「先生のお話ですと、カイザーがサンクトゥムタワーを制圧しようとしたのは、アビドスの古代兵器を制御する為だそうです」
アビドスに珍しくユメ以外の白服が来訪した。 耳長眼鏡だ。 いや今は眼鏡を装備していない。 ただの耳長だ。 あと目の下が黒ずんでる。 アビドスの耳長と差別化されて分かりやすい。
同時に何かの状態異常に思えたが詳細不明だ。 エンダーマン化だろうか。 それか本にあったダークエルフ。 その時こそ黒服や双頭、額縁頭にでもなるんじゃないかと疑っている。
取り敢えず来たからにはと、即座に応接セットを展開して誘導を試みた。
階段ブロックで椅子を人数分展開し、白樺の原木をそのまま使用したワイルドな机を設置。 トリニティの茶会の記憶が脳裏に蘇った。 学びが活きる時の喜びは味なもの。
「なるほどね〜」
「ホシノ先輩?」
「カイザーが探してたのって、超古代兵器だったって事だよね? おじさん、ずっと気になってたんだよね。 カイザーがアビドス自治区の土地を奪った理由……砂漠化が進行していた土地をどうして、って思っていたんだけど。 そういう事だったんだねぇ〜」
「超古代兵器って何よ!? そんな物の為に、私たちは嫌がらせされてきたっていうの!?」
「クラフターさんが一方的にしていた気がしますが……今となっては良かったかも知れませんね⭐︎」
よしよし誘導できたぞ! 椅子に座った!
このまま耳長同士で繁殖して。 しろ。
同じ生物の見た目だ。 なら増える筈だ。 問題は発情アイテムが不明なところか。
「……まぁそれだけ強力な武器なんでしょ。 そんなもの、お店で売ってないからねぇ。 ブラックマーケットも今やペロロ塗れの魔窟だし、建築魔が作る不良避けのキャノン砲なんて比じゃないんだよぉ」
「そんな武器を起動させる為に、カイザーは連邦生徒会を襲撃しました。 キヴォトス全土を敵に回しても構わないほどの価値だったのでしょう」
「それプラス建築魔だねぇ。 最近砂漠にPMCが多かったのもそれが理由なんだとしたら……おじさんたちも今からアビドス砂漠に行って『超古代兵器』を手に入れたらいいわけだ」
村人がアレコレ食べる。
クッキーを食べる。 増えない。
ケーキを食べる。 増えない。
ナニなら増えるんだ村人はッ!?
「ですが、そこはカイザーの私有地で……」
「元はアビドスだからへーきだって安心しなよ。 というか緊急事態だよ。 ここは建築魔やシロコちゃん流に暴力……暴力が全てを解決する!」
「ええ!?」
クラフターは首を滅茶苦茶に振り回す。
何の反応もないとか、愚弄してるのかと。
料理とて創造の1種。 それも人の為に作られたとなれば反応が欲しいもの。 味の良し悪しは兎も角、その意図を掬う気前が無いのか村人には。
ここはいっそ盛ろう。 そうしよう。 それこそ有意義な時間の過ごし方。 煮詰まった際は別視点に向けるのも有効だ。 新たな発見もあろうて。
「……分かりました。 事態の収拾のために借りるだけ……カイザーPMCは既に基地から撤収していますので、今は無人のはずです」
「建築魔はいそうだけどねぇ。 基地は連中に壊滅させられたんだろうし」
氷ブロックとトリニティで手に入れた、ポーションモドキの紅茶とやらをクラフト。 アイスティなるものへ変換。 そこに更に回復ポーションをドバドバ加えてお出しする。
それを疑いなく飲む耳長眼鏡。 すると忽ち目の下の黒ずみが消えてしまった。
「今、何かされたようですが……体が軽くなって頭が冴えた気がします。 疲労回復に効果がある紅茶なのでしょうか」
「え、クラフターのを飲んだの!?」
「ああ、そうでした……すみません。 警戒心が薄れていたというより、度重なる疲労で思考力が低下していたようです」
「ま、まぁ……良くなったみたいで良かったわ、ええ。 善意ではないでしょうけど」
「はい?」
「なんでもないわ……いえない、実験台なんて」
くそっ! 実験は失敗だ!!
アンデッド系ならダメージを受ける見立てだった。 ところがたちどころに快癒したように見える。 中途半端なアンデッド化が原因か。 それか眼鏡が本体なのか。
新生物、ハッピーガストの幼体ガスリンの発見と、其奴のクラフト方法、干からびている場合の蘇生法が水であるとか、好物が珍妙にも雪玉というように、何が正解かは分からんものだ。 発見者を称賛したい。 この村人共に対する成果もそうであるべきだ。 という訳で隙あらば実験は続ける。
「と、とにかく、超古代兵器とやらを持ってくればいいのよね?」
「いえ、おそらく、持ってくるのは難しいかと」
「ヒマリさん?」
「ですので私たちも後から参ります。 皆さんは、全員が到着するまでの間、安全の確保をお願いできればと」
「超古代兵器ってそんなに大きいんだねぇ」
「ええ。 先生によると宇宙戦艦なんだそうです」
「「宇宙戦艦!?」」
村人が興奮し始めた。
実験結果なのかそうでないのか。 不純要素が多過ぎて確かではないのが悔やまれる。
「それってミレニアムで建築魔が建造しているようなものですか?」
「アレは建築魔とエンジニア部の趣味によるところが多く、空間に固定された模型の域を抜けません。 ですがアビドスに眠る戦艦は古代人により造られた『本物』というべき代物。 色彩と戦う為の、貴重な戦力です。 それも今や建築魔の魔の手に落ちている可能性がありますが……そこはユメ先生。 説得をお願いします」
「えっ、私?」
「キヴォトスで恐らくは初めて彼等と接触し、ある程度の意思疎通を図れ、我がミレニアムにおける騒動の解決の一旦を担った貴女にこそ、交渉は相応しいかと」
「で、できるかなぁ」
「やれるやれないではなくやって貰いますよユメ先生。 これはチャンスでもあります。 日頃お世話になっているであろう連邦生徒会やシャーレに対して恩を返せますよ」
「ひぃん……わかった、やってみるよ!」
ユメが「ばななとり」手帳を渡してきた。
荒らしの空中要塞に乗り込みたいとある。 それには砂漠の遺跡が必要らしい。
アレ、エンドポータルの遺跡のように重要なものだったのか。 確かに石ではなく機械で出来た通路が特徴であった。 製鉄所のような何かしらの意図は感じていたが、荒らし迎撃施設だったのか。 軍事部が喜びそうだ。
しかしユメや先生は我々より遺跡の用途を理解している。 ならば連れて行けば新たな道を示してくれる。 であれば迷いは無い。
よしよかろう。
クラフター、頷いてジャンプした。
正しい者は正しい時に正しい道具を使う物。
先生、ユメ達がその限りだと信じる。 クリーパー誘導のようなトレイン行為になりませんように。
……そうだ。 鉄道も広げたい。 辺境の土地にも延線したい。 山海経での肉の取引も大変だし、百鬼夜行の観光や獣人の発情実験にも利便性が無い。 無いなら作る。 それがクラフターである。
「ここのクラフターさんは納得してくれたよ」
「とにかく現地へ。 本番はそれからです」
創造欲がムクムクする中、皆は移動を始める。
向かう先は砂漠の遺跡。 その設備を用いて荒らしの空中要塞攻略という、水中とは違う、特殊ダンジョンへの挑戦にクラフターはワクワクするのであった……。
「巡航ミサイルも駄目か。 というより物理的な干渉が出来ないなんてね」
「この宇宙戦艦を辛うじて動かせるようになったけど、現地に着いたところでこれじゃ厳しいよ」
「会長達からデータを送られました。 仮説の域ですが、黒い膜は多次元バリアだそうです」
朗報。
ミレニアムの宇宙戦艦、遂に動く!
クラフターは喜びのままに愉快な腰振りダンスを披露した。 これほどの規模の建造物が動くなど、エンジニア部や元の世界の同志が提供してくれた新技術が無ければ成し得なかったであろう。
動きは遅いが思うようには動く。 今は荒らしの空中要塞に航行している。 我々が制作したエンチャントレールガンを出来るだけ近付いて喰らわせる。 TNTキャノンも忘れまい。
「あ、今新しい連絡がきました! アビドスからも宇宙戦艦が発進するようです!」
「なんだって? 戦艦はもう1隻あったのかい? 確かにアビドスはクラフターの本拠地というから、あってもおかしくないかな」
「それが建築魔の物ではなく、最近発掘された超古代兵器だそうです!」
「えっ、それは浪漫のある話だね」
「艦隊戦、とまではいかないけど、陣形を組めたら格好良いだろうね。 相手の速度や作戦次第じゃ厳しいけれど」
村人達も機械的硝子板に囲まれて照らされ、鍵盤叩く中、喜びで鳴いている。
そうだ。 そうだろうさ。 同じく創造を愛する者同士だ。 生まれの世界も能力も違えど志は共にある。
「ちょっと! なんで私まで行くんですか!?」
「あれ、擬似科学部のミライ部長がいますよ! なんでいるんですか?」
「建築魔に商品を押し売り……じゃなくて、紹介しようとしたら、急にこの舟が動き出して、地上に戻れなくなったんですよーッ!」
「日頃の悪徳商法の罰が当たったんだね。 今のところ戻る気はないから諦めて」
「そんなぁ!? 私は兵士じゃなくてか弱い民間人です! 巻き込まないでください!」
「戦っているのは皆学生だけどね。 PMCは撤退したか建築魔にやられたし……というか銃社会のキヴォトスで今更何を言っているんだい。 いっそ空の初航海を楽しんだらどうだい?」
「それって片道切符じゃないですかヤダーッ!」
「失礼だな。 生きて帰る気だよ。 戦艦から脱出する手段もある。 はいこれ」
「なんですか、この濃い緑のボールは」
「説明しましょう! 投げた先にワープできる、建築魔の謎アイテムです! エンダーパールというらしいですよ! いざという時、これを地上に投げてください! そうすれば地上に戻れます! 多少ワープの衝撃はありますが、自由落下で地面に叩きつけられるより断然マシです!」
「よくわからない原理じゃないですかヤダー!」
「心外だな。 擬似科学部に言われたく無いよ」
「早めに覚悟しておいて。 頑張り時だから」
「手が空いてるなら手伝ってください! 建築魔の筆談ですと、キャノンの装填手や対空機関銃手に空きがあるそうです!」
「ある程度は自動化されてるけど、クラフターが増設した部分までは間に合っていないんだ。 そうなると手動装填、手動照準でね」
「私、服は白いですけどホワ◯トベースの民間人のように戦えませんからね!?」
「いいからやるんだ。 死にたく無いんだろ?」
「生きて帰ったらウチの商品を高値で売りつけてやるううう!!」
騒がしく表情豊かな白服も、より快活だ。
しかも最寄りの銃座に着こうか、TNTキャノンの砲身の近くに着こうか唸っているではないか。
素晴らしい。 コイツも同志の素質がある。 仲間は多い方が良い。 特に祭りの今は。
「レーダーが大きな舟を検知! 急上昇中、目標へ向かっています! こちらより高性能そうで羨ましいです!」
「連絡にあった、アビドスの宇宙戦艦だね」
などと喜びの束の間、村人の騒ぐ先。
画面越しに大きな、もう1つの戦艦が動いているでは無いか。 しかも此方より高性能なナリをしている。
悔しい……けど感動しちゃう。 後で其方の観光を出来ないだろうか。 願わくば欲しい。 軍事部が特にそう。
あんなの……浪漫じゃん!
「今、新しい連絡。 その戦艦からだよ」
「読み上げてくれ」
「こちらウトナピシュティムの本船。 共に目標のアトラ・ハシースの箱舟の攻略に向かう。 援護を頼む、と」
「返信。 先生達の速やかな指示を望み、正確な艦砲射撃でコレに応える」
さて。 我々は我々なりに自由にやらせて貰う。
エリトラ飛行隊で突撃、白兵戦に持ち込ませたり、その援護として戦艦からの砲撃を予定。
反撃に備えて既に戦艦表面、特に重要区画を重点に黒曜石で守りを固めている。
「建築魔の、マインクラフターの力も必要だ。 みんな、よろしく頼む。 作戦が失敗したらキヴォトスは色彩に飲み込まれてオシマイだからね」
そして……きっと待ち構えているボスを倒す。
それがクロコか彫刻野郎かは問わない。
我々の遊び場を、キヴォトスを荒らすなら容赦しない。 荒らし死すべし慈悲は無い。
……同志諸君、創造を信じて突き進め。