最初は意図しないアビドスの成長に感動する創造主の独り言。
クラフターは現状に目頭熱く天仰ぐ。
今までになく今更に、感情に溺れ滂沱した。
感激の余り嗚咽する。
息が詰まる苦痛すら愛おしい。
アビドス砂漠の開拓。 それに伴う急激な人口増加。 そこから覗かす新顔が感涙の要因だった。
発端は知り得ている。 道路だ。
ビル建設に倣い、土地の確保や計画的な創りとすべく、都市部や他集落に向けて敷設、接続した道路。
取り敢えず街灯や歩道、路地は後回し。 ただの1本道のみとし、これを主幹として街を広げていく計画だった。
すると、不思議な事が起きた。 道に沿い村人の流入が始まったのである。
よもや、ただ道があるだけで急激な人口増加を招くとは思わなんだ。 唐突過ぎて悪性のイベントかとすら感じた程に。 煩わしさの余り駆除すら考えた。
そんな村人達は、ぞろぞろとホシノらがいる収容所に入所したが気に入らなかったらしい。 やがて出所してくると、クラフターの建築物に勝手に入居していく。
荒らしかと警戒を強めて観察していると、またも面白い事が起き始めた。
なんと自ら家具を設置し、拠点としていく。 間も無くして物資の流入、循環まで巻き起こる。 驚愕だ。
村人独自の生活様式が始まり、閑散とした商店街に活気が溢れ始め、時に煌びやかな飾りが松明以上に威光を放つまでになる。
元の世では、自らクラフトする姿なんて見た事が無いだけに衝撃は凄まじかった。
クラフターが何もしなければ忽ち滅ぶ虚弱な村人は、此処には1人足りとも存在しなかったのだ。
今までは街を造るのがただ楽しかった。
集中的な建造物群という1つの作品を完成させ、地上から見上げ、摩天楼から見下ろし、己の努力と軌跡を傍観するのが人生の幸福だった。
それでもどこか、寂寥感は否めず生きてきた。
村人のいない集落はあまりに静寂だからだ。
利用されず模型でしかない建物は、技巧や思い入れあれど、それ以上の息吹を感じられないのも事実だった。
物足りなさを埋める為、村人をトロッコや縄で拉致し、ゴーレムを組み立て、犬や猫、馬や豚、牛、羊とした家畜を解き放ち、無理矢理住民に見立てもした。 しかし腑に落ちる事は決して無かった。
空虚とは付き合う他ないのだと諦観し、多くのクラフターは甘んじて享受したつもりだった。
ところが、どうだ。
この世界の村人は想像(創造)の上を往く。
破壊だけでない。 我々の作品を評価し、不足を自ら補い、成長させてみせた。
集落が生物の様に息を始めている。
そのトリガーは俗世に遍く有象無象。
隙あらば荒らし行為をする塵芥。 そう見下していた村人達だった。
街とは単なる道路や建物の集合体ではない。
そう、村人達は教えてくれたのだ。
同時にクラフターの冷えた想いを再燃させるに至る。 心中で停止していた時計が刻み始めた切掛をも、村人は与えてくれたのだ!
こんなに嬉しい事はない。
今後、我々がどう道路を敷設し、建物を建てるかで、街は都市へ、真の大都市へと成長を遂げて活きていく事だろう。
いや……我々マインクラフターとキヴォトス、その未来や方向性を決定していくと言っても過言ではない。
嗚呼、遍く創造の世界よ。
我々は今、生きている。
略:創造万歳。
「この方々、また愉悦に浸ってますね」
「いつもの事だよぉ。 おじさんは慣れるのを諦めて、考えないようにしてるけどねぇ」
「生徒手帳で聞いてみる」
シロコが小さな手帳を渡してきた。
生徒手帳らしい。 小さな手帳で、1頁に僅かにしか字を書けない代物だ。
村人は我々のようなインベントリが無い。 なので、携行性から小型化された物品が多くあるという。
さても今は開く。
内容は何を考えてたの、だ。
アビドスの将来を、と書いて返却。
希望に溢れた砂漠。 夢は広がリング。
「アビドスの将来を考えてくれてる、と」
「まぁ、嬉しいです! こうして人が沢山来てくれたのも彼等の手腕が成した業なのでしょう!」
「いんや、こうなったのは副産的なナニかだよ。 大方、ウチを希望した生徒の大半はコイツら目当てだからねぇ。 おじさんは詳しいんだ」
「ん。 客寄せは大事」
「ま、まぁ良い結果ではありますから」
「ヘルメット団みたいな不良まで来るのは、ちと困りものなんだよぉ」
ハァンハァン鳴きあっている。
相変わらず手帳や看板無しには不明だ。
我々も鳴ければ良い。 だが出たところでハァンではなくウォである。 念話も通じない。 素早い疎通が出来ない。 不便なままだ。
「でも感謝してる生徒達もいます。 遠くから来たけどタダ同然の住居があって助かりましたとか、商売するにも、お客さんが増えて景気が回復したとか」
「コイツらが無駄に造ったからね。 でも電気や水道の整備は業者に頼むしかないんだよなぁ」
「そこは工務部だったという生徒や、覚えのある人達が、将来への投資として格安で請けてくれましたから」
「問題なし。 後は先生がいれば良い」
「うーん、ここまで騒ぎになれば、流石に駆け付けてくれそうなんだけど」
看板を立てまくって対処するか。
既にやっている同志もいる。 廊下の壁全体を伝言板に見立てているのだ。
偶に新人が落書きする。 悔しい事に絵で意思疎通を図る手法は思いつかなかった。 またも教えられたな、村人に。
「今は足元を固めるよぉ。 生徒会に信用出来る1年生を入れて、場合によっては街の問題を専門に扱う委員会も作りたいなぁ。 じゃないとおじさん、寝不足が加速するばかりで辛いよぉ」
「既に生徒会への加入を希望する生徒がいます。 此方で選別した結果、ひとまず2人は大丈夫かと」
「2人とも地元。 奥空アヤネ。 黒見セリカ」
「……デジャヴかなぁ。 入学届でも印象に残ってたような。 数少ない信用出来る子として」
クラフターと生徒の間のやり取りが増えるのは大変だが、マルチの楽しみと見れば意味もある。
本と羽ペンは、村人共の生徒手帳のように既に常備品扱いだ。 書く頁が無くなったら署名して図書室かどこかに保管したい。
思い出としても、己が積み上げた経験としても良い物となろうから。
そうだ。 図書室といえばエンチャント台だ。
とっくに設置されているが、やはり問題は経験値だ。 かまどや採掘で得られる細々としたのを除けば、時々の生物や荒らしを狩る事でしか得られない。
トラップタワーで効率良く摂取したいが、元の世の法則、常識が通用しないキヴォトスでは建設出来ないのだ。
故に元の世で経験値を溜めて来るしかない不便を極めるが、それだったら、そのまま元の世でエンチャントしてくれば良い。
「そんじゃ決まりだねぇ。 その2人を生徒会に入れちゃって。 備えは無いよりある方が良いから。 後は野となれ山となれってねぇ」
「あはは……あの人達を制御出来ない以上、最後は流れに身を任す事になるかもですからね」
「大丈夫。 悪い様にはならない……たぶん」
新たな世界も不便が多い。
それでも、そんな不便をクラフターは愛した。
いつだってままならない物を、思う様にするのがクラフターだ。 障壁を乗り越えた時の快感は、多くに勝る。
「……脅威はコイツらだけじゃない。 いつ来るかも分からないカイザーとか、ネフティスとか」
クラフトは万能ではない。
けれど想像した夢を描く事は出来る。
「信用出来ない大人たち。 黒服とかね」
ホシノが睨みともつかぬ視線を向けている。
関係はない。 クラフターは邁進するのみだ。
更新常に未定
推敲の間もなく、けれど楽しく書けたら……
でもクラフトやクロス要素を考えると、やはりと右往左往で優柔不断。