泥棒癖の砂狼やミニガンお嬢様を出さねば。
ユメ先輩はどうしよう……留年は可哀想だし、とはいえ卒業生はどうなるのか分からず……ユメ先輩にも、まだ隠された秘密があるのか不安もありつつ。
ゲートと軍事部
「カイザーPMCは、別の場所に基地を作り直したそうです。 前のが木っ端微塵になった件を追及してきましたが、知らぬ存ぜぬで通してます。 口裏合わせて下さい」
凶悪な荒らしに対抗しなければ。
今回の襲撃で軍事力の増強が急務だと痛感したマインクラフターは、元の世界から資材と同志を引込む計画を立案する。
この世界で手に入らない物が多いのだ。 レッドストーンは特に。 未だ鉱石ブロック1つとも出会わない。
当然だがネザー関係もだ。 ポーションの材料も浪費するばかり。 開拓に対し人手も足りない。 経験値も。 エンチャントにも難儀する。
火薬と鉄製品が手に入るだけではいけない。
早急に手を打たねばならなかった。
「あうぅ〜、謝るのは駄目なんだよね?」
「当たり前でしょう! 逆に謝る理由はなんですか。 借金を増やしたいんですか? 連中が勝手にやらかした事です! なんでしたら連中、デカい宝石とか持ってるくらいですし、借金を全て押し付けても良いんじゃないですかね?」
そんな焦りもなく、村人は呑気なものだ。
襲撃後なのにハァンハァン鳴きあってる。
チビは隙あらば不機嫌だ。 ところが緑頭はいつもと違う。 狼狽を見せず神妙だ。 そのままチビに寄る。
「ううん、ホシノちゃん。 それは違うよ」
「先輩……? ち、近いですっ」
クラフターは目を見張った。
遂に繁殖か。 小麦もなしに。
この世界の村人も同様に増えるのか。 見逃すまいとスニークでマジマジと観察した。 今後の製鉄所や管理の面で役立つかも知れない。
「どんなに理不尽な目に遭っても、手を差し伸べて助けるの。 人の優しさを信じてあげるの」
「そんなだから、何度も騙されるんです」
「そしたら、ホシノちゃんが何度も助けてくれるでしょ?」
「それは……今は連中もいますからね」
チビがしおらしい。
興奮が足りない。 やはり小麦だ。 手元に無いのが悔やまれる。
「私は信じてる。 ホシノちゃんの優しさ。 あの人達の優しさも。 言葉が通じなくても、心で通じてるって、信じたい」
「良かったですね、私達がいて」
「あ、なんだか今のおじさんっぽい!」
「ええっ!?」
かと思えば突然に興奮した。
増えるか。 増えろ。 けど増えない。 どっちだよ。
2人の距離が開く。 間には何もない。
失敗だ。 がっかりした。 やはり小麦が必要なのだ。 或いは背丈の差か。 何にせよプラントタワーを建造して小麦云々生産しなければとも思った。
広大な集落にしては村人が少な過ぎる。 もう少しいて良い。 頭色が鮮やかだし。
「……カイザーほどの資本。 さすがに基地の1つや2つを潰された程度じゃ何ともないか。 目を付けられるだけ損してる。 きっと、また街を攻撃しにやって来る。 でも新入生が来るかは分からない。 連邦生徒会や他の学校の助けが無い以上、私1人じゃ……不本意だけど連中の助けが必要なのは事実……」
「ホシノちゃん?」
さても村人に構ってばかりもいられない。
元の計画に着手する。 砂漠の地下、その最深部にて実験は行われた。
「……ユメ先輩。 実は向こう側に提案されたんです。 私が中退してPMCに下れば、借金の半分は持つと」
「でもホシノちゃんは断ったんだよね?」
黒曜石の囲いを作り、着火。
忽ち紫色の膜が張る。 当初こそ禍々しさに恐れ慄いたものだが、今はただの通過点。
いつも通り飛び込めば視界が歪み、暗転した。
「はい。 ユメ先輩は3年生で卒業間近ですし、更に私までいなくなれば、アビドスはいよいよ廃校です。 街もカイザーの手に落ちるでしょう。 逆に在籍する限り、2年あります。 その間に連中が何を創り、私は何が出来るのか。 見てみたくなりました」
「そっか。 やっぱりホシノちゃんは優しいなぁ」
「撫でないで下さい!」
視界が開く。 見渡せば紅蓮情景。
流れる溶岩。 不気味なガストの鳴き声。
念の為、水バケツをひっくり返す。 即蒸発。
コンパスも時計も狂ってる。 ベッドに横になれば爆発した。
やはりネザーだ。 ネザーに戻ってきたぞ!
「ユメ先輩は卒業したらどうするんです? ふわふわしてるから、留年するといっても不思議に思いませんが」
「ひ、酷いっ!? でも、毎日廃校対策ばかりで考えてなかったなぁ」
「駄目じゃないですか……」
実験は成功だ!
けど喜んでばかりもいられない。 すぐさま次の段階へ。 座標を把握。 記憶にある場所を捜索開始。
頭上のグロウストーン。 群れるゾンビピッグマン。 溶岩の海原に高く聳えるネザー要塞。
それらの魅力を振り切り、ひた走る。
「でも街には残るよ。 引越さないで残ってる市民もいるもん」
「そうだと思いました」
「何かあったら助けに行くからね!」
「助けられるの間違いでしょう?」
「あうぅ〜、ホシノちゃん冷たいよぉ」
あった! あったぞ! ネザー拠点だ!
前に来た時に作った拠点を発見した!
丸石の豆腐ハウスが陳列しているだけだが、ガストの空襲から身を守るには十分だ。
徘徊して集落を見つけた時の様な安心感。 松明の温もりがそこにはあった。
「えへへ、ホシノちゃんが先輩になるところ、今から楽しみだなぁ」
「なんですかソレ。 新入生来るか分かりませんよ」
中を漁る。 かまど、作業台。 ベッドの代わりに作製された醸造台。 懐かしき仮拠点セット。
かまどには現地調達の燃料である、ブレイズロッドを放ったままだ。
そして中央に位置するは初期のネザーゲート。
壊れる事なく稼働を続けている。 このまま使えそう。 使えないと困る。
「きっと来る。 あの人達が沢山頑張ったから」
「その根拠の無い自信は何処から来るんだか」
逡巡なく飛び込んだ。 視界の歪み。 暗転。
視界が晴れて……青空の下に戻ってくる。
砂漠ではない。 であるならば。
「そんな連中は、今何処に行ったんですかね」
「さっきまで近くにいたんだけどなぁ」
周囲を見渡す。
緑の草木。 野山。 森。高台にログハウス。
嗚呼、ログハウスだ。 懐かしき我が拠点!
実験は成功だ! やはり間違っていなかった!
クラフターは飛び跳ね喜んだ。
腰を振り、首を振る。 意味もなく土ブロックを辺り一面にばら撒いた。
これで資材を移管出来る。 仲間を更に呼び込める。 特に軍事部は歓喜する事間違いない。
「他の学区から苦情が来ても知らぬ存ぜぬですよ。 そこも口裏合わせましょう」
「あうぅ〜、せめてお話出来たらなぁ」
「そこなんですよ。 悪意が無い分、余計にタチ悪いです。 連中の故郷じゃ常識なんでしょうか」
軍事部に念話を送る。 内容はこうだ。
武力が発達した新天地に来てみないか、と。
見えない弾を飛ばす不思議なツール。
荒らしが日常。 創造するにも破壊するにも腕試し。
クラフターの数だけ趣味嗜好は様々だ。 これだけ言えば刺さる者は少なくない。
そして事実だ。
間も無くキヴォトスにマインクラフターが雪崩れ込んだのは言うまでもなかった。
更新常に未定
銃社会な以上、クラフター側にも知識ある存在、或いは学ばねばならないと思い、軍事部に来て貰いました。