他校と少し絡んでから。
……SRT特殊農園(殴
兎と狐狩り
ゲーム開発部が褒状で小躍りする中、SRT特殊学園の学舎はマインクラフターによって再建された。
ただし、クラフターは元の造形を知らない。
見る前に吹き飛ばしたから当然だ。
なので妄想頼りの建設に。 結果としては満足な出来栄え。 中々ではないかと自負すらある。 これで村人も許してくれるに違いない。
「建物を作り始めたと思えば、なんで校庭を人参とベリー畑にしたんですかね!? 私たちは兎ではありませんのでッ!」
村人が喜んでいる。
視線の先は人参畑。 隣はベリー。 やはり兎と狐の見た目なだけはある。 我々は間違っていなかった。
「校舎も前と違うな。 なぜ硝子張りなんだ。 狙撃され放題じゃないか」
「あうぅ……丸見えです……せめてゴミ箱が欲しいのですが……」
「武器庫があった場所なんて、藁が積まれてるじゃない。 そこはTNTを積みなさいよ! ウチは農業校じゃないってーの!」
SRTは危険因子だ。
戦闘力が高い。 ツールも動きも効率化されている。 組織的で無駄がない。 まるで製鉄所やトラップタワーの流れ作業だ。
特に狐村人。 その辺の荒らしと違って総じて左持ちで、兎村人より練度が高い。 罠すら仕掛けてきた。 鹵獲を見越して不良弾薬を掴ましてもくる。 銃内部で異常燃焼を起こさせて薬莢を薬室に張り付かせ、使い物にされなくされた。 発砲出来ても変な弾道になった。 最悪暴発もした。 ネザーでベッドに寝た時が思い出された。
「これじゃSRTの面子丸潰れだ」
「というか、元々廃校予定だったけどね」
「……それでも、自分の正義を信じ続けます」
兎に角、爆破直後に発生した戦闘では手も足も出なかったのだ。 弾薬切れでやっと暴風が収まったから、再建作業に漕ぎ着けられたものの。
戦うなら奇襲するか軍事部を呼ばないと駄目であろう。 それくらいの脅威だと思い知ったものだ。
故に好物の人参とベリーで誘引及び催淫出来た事はかなりデカい。 このまま暴れるなよと思う。 なんなら懐柔したい。 強い味方は歓迎だ。 繁殖も出来たら尚良い。 ポーションの材料にもなれば更に良い。 今のところ発情した様子は無いが。 直接与えれば促せるだろうか。
「フォックスの先輩達は何も言わないのか?」
「連邦生徒会、防衛室長に問い合わせていますが、ハッキリとした返答がないそうです。 この人達の対応で忙しいのだと思われます。 ただ幸か不幸か、この騒ぎで廃校は先送りにされたとも聞きますが……曖昧ですね」
「ハッキリさせようと捜査部、シャーレに接触しようともしてるってね。 そっちもどーだかと思うけど」
とはいえ荒らし予備軍だと疑う手前、施設は内部が監視しやすい硝子張り。
けれども矯正局の檻のような窮屈感は出したくない。 そこで透明感溢れる硝子をメインとした建築を心掛けた。 色付き硝子も用いているから芸術点も高い。
形としては農業プラントをイメージ。 その都合、空き部屋も小規模な畑とした。 小麦、西瓜、南瓜、馬鈴薯、カカオなど。 屋上はサトウキビ。 思い付く作物をひと通り揃える。
元の土地面積だと設備スペースを確保出来なかったので手動での収穫となるが、大した量ではないので苦にならない。
「ヴァルキューレ警察学校も忙しいですからね。 私たちも出来る事をしなければ」
「目の前の畑の手入れとかか?」
「いっそ焼畑にしよ! 焼夷弾あるよ?」
そういえば狐村人がいない。
脱柵したか。 あいや柵で囲っていないが。 好物を縄張りで育てるだけじゃ物足りなかったというのか。 それか建物に不備があったのかも知れない。 原因は扉の枚数だろうか。 動物らしく縄で縛るべきだったか。
取り敢えず兎で試す。 条件が満ちているなら繁殖するだろうと思う。
「急にニンジンを渡されたんだけど?」
「敵から物を貰うのは禁じられています。 毒かも知れないので……目に見えて急成長する野菜というのも怖いですし」
「コイツらが何を考えているのかサッパリだ。 校舎を爆破したと思えば、畑に作り直すなんてな。 農業がしたいだけなのか? それとも何かの恨みなのか?」
「恨みたいのはこちらですよ」
増えない。
代わりに睨んでる。 人参が嫌いな兎もいたものだ。 だからとベリーも食べない。 他も駄目。 目の前でカカオと小麦を組み合わせて作ったクラフトクッキーも受け取らない。 カボチャパイも駄目。 満腹値が一杯だとでもいうのか。 なら仕方ないが。
「いや、なんで火も調理器具もなしに料理が出来るんだ!? 何か特殊な工程を踏んでいるのか、その一瞬で!? トリニティの図書委員も、短時間で教範を直してくれたのは驚いたが……コイツらはそれ以上か?」
「噂には聞いていましたが、建設以外でも不思議な力が及ぶようですね。 ですが悪事に使わないで欲しかったですね」
「私としては爆弾を作って欲しいけど?」
まぁ良いや。
筆談でもしながら歩み寄れば良い。 銃や爆弾で語る時間は過ぎたのだから。 物自体が尽きたから使う事も出来まいて。
などと思い上がったからか。
直後に先生の住処が狐に爆破された。 同志が教えに来てくれた。 思わず天を仰いだ。
「あ、今ニュース速報。 連邦捜査部シャーレのオフィスで爆発騒ぎだって! やっぱこうじゃなきゃ面白くないって!」
「せ、先輩だ……」
「何故そうなるんですか!? まさかコイツらに感化されたとかじゃないですよね!? 違うと言って下さい!?」
復讐による負の連鎖。
火薬を火薬で吹き飛ばすTNTキャノンの如し。
やはり度し難いぞ女狐共。
同時に思い起こされるラァメン屋の悪夢。
殺してやる。 殺してやるぞ、陸八魔アル!!
「あっ! アイツら走り出した!」
「止めて下さい! 余計にややこしくなります!」
「良いね良いね、面白くなってきたじゃん!」
今は狐狩りだ。
悪魔狩りは後にしてやる。
「なんで稲荷寿司を届けに来たと言って、次の瞬間には扉を爆破するのかな? キヴォトスではノックの代わりに爆弾でベルを鳴らすのかな?」
エリトラ急行して現場に着くや、部屋の扉が吹き飛んでいたから、取り敢えず木製扉を据えるクラフター。
そのまま内装の安否や被害を確認しようと進入すると、先生が狐に笑顔で威圧しているのが見えた。 狐は総じて耳を垂れている。 暴力なしに猛者共を制圧するとは、流石先生だと褒めてやりたいところだ。 生殺与奪の権利は素直に譲る。 ここ先生の住居だし。
「その、デモンストレーションよ。 こうしたSRTの技能が廃校で失われようとしていて……」
「どんなに凄くても、今のを家でやられて存続して欲しいと思うのかな? 君達の学舎もそうされたと聞いたけど、やられて嬉しかったかな?」
「……すみませんでした」
「よし」
かと思えば、あっさり済んだ。
先生は生かす事にしたらしい。 クラフターだったら即斬り刻んでいる。 ユメと似て非なる慈悲深さだ。 面構えが違う。 情けに畏怖するばかりだ。
「……それで君達は、責任者の連邦生徒会長が行方不明になった所為で、母校のSRT特殊学園が廃校の危機。 その相談をしに来たんだね?」
「はい。 超法規的機関であるシャーレの先生なら、何か手立てがあるかと」
「連邦生徒会は、宙に浮いた責任を取りたくないから解体したい……政治的な都合もあると思います。 ですが、それでも私たちの母校なんです」
「例の建築魔の影響もあって、キヴォトス全土が大変なのも分かるわ。 なら、尚更に私たちが必要の筈よ!」
藁にもすがるような声でハァンハァン鳴きまくっている。 相変わらず村人は村人だなと思う。
その喧しさあってこその村人だとも思うが。
急に鳴かなくなったら、それはそれで寂しくなりそう。 邪魔な時ほど殺したいけど死んでほしくない。
「そっかー……わかった。 防衛室長に直接掛け合ってみる。 だけど連邦生徒会も大切な生徒たちなんだ。 彼女たちの意見も尊重したい。 場合によっては……」
「分かっています。 ですが聞いてくれただけでも大変ありがたいです。 先生、宜しくお願いします」
今度は深々と頭を下げ始めた。
気分の起伏が激しい。 無礼を働きもすれば礼節もある。 その塩梅の理解が難しい。
取り敢えずベリーを与えてみた。 食べもしない。 発情もしない。 やはり村人の感情は難しいな、とクラフターは思った。
更新常に未定
たぶんゲーム史よりマシ(白目