同志先生に頼まれるがまま、戰の前に邪鬼祓い英気養うクラフトを皆に披露する。 本拠地アリウスの軍事部も呼んだ。 その内に来る予定。
英雄の御出陣だ。 存分に暴れて貰う。 その為の前準備は怠らない。 必要な事だ。 同志先生が言うならそうなんだろう。 我々の中でもそうしておく。
兎と先生らの前に有り余る木材でもってして応接セットを用意。 大胆な白樺原木のテーブルに、木材加工しての階段イス、両端に看板を取り付けて肘掛とする。
その頃には焼き上がった旨味をぎゅっと凝縮の牛ステーキを皆の前にお出しする。
「建築魔は農業も料理も出来るんですね。 なんでしょう、何故か敗北感を味わっています」
「ミッシンの鶏ガラ醤油ラーメンに勝るものは無いと思ったけど、このステーキの美味さも犯罪的よ!」
「悔しい……けど旨味を感じる……! SRTじゃ塩漬け肉ばかりで、滅多に食えるものじゃないぞ」
「ただ言わせて貰いますと……なぜ食器の類を出さずに直置きしてくるんです? 畜生だから這いつくばれと!?」
高級志向の白服ピンク頭やゲヘナのフウカ、或いは独学で学んだ料理の数々。 その内にクラフトして提供したのは、山海経の肉を使用したステーキだ。 普通に肉を焼くだけに足らず、香辛料をクラフトしている。 合わせに海老という、腰が曲がった赤髭が付く場合もある。
「D.U.を中心にチェーン展開しているステーキハウスの、ゲヘナ店のメニューを真似たんだって。 サーロインのアウトロー風焼きっていうみたい。 香辛料で刺激的な味が、アウトローをイメージしているんだって」
「治安の悪いゲヘナで、こんなにも美味しい料理店が? 建築魔はどうやってその店を知ったのでしょうか。 犯罪を犯してないと良いのですが」
「興味さえあれば何でもするとは聞いているが、まさかここまでとは。 名の通り建物にしか興味が無い訳じゃないんだな」
「何でも良いって! 美味ければ!」
嫌味も込めて贅沢に兎シチューをクラフトして、共食いのサマを見届けようとも思ったが、やめた。 ここは味を知る既存より創作料理の反応を見るが吉。 実験も兼ねる。
黄金色の玉子スープは、溶き卵が全体に細かく分散し、均等の塩気と甘味がある。
デザートのニンジンケーキは、相手が兎だからというのもあるが、自然の甘味を演出し、同時に色材としても鮮やかで見栄えが良い。
「ああ、SRTでもこれが食えればなぁ」
「言わないでよ! 戻りたくなくなるじゃん」
「これは作戦に向けて英気養う食事です。 いわば特別食。 いつもじゃない事に価値があるのです」
「うんうん、喜んでくれて良かった。 クラフターさんも喜んでいるよ」
「ところでメンバーって3人なのかい? 書面上だと、あと1人いたよね?」
「「……あっ」」
急に食事の手が止まる。
皆して気不味そうだ。 不味かったのか。 クラフターは目に見えて落ち込んだ。 やはり食への探究は深く険しい。 村人に現実を突きつけられ天を仰いでしまう。
「ミユって……どうしたっけ?」
「サキは隊員の数も数えられないの?」
「それはモエもだろ!?」
「これは隊長である私の責任です」
思えばその兆候は幾度とあった。
ラァメンの再現に失敗し、うどんだの蕎麦だのパスタだのをクラフトしていた日々がそうだ。 漸くそれらしい麺が出来ても、やれ出汁だ具材だで納得出来ずにいる。
「じゃあミユと合流してから作戦を始めようか。 今何処にいるのかな?」
「モエ、分かるか?」
「GPS座標は子兎公園の辺りを示してるね」
「置いて来てしまった様です。 急ぎ回収します」
腹を満たせれば良いという短絡思考で、食の美学を蔑ろにしてきたツケは大きい。 まだまだ修行が足らんな。 クラフターはまた1つ、学んだのである。
「ミユって陰薄いからなぁ。 全く気配を感じないんだ。 狙撃手としては向いてるんだろうが、自動ドアにも反応されないらしい」
「だからって忘れるのは駄目でしょ」
「それは全員だ! ああ、ミユを忘れて私たちだけ美味い料理を食べていただなんて言い難い」
「大丈夫だよ。 クラフターさんに頼んで、また用意して貰うから」
ユメに手帳を渡される。
あと1人分用意して欲しいと言うから、クラフターは素直に頷いた。 ストックはある。 それくらいなら許容範囲だ。
「ありがとう……じゃ、迎えに行こうか!」
ユメらがハァンと鳴いて、またも公園跡地へ赴いた。 その視線の先には、子兎村人が顔を暗くしたり涙目になったりオロオロしている。
それより目を引くは、同志がリードを付けて引き摺り回している事にある。
「建築魔にお散歩されてるううう!?」
「は? ありえないんですけど? 捕虜に対する扱いじゃないんですけど!?」
「ミユを人質にして私たちに屈辱的な仕返しを!? おのれマインクラフターッ!」
村人が興奮してハァンと雄叫びを上げた。
ペット願望があるのか。 それにしてはニンジンで懐柔できない。
料理に手応えを感じているから、そっちかなとクラフターは首を傾げたのだった。
後書き
更新常に未定