村人とクラフターの関わりが希薄な気も……
「人攫い……噂は本当だったんですか!?」
「問題が増える前に何とかしないと!」
新人が遅いから、縄で縛って収監した。
忽ち騒ぎに。 主に耳長アヤネと猫耳セリカだ。
当の新人は草臥れてるが、追い討ちの喧しさ。 それが村人の生態とはいえ。
「何の騒ぎ?」
「あっシロコ先輩!」
そこにシロコが来る。
この村人は物静かで良い。 行動力もある。
「この人、攫って来ちゃったんです!」
「何故かカレーの匂いに塗れてますし! こんな理不尽で意味不明な状況、この人達の仕業だとしか思いません!」
「それは……その。 災難だったとしか」
その代わりというか、突拍子もない事をやらかす。 将来が不安だ。
この前も、我々の倉庫に忍び込んできた。
チェストから金や鉄を盗る気だったらしい。
木剣で追い払ったが、油断も隙も無い。
「いやー……確かに此処まで変な目にしか遭ってないけれど。 揺れる電車の中でカレーうどんを食べる人がいて服が汚れたし、松明だらけの街で遭難したと思えば、この人に力任せの道案内をされたし」
更に悲報。
クラフターと思っていた新人、ハァンと鳴く。
まさかの村人側だった。
クラフターは首を横に振った。 裏切られた。 どこまでも世界は残酷だ。
「首を振ってるけど、やっぱコイツらでしょ」
「擁護が難しい程、色々やってますからね」
「待って。 道案内?」
それでも後任を託す。
一々本と羽ペンを用意するのは煩わしい。
此方が必要とするのは会話ではない。 創作物だ。 アレコレ作りたいのだ。 村人に感ける訳にはいかない。
「そう。 ここ、アビドス高等学校までの。 実際、こうして辿り着けた分は感謝しているよ。 だから大丈夫」
「えっ、という事は……お客さん?」
「そうなるかな。 おっと紹介が遅れたね。 私は連邦捜査部、シャーレの先生だ! 宜しくね!」
「えぇ!?」
ハァンと盛り上がるが無視する。
所詮ハァン集会。 此処はクラフターの居場所では無い。
それより魅せる何かを造りたい。 人生と想像力を豊かにする創造物を。
ラァメン作りは続行中だ。 既存の列車で揺られながら創作料理を思考する同志もいる。
何処かで発見したカレーと、うどんをクラフトした食料は王道的人気となった。 目新しさは無い。 だが定番の物とはこうして生まれていくのだと染み染み思う。
「という事は連邦生徒会関係の!?」
「支援要請が受理されたんだね!」
「ん。 これで正規の補給が受けられる」
「そうなるね。 これ、渡しとくね」
「これは物品譲渡証明書!」
物事は効率ばかりを重視していた。
食に関して言えば、ジャガイモと決めていた。
成長が早く、大量に収穫出来、焼いてベイクドポテトにして食せば腹持ちが良い。
兎シチューやケーキのような、材料の確保が面倒な上に、スタックも出来ずインベントリを圧迫し、苦労の割に回復量に注目すべきモノはなく、ただ消耗する物は堕落とさえ考えていた。
スタック出来ないが、その辺のキノコとボウルで手慰みに作れるキノコシチューを少しは見習えとさえ思っていた者もいた程だ。
ところが、この世界で数多ある料理を見聞し、口にしてからは見方は変わった。
「これを君達に送ろうと思って」
「ありがとうございます! これで弾薬と補給品の援助を受けられます! あ、ホシノ先輩とノノミ先輩にも伝えないとですね!」
「ホシノ先輩は、いつもの場所で寝てると思う。 ノノミ先輩は対策委員会の子を率いて街の何処かだよ」
「端末で連絡しときますね!」
料理とは、敢えての分野なのだと。
食せば終わる。 建物と違い残る事はない。 故にその一瞬に賭けている。
見栄え。 味。 食感。 喜怒哀楽全てを1つに集約。 刹那に表現しているのだ。
「そうだ、先生。 皆の紹介がまだだった。 私は2年生の砂狼シロコ。 あっちが───」
効率ばかり気にした生活は、装備や建材、ポーションを豊かにしたけれど、そうしたワクワクやドキドキに欠けていたのではなかろうか。
「私達は生徒会だけど、対策委員会が別にある」
「対策? 街の事と関係が?」
天を仰ぎ、拳を握る。
またも教えられたな、村人に。
「そう。 話は聞いてると思うけど、約2年前、この何を考えてるか分からない人達がキヴォトス中に出没。 好き勝手始めた影響で、様々なトラブルが起きてる。 連邦生徒会長の失踪も合わさって、混乱に拍車が掛かった。 その解決の為にあるのが委員会。 といっても土地勘も経験も無い新入生ばかりだし、あの人達は言う事聞かないから苦労は耐えない。 だから生徒会メンバーも動いてる」
「それは……大変だね」
我々は未熟だ。
長年クラフターをしてきたつもりが、何も知らない新顔同然だ。 身近に位置した食の世界は、確かな創造力が試されていたというのに。
何故、気が付かなかったのか。
プラントビルの稼働が軌道にのり、自給率を早期に解決したからか。 空腹さえ満たせればヨシとしてしまったからか。 牛や豚に小麦をチラ見せしながら、ステーキを食す真似をしたからか。
その偏見通りに添えば、心のどこかで満足してしまったのかも知れない。
「でも、あの人達のお陰もあって今のアビドスがある。 不思議な勢いで建物を増やして、砂漠を押し返してくれた。 悪い人達を追い払ってもくれた。 それに興味を持って、新入生が来てくれた。 先代の生徒会から引き継いでる借金とか土地の問題はあるけれど、何とかやれてる」
マインクラフター、我想う。 故に我あり。
生きている限り、世界問わず遍歴者であり続けたい。 開拓者でありたいと。
そして進歩する時、対象によっては非常に新しい方法を作り出さねばならない。
だから、この刺激は却って善良なものだ。
気が付かせてくれた村人よ。 改めてありがとう。
あの青空の様に、妙に心が晴れた。
反省し、更なる高見へ邁進しよう。
我が青春、まだまだこれからだと確信出来た。
「そっか。 何だかんだ、この人達を信頼しているんだね」
「ん。 先生もそうなって欲しい」
「頑張るよ。 流石にツルハシやスコップを、凄い速度で動かすのは自信ないけど」
刹那、銃撃。
晴天の霹靂が如き。
人の感謝感涙、感傷の興を削ぐ。
「銃声!?」
「カタカタヘルメット団です!」
「ははは! アビドス高等学校の諸君! 今日こそ校舎を占拠させて貰うぜ!」
「最近大人しかったのに。 懲りてない」
一転。 不浄な大地、庭を見る。
ヘルメットを被った集団がいた。 銃で収容所の壁を傷つけていく。
やはり荒らし。 生かして返される恩もなく、ただ破壊の悦びしか知らぬと見る。
まぁ良い。 良くも悪くもいつも通りだ。
荒らし死すべし。 慈悲は無い。
「最新のタクティカルベストにオプションパーツ! 戦車と戦闘ヘリも確認! なんでそんな高価な装備まで!?」
「ふんっ、それくらい何よ! こっちだって、あの人達が使う戦車やヘリもある! 返り討ちにしてやるわ!」
ヘリや戦車、ランクの高い防具を装備する為か調子が良いが、それは軍事部もだ。
丁度屋上の対空TNTキャノンが唸りをあげた。 忽ちキルゾーンに弾幕が張られ、ヘリが墜落していく。 後で回収する。 修理して使う。 無理なら鉄屑にするか、使える部品を抜くだけだ。
「ひいぃ!? ヘリが堕とされたぁ!」
「地上から攻めるだけだ! 戦車でなぁ!」
庭に轍を作りながら侵入する戦車。
あの装甲は通常の小銃や弓矢では敵わない。
TNTか、エンチャント済みの武器なら効果がある。 特に後者は大抵の者が所持している。
四方八方から襲いかかって迎撃を逸らし、誰か1人でも取り憑けばダメージを与えられる。
が、此処は我々の拠点だ。 戦車もヘリもある。 庭は文字通り庭だ。
「お、おい! 何をしてる! さっさと戦車を突っ込ませろ!」
「そ、それが! 有刺鉄線、いやデカい蜘蛛の巣に引っかかりまして!」
「馬鹿な! 戦車の馬力を……!」
蜘蛛の巣に絡まり、動けない戦車。
最早ただの的でしかない。 それでも砲塔は動かせる。 混乱から立ち直られて反撃される前に始末する。
やがてクラフター側の主砲が火を吹いた。
徹甲弾が装甲を貫く。 もれなく荒らし戦車は爆発、炎上。 乗組員が花火の様に打ち上がり、黒焦げになって転がった。 あんなのでも気絶で済んでる。 相変わらずキヴォトス人の頑丈さに驚くばかりだ。
さても怨んでくれるなよと。 甘い見積もりで荒らしに来た、己の不幸を呪詛するが良い。
「ひいぃ〜!? やっぱ駄目だったぁ!」
「退却だ! お前ら覚えてろよ〜!」
ちゃんと仲間を回収していく点だけは評価したい。 クラフターとしては、その姿を見せられて追撃する気が失せる。
我ながら甘くなったものだと溜息を吐いた。
「ヘルメット団、撤退していきます!」
「2度と来るんじゃないわよ!」
「そう。 もう来ないで」
「おお、あの人達って戦いも強いんだ」
さても戦車も手に入った。
正確には修理しないと使えないし、本当に駄目なら鉄屑にして再利用だが。
「……でも装備の数々は一体何処から手に入れたのでしょうか。 ヘルメット団に財力があると思えませんし」
「盗んだ?」
「シロコ先輩……」
ウキウキ修理だひゃっほい。
荒らし拠点にあった戦車と似ている気がするが、取り敢えず頭数が増える事は歓迎のクラフターなのであった。
更新常に未定
クラフトの少なさが気になる……