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「入って良いって誰が言ったの? 中学生はお呼びじゃないよ」
「ユメ先輩に許可を頂きました。 それと、もう卒業したので中学生ではありません」
「会長。 引退間際だからって部外者をそう簡単に入れるなんて不用心ですよ。 今更ですけど」
「また外で待たせる訳にいかないでしょ? それに、あの人達もいるし本当に今更だよ?」
「ああ、まだ夢の続きでしたか」
「現実です、先輩」
また新人がやって来て鳴いている。
探す手間が省けた。 あの金板は見当たらないものの、取引を繰り返せば可能性はある。
殺して手に入るなら苦労しないのだが。
何せ村人だ。 ドロップしない可能性がある。
元の世の村人同様、スポーンする様子もない。
賭けるにはリスクが大き過ぎるのだ。 駆け出しの頃でなし、目撃ざまに屠る初心者染みた真似はしたくない。
「ネフティスと協力関係にある学園に、進学する事が決まりました。 ハイランダー鉄道学園……そろそろ家に入学届が届いている筈です」
「じゃあ、君は早くそっちに行くといい。 こんなところで油売ってないでさ」
しかし何を売ってくれるのか。
取引限界までの間、目当ての金板を得る保証は無い。 けれど、他に興味深い物を得られるかも知れない。
既にその価値をクラフターは知り得ている。
街を探索中の際だ。 村人の1種らしい、片目に傷を付ける直立の犬と出会った。
取引したら、最終的にラァメンなるスープの提供を受けた。 とても美味かった。 既に一部同志は虜となり行きつけだ。
ただ取引は難航するのは目に見える。
エメラルドを渡すと慌てたハァンで拒否されたからだ。 ダイヤや金のインゴットでも駄目だった。
狼の感覚で骨や腐肉を与えようとしたらハァンと吠えられた。 ワンじゃない事に衝撃を受けた。
動揺の中、辛うじて金塊で成立したが、この村人とも同じではなかろうか。
不明だ。 未だ我々は発展の途上にある。 伸び代がある。 模索するのが楽しみだ。
「……はい。 なので最後に、ここを見ておきたくて」
「じゃあ、適当に見たら帰るんだよ」
「ホシノちゃんはこういってるけど、ゆっくり見ていって良いからね」
あれこれ夢想していると、村人は移動開始。
呆けて見失う前に後を付ける。 どうも建造物の評論を始めている。
クラフターは嬉しくなった。 笑顔でうむうむと頷きを繰り返す。 建物を愛する者に悪人はいない。
新人はアイテムといい、我々の気を引くのが上手い。 元の世で報告があった蜂とかいう羽虫の気分かも知れない。 かの虫は花に寄っては巣で金蜜を作る。 我々に似て非なる生物もいたものである。
「綺麗ですね。 お2人だけで掃除を?」
「ううん。 あの人達のお陰だよ」
「……背後をつけて来てる連中の事ね。 スコップ振り回して砂掃除をしてくんだよ……ついでの様に傷んだ床の補修までしてる」
「凄い善意ですね」
「それと高い場所にある蜘蛛の巣なんか、剣で巻き取ってくれたんだぁ」
「け、剣で掃除するなんて大胆なんですね」
振り向かれたのでお辞儀しといた。
新人は返礼するも、チビは相変わらずの態度。
ここまでの観察で分かったが、チビは孤高タイプだ。 分かる話だ。 なのにほっとけない魅力がある。 背丈が低い故の庇護欲か。 だとして今まで感じたことの無い感情を投げられている。
不思議だ。 クラフターは首を傾げた。
「噂に聞きましたが、細かな所まで目配りをされる良い人達のようですね」
「変態の集まりだよ。 凄い勢いで建物を直したり建てたり、砂漠で砂掘りしたり」
「ホシノちゃん、善意は信じてあげなきゃ」
「……そんなんじゃ卒業後も苦労しますよ」
チビと取引も良いかも知れない。
その場合、ピンク塗料が貰えるのだろうか。 緑頭なら緑塗料か。 こちらから塗料を塗布出来るのか。 そしたら髪色が変わるのか。
そうなれば羊みたいだ。 此方でも羊牧場を作れないものだろうか。 いなければ最悪、村人を詰め込んで飼う。 草ブロックが要らない分、意外と楽かも知れない。
「元々別館は、そこまできちんと管理されてなかったけど」
「……私も聞きました。 キヴォトスで最も長い歴史を持った本館は、もう砂漠の中に埋もれてしまったと。 けれど、今はあの人達に掘り起こされた様ですね」
「そうだね。 私が入学した時の建物も砂に埋もれてたけど、あっという間に掘り返されたよ。 また埋まらないようにする為か、大きな建物はガラスで覆うまでしてる」
「ここらでも見えるドームの数々……あっという間に出来たそうですね」
「良く知ってるね」
「目立つので……まるで温室のようです」
「まぁ、空調の問題はあるよ。 その辺まではしてくれないんだよね、あの人達」
「本人達は平気そうなんだけどね」
窓越しに、ガラスドームを指差す村人。
外の情景や建造物にも興味を持つとは。 感慨無量。 出来る。 期待の新人だ。
ただ今のガラスドームは羊のように着色したくもある。 畜産業の開始となればいよいよだ。 外からでも分かるように色分けするのは有効な手段に数えられる。
「……それにしても別館なのに、だいぶ設備は整ってますね……あれ、学園祭の事務局……こんな部屋もあったんですね。 学園祭というのは、もしかしてオアシス砂祭りの事でしょうか?」
「そうなの! 興味あるんだ?」
ある部屋で止まった。
数ある空室の1つに過ぎない場所だ。
村人が増えたら詰める事もあるだろうが、今は殺風景。 簡単にチェストと松明が刺さるのみである。
「はい! お祭りなら、私にも良いアイデアがあります! 例えば、新しいイベントを作ってみるとか! あとはアイドルのライブなんてどうでしょう?」
「砂祭りなんて、とっくの昔に無くなってる。 学校もこんなだし。 またやろうだなんて思えないよ」
「……そうですね。 確かにそうでした……」
「で、でもぉ。 オアシスはあの人達のお陰で復活したし、川まで出来たからぁ……」
「予算も人もないでしょう」
内装について鳴いてる風である。
歓喜の後にチビが清涼剤のハァンを投入。 鎮静化。 将来的な期待と妄想、それを切り捨てたベテランのやり取りに似る。
「……それで、何の為に来たの?」
「えっと、ホシノ先輩とアイドルを……」
「そうじゃない。 どうして私について来るのかってこと。 学校の違う君に、先輩だなんて呼ばれる筋合いもないし。 ハイランダー鉄道学園だっけ? そこに入学するんじゃなかった?」
「このまま進学したら、ずっと後悔すると思うんです」
「なんで? ネフティスとコネがある学園なんでしょ?」
「はい。 きっと素晴らしい待遇で迎えてくれるでしょう。 生徒会長にもなれると思いますし……」
「へぇ、生徒会長。 良いね」
クラフターは首を横に振る。
土地や資源を巡り、新人の芽を摘む行為は邪悪に映る。 元の世でも似た光景を見てきた。 異界の地でもあるのか。
マルチである以上可能性は考えられた。 改めて見ると辛い。 ままならないものである。
「……まぁ、お嬢さんにも事情があるのは分かったよ。 でも、ここに来たところで後悔するのは一緒。 こんな何も無い学校に来てどうするの?」
まだ空き地がある。 砂もある。
魅力のある土地だ。 他じゃこうはいくまい。
詰まる所、新人に誂え向き。 惜しむらくはベテランとの摩擦、致し方無い。 けど創造(想像)力を捨てるなんて、とんでもない。
更にピラミッドを作っても良い。 ビーコンを設置すれば、作業効率も上がる。
「お嬢さ……いやノノミちゃんはまだ若いんだから。 おじさんの言う事を素直に聞いておきなよ」
「おじさん、って……私と年の差は殆ど無いと思うんですが……」
「中学生でしょ?」
「卒業しました……えっ」
我々だけでも勧誘だ。
クラフターは取り敢えず村人の目の前に白樺原木テーブルを設置。 上にケーキを出して見せた。
同様に白樺階段を椅子に見立て用意し、即席の応接とする。 好意的に見せるには意味がある。
「えっ!? 一瞬でテーブルや椅子が! ケーキまであるなんて! 凄い勢いで建物を造るだけでなく、家具や食べ物まで……手品師なんでしょうか!?」
「……種も仕掛けもあれば良いけどね」
「あはは……取り敢えず皆で食べよう?」
印象を良くしなければ。
集落でいう有名度を上げねば。 そうすれば他の新人も来てくれる筈だと。
この村人が駄目でも、次の村人は理解してくれるかも知れない。 勧誘。 同担歓迎。 先ずは初動が大事なのである。
ただし荒らし。 テメェは駄目だ。
「前の時と変わらない美味しさだよ!」
「えっ、前にもこんな事が!?」
「……疑わずに食べたり使ったり。 こうして受け入れ始めてる私たちって、随分と毒されてると思いませんか?」
微妙なハァン程度に屈しない。
クラフターの創造はこれからだ。
更新常に未定
原作だと髪の伸び具合や季節等から、時系列は違うものかと思われますが、物語を進めます。
……1年組どうしよう(今更)