「先生、ここまで来たんだ。 流石だね」
大人シロコが先生に鳴き始めたから、クラフターはスニーク姿勢で観察してみる。
黒ドレスを着用し、携行している銃まで黒い。
そして何も無い空間から忽然と現れた。 狼の癖にエンダーマンの能力を獲得したとでもいうのだろうか。
しかもお辞儀する。 取り敢えず食事も摂る。
その態度、益々我々だ。 欲張り属性じゃん。
「マインクラフターもいる。 きっと未来は彼等の数だけ作れるんだろうね」
「シロコ、色彩に操られてるの?」
「違う。 操られてなんかいない。 違うよ先生。 これは私自身の意志。 色彩は私を取り込もうとして時空を越えてストーカーしてくる元カレみたいな古い概念。 他の時間軸で始末しようとしてきたけど、反転してしまった人が多くて上手くいかなかった。 だけど、ここは侵食はそこまで受けていない。 ここで決着をつけて、私も先生も自由にする」
「色彩を倒す気なのかい? そうすれば、アビドスにシロコは戻れるんだね」
「先生の知る私は戻れるけど、私はもう戻れない。 『そうなった』から。 でも悲しまないで。 これは砂狼シロコが、この世界に存在した時点で確定している。 クラフターは運命を容易に変える力があるけれど、人の命のあり方までに干渉してこない。 元よりそれが世界のルール」
マイクラするエンダーマン……恐ろしい。
元の世でも何らかのブロックを取り敢えずで持ち歩く姿は確認しているが、それが何かの役に立つ姿をみない。
もしかしたら知らないところで建築をしているのかもと疑いもしている。 紫1色のエンドシティなんて構造物があるのだし。
一方、己が建てた構造物の外壁に1ブロック分の穴が空いている時は、大抵エンダーマンの仕業だ。 クリーパーに爆破解体されるより圧倒的にマシだが。
「この時間軸もクラフターの創成なのかな。 先生をキヴォトスに引き入れた連邦生徒会長や、助けてくれたクラフター、途中まで同じ状況でも、この状況は殆ど無い。 これは最後のチャンス。 私はもう迷わない」
耳長白服が駆け込んできた。
白と黒。 対比が眩い。 統一感はあれど、もう少し違う色を建物や服に取り入れるべきと提案したい。 映えても多用すれば多様性に欠けて見えてしまう。
「先生、問題が発生しました! キヴォトス全域でエネルギー反応が再び検知され……ッ、あなたはアビドスの!?」
刹那、なんと白服発砲!
腰のホルスターから咄嗟に抜かれた白色拳銃は、持主のままに銃弾を何発も吐き出した。 その先はクロコだ。 黒いからエンダーマンと間違えたのか。 或いは白黒で相入れないのかも知れない。
だが撃たれた側は、どこからともなくホシノの盾を構えて防ぐ。 金属音が木霊した。
何故ホシノの盾がここにあるのか。
それか複製された物だろうか。
「リン先輩が撃ったの!? めっちゃレア!」
「し、侵入者です! 応援要請!」
ワラワラ来る村人共。
アビドスの耳長眼鏡もやってきて騒がしい。
「侵入者ですか? あれ、シロコ先輩?」
この状況が不利と判断してか、だけど、クロコは何処か寂しげな表情を浮かべ……空間に黒い膜が張られた!
ゲートだ! 黒曜石もなしに瞬時に作った!
いや、エンダーマンならエンドポータルというべきか。 この先は未開拓の新世界だというのか。 先生共々気になって飛び込んだ。
「待ってシロコ!」
「お待ちください先生! 彼女を追ってはなりません!!」
「そうだよ! 建築魔はどうなってもよいけど、先生は駄目だって!」
「一応心配してあげてください!?」
入るや暗転。 白服の声もパタリと消える。
次に広がる光景は……殺風景なドームのような、或いはステージに立っていた。
「ここは……あなたは!?」
先生が叫ぶ先。
ずんぐりとした、山に顔を貼り付けたような彫刻が鎮座している。 手もある。 作品かと思えば生き物のように見える。
「あなたが嚮導者プレナパテス!?」
どっちつかずなので、近づいて少し殴って確かめようとして……。
刹那、先生共々ノックバックを受けたように吹き飛ばされて視界が再び暗転。
薄暗い空間から、元の明るい白色空間に放り出されてしまった。
無念だ。 あの彫刻と空間を調べたかった。 都合が良ければ改造したかったのに。
「先生っ!!」
「先生大丈夫!?」
「せ、先生……シロコ先輩は、いったい……」
「奇妙な空間は……消えてしまいました」
「……キヴォトスの危機は、まだ終わってないようだね。 あと、この件にはシロコも関わっている。 色彩に触れて『ああなった』みたいなんだ」
「そんな! 私たちはどうすれば!」
「みんなで話し合おう……リンちゃん、今の状況を教えてくれるかな?」
「……分かりました」
また会える気がする。
前もこの世界の、黒服エンダーマンに再会できた。 今さっきといい、先生の前に姿を現す気がしたから、今後も活動を共にしよう。
「先程、またもキヴォトス全域に高密度のエネルギー反応を検知。 位置は最初と異なりますが、前回と比較して38%増しの出力です。 前回はエネルギーを観測して約24時間後に塔が落下してきましたが、今回はそれより早く出現すると予想できます」
「各地は再整備や残党狩りで余力がない。 この状況で連戦は物資も体力も持たないだろうね……だから塔の出現を阻止したい。 問題はその方法だけど」
「それであれば……モモカ、エネルギーの流れを確認してください。 流動的なものであれば、逆算して大元が判るかも知れません」
「おっけ〜。 ちょっとやってみる……う〜ん……エネルギーの出発点、見つけたかも」
「モモカちゃん! 流石です!」
「問題はその場所。 空の遥か彼方なんだ……キヴォトス上空75,000メートル」
「えっ!? それって成層圏、いえ、もはや宇宙じゃないんですか!?」
「そんなところに、どうやって行く先生?」
先生が注目してくる。
反射でお辞儀した。 これからも宜しくと。 共にいればクロコに会えそうなもので。
「クラフターの力を借りる」
「はい?」
「ロケットでも作って貰うの?」
「それも良いね。 あとはミレニアムに色々と頼れる人やロケットに似たものが建造されていたね。 頼れるところは頼らせて貰うよ」
本と羽ペンを渡され、筆談してくる。
空高く、或いは宇宙に行きたいらしい。
「クラフターさん……助けて」
宜しい。 ならばロケットだ。
エリトラ共々渡したり、TNTキャノンや圧縮技術で天の彼方に飛ばしても良い。
他にも方法はある。 この世界に来て、ひたすらに宇宙船を建造している者共が。
そこにアリウスで発掘した巡航ミサイルや大型電磁砲で武装させてもいる。
あとアビドス砂漠でも、それらしい可能性を秘めた物が発掘されている。
「い、いろいろ方法を考えてくれるんだね」
先生に笑顔でアレコレ提案。
創造性と夢は夢幻の可能性を秘めていると。
そう。 幽玄な星空の輝き以上に、きっと。
「ありがとう、頼りにしているよ!」
勿論だ。 クラフターは莞爾として頷いた。