メインだけでなく、ユメの軌跡も追わねば。
アビドス収容所からサンクトゥムタワーに移監したユメは、純白の制服を着用している。
ここの施設は服も壁も白を基色とし、統一していた。 何ものにも染まらない、これからだという潔白。 清潔感と若干の居心地の悪さを感じるも、あいや職業だとクラフターは理解し頷いた。 元の世の村人の職業や、対抗戦に用いる皮装備の着色にも似る。
忙しなく動く村人との取引は困難だが。
向こうが気が向いた時にしか応じてくれないし、寄越すのは連邦法がどうこう書かれた紙ばかりで詰まらない。 なので最近は白服との取引は避けている。
後者については理解を示す。
戦闘が頻発するキヴォトスにおける工夫だろう。 敵味方が入り乱れる乱打戦は珍しくない。 その際、友軍誤射を防ぐ試みは重要だ。 その為の色別。 非常に有効な手段である。
「ひぃん……こんな大変な目に遭うなんて思わなかったよぉ」
加虐心煽る声に振り向いた。
ユメが大量の紙に囲まれている。 追い紙を積むは耳長眼鏡だ。
「ユメさん、大変なのは貴女だけではありません。 キヴォトス全体が危機的状況に陥っている事を、今1度ご理解下さい。 それに、このままアビドスに戻って教鞭を持とうものなら、後輩達に笑われてしまいますよ」
「うぅ……ホシノちゃん助けてぇ」
「助けて欲しいのは私もです。 特に生徒会長が失踪してからというもの、治安が著しく低下しています。 対処する人員が不足する今、貴女や、貴女に追従する得体の知れない人達の協力も欲しいところです。 なのに……」
アビドスにも同種が来訪したらしい。
最近帰還しないから詳細不明であるが、同志曰く著しい発展を遂げているという。
別段驚きは無い。 だが喜びはある。 初期スポーン地点で広大な空き地があるとなれば、必然だったといえる。
「この人達は言葉も常識も通じない異文化で、何とか文面での疎通が出来ると思えば、言う事を聞かない野蛮人! せめて簡単にでも連邦法を学んで貰おうとしましたが、まるで聞く耳を……いえ、見る目が全くありません!」
「作る手はあるよ?」
「無駄口もあるようですね?」
「ひぃん……リンちゃんが虐めるぅ」
「貴女までリンちゃん呼びは止めて下さい」
先程から耳長が煩い。
呼応してユメが馬みたいに鳴く。 どちらかというと牛みたいな胸をしているというのに。
「……確かに、分野問わず物作りに掛ける熱意は感じています。 暴徒により破損した建造物や道路は瞬時に直してくれますし、愚連隊の鎮圧にも手を貸してくれました。 災厄の狐こと、ワカモ収監の際も助かりました。 ですがね……」
「何か問題があるの?」
「問題だらけなんですよ!?」
この耳長のハァンは耳が痛い。
ずっと怒り口調だ。 状態異常を疑う。
「街中松明だらけにしますし! 空き地を見つけようものなら、日照権も何もかも無視した物を作りますし! 空を覆う程の、どういう原理で浮いてるかも分からない戦艦とか造りますし! それに!」
「ま、まだあるの?」
「何故、白樺を道沿いに植えまくるんですかね!? 瞬時に大きくなるのも理解不能です!」
「そ、そういう植物なんだよ!」
「非常識が過ぎます!」
牛乳を用意する。
丁度、建物に合う同色の白だ。 飲ませれば興奮も収まろう。
無理なら黒曜石に閉じ込める。 反省の色を見せない荒らしにはそうしている。
「他にも……ゴプッ!?」
「リンちゃん!?」
口に牛乳を捩じ込む。
滝の様に流し込めば忽ち黙る。 牛乳に相談して良かった。 この手に限る。
「げほっ、げほ……いきなり牛乳をバケツで飲ませてくるのも非常識……ゴボボボッ」
「白目剥いてる! やめたげてよぉ!」
ユメが邪魔してくる。
退け。 コイツ治せない。
「うわぁーん! リンちゃんが痙攣してるよぉ! 助けてカヤ防衛室長ォ〜!」
「何事です……って、またこの人達の仕業ですか! 貴女の部下なんですから、手綱をしっかり握って下さい!」
「ぶ、部下じゃないよ。 友達だよ!」
「それならそれなりに叱って下さい!」
村人が集まってきた。
興奮している。 ゾンビピッグマンを思い出す。
クラフターは外へ駆け出した。 世界違えど雰囲気は似る。 斬り刻まれる訳にはいかない。
騒ぎが収まる頃に戻って来ようと思う。
シュルカーボックス一杯の牛乳バケツを添えて。
更新常に未定
進まない……