公園を爆破されたクラフターは、悔し涙に滲みながらも埋め立てを終えた。 土ブロックで穴を塞ぎ、松明を並べて整地する。
ここもよし。 あそこもよし。 殺風景だが整然とした、程良い空き地に回帰する。
背後で見学するギザ歯の犬耳村人にお辞儀する。 どうだ。 これが空き地だ。 基礎と土台の顕現だ。 建築家を志すなら、ここから何を建設するか夢想してみるが良い。
「いや、謝るなら最初からするな! というか芝生が地味に広がってないか!? 最初は剥き出しの土だったろうに! それ以上に松明を刺すその癖はなんだ? 儀式なのか!?」
興奮している。 素質あるよ君。
取り敢えずは……骨を与えた。 首輪が無い。 懐くならそうだろう。
「いらん!? というか何の骨だ? まさか人骨じゃあるまいな!?」
ハァンと叫ばれ払われた。 まぁ予想していた反応だ。 落胆は無い。 前例もある。 ラァメン犬の柴大将がそうだ。 ままならないものである。
「ごめんねカンナちゃん、寝てたみたい」
「ああユメ先生。 ご覧の通り、事態は収束しました。 SRTの 1年生部隊、RABBIT小隊が無力化に成功。 まだ教育途上とはいえ、さすがSRTでしたよ。 それなのに上は解体を望んでいるとは……分からない話ではありませんがね」
「その子たちは何処に行ったのかな?」
「農園、じゃなく学園です。 行かれるので?」
「うん。 お礼を言いに行こうかなって」
「分かりました。 我々公安はここの後始末と、伸びてる生活安全局を叩き起こしておきます」
「フブキちゃんとキリノちゃんには、ごめんねって伝えてくれるかな。 私がもっと上手く指示を出していれば良かったから……」
「いえ、あの2人は何と言いますか……ドーナッツ好きのサボり癖と射撃下手の空回りで。 口は悪くなりますが、なるべくしてその地位にいる、といったところなので……そんな場所に、私は行けなかったのですが」
「カンナちゃん?」
「すみません、つい日常の愚痴が。 お礼は伝えておきます。 お気を付けて」
よし、公園を再建しよう。
そう決めるや否や、クラフターは空き地に様々な遊具を作り始めた。 垂直に伸ばしたフェンスの高い位置にリードをつけて村人や動物を空中ブランコないしトランポリンが観察出来る首吊り健康法なものに、その場回転の高速トロッコ、雪玉が飛び出すディスペンサーが大量に並んだ通路などを設置。 直ぐにも中々の遊具を揃えて見せた。
「で、お前達は何をしてるんだ!? 砦の次は処刑台や拷問器具を並べるな!」
狂犬村人に吠えられた。 何故か敵対的である。
保安上の心配か。 ならばと鉄ブロックをT字にしてカボチャを上に設置。 アイアンゴーレムをクラフトすれば安堵するか。 村には大抵いるべき存在なのに、キヴォトスでは自然発生しないし。
「なんだ、随分と重厚なロボットを作ったのか? 余計に物騒になっただけだ、全部撤去だ、撤去!」
ギザ歯が遊具に前進し始めたから、遊んでくれるのかなと見ていたら……張り紙をし始めた。 全て撤去しろとある。
ままならないものだ。 クラフターは天を仰いだ。
「ユメ先生? どうしたのですか」
「さっきはありがとう。 公園のクラフターさんを説得してくれたんだね」
「その為にわざわざ?」
「説得ねぇ……爆破しただけだけど」
「えぇ!?」
「アイツら筆談交渉に応じなければ、後は実力差を見せるしかないからな」
「そんなぁ……なるべく平和に解決して欲しいかなって」
ユメと兎が呑気に鳴きあっている。
村人とはそういう生態だと既に知り得ているものの、危機感の欠如には呆れる他ない。
「甘いですねユメ先生。 それだから交渉に失敗して、指揮下の局員に被害を出したのでは? SRTならそのような失態は許されません」
「ひぃん、ミヤコちゃん厳しいよぉ。 きっと銃に頼らない方法があった筈だよ」
「例えば?」
「す、好きな食べ物をあげるとか!」
「稚拙な手段です。 話になりません」
かという一部同志は、オイナリサンなる食べ物が美味いからと荒らしに着きやがったが。
オイナリサンのレシピを学ぶ為などと抜かし、ピンク狐の後についてしまったのだ。 その背は作り手の背でもあり節操なしでもあった。 けしからん。 後で共有して貰わなきゃ。
「それだけですか? 私達は次の作戦準備で忙しいのでお引き取りを」
「それって公安局の事だよね?」
「ッ、先生!」
同志先生まで来た。 この者は我々のようなクラフトをしないが、村人の誘導が上手いので評価している。 荒らしに着いてくれるなよとも思う。
「もう1人の、先任のシャーレの先生?」
「初めまして。 ちょっと話をしない?」
「皆して何ですか。 それに公安局だなんて、私はひと言も言ってませんが?」
「ヴァルキューレには予算が出ていない。 なのに最近の装備は潤沢。 それがクラフター製ならまだしも企業のカイザー社製。 特に公安局を中心にね。 それは何故か。 癒着で企業に有利なように便宜を図っていると疑うには十分だ。 気にならないかい?」
「……気にはなりますが。 あくまでも私達は教育途上の1部隊に過ぎません。許可なく勝手に動く事も出来ません」
その時はその時だ。 容赦なく斬り捨てる。
荒らしとはいつ誰が転化するか分からない。
負の感情……嫉妬や憎悪、人の努力を破壊する事に快感を得る片手落ちの下衆。 その心は見えぬ所で巣食うもの。
「裏にはカヤ防衛室長やカイザー社が絡んでいると思うんだ。 黒服とアロナ……いや私の独自ルートで、ある程度の目星はついている。 けれど決定的な証拠がない。 正義のSRTが協力してくれると助かるんだけどなって」
「なんで私たちが。 シャーレの特権濫用ですか? 軽蔑しますよ」
「君達の先輩、3年生のFOX小隊はカヤと組んでいる。 クーデターの準備をしている可能性があるとしてもかな?」
「なっ!? そんな人達じゃありません! 先輩を愚弄しないでください! いくら先生でも怒りますよ!」
ハァンが荒ぶった。 兎のリーダー格だ。
対して先生は冷静。 流石、評価に違わぬ同志。 ユメも側でオロオロしていないで見習ってどうぞ。
「隊長さんからのリークなんだ」
「ユキノ先輩が!? 信じられません!」
「なら辿り着くには足場を築かないと。 協力してくれるね?」
「私は、私達は、あなた達のような大人が大嫌いですッ!」
「そっか。 それでどうしたい?」
「ッ、シャーレの指揮下で……なら、責任は取ってくれるんですよね? もし違っていたら……」
「そう願うよ。 それじゃユメ先生、行こうか」
「わ、私も!? 今からですか!?」
ユメまで荒ぶる。 クラフターは首を振った。
違うそうじゃない。 兎を見習ってどうするのだ。
「鉄は熱いうちに打て、みたいな。 クラフターさんは冷えたインゴットでも一瞬で道具を作るけど、私たちはそうはいかないから」
「なんだか、また難しいお話になってきたよぉ。 人を信じてあげたいけど、こういう時、誰を信じれば良いのか……でも生徒の為なんだもんね?」
「その通り。 頼りにしているよ」
「うん! 先生の優しさに、きっと答えるよ。 クラフターさんもついて来てくれるみたい」
よしよしそうだ。 大人しくなった。
騒ぐのは兎だけで十分である。
「さっきは失敗してたじゃないですか」
「ひぃん、またミヤコちゃんが虐めるぅ!」
また荒ぶった。 昔のように馬声まで出す。
クラフターは思う。 鞍を付けようかなと。
後書き
更新常に未定
先生…荒らし…プレ先…うっ頭が。