狐村人隊と一部警察村人は先生の拠点防衛に赴き、残りは白服の塔へ直行。
そこはまぁ、戦場の規模こそ想像の範疇として、所詮は村人式戦法に変わりない。 つまりどうとでもなる話だ。
「主要道路を封鎖する巡航戦車、中隊規模と交戦するマインクラフターを確認! 武装ドローンも多数! 必ず通らないと行けないチョークポイントを中心に、攻撃ヘリからバリケードまで互いに徹底して撃ち合ってるね」
「ちっ、抜かりないな。 この分だと路地裏にも手が回っていそうだ」
「ミヤコちゃん、どうしよう……」
「交戦は避けてください。 それに常識の範疇で考えれば、正面突破は困難です。 ですが私たちには非常識な味方がいますので、どうとでもなるでしょう」
兎共が此方を見やる。
クラフターは理解を示し頷いた。
良いとも。 分かってるとも友よ。 筆談せずとも行動で示すのが信頼への答え方だ。
という訳でクラフター、拵えたオイナリサンをドバァと大量放出。 さぁ我々渾身の力作、オイナリサンクトゥムの滝を食らうが良い!
「いや、ナニ出しまくってんのよ!?」
「お、お稲荷さんが山になっていく……」
「ふざけてる場合か! もうイナリは良い!」
「……建築魔にハンドサインやアイコンタクトを期待した私が馬鹿でした。 先生、筆談をお願いします」
「あはは……そうするね」
ウケが悪い。 満腹値が満杯なら仕方ない。
その指導のように先生が手帳を渡してくる。
戦いを忌避、サンクトゥムに入りたいという。
硝煙の先を見やれば確かに。 入口は同志が荒らし侵入防止の黒曜石で封鎖中。 そうでなくても硝煙弾雨の中をノーダメージで抜けるのは至難の業。
ならばやはり地下……地下道が王道……!
「急にすごい勢いで掘り始めたぞ!」
「いつもの癖ですね。 どんな腕力なのやら」
「キヴォトスの地下って、コイツらのせいで穴だらけなんじゃない?」
「で、でもこれが安全な方法なんだよね」
戦車だの航空機だのが襲来し、砲弾が降ってくる戦争で、塹壕や坑道が有効なのはアリウス紛争で学んでいる。
経験者は語る。 語るがままにツルハシを奮う。
先生と兎の為に。 これが1番早いと思います。
「ご覧頂けますでしょうか? これは戦争です!」
クロノスの報道官が騒ぎ、向けるレンズには軍事部とPMCの激戦が映っている。
それは不良が起こす喧嘩ではなく、2、3人で運用する重火器から大口径弾が飛び交い、重機関銃が唸り戦車の主砲が吼え、ヘリが対戦車誘導弾を吐き出しては大地を剥く殺し合いである。
「現在、サンクトゥムタワーを中心としたD.U.各地にて、カイザーPMCによる大規模な軍事行動が確認されています! これに対してカイザーコーポレーションは治安の悪化を招いているマインクラフターの排除を理由とし正当性を主張しています!」
「しかし何故今なのか、連邦生徒会は了承しているかについての回答は貰えませんでした!」
「また、連邦捜査部シャーレのオフィスが同PMCに襲撃されたとの情報や、アビドス砂漠でも同様の事例が発生しているとの情報が入ってきています!」
「2年前、アビドス自治区で同様の戦闘が発生した記録がありますが、それとの関連性について調査中です!」
「近隣に住まう市民の皆様は、大変危険ですので近寄らないようお願いします!」
そんな報道を気にする余裕もないPMCの指揮官ジェネラルは、特殊部隊SOFと共にマインクラフターを巧みに倒していたが……。
「ええい! 倒しても倒してもキリがない! 殺しても舞い戻ってくるとは何の冗談だ!?」
「ゾンビよりタチが悪い! いやゾンビと戦った事はないけれど!」
「マントで空を飛ぶだと!? ヒーロー漫画の主人公気取りかよ!?」
「想定にない動きばかりしおって! 地下を凄い速度で掘り進んでくるわ、変な球でワープしてくるわ、溶岩をぶち撒けてくるわ、頭上から金床を落としてくるわ滅茶苦茶だ!?」
一向に目的地に触れる事さえ叶わなかった。
それも仕方ない。 クラフターが戦線を整備したら厄介極まりないのだから。
リスポーン戦法を軸に、攻撃する者は地下坑道やエンダーパールで距離を詰めて斬り捨てたり、ビルの屋上から金床や溶岩を垂らして攻撃する。
防御する者は、絶対通したく無い場所に黒曜石でガッチリ封鎖し、後は丸石のトーチカや壁でバリケードとしたり、蜘蛛の巣を鉄条網のように敷き詰めたり溶岩を道路に撒いて進軍させまいとした。
お陰で戦車や歩兵は蜘蛛の巣や溶岩でまともに通れず、身動きが取れなくなったところをTNTで吹き飛ばされてしまう。
突撃してくるクラフターを倒しても、後方のベッドからリスポーンして戻ってくる。 物質は有限だが、これだけの祭り会場だ。 武器弾薬、建材は共有され継戦能力は高い。
防壁をロケランや戦車の主砲で破壊出来ても、安上がりな建材である丸石程度なら即座に修復されてしまう。
ヘリで空から攻めようとすれば、エリトラ飛行隊がゾンビの如くよって集って針山にするか、周辺のビル屋上に拵えたTNT対空キャノンの弾幕に堕とされていく。
よって、マインクラフターはサンクトゥムや各地の防衛線を堅牢なものとし、逆に荒らし絶対殺す網を敷いて反撃するのだった。
「弾薬欠乏! 撤退して戦線を再整備!」
「く、くそっ! マインクラフターめ! 2年前より進化しているというのか!? おい、シャーレはどうした! ユメあたりの雑魚なら捕まえたろう! ソイツを人質にして……」
「連絡途絶! 状況不明!」
「なんだと!? まさかやられたのか!?」
「応答せよ、繰り返す……あ、繋がりました!」
「かせ! おい、先生はどうした!」
焦りを隠せない将軍。
部下から通信機器を引ったくり、何とか良い情報の1つは聞こうとするも、返ってきた声は知らない女の声だった。
「お前の部隊は全滅した。 もう少し歯応えが欲しかったな、SOFは後輩の経験値に取っておきたかったが物足りない、今からでも送ってくれないか?」
「誰だ貴様は! いや、あの防衛室長や建築魔が飼い慣らしていた狐か!?」
「お言葉だが飼い慣らされた記憶は無い。 さっさと諦めた方が身の為だぞ」
「ふざけるな! これだけの戦力を動かすのにどれだけの金が動いたと思っている!」
「興味ない。 人の心配より自分の心配をするべきだろう、マインクラフターは気に入らない奴に容赦しない」
ブツン。
言うだけ言われて通信を切られた将軍は、怒りのままに通信機器を地面に叩きつけては声を荒げた。
「くそっ! どいつもこいつも!!」
「どうします? 既に戦力の大半は撤退しました」
「こうなれば、此方側のクラフターによりサンクトゥムに仕掛けさせたサーモバリック爆弾を起爆し、連邦生徒会のカヤ含めた小娘共を亡き者にしてやる!!」
手に取り出したるは、起爆スイッチ。
憤怒のままに叫び、躊躇なくソレを押す。
「死ね! 企業の為に犠牲になれえええ!!」
ポチ。
……しかし、なにもおこらなかった!
「な、何故だ! 何故爆発しない!?」
部下が近くのマインクラフターを捕まえると、本と羽ペンで筆談。 すると。
「あのジェネラル。 大変言い難いのですが」
「なんだ!!」
「マインクラフターが……解体しちゃいました」
「ナニやってんだ貴様らああああ!!!?」
絶叫。
ジョーカーは切札中の切札、カイザーの奥の手を人知れず封じてしまったのだ!
「玩具をくれたと勘違いして、そのまま……」
「だからどうなっても知らないとあれ程!」
信頼に置けない者に頼るのは博打である。
本人らは割と無責任なのであるし。
「おのれマインクラフタアァアァ!!!?」
キヴォトスに怨恨が木霊した。
元よりガバな計画を立てた無能上司に、SOFら部下は呆れる他ないのであった……。