「あーもう! 何が建築妖精よ! これじゃテロリストじゃない! 文句の1つでも言わなきゃやってられないわ!」
後日、復旧作業に舞い戻ったら、ミレニアムオオフトモモことユウカがのっしのっしと歩いてる。
うん。 太い。 名は体を表す。
その迫力は今まで見てきた生物の記憶に合致しない。 独創的なスキンといえる。
多様性に富む村人といえど、特徴があれば顔も覚え易い。 元の世では考えられない話だ。
「信じられないわ。 よくもまぁ派手にやらかしておいて戻って来れたわね!」
目前まで来た。 取引を持ち掛けるか。 本来の目的である修繕からは離れるが仕方ない。 煩いし。 なんだか有名度が下がっている気がするし。
アイテムスロットを見る。 何か村人好みはないか。 建材の中に浮かぶ、鉄ブロックで何とかなるだろうか。
破壊した機械の代替にゴーレムをクラフトしようかと持ち込んだものだ。 取り敢えず分解してインゴット9個に変換。 見せる。 反応があればそうだろう。
「ちょっと聞いてるの!? はぁ、言葉は書かなきゃ伝わらないんだったわね。 この差は何故なんだか……急になによ。 えっコレ純鉄!? しかも沢山!」
よしよし。 反応があった。
太もも太けれど取引自体は実に村人らしい反応で、世界を跨げど村人は村人なのだと和ませることしきり。
「迷惑料ってやつ? そ、それなら受け取らない事もないわ……これだけの純度と量があれば、資源としても換金しても、かなりの額になるハズ……ええと、賠償金と、修繕費込みで、取り敢えずこれくらいあれば……」
大人しめに唸りながら手帳を見せてきた。
怒りのハァンから打算的ハァンに変わる。
犬の柴大将を思い出しながら、スニーク姿勢で読むと、何らかの計算式の果てに取引請求の数字が大きな丸で囲まれていた。
ベテランクラフターからすれば、十分貯蓄で賄える量を提示されている。 鉄は幸運エンチャントの対象外故に労力は否めないが、石炭に並んで見つけ易い事であるし。
取り敢えず1スタック用意。 目の前に鉄山を築く。 これで中立に戻るなら安い買い物。
「えええ!? こんな、どこから急に! 本当に不思議ね、あなた達は……」
機嫌を買えた。
他の村人もこうなら楽なのに。 柴大将は良いとして、最近の闇市は駄目だ。 取引のし過ぎで反感を買ったらしい。 逃した鶏はデカい。
「今度は何よ、気難しい顔をして。 かと思えば急にツルハシを振り回さないで欲しいのだけど!?」
クラフターはツルハシと心を奮い、ようやっと本来の目的を遂行。 欲と快楽を優先していたら本懐は遂げられない。
心の隙間を埋めるように穴だらけの床を張り直し、壁を立て直し、割れたガラスはさっさと殴り割って、新たな板ガラスを張り直していく。
「え!? 何が起きたの!? 一瞬で壁や床が直った!? 噂には聞いていたけど、間近で見ると凄い……一体どういう仕組みで……って、何で松明を刺して回るのよ!? やっぱりミレニアムに対する嫌がらせをしたいのね、そうなのね!?」
和む。 洗われる。
どうしようもなく救われる。
嗚呼、直す作業もまた楽しいなぁ。
キヴォトスで益々慣れた修繕作業の中、クラフターは想う。 初期は破壊された構造物の修復は荒らしの尻拭いだと嫌悪感が沸いたものだ。
今は違う。 フトモモのような、比較的温厚な村人もいるのを知っている。 クラフターがそうであるように、村人も1枚岩ではないのを知っている。
「表情がころころ変わる連中ね……憐れみの目を向けるくらいなら、最初から暴れないで頂戴」
苦難は皆で分かち合え。
互いを認めてこそ共存である。 取引の成立である。 その意味ではこのフトモモと我々は信頼が築かれている。
程度の差が分からないが。 試してみるか。
「……は? なんで目の前の床にケーキを直置きしたの? 拾って食えと?」
俯いた。 表情が見えない。
フトモモがプルプルしてる。
ケーキといえばそれなりの手間がある。 貰えるなら嬉しい筈だ。 信頼関係があるならがっついて喜ぶに違いない。 クラフター、スニークで顔を覗き込む。 嬉しそうにしてるか確認だ。
「やっぱり馬鹿にしてるじゃない!?」
刹那、顔面をフトモモに殴打された。
まさかの事態だった。
余計な真似は身を滅ぼす。
ノックバックを甘んじながら、1つ学ばされたのであった。
更新常に未定
変化のなさでツライさん(自滅中)