ラグナロク・イズ カム トゥルー   作:土天改名

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Warningな電脳少女
その子、取り扱い注意につき


「……」

 

「ちょ、ちょっと時間をくれ」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 ……どうしたら良いのだろうか。

 あの女の子は、今までの経験から察するとただ単純にやべー奴である。

 差し込み口がガチで腕にあったのはこの際気にしないことにする、首にもあるらしいとは言われた、聞かなくて良かった。

 

 あの子には父さんの部屋を一時的に貸している、場所がないからな。

 もちろん掃除はした、ってのは関係ない。

 

 

 

「えぇ……嘘だよな……いや本当なのか……?」

 

 

 

 目の前で非現実的なあれこれを見せられた以上、信じなきゃならない……か?

 じゃないとあの女の子は、俺の個人情報を知っていて、腕や首に差し込み口をわざわざ付けてまで騙しに来たやべー奴になるのだ、それはそれで辞めて欲しい。

 

 

 

「うぐぐ」

 

 

 

 ダメだ、頭がパンクする。

 

 

 

「……コンビニでも行って来るか」

 

 

 

 混乱している時は外の風を浴びながら、コンビニでアイスを買って食べるべき……なのはアニメの中だ、現実だとあんまり見たことはない。

 普通に飲み物やお菓子を買いに行こう、そうしよう。

 思い立ったが吉日なのである、部屋を出て、階段を降りた先には。

 

 

 

「……あ」

 

「……」

 

 

 

 件の女の子がいた。

 ……単純に気まずいんだが? どうしろと。

 

 

 

「すまない、助けて貰ったにも関わらず、このような非現実な事象に巻き込もうとしてしまって」

 

「……そこは、別に良いよ。俺が助けたんだし」

 

 

 

 雨の中、ずぶ濡れになっている女の子と目が合ってしまったが最後、俺には見捨てるだけの度胸はないのである。

 

 

 

「ただ……考える時間が欲しい」

 

「それを、私が拒絶して良い理由は無い」

 

「君の決断に、従おう」

 

「……卑怯な言い方になってしまい、本当にすまない」

 

 

 

 

 

 心なしか、悲しい表情をしていた(と思いたいだけの俺が)女の子から逃げるように、出て向かって来たのは、いつものコンビニ。

 

 小腹が空いた時、何か買いたいと思った時、些細なことの大体はコンビニに来れば解決する、間違いない。

 スーパーと比べて、若干割高だとしても、近さと便利さを引き換えにする程にはならないのだ。

 

 

 

「さて、何を買うかな……っと」

 

「そこの君、ちょっと良いかな」

 

「へ? ……何ですか?」

 

 

 

 なんか、いかにも何かしらの研究者か医者です、って風貌をした男に話しかけられた。

 もう一人は……サングラスに黒スーツだ、うん。

 

 

 

「この付近で、包帯を巻いた女の子を見なかったかい」

 

「……包帯を巻いた、女の子ですか?」

 

「ああすまない、私は怪しい者ではないんだ」

 

「……そういう年頃の、私の娘なんだが……家出をしてしまったんだ、だからこうやって付近の人に聞いて回っているのさ」

 

「へぇ……大変なんですね」

 

「ああ、本当に迷惑をかけるね」

 

「それで、白い髪と赤い瞳の少女なんだが、見なかったかい?」

 

 

 

 ……あの子だ。

 

 

 

「包帯をした、白い髪と赤い目の子……すいません、見てないです」

 

「そうかい……残念だ、時間を取らせて申し訳ない」

 

「いえ」

 

「……見つかると良いですね、娘さん」

 

 

 

 

 

「……チッ、どこに行ったんだ奴は」

 

「仕方ありませんよ、ボス」

 

「奴に機械は通用しない……それなのに、電子ロックにかまけて放置した部下の責任です」

 

「本当にな! 全く、あれほど施錠するのなら旧式にしろと忠告しておいたと言うのに……」

 

「奴は、上手く使えば世界をひっくり返せる」

 

「その準備が整う直前で、脱走だと? ふざけやがって……」

 

「ああもう! 何故ここの奴らは監視カメラを使わないんだ! お陰で私自ら聞き込みをする羽目になっているじゃないか!」

 

「……奴を見た後だと、この辺りの不用心さが逆に安心できる要素になってるのが不思議っすね」

 

「フン……さっさと次に行くぞ!」

 

「了解です」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 ……マジ、なのかよ。

 

 

 

「どうすっかなぁ」

 

「俺個人が、どうにかできるもんじゃねぇだろこれぇ……」

 

 

 

 さっきの人達に嘘ですって全部吐く? 絶対平和には終わらねぇよ俺。

 知ってる、ラノベとかをずっと読んで来た俺はそういうのに詳しいんだ、ちくせう。

 

 

 

「ははは……肝心な時に役に立たねぇなこの知識」

 

 

 

 こういう展開を、知らなければ。

 あの人達に『うちで預かってますよ』って素直に伝える馬鹿な俺が居たかもしれないのに。

 なまじ、そういうことの展開(さき)ってのがわかるから、びびっちまう。

 

 ……そうやって、あの子を売ることになんの後悔もしていない自分ってのも嫌になる。

 そうだもんな、俺何も悪くないんだもんなぁ。

 あの子より自分が可愛いのは間違いないんだし。

 

 何だよ世界をひっくり返せるって、ふざけんなフィクションだけにしてくれよ、そういう話は。

 

 

 

「うはぁ、どうしよ」

 

「……」

 

 

 

 男なら、大切な子を守れよ、とかよく言う言葉なんだけど。

 俺とあの子は初対面だし、女の子だし可愛いけど自分が酷い目に遭うかもって考えたら守る選択肢が、俺の中から消えてくし。

 けど、今更感も凄い。

 

 

 

「……アイス、買ってくか」

 

 

 

 考えることを辞めた、逃げた訳じゃ……ある。

 ……何味が好きなんだろうかね、あの子は。

 

 

 

 

 

「……起きてるか」

 

「ああ」

 

 

 

 帰って来たら、リビングでちゃんと待ってた、もう遅いんだし寝ててくれよ。

 

 

 

「冗談のつもりだったんだけどな」

 

「……そんな図々しくできるほど、私は度胸がある人間ではない」

 

「そうかい」

 

「……色んな味のアイス買って来たからさ」

 

「好きなのを選んで取ってくれ」

 

「色々、話さなきゃならんしよ、俺達」

 

「……わかった」

 

 

 

 彼女が選んだのは、バニラアイスだった。

 

 

 

「……さっき、あんたと同じ特徴の少女を探している人達に出会った」

 

「研究者風の男と、サングラスに黒いスーツの男だ」

 

「心当たりは?」

 

「十中八九、私を探しているんだろう」

 

「そうか……そうだよなぁ……」

 

「……私のことを、伝えたのか?」

 

「いいや、誤魔化した、誤魔化しちまった」

 

「……そうか」

 

 

 

 また、心なしかほっとしたように見える少女。

 ……何だよ、人間らしい反応してくれちゃって。

 辞めてくれよ、俺の良心が悲鳴を上げちゃうからさ。

 

 

 

「正直、俺はあんたのことを見捨てられるほど悪人でもない」

 

「……だろうな、だからこそ君は、私を助けてくれた」

 

「ああ、でも俺は、自分の身を危険に晒してまで、あんたを助けられるほど善人でも、ない」

 

「そうか」

 

 

 

 自嘲するように笑って……いや、嗤ってんのか。

 ……くっそ、中途半端な己が恨めしい。

 

 

 

「だから、見つかるまでだ」

 

「……?」

 

「あんたが見つかるまで、ここに匿う」

 

「その代わり、あんたが見つかったら、俺はすぐにあんたを引き渡す」

 

「……そこが、限界だ」

 

「……」

 

 

 

 唖然、その二文字がびっくりするほどよく似合う表情になっている。

 ……すぐさま、引き渡されるとでも思ったのか? 俺はそれができるほど肝は座ってないんだよ、残念だったな。

 

 

 

「……ありがとう」

 

「どこに、礼を言う要素があるんだよ……勘弁してくれ」

 

「それでもだ」

 

「……私は、そんな君のおかげで今を生きられる」

 

 

 

 真っ直ぐな、瞳、紅い瞳。

 ……くそ、今までであれば、飛んで、泣いて喜んでたであろうに、今じゃ苦痛の種かよ、現実ってのは残酷だ。

 

 

 

「俺の名前は、知ってるだろうが……仇成、戒だ」

 

「周りの奴らからはカイって呼ばれてる、そう呼んでくれれば間違いはない」

 

「カイ、か」

 

「わかった、記憶しておく」

 

「私の名前は」

 

「……イナ……リナ? ……リィナ、と呼ばれていたことだけは、覚えている、おそらく」

 

「じゃあ、リィナで良いか?」

 

「……ああ、そうしてくれると、嬉しい」

 

 

 

 ……こうして、微妙に善人になり切れない俺と。

 一歩間違えれば、世界を滅ぼしかねない女の子、リィナの奇妙な生活が始まった。

 

 ……これが、一つ屋根の下での、女の子との暮らしか。

 ドキドキするな、恐怖の意味で。

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