ユメの遠征に触発、一部マインクラフターは随伴、或いは観光目的で散開。 尚も大半はアビドスに蔓延った。
空き地を希求すれば未だ砂漠が1番だし、村人の手帳に描かれる珍奇な生物捜索もしたかったからだ。
偶に胴長や変顔生物の報告があるも、未だ捕獲か討伐に成功した例を聞かない。 二足歩行の犬や、村人に類似するゴーレムに目が肥えると、どうも新生物の発見に期待してしまう。
都市部でも妙な目撃談があった。
1つは巨大で紫色のケーキだ。 食べ物かと思えばイカのような触手を生やし蠢くときた。
深淵。 渾沌。 邪悪。 それら蔓延るのが都会だというのか。 ユメは生き残れるのか。
丈夫そうな盾はホシノに譲渡してしまったし。 随伴者が盾を作ってあげた筈だが、オリジナル程の耐久値は無い。 無いよりマシだが。
相変わらず筆舌に尽くし難い世界。
戦慄と共に身を震わせる他なし。
兎に角、クラフターとしてはドロップ品が気になる。 そうでなくても、建物や我々に危害を加える害獣を野放しに出来ない。
荒らしも然り。 建物が増えるに従い、隠れ蓑が増えたからか、開拓地にも進出してきた。 厄介だ。 重装備とも度々衝突する。 荒らしも照度で沸き潰しが出来たら良いのに。
故にか軍事部も飽きず活動中。
アイアンゴーレムを路上でクラフト。 そのまま現地配備。 部員には優先してネザライトを支給。 攻撃力と防御力の底上げを図る。
それでも飛び道具相手故、雑兵相手でも鎧袖一触とはいかないのが辛い。 使い手によるが、銃火器との差は大きい。
けど諦観、妥協はしない。 その差の穴埋めに鹵獲した火器、装備を独自改修。 戦法の模索を続行する。
そんな中、スノーゴーレムの配備は失敗。
ハーフブロックで固定した砲台を製作するも、雪が降らない時期になると問題が起きた。 日照りの強さを前に軒並み倒れてしまったのだ。
この事実に、クラフターは首を捻った。
バイオームへの理解が困難なのだ。
春夏秋冬の概念が希薄だし、ましてや砂漠の土地の出来事。 雪が降るとも思わなかった。 次は槍でも降ってくるかも知れない。
こうした進歩の無さは未だ常識という檻に囚われている証左である。 内なる敵は常なる脅威だ。 活かしちゃおけない。
「うへぇ。 去年はシロコちゃんとノノミちゃんだけだったのに、今年は多いよぉ」
聞き慣れたハァンに振り向くと、ホシノがノノミやシロコと交流していた。
不思議な事に大量の紙や本に囲まれている。
勉強でもしているのだろうか。 学徒はそういう存在だと聞き齧っている。
手に取ってみると……違った。 我々への苦情や土地問題に触れた文面ばかりだった。 書き手は荒らしである。 攻撃して失敗したから、腹いせに法がどうこう語って、土地だけでなく損害賠償云々をせびっている。
クラフターは溜息を吐いた。 暴力を当然にしておいて、今更何を言うのか。
先に手を出したのはどちらだ。 悪意に満ちている。 流石荒らし。 話にならない。 クラフターは紙を捨てた。
「多くはこの人達に向けた嘆願書です。 カイザーからの抗議もありますが、入学希望も多いですね。 借金塗れで廃校寸前、先生がいなくても構わないと……」
「アビドス砂漠の急速な都市化。 興味を惹かれた者が集まってるみたい」
「不良もねぇ。 おじさん、パトロールの範囲を増やされて腰が痛いよぉ」
間延びしたハァンが響くも、鳴きたいのはクラフターもだ。
ユメがいなくなってからどうも、村人達の危機感のなさが気にかかる。 特にホシノだ。 元はギラついていた眼も、今は覇気が無い。
接敵した際はその限りでは無いが。 特に夜間。 ユメの盾を左に構えながら、右手の散弾銃を荒らしに対して発砲する様は一方的だ。
偶にクラフターも巻き添えを喰らうが、手帳越し曰く1発だけなら誤射かも知れないらしい。 本当かは疑っている。
けど昼間も油断は禁物だ。 いつアイテムロストに繋がるとも知れない。
荒らしの中には重火器や、戦車やヘリを装備する輩がいる。 村人既存の武器設備の防衛力のみでは太刀打ち出来ないのだ。 相応の準備と装備の整備が常なる急務だ。
だからこそ、クラフターは己が何とかしなくてはと妙な使命感に燃えてきた。 アビドスは造形を損壊させたくない出来栄えだし。
何よりラァメン店を利用している身としては絶対守らねばならない。 爆破でもされたら気が狂ってしまう自信がある。
「あの人達の技術や身勝手さに惹かれて、ミレニアムやゲヘナから転校しようとする者まで……」
「あー、ダメダメ。 ウチに来ても学べないし真似も出来ないからね。 というか、これ以上問題児が増えて良い事ないからねぇ……!」
「ん。 それじゃあ銀行強盗を手伝ってくれそうな人を選抜する」
「それ、余計にダメだからね!?」
「強盗団の面接じゃないんですから……」
やはりゴーレムを量産するしかないのか。
クラフターは懊悩する。 あまり増え過ぎると鬱陶しいが、それ以上に荒らしが徒党を組んで跋扈する光景は度し難い。
この大村落の価値を思えば、ホシノの巡回だけでは戦力不足なのだ。 軍事部も問題視しているが、慣れない銃撃戦に苦戦を強いられている。
「純粋に進学か、退学したけど、やり直したいって誠意ある人を選ぼう。 コイツらの取引で金銀財宝を得たいだけっていう欲に駆られてるだけの人はパス。 おバカさんほど酷い目に遭うからねぇ。 コイツらは純粋に真っ直ぐ過ぎるから」
「何だかんだ好きなんですね?」
「うへぇ。 そう見えるかなぁ」
けれど……とクラフターは頷く。
我々とて対策を強化してきた。 その成果物の1つが戦車やヘリの改修型だ。
荒らし拠点等から接収したのを、鉄インゴットで修復するに飽き足らず、レッドストーントーチを適当に差した。 ただそれだけで、燃料無しに動けるようなった。
弾のクラフトは難儀したが、矢のクラフトのように、アレコレ試し……毒や炎上効果のある榴弾を撃てるようにもなった。
ここまでくると、テレポートで飛び道具を避けるエンダーマンにも勝てるかも知れない。 試したい。 でもいない。 何故いないのだろうか。
「まぁ、ユメ先輩みたいにふわふわしていたら、逆に受け入れ易いかもねぇ」
「ホシノ先輩は、受け入れた?」
「おじさんの場合は諦めてるからねぇ。 文字を読ませても笑顔で邁進を止めなかったコイツらには」
「あはは……」
問題は1から作る事には成功していない事。
戦車やヘリそのものは、どこかから奪取するしかない。 少しでも耐久値が残っていれば、鉄インゴットを投入しまくって直す事が出来る。
ところが最近は荒らしも学んできたらしい。
鹵獲されないよう、追い詰められるとクリーパーの如く自爆してしまう。 荒らしの癖に小賢しい真似を。 生意気な餓鬼め。
「あっ、こちらの……奥空アヤネと黒見セリカという子は真面目そうですよ。 お2人とも同じ公立アビドス第1中学校で地元ですし」
「ありがとう。 その調子でピックアップ宜しくぅ。 おじさん、なんだか変なメラメラが湧き上がったと思ったら燃え尽きちゃったからねぇ。 おやすみぃ」
ホシノが寝始めた。
この油断とベッドも無く寝る姿といい。 もしかしてユメの真似をしているのかな、とクラフターは思った。
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