評価と補修
それからというもの、マインクラフターはアビドスに居着いてしまった。
砂漠化が進み、砂嵐が吹く荒地だ。 日照りは強く、街は砂に飲まれていく。
もはや通常の生活は困難。 そう判断した多くの人は疎開。 アビドス高等学校の生徒も同様に姿を消していった。 今やユメ先輩とホシノと数える程度しかおらず、廃校同然である。
来年以降、新入生が絶対来ないとはいえないものの。 天変地異を抜きにしても諸事情で学校が抱えた負債は半端じゃない。 未来は暗く、希望は無かった。
だがクラフターにとってはどうでも良い。
この世界の村人がどんな問題を抱えていようと、どんな愚行と結末を迎えようと、己の創造を、我が道を邁進するのみだ。
採掘し、加工し、建築する。 そうしてこの世界に己が生きた証を打ち立て続ける。 それこそが自分だ。 人生だ。 真理だ。 他人が干渉したくらいで揺るがない理念だ。
その過程において、アビドスという閑散とした街は都合が良かった。
クラフターは発展し尽くして空き地がない都会よりも、こうした綻びのある方が好きだ。 半ば捨てられた土地を弄ったところで誰も文句を言わない。 土地の利権問題に吼えて虚しい殴り合いにも発展しない。 マルチの弊害が少ない。
これだけで希望に溢れて楽しいんだが?
当初、小柄な村人についていった末に辿り着いた際、天を仰ぎ低評価をしたものだが。
吹き込んだ砂に街が蝕まれ、場所によっては砂丘が出来ている。 整地がなっていない。
沸き潰しもなっていないのは減点だった。
夜、砂の次に闇に飲まれるのは目に見えて明らかだ。 ゾンビや大蜘蛛も出るに違いない。
一部の家が埋もれたまま放置されているのも眉間に皺が寄るポイントだ。
元の世界でも、時々理解不能な位置にある扉を見かけたが、その類に違いない。
村人とは、ゾンビイベントの際に建物を盲信して駆け込む習性がある。 その一方で理解し難い行為をする。 これはその延長線なのだ。 その内に井戸に落ちて浮き沈みを繰り返す村人に出会えるかも知れないとすら感じた。
建物も途中で建材が尽きた等の理由だろう。 中途半端に放置されている。 窓ガラスが割れたままの場所もある。 そうした建造物には大抵、砂が大なり小なり積もって砂漠と同化していた。
惨虐の俗世で己が場所を切り取る。 至難の業であるというのに。 その手段足る建造物。
それら創造物を蔑ろにする光景。 畢竟、世界を侮っているといえる。
これは、やるしかないよね?
クラフターは焦燥を重ねた憤慨のままにスコップとツルハシ、そして松明を握った。
ここまでくると、建造物への冒涜だ。 驕りだ。
これを見せられた心境の悲惨は筆舌に尽くし難いものがあった。
クラフターは生粋の建築狂いである。 古今東西、あらゆる場所に進出してきた。 これからもだ。 どうして綻びの山を前に無視していられようか。
僭越ながら手を加えよう。 そうしよう。
そう判断したクラフターは、とても早い。
どうしてか初心者染みた屋根を階段ブロックで貼り直し、デコボコした砂ブロックをスコップで撤去して平坦にし、割れたガラスはさっさと壊して新しい板ガラスを嵌め、水溜まりなのか分からない道の溝にある半端は水バケツで用水路にする。 湧き潰しがなってないので松明を刺しまくって明るくした。
気が付けば、またも日が傾いていた。
よき日々だ。 満足だ。 クラフターはぴょんっ、とその場でジャンプする。
「ね! ね!? 凄いよねホシノちゃん! 街がどんどん綺麗になってくよぉ! きっと、人が戻ってくると思うの!」
「……あっという間に砂が退けられ、家と道が直されていく。 年寄りも歩きやすく、飲み水に足る清水が流れ、夜を照らす街並みに廃屋の1件も許さない姿勢……あの人たち、いったいどこからそれだけの物資と力を?」
「ね〜。 すごいよねぇ」
「……ユメ先輩。 私は悪夢を見ているみたいです。 少し仮眠してきます」
「えぇ!? なんでそうなるのぉ?」
「それは私のセリフですよッ!?」
村人の歓喜を背に、再びツルハシを振るう。
創造の原動力とし、勢いは衰えない。
嗚呼。 我々は今、生きている───。
小出し感。 更新未定。