この世界の砂漠バイオームは流動的で、クラフターが手を出さなくても地形が変化する。
悪く言えば、砂漠の上に建築すれば、最初の街のように飲み込まれる恐れがあるという事だ。
良く言えば、砂が勝手に湧く。
湧き潰し関係なく発生するゾンビイベントの如し。
つまりはガラスと砂岩を作り放題。 その可能性に気付いたクラフターは小躍りだ。 腰を振り、喜びを表現し合う。
元の世界なら、クラフターがゾンビの如く寄って集って砂漠を禿がし、元のバイオームが不明なレベルに搾取していてもおかしくなかった。
なんにせよ、この世界で深刻なガラス不足は発生しない。
無駄な浪費と実験で、ポーションのガラス瓶にすら困る生活とお別れだ。 海底に潜る苦労を冒してでも集める日はこない。 落下する砂利を見て砂に焦がれる虚しさもない。
こんなに嬉しい事はない……ッ!
「砂漠を掘って何が楽しいの……」
「砂漠が好きなんだねぇ。 このまま住んでくれるといいなぁ」
その為、砂漠の地上部に建築は止めた。 建てると砂収集の邪魔だからだ。
代わりに地下を掘る。 資源採掘も兼ねる。 効率強化のままに空間を拡張し、砂入りの大量のチェストを並ばせ、大量のかまども用意する。 少々の拠点も拵えた。 砂を保管する地下倉庫だ。 ある分には困らない。
更には地下で手に入れた鉄鉱石をかまどで焼いて精製、線路をクラフトして敷設。 アビドスの街と繋いだ。
これで砂やガラス輸送が楽になる。
新天地が増えたなら、延線していく予定だ。 なんなら他の物資も運搬出来よう。 夢は終わらないし止まらない。
「住むって……本気で言ってるんですか? やってる事は滅茶苦茶だし、言葉が通じないんですよ? それにヘイローもなければ銃も持っていない。 撃たれたら死ぬでしょう。 そんなキヴォトスの外から来たとしか思えない怪しい外来人に、アビドスを、学校を委ねる気ですか?」
「ホシノちゃん、駄目かなぁ?」
「駄目ですよ! あいつらがチンピラに絡まれるだけならともかく、他の学区に迷惑をかけたら、全部ウチの責任に……」
ただ懸念がある。
斥候によると、ここ以外の集落がある。 村とはいえない規模ほど、多くの村人が往来しているらしい。
それも多種多様。 犬や猫が直立2足歩行している見た目から、ゴーレムに似たような、無機質な存在が沢山いたという。
観光するだけなら学びは多い。 だが建築となれば話は別だ。 大抵は空き地がなく、村人は棒状のナニかで武装しているときた。
この場にいる村人もそうだが、剣ではなく、飛び道具らしい。 弓矢に似て非なる武器だ。 ただし矢は早過ぎて視認出来ない。
詳細は不明。 とりあえず敵対は避けたい。
昔、村のアイアンゴーレムを興味本位で殴ったばかりに、空高く打ち上げられた失敗を想う。 あれは愚行だった。
あとで倒せば、鉄インゴットが手に入るのが分かったから、村を利用した製鉄所を作ってみたりもしたが。
「でもぉ〜、街はこうして綺麗になったんだし。 寧ろ建物も立派なのが増えたし」
「それは、そうですが。 連中の目的も分からなくて不気味ですよ」
「ホシノちゃんは、この街が、学校が嫌い?」
「それは……そんな訳ないです」
まぁ良いか。
クラフターは莞爾として頷いた。
エンダードラゴンだの、ウィザーだの。 様々な魑魅魍魎と戦い、創造の道を邪魔する奴を退けてきたのだ。
今更に村人に臆する理由はない。 己の心のままに進む。 それこそが美学だったではないか。
「うんうん! じゃあ、決まり!」
「え? 何がですか?」
「市民に戻ってきてくれるよう、もう1度署名と説明をして回ろう! あと連邦生徒会も助けてくれるよ〜!」
「またそうやってふわふわと決めて……」
悠長な村人の声を聞きながら、クラフターはアビドスの外、青き向こうへ興味を向けた。
その先の創造は喜劇か悲劇か。 何が待ち受けようと、それすらも楽しむだけなのだ。
互いの世界観を小出し感。