看板等を用いて会話出来ないのか、という疑問を呈する方も。
作者の別作品では、クラフターの自由を阻害する恐れから避けましたが、当作では挑戦するべきか……不安はあります。
収容所の空室を有効活用し、マインクラフターはキノコ栽培に並行して鶏小屋を開設した。
自らの手によってではなく建築された構造物は、成る可く在るが儘にするべきと信条している。 しかし将来の土地問題を見越して先手を打ち、少々の勝手を施した。
放置が続けば、無駄手間が注入される箱物の増加を招くばかりだ。 それを防ぎ有効活用してやろうというのが、今回の思惑なのである。
既存物への冒涜だと反対意見もあった。 マルチクラフターは一枚岩ではない。
村人もそうらしい。 早速というか、村人達が来てハァン合唱を開始した。
「なんかコケコケ聞こえるなー、って思って来てみれば……教室がキノコや鶏だらけなんだけど! しかも卵を乱暴に投げ割って、そこから小さな鶏が出てくるってナニ!? 温めてヒヨコじゃないの!?」
「鶏が先か卵が先か、でしょうか」
「哲学的なのは分からないけど、寂しかった学校が賑やかになったね!」
「育てて食べたり、売ったりする?」
四者四様の反応を見る。
驚愕。 疑問。 歓喜。 欲望。 この世界の村人は感情豊かでいけない。 元の世で見たら事件だ。 縄で捕縛し、吊し上げている。
「ほんと、聞ければ良いんだけどねぇ」
「お辞儀すると返してくれますから、身振り手振りで何とかするのはどうでしょうか」
「う〜ん……あ、そうだ!」
緑髪が前に立つ。
この村人は好意的だが邪魔が多い。 掘削中に落ちてこない事を願う。 無用な殺生はしたくない。 別の意味で縛りたくなる。
「これで会話出来るかも!」
「……手帳? いつかも言いましたが、ソレ子供っぽいから変えましょうよ」
「そうかな? 可愛いんだけどなぁ。 私が卒業したら引き継いで貰いたいんだけどなぁ……あっ、ホシノちゃんはお魚さんが好きだもんね! 新しいの買ってあげる!」
「魚じゃなくて鯨です! てか暴露しないで下さいよ!?」
「ん。 今のはただの自爆」
縄を出そうとした時、何か手渡してきた。
本か。 いや本と羽ペンだ。 ユメと署名されているが、村人の名前か。
既知の物より薄いし、色彩豊かだし、表紙には間抜け顔で未知のクリーチャーが描かれてるものの、貰える物は貰う。 戴こう。
早速頁を開いてみる。 何やらびっしりと書かれている。 文字だ。
知らない単語が多いし、表紙に負けず劣らずの変な絵もあるが読めなくも無い。 講読する。
「え、嘘、まさか読めるの? 野蛮な連中なのに真剣に読んでるの?」
「ホシノ先輩、偏見は駄目ですよ」
流し読み。 最後の頁まで飛ぶ。
我々に対する言葉が並ぶ。 礼。 感謝。 疑問。 曖昧な好意を享受した。
返礼のお辞儀をしておく。 取り敢えずマルチでコレやっとけの精神。
「文字なら伝わるんだ!?」
「……理解してる? 本当に?」
「鉛筆を渡してみましょう」
棒を渡された。 先端が黒ずんでいる。
羽ペンの類か。 そう思って本に試し書きした。 書けた。 やってみるものだ。
「書いた。 文字を書けるみたい」
「変な絵や未知の言語じゃないの?」
「見てみましょう!」
今度は返すようせがまれた。 我儘な連中だと辟易しながら、返してやる。
本に群がる村人。 その様子にクラフターは遅れて察した。
もしかして、意思疎通を図っているのか?
「なになに……『チビ』『髪だけ成長』『胸囲の格差・何故』『松明足りない』『管理不足』……な、何の事ですかね?」
「私の悪口じゃないコレ!?」
「き、きっと文化の違いだよ!」
「そんな文化滅んでしまえ……ッ!」
クラフターは震えた。 己の思慮浅さに。
今まで村人を気にしてこなかった。
ハァンと鳴くし、創造物に理解を示さないし、その癖に扉には反応するし。 ゾンビイベントの時は建物を盲信して駆け込むし。
アイアンゴーレムがいても数に押されてやられる弱さだ。 取引する際は物々交換だが、言葉を交わさずとも苦労は無かった。
けど目前の村人共は何か。 所変われば勝手も違う。 行動も違うし戦いもする。
直近の例としては言語と本による意思疎通を試みている。 未知はそのままにワクワクやドキドキであった。
クラフターは郷愁と似た感覚に包まれた。
同時に反省する。 初心を忘却していたのだと。
それを指摘するように、村人達が本に集う。
あれこれと頷き合い、文字を書き足す。
「とにかく、これで大きく前進ですね!」
「名前……教えなきゃ」
「常識もねぇ……!」
偏見や常識は敵だ。
またも学ばされたな、村人に。
「うんうん……これで安心して、任せられる」
本を再度見た。
牛胸モドキはノノミ。 狼はシロコ。
チビはホシノと書いた後、今に見てろよ、バカアホ野蛮人と追記してきた。 理不尽な罵倒である。
やはり全ては理解出来ない。 けれど、アレソレはこれから学べば良い。
この認識は、どの世界でも共通であろうから。
更新常に未定
手帳の存在を、別の意味でも深き物へ。