クラフターは無心になっていた。
世界と一体になり、どうしようもなく救われていた。 幸福の瞬間だ。
作って造って創って、時々ベイクドポテトを食べ、寝る事なくツルハシを振るう。
この喜びを享受する。 分かち合う。 そんな世界。 生きる充足。
満ち足りた我が青春、一片の悔いなし。
「1日もかけず砂漠に道路が延ばされて、その脇にビルが凄い勢いで建っていくね。 中は畑になってるみたいだよ! 傍で植林もしてる……わっ、白い粉を撒いたら一瞬で大木に! 面白いと思わない?」
「驚くのも疲れてきました……今日も少し横になりますね」
「大丈夫? 最近多いけど疲れてるの?」
「お陰様でねッ!?」
そうこう作業している内に成果物が出来た。
地上には小麦やサトウキビのプラントビルが何棟も立ち並ぶ。 水流での半自動回収式だ。
壁はガラスブロック。 中まで透き通る事で状態確認を安易にしただけでなく、空中に浮かぶ黄金原を演出している。
ガラスを多用したビル型建造物は既存の建築様式と似寄るので、極端に浮かず同化するのも良い。 実用と景観を両立してこそ建築家といえよう。
「屋上には、あの人達の大砲が……理想のアビドスじゃなくなるのは悲しいかなぁ」
「見た事もない謎の構造ですが……チンピラやPMCに対する抑止効果を狙ってるのでしょう。 PMCの基地をあんなので壊滅させたなんて、今だに信じられません……些細な事でも砲撃しそうで怖いです。 これ以上、企業や他校と敵対したく無いんですが……いや手遅れか……寝ます」
「だ、大丈夫だよ! 何とかなるよ!」
軍事部も手を加えた。
荒らし対策の一環で、既存新築問わずビルの屋上にTNTキャノンを増設。 砲口を光らせる。 何気にクロック回路。 連射式。
キャノンは多種多様あるが、高性能化に伴い構造の複雑と大型化を招いた。 それは土地と景観の破壊をも招く。 だが高低差を利用した事で圧縮と構造の簡略化に成功。
撃てば砂漠のキルゾーンに大穴が空く。
対空仕様もある。 ヘリ対策だ。 ディスペンサーからは矢だけでなくファイヤーチャージも放てるから、真横や真上に安定した弾幕を放てよう。 矢を爆風で散弾とする型まで設けた。
これらは高機動の目標物にピンポイントかつ即座に当てるのは困難だから、数撃ちゃ当たる戦法で創造された装置群である。
問題は砲口が固定で柔軟性に欠ける事、大量の弾を消費する事、少しでも破損すれば使用不能になる事だ。
単純に火力の差もある。 弓矢を1本引く間に100発飛んでくる世界だ。 連中の土俵に上がる時点で思う壺なのだ。 鹵獲品の付け焼き刃では敵うまい。 よって正攻法は避けたい。
隙を埋める為に質より量で攻める。 苦し紛れでも効果を望めるなら良い。 後は状況を見て改善して増設していこう。
要略。
遊びでやってるんじゃないんだよッ!
「お待ちしておりました、生徒会の皆様」
そうこうして陽が沈む逢魔時。
ビル影が松明で地面を湿らす幽玄の内。 そんな静謐を破る意気軒昂のハァンの木霊。
世情を知らぬ声の主は昼間の新人である。
「私たちに?」
「こんな遅くまで待っていたの?」
「はい! お話があるんです!」
「……話って?」
クラフターは手を止め、近寄った。
またチビと緑頭と鳴き合っている。
取引か。 いや違う。
「私は確かにネフティスグループの者です。 その事実を変える事は出来ませんが……こんな私でも、出来ることがあります!」
「出来ること?」
繁殖だ。
ならば小麦だ。 駄目なら金林檎だ。
クラフターは一先ず黄金原へ駆け出そうとするも、次の瞬間には村人が持つアイテムに足を止めてしまった。
「このゴールドカードで学校の借金を返済するんです!」
村人の手の先。 そこに金の紙。 いや板か。
金のインゴットと似て非なる物だ。
金塊とも違う。 用途が何かは分からない。
けど誇らしげに掲げている。 価値は底知れない。
欲しい。 エメラルド何個あれば良いかな?
「これは私専用のクレジットカードで、ネフティスの資金を引き出せるんです」
「うーん……気持ちは嬉しいな。 でもね、私達は、そういうやり方は望まないの」
「え、えと……?」
「あのさ、ちゃんと考えて話をしているのって、ことを言いたいんだ」
ところが対するチビは呆れのハァン。
取引の失敗か。 或いは無垢な新人に対して諭しているようでもある。
「そのカードで返済する意味、ちゃんと分かってるの?」
「い、意味というのは……」
「善意なのは分かる。 でも、他の人はそれをどう受け取ると思う? そのカードはネフティスの物でしょ。 という事は借金を返済したのはネフティスって事になる。 君じゃなくて」
「わ、私は……」
「自由に使えるからって、それは君のお金じゃないんだよ、お嬢さん」
「ごめんね? ホシノちゃんの言い方は厳しいけど、これも優しさだと思うから」
クラフターが思う程の価値は無かったか。
だとしても欲しい。 無知故に学びは多い。
作業台に置きたい。 金床に載せたい。 エンチャント台で試したりかまどにも放り込みたい。
「これまで自分で稼いだ事は? 家の手伝いでも良いけどさ」
「それは……」
「そのお金は誰が用意したものなのか。 よく考えた方が良い。 そのカードで借金を返済した瞬間、この学校の所有権はネフティスの物になる。 少なくとも企業はそう思うだろうね」
となれば我々とも取引だ。
新人は粘ってるが、チビは遇らい続けている。
出番が回ると確信したクラフターは、今のうちに取引材料を用意した。
「で、では……どうすればアビドスの借金を返せるのでしょうか」
「……アビドスの生徒として稼いだお金で、返せば良いんじゃない?」
「あの人達のように、ですか?」
「……うん?」
新人が此方に振り返る頃、宝石噴水と化したクラフターは披露する。
エメラルド、ダイヤモンド。
ラピスラズリに金のインゴット。
それらを真上に投擲しては拾うを繰り返す。
インベントリには1スタックずつあるぞ!
松明の明かりでキラリと輝く宝石群。
どうだ、より明るくなっただろう!
「ニコニコしながら宝石でお手玉してる!? なんか凄い嫌味なんですけど!」
「駄目だよホシノちゃん。 この人達なりに真面目に意思疎通をしようとしてるんだから。 たぶんカードを手にしたいのかな?」
「先ずは常識を手に入れるところからですよ、話はそれからです!」
チビが興奮している。
どれが取引に有効か不明だが効果があった。
どれも価値ある品揃えだ。 幸運のエンチャントではどうにもならないのもある。 金とか特に。
ただ、これだけあれば何とでもなろう。 そういう期待もある。
「カードは上げられませんが……出直して来ます。 それと私はお嬢さんじゃありません。 ノノミです、ホシノ先輩、ユメ先輩」
「……え?」
「では、また来ますね」
「ええ……?」
ところが新人はまた駆け出してしまった。
取引する間もなく。
もしかして、嫌われてる?
有名度下がってる? なんで?
クラフターは夜空を見上げる。
滲んだ星海に癒しを求めたのだ。
これからだ。 取引出来るまで泣くんじゃない。
更新常に未定
マイクラ感や派手さ不足も感じつつ。