ここは遊園地という村人の遊び場らしい。
ところがどうだ。 あるのは布を張った家。 簡易的な家。 錆ついた椅子や、宙に浮かばせた大船。 光源の1つもない陰湿な場所。
それがクラフターの感想だ。 ここでどう遊べというのか。 敷地にいる怪物を倒すのが遊戯だと宣うか。
「ここの廃墟の遊園地、スランビアに目標がいるのか。 空の色もあって、思ったよりも不気味な雰囲気だな」
「RABBIT小隊、目標地点に到着。 本隊と合流しました」
「き、来た! SRTだ!」
「よ、よろしくお願いします」
上等だ。 ならば倒し尽くそう。
丁度、強そうな村人も集結しつつある。
兎村人に……げぇむ開発部。 いや後者は妙だが。 アリスはキャノン持ちだから強い方ではあるものの。
「RABBIT3と4は位置の報告を」
「RABBIT3、命令待機中。 ミユはどう?」
「RABBIT4、し、視界不良。 風も南東向きで35ノット……あまり良い環境ではないかな……で、でも狙撃に大きな支障は無いよ」
「これ台風級の風速だけど」
「貴女はゲヘナの風委員長、空崎ヒナさん!」
「よろしく」
それとゲヘナ白羊毛。
鋏で刈り取れないから正確な羊毛ではなさそうだが、この個体は群を抜いて強い。 荒らしの徒党を無表情のままに瞬時に壊滅させるくらいには。
「狙撃手、目標との距離はどれくらい?」
「私ですか!? えと、約950mです!」
「銃は何を?」
「RABBIT39式、狙撃用ライフルです! 弾丸は7.62mm×53mmRを使っていて……装弾数は5発、じゅ、銃番号は……」
「……申し訳ない。 萎縮させる意図はなかった。 有効射程の倍の距離、そしてこの条件で狙撃が可能だなんて流石だね」
「あ、ありがとうございます!」
いつものハァン交流を他所に、クラフターは松明を撒き始めた。 暗いのは落ち着かない。 アリウスも似たものだったが。 或いは此処もそうしたコンセプトなのかも知れない。
「それと、あなたが天童アリス……」
「パンパカパーン! レベルカンストのガチ勢が仲間になりました!!」
「……はい?」
「わわっ、アリス!?」
「ごめんなさい! アリスちゃん、時々変なことを言うんです……」
「アリス、ゲヘナの風紀委員長の話、先生から聞いたことがあります!」
「先生が私のことを?」
「とっても良い人だって言ってました! それから」
「……それから?」
「すっごく頼もしいと! なので光栄です!」
「えっと……いや、何でもない」
だとしても認める事は出来ないから、クラフターは一際大きな布家を見張った。
天と地を比較すれば、果たして闇に覆われているのは地の方だ。 故に松明を差しもする。 それでも払い切れない現実がそこにある。 大地を光源で埋め尽くすのは実現困難な理想に近い。 思うようにするのが我々だが。
それでも見方を変えれば楽しい。 それだけ世界に土地があって、まだ見ぬ果てがある。 空の果てにも何があるのか気になるところだ。 今は目に悪いまでに赤いけれど。
「第3サンクトゥム、スタンバイ完了。 作戦担当、確認願う」
「そういえば今回の担当は……」
「だ、第3サンクトゥム、作戦担当……は、花岡ユズ、です……ど、どうして私が……うう」
「ユズちゃん頑張って!」
「そうだよ! ユズにしか出来ないよ!」
「ユズさん、よろしくお願い致します」
「は、はい……うう……」
まぁなるようになる。
今まで通りだ。 寧ろ祭りだと楽しもう。
「ところで建築魔も参戦するのね」
「どこにでもいる連中だからね。 今更だよ」
「気紛れでアテに出来ませんけど」
「建築妖精さんは、いつも通りです!」
「今なんて松明を差して回ってるしな」
「強風でも安定していますね」
「羨ましい……射撃姿勢に活かせないかな」
しかし布家の集落の発想は如何なものか。
楽に作れても防犯性がない。 やはりここも廃墟群同然に改修が必要だなと思う。
今は……安全の確保が最優先だ。
大きな布家に剣先を向ける。
いっそ火打石で焼き払おうかとすら考えるクラフターなのであった。
「この異様な空は一体?」
「何が起きているんでしょうか……」
「先生に手伝いが必要みたい」
アリウススクワッドのミサキ、アツコ、ヒヨリは自分たちの土地にいる無口な恩人達クラフター……軍事部が慌しく飛び出して行くのを見るや、己の端末に視線を落として事態の把握に努めていた。
そして先生からのメッセージを受信、世界の終焉を防ぐ為に、落ちてきた巨塔を破壊する必要があるのだと知る。
それには1人では駄目……協力者が必要……!
クラフターは既に参戦済……!
戦後調停に協力してくれた先生にも恩があるアリウス生としては、力添えをしない訳にはいかなかった。
戦後は自発的に動き、頼まれたワケでもなく、シャーレとクラフターの暗部の側面も表したアリウスだが、正式に頼まれたとなればいよいよである。
「そう。 今度は世界を救う気なのね」
「私達に出来ること……」
「きっと出来る事はあるよ」
アリウス生は前と違い前向きだ。
虚しさと殺し方しか知らなかった彼女達は、クラフターから新たな生き方を学んでいる。
道具を作り畑を耕し、作物を調理して料理を食べる。 建物を修繕し暮らしを良くする。
ささやかな生命の営みも新鮮で楽しくて美味しくて。 涙と共に生きていて良いのだと無口な恩人達は教えてくれた。
かつて衣食住の保証もなく、食うや食わずやのひょろ餓鬼な児童達が、クラフターにライスカレェなる料理を振舞われた際なんて、この世にこんな美味しい物があるのかとスプーンを咥え続けて涙した。
その折角の意味を理不尽に奪われない為にも気張る。 それは何も変な話ではない。 生物として人としての誇示でもあった。
略:生きていて良かったと思うワケ。
どうするべきか悩むスクワッド。
そこに近寄るは怪しげな影。
「……そこにいるのは誰?」
「ま、まさかマダム派の残党が!?」
「やっと見つけた……ここにいたのか」
その声は馴染みのある声。
アリウススクワッドのリーダー……。
「誰? あんた」
ミサキ、拳銃を抜き容赦なく発砲。
「ミサキさん!? いきなりそんな……」
「すごく怪しい人……」
「ま、待て、私を忘れたか!?」
「……なんてね。 おはようサッちゃん。 自分探しはお休み中?」
「あ、ああ……」
冗談であった。
仲間を置いて旅に出たサオリに文句の1つでも言いたいところを、銃弾数発で済ませている。
……などと表現出来るのも、神秘に守られた前提のキヴォトス人流挨拶である。
「自分探しだなんて、よく言うよ。 ただの家出でしょ」
「リーダー……」
「すまない……積もる話をしたいところだが、今は時間が無い。 先生を助けなくては」
「うん。 私達にも連絡来たよ」
「は、はい! そうなんです!」
「元気そうで良かった、リーダー」
「……ああ」
けれど、なんだかんだ家族同然なのだ。
互いに想いやれたからこその再会となった。
「じゃ、行こっか」
そしていつものメンバーは再び歩み出す。
今度は支配者の為ではない。 己と恩人の為に。
「ところでサッちゃん、装備は何にする?」
「何があるんだ?」
「銃弾も防げる木の盾に、投げるとワープできる不思議な玉に……あっ。 ツルハシとシャベルも背負わないとかな」
「は?」
「あと食べるとワープする果物ですね。 体力が少しの間つく金のリンゴなんかもあります」
「……恩人の、不思議な創造物か。 恐れ多い」
「分かるよ、その気持ち」
世間知らずのサオリであるが、流石にそれらが非常識であるとは認識している。
が、それらに慣れてしまった仲間を見てしまうと、複雑な感情が渦巻くのであった……。
小出しの中。どこまで書けるものか……