嬉しそうに話しだした。
「りっちゃんはね、ひーくんと並んで戦えるような機体が欲しいって言ってたんだー」
「へ?」
「束さん!?」
並んで戦える、それはクラス対抗戦の時に鈴ちゃんが言っていた対等の関係でいたいという願い。そ、そこまで鈴ちゃんに想ってもらえるなんて、なんたる幸せ!
「鈴ちゃあああん!」
「ちょっと! 引っ付かないでよ!」
勢いあまって鈴ちゃんに抱き着くも鈴ちゃんに両手で押し返される。
「別に、あんたのためってわけじゃないからね」
「ツンデレだねー」
「典型的ですね」
「そこが魅力なんじゃないか!」
「あんたたちねぇ……」
僕らのやり取りに呆れ顔になりつつも、頬に残る紅が確かなテレを表していた。
「まあ、そういうわけで束さんはこれから大忙しになるわけですよ」
コアもないし、本当に一から作るわけだからその作業量は尋常じゃなさそうだね。
「そして、最後にひーくんを呼び出した理由って言うのは、この前の襲撃のことなんだけど」
その言葉に僕はさっきまで緩んでいた頬を引き締める。鈴ちゃんもその襲撃が何を示しているかを理解しているようで、こちらの様子を心配そうに伺っていた。鈴ちゃんが何を危惧しているのかは分からない。けれど、続く束さんの言葉によっては僕は鈴ちゃんの危惧している行動を犯すかもしれない。
それほどこの話題は繊細なものだと思っていた。だから、僕自身も束さんに問いただすこともせずにいた。だから僕は柄にもなく真剣な顔になって束さんの方を見る。別に、真面目な表情をした僕に鈴ちゃんが惚れ直さないかな? とか言う邪念は一切ない……とは言い切れない。
「ひーくん、ごめんなさい」
束さんの口から紡がれたもの。それは僕が最も期待していた言葉で、僕が最も予想していなかった言葉だった。身構えていたところと全く違うものが飛んできたことにより、僕は呆気にとられてどう返事をすべきかを悩んでしまう。だって、束さんだよ。あの束さんが素直に自分のしたことに対して謝罪してきたんだよ? そりゃ、呆気にとられもしますよ!
そんな僕の沈黙を束さんはどうとらえたのか、続けて言葉を紡ぎだす。
「ひーくんが中国のハニートラップの対象になってるっていう情報だけで、ひーくんたち当事者を見ずにひーくんの大切な人を傷つけようとしていたって、今更になって分かっちゃったから、束さんすごく反省してたんだ。だから、謝りたいなーって」
それはいつもの束さんの口調。でも、だからこそそれが束さんの本心なんだなと思えた。
あの一件以来、悩んでいる暇なんてなかった。だから、徐々にあの襲撃のことは頭の中から消えていっていた。でも、端の方でしこりのように残るものはあった。どうして束さんはあんなことをしたのか。どうしようもなく悪いことなのに、どこかで束さんなりの理由があったんじゃないかって、10年も一緒だった姉に対して擁護する自分がいた。でも、結果として鈴ちゃんは無事で、束さんと鈴ちゃんの仲は良好で……それを問いただすタイミングを失っていたんだ。
靄は晴れた。
僕は今、ようやく清算を終え、ツナグミライへ行ける。
「許す……」
「ひーくん」
「って言うと思ったら大間違いなんだよぉぉぉっぉおおおおおおお!!」
「「ええー!!」」
「当然でしょうね」
『むしろ許されると思っていたのでしょうか』
綺麗に終われると思わないでよね! 束さんがやったこと、許せるわけないと思わない?
「クロエちゃん、鈴ちゃんを学園に送ってもらっていい?」
「仕方ありませんね」
「ちょ、ちょっと氷雨、あんたはどうするのよ」
鈴ちゃんはどこか慌てた様子だ。多分、鈴ちゃんが危惧していたことって言うのは僕が暴れるんじゃないかってことだったんだろうね。
「安心してよ鈴ちゃん。僕はちょっと束さんと“お話し”するだけだからさ」
「え、笑顔なのに目が笑ってないわよ、あんた」
「あはは、何を言ってるのさ、鈴ちゃん。今、笑う要素どこにもないよね?」
「あ、これやばいやつだわ」
何かを悟ったように鈴ちゃんは束さんの方に手を合わせる。
「じゃあ、束さん。隣の部屋、行きましょうか」
「ひ、ひーくん? 束さんは優しいひーくんが好きだなー」
「奇遇だね。僕も優しい自分の方が好きなんだよね。……まあ、今日は自分に嫌われようかな」
「ひーくんっ!?」
束さんのウサ耳を掴んで隣室へ向かう。それを見送る鈴ちゃんとクロエちゃんは目でドナドナを歌っていた。
◇ ◇ ◇
後日。
授業を終えた休み時間に鈴ちゃんの机に駆け寄る。
「鈴ちゃん。僕、授業を真面目に受けてたよ。褒めて!」
「寝てたじゃん」
「いやいや、あれは睡眠学習という奴ですよ」
と、そんなことを言っていたら頭頂部に鈍い痛みを受けた。痛みに頭をさすりながら工法を振り返ると、そこにはいつものように出席簿を片手に持った千冬さんが立っていた。
「必要ないとしても真面目に受けろ。山田先生に迷惑をかけるなよ」
「す、すいません」
休み時間に千冬さんが教室に残っているのは珍しい。何か僕らに用事でもあるのだろうか?
「何か用ですか?」
そう鈴ちゃんが聞くと、千冬さんは頷く。
「昨日のことだが、束から電話が来てな。この前のことを謝られた」
それに鈴ちゃんは何かを察したように僕の方を見る。僕はそれに笑顔を返すも、返された鈴ちゃんはなんだか引きつった表情を浮かべる。
そんな僕らの様子を見て千冬さんは何があったのかと聞いてくる。
「なにもありませんよ」
僕は満面の笑みと共に千冬さんにそう返すと、千冬さんはビクリと体を震わせてから「そうか」と言葉を残して教室を去っていった。
「あんた、ほんと何したのよ」
そう聞いてくる鈴ちゃんだったけど、僕はその問いに答えず、雲一つない気持ちのいい晴天に目をやる。
「今日もいい天気だね」
こんな日がいつまでも続くのなら、尊い犠牲は必要だよね。
もうすぐ迎える梅雨の時期に目を逸らしつつ、僕はそう思った。
はい、これにて後日談も終了となりました
やりたいことはいっぱいありますが、まずは作品を完結させることができて一安心ですね
現在はまだ書き溜め段階ですけど、次回作兼アフター的な『鈴ちゃん好きが添い遂げたよ!』を執筆中です
投稿しだすのは夏くらいになりそうですかね。
全く消化できてませんがリクエストも活動報告の方で受け付けています
気が向いたらどうぞ
あ、最後になりますが、鈴ちゃんの新たな専用機は「アグヌス・デイ」という名前になります
由来はヨハネの黙示録におけるペイルライダー達の封印を解いた子羊からです。
黙示録の四騎士、白騎士、紅騎士、黒騎士、そして蒼騎士
まあ、だから何だという話ですがね