学園都市キヴォトスの通信網や行政権はサンクトゥムタワーに集中しており、これを管理運営しているのが連邦生徒会である。
その気になれば、中の人がボタン1つや2つで通信網をシャットダウンでき、権限を剥奪して戒厳令を敷き都市全体を支配できるのだ。
そうした独裁を避ける為、各自治区からの代表生徒が集まり、いくつもの管轄と権限を分けて分割運営してきた。
悪く言えば権力闘争が起きたり意見が合致せず、中々法案や議会が通らない事を意味してもいる。
故に対応が遅れ気味になったり、最高責任者の生徒会長が行方不明になった際などは混乱が発生、生徒の多くから信頼を失い、形骸化が進む原因となった。
そんな中でも政治や治安維持に努めねばならない会長代行のリン行政官は、目の下にクマを作りながら、懸命に職務を遂行しようと足掻いていた。
「キヴォトス各地に正体不明のエネルギー反応を検知しました。 ですがドローンを飛ばしても何もなく、原因不明です。 この件を速やかに解決、議会の俎上にあげる為、緊急議会招集をかけます」
「そこまでする!? ただの観測機械の故障かも知れないんだよ? 建築魔の謎技術かも知れないし!」
「それに各管轄に相談もなく敢行すれば反発が出るのは必須です! 特に防衛室の権限を侵害しています! 各自治区に連絡しても拒否されて纏まらない可能性もあり、既に不信任決議案が提出される動きも……!」
「承知の上です。 それに実際に調査を進めて杞憂に終わるなら、それに越した事はありません」
身の丈に合わずとも、安全保障を優先するリン。 しかし各自治区からの信頼を得られず、団結は難航。
遂には同じ連邦生徒会から批難が集中。 アオイ財務室長を基点に不信任決議案が提出されてしまう。
「……あなたはあくまでも代理。 超人じゃない。 会長が帰ってくるまで、代理の名は付き纏い続けるわ。 悪いけど、これ以上貴女に権力を与え続ける訳にはいかないの……ごめんなさい。 今日はもうここまで。 休みなさい。 明日はきっと、長い1日になるから……」
吐き捨てられるようにアオイが部屋を出る。
そうして誰も居なくなった会議室に1人、取り残されるリン。
普段無表情の顔も、この時ばかりはくしゃり、と歪んで見えてしまった。
「連邦生徒会長……私はどうすれば……」
刹那、外より激しい銃声、爆音。
慌てて窓の外から地上を見やれば。
「クラフターと……カイザーPMC!?」
硝煙がビルの隙間を走り、煙の中で閃光が無数に瞬いては黒煙が幾つも増えていく。
いつもの小競り合いどころではない、最早戦争といって差し支えない状況が、サンクトゥムタワーの麓を支配していたのだった。
殺してやるぞカイザーのクソ野郎が!!
この日、マインクラフターはキレていた。
大目に見ていたら砂漠で発掘品を奪おうとしてくるわ、同志先生とユメを拉致しようとしたらしいわ、今なんてサンクトゥムタワーを制圧しようとしている。
もう駄目だ。 救いはない。 殺す。 大目玉食らわす。 裏切りのカイザー。 荒らし。 敵。 改心しない。 ゴミ。 生かして置けないクズ集団。 弁解の余地なし。 ハッキリ分かるんだね。
「おのれマインクラフター! どこでも我々の邪魔をしおって!」
「ジェネラル! 奴らが集結しつつあり!」
「こちらも増援要請だ。 想定していなかった訳ではない、だがサンクトゥムタワーの制圧は必要だ」
戦車が出てきた。
クラフターは慣れた手つきで道路に対突撃防止用の蜘蛛の巣を横一杯に設置。
鉄条網にも見えるそれらは、歩兵隊や戦車を捕えると、動きを封じ込めてしまう。
「なんかネバネバしたものに捕まった!?」
「なんだこれ、蜘蛛の巣なのか!?」
「馬鹿な! 戦車の馬力が負けるだと!?」
そこをクラフター、容赦なく弓矢や銃火器で射抜く。 たわいない。
「防弾着はともかく、なんで弓矢が戦車の装甲に突き刺さるんだああああ!!?」
「しかも燃えたああああ!!?」
「火で乗務員や内部構造にダメージが!?」
今度はヘリが出てきた。
エリトラ飛行で直接乗り込み、キャノピー越しにダイヤ剣をお見舞いする。 ザックザックとパイロットを串刺しにして撃墜する。
「ぎゃああああ!!?」
「ヘリに奴らが纏わりついて堕としてる!」
「ゾンビ映画のワンシーンかよ!?」
纏まる歩兵隊には猛毒のスプラッシュ投擲。
範囲内の歩兵は苦しみ、のたうち回る。
「ぐわあああ!!」
「く、苦しい……!」
「マスクをしているのに効くのか!?」
「機械にも効果があるってナニ!?」
増援が来る前にサンクトゥムタワー入口の前に丸石トーチカや防壁を展開。
入口そのものは黒曜石で封印。 鉄ブロックをT字に大量設置、仕上げにカボチャを頭とすればアイアンゴーレムが隊列を為す。 肉壁ならぬ鉄壁だ。
正面からの侵入は困難となる。 奴らがこれらを安易に突破出来るとは思えない。
「くっ! 砂漠で奴らが見つけたオーパーツも未だ奪えない、シャーレの先生も攫えない、その上、サンクトゥムの制圧にも手こずるだと? 総括に顔向け出来んぞ、内通し手引きする筈だった防衛室とはどうなっている!?」
「そ、それが……この状況を打破出来ないようでは、マインクラフターが蔓延るキヴォトスの支配は無理だと判断したようで。 打ち切られました」
「なんだと!? この機に及んで保身に走ったか!? いや元より我々を嵌めるつもりだったか! くそっ、いつでもどこでもマインクラフターが邪魔をするか!」
アリウスから軍事部本隊が到着。
英雄の御出陣だ。 存分に暴れて貰う。
その期待に応えるように戦車やヘリが戦場でクラフトされ、次々と出撃。 サンクトゥム周辺のカイザーPMCを吹き飛ばしまくる。
地下を掘り進んだ同志が、TNTを敷き詰めて起爆。 カイザーの主力戦車隊を道路ごと下から吹き飛ばす。
「おのれマインクラフタアアアア!!」
ろくでもない者がいる。お前らである。
くだらないことに執着して他人に迷惑をかける者がいる。これもお前らである。
何を触っても誰と関わっても、腐敗と不幸をもたらす者がいる。
まさしくお前らである。
戦線から遠のくと楽観主義が現実に取って変わる。
そして最高意志決定の場では、現実なるものは、しばしば存在しない。
戦争に負けている時は特にそうだ。
そして君達荒らしの目の前にいるのは、長年を創造に費やしたマインクラフターだ。
これが意味するところは───。
これは終わりではない。 始まりだ。
やがて我々に好意的な村人も来るだろう。
軍事部の本拠地となっているアリウスからは勿論、ユメに好意的なアビドスもだ。
祭りの時間だ。
荒らし許さん慈悲は無い。