相伴に預かり、ゲーム開発部の拠点へ転がり込んだマインクラフターだったが、いつもの癖で評価を開始した。
狭い空間は仮拠点を彷彿とさせるも、同時に所狭しと床に散乱する物品の数々は、クリーパー被害に遭った倉庫の様な惨状を醸し出す。 その乱雑な床上を更に賑やかにする先生。 未だ寝ており、目覚める気配は無い。
対して2人の猫耳村人もてんやわんやだ。 やはりそういう事なのだろう。 知らぬ場所で起きた悲劇。 この広い世界では珍しくはない日常。
それでもクラフターは閉目する。 心中お悔やみ申し上げる。 マルチに生きる上での礼節は忘れない。 同時に時々を受け入れて、何クソ見ておれと進む力強さも兼ねる。 荒んだモノは仕方ないのだから。
「なんか、先生と一緒に入ってきたよ!? ひぃ、首をグリグリ動かして怖いんだけど!?」
「トラブルメーカーで有名な建築魔の1人だね。 同時に先生の知り合いなのかな」
「筆談すれば色々聞ける筈だよ! 今後のゲーム開発の参考になるかも知れないし、折角の機会だからインタビューしとこう!」
「先生は放置で良いの?」
「へーきだって! 伸びてるだけだし!」
「本当なら医務室とかに連れて行くべきなんだろうけど、こうなった経緯を聞かれた時、いよいよユウカに廃部にされちゃうかもだし」
「だよね。 あれ、急に動き出して……うわ、部屋が勢い良く片付けられていく!?」
大切なのは後始末。
クラフターは手本となるべく、床上の用途不明な数々を勢い良くスタックしていき、クラフトしたチェストに次々に放り込む。
すると、どうだ。 狭い空間も一気に様変わり。
広々と感じる。 同時に心も洗われよう。 リセットだ。 後は前だけ向いて邁進すれば良い。 問題は横たわる先生。 邪魔だ。 流石にチェストには入らない。
「うわぁ、雑に放り込まれたね」
「ゲーム機がポテチ共々!? 油塗れになっちゃうよ! それにまだ食べてる途中でしょうが!」
縄で縛って引き摺るか、トロッコやボートで外に放る事を考えたクラフターだったが、壁際に特異な鉄製箱を見て視線を止める。
それはラージチェストを縦に設置し、扉の様に開閉して物品を出し入れする村人ツールであった。 ロッカーという。
クラフターがクラフトするチェストよりコストが高そうな割に、対して物が入らず、場所によっては毛先が付いた棒やバケツが乱雑に入ってるばかりで、挙句に臭う。 臭い。 ここも何か臭う気がしなくもない。 妙に揺れてる気がするから余計に気になる。 落ち着かない。 腰も自然と揺れ動く。
「今度はロッカーを見て小刻みに腰を振ってる!? 何考えてるのーッ!?」
「待って。 そこは部長のユズが入ってる場所だよ。 まさか居るのを察してる?」
そうだ。 ここに入れよう。
思い立つ日が吉日。 ここなら先生を中に詰められる。 ロッカーの評価を改め、新たな用途を思い付いたクラフターだったが、開けた瞬間、先客がいた事に硬直してしまった。
「ひ、ひぃ……!」
「ユズを虐めないであげて!?」
「閉めてあげて。 部長は内気なの」
クラフターは無理矢理にでも先生を押し込もうとしたが、明らかに容積が合わない。
やがて諦観し、そっと閉じた。
これもまた仕方ない事。 思惑通りにいかない事なんて良くある話。 けれどやはりというか、大切なのは次なる行動である。
「今度は何? 部屋の隅に鉄の扉を立てた?」
「本当、何処から自分よりも大きな物を沢山出し入れしてるの!?」
空室が無いなら作れば良いじゃない。
己はクラフターだ。 残酷を道理とする世界にて、安全な空間を切り取り、作ってきた。 それが当然の様になり初心を忘れていたが、今再び奮い立つ時。
とどのつまり、新たなロッカーを作れば良い。
ただし、レシピが不明だ。 なので扱いをハーフの木材を使用した棚や、ハッチと土を組み合わせたプランターの様なインテリアに見立てクラフトを開始した。
鉄扉を立て、内側に鉄ブロックで囲う。 村人のと比較すると肉厚で不恰好だが、先生を押し込むのには十分だ。 早速放り込む。 レバーで扉を閉めて封印。 満足だ。
「え、何それ。 冷蔵庫? 仮説トイレ?」
「まさかロッカーのつもりじゃ?」
「随分と重厚だね!? シェルターかな?」
今度は村人が評価する番となった。
背後で2人が首を傾げてハァンと鳴いている。
反応からして、微妙である。 やはり村人の様にスマートにはいかなかった。 即席とはいえ妙な悔しさがある。
「……ハッ!? なんか閉じ込められてる!? ここは牢屋か何かなの!?」
「あっ先生が目覚めた」
「今出してあげる!」
不満足だからか。
村人が起きた先生を出してしまった。
おのれ。 なにくそ見ておれ。 次こそは。
そう悔しさをバネに、未来へ前へと邁進するクラフターなのであった。
更新常に未定