戦後処理へ。政治問題を引き摺ります。
トリニティは過去の恥部を外部に晒され。
ゲヘナは密約通りといかず。
連邦生徒会の防衛室長的には踏み台であり。
SRTは政治に振り回されて正義に悩み。
ゲマトリアは爪痕残し。
マダムから恨み憎しみを買い。
カイザーグループは裏で暗躍。
残るマダム派の隊長格は降伏文書への調印。
それら問題がアリウスに降り注ぎ。
先生とユメらシャーレは調停関係者に。
ティーパーティは平定の為に行動。
エデン条約の仕切り直しは楽ではなく。
そんな中、クラフターはいつも通りという。
「各派閥の代表及び委員代表者は、アリウス修復作戦の指揮本部に集合して下さい」
「銃を捨て両手を上げて出てきなさい! マダムはもういない! 紛争は終わった!」
「正義実現委員会並びにゲヘナ含む全ての戦闘員へ。 投降したマダム派への攻撃を禁ず。 繰り返す、投降者への攻撃を禁ず。 違反者は厳罰と処す」
「拘束したら臨時収容所へ移送願います。 負傷者は勢力問わず臨時診療所へ」
「エデン条約調印式の妨害、当該事件首謀者が遁走した為、代理として現場の隊長格は全員出頭。 連邦捜査部シャーレ監視下の元、レジスタンスに対し降伏文書の調印を行います」
悪しき大人の洗脳教育で奈落に落ちたアリウスは2年に及ぶ瀉血の末、習合的な意識が合わさり、遂に元凶の膿を出し切った。
奇しくも其れは天と地の共闘成果。 トリニティとゲヘナの連合、エデン条約機構軍の先駆けと相なったのである。
開闢の歴史の1頁目は人道の見地にも恥じぬものと記し、後は未来に邁進するべきではあるのだが……現実も女子も菓子の様に甘く無い。
何分と旧体制の残滓が多く、銃声止もうとも舌戦が繰り広げられたのもまた事実であった。
「アリウスは元を辿ればトリニティの問題だ! 万魔殿は知らんからな!」
「風紀委員会もです。 私達は万魔殿の密約に巻き込まれたに過ぎませんから」
「ゲヘナに期待なんかしないよ? 寧ろ今後2度と関わらないでねって感じ」
「……後始末はやらんが、アリウスからは土地を貰う手筈なのだ。 それを反故にするのは許さんぞ」
「それはアリウスに言いなよ。 責任者はどこかに逃げちゃったみたいだから、その穴埋めをする建築魔と交渉してみたら?」
「……後は任す! やっぱり我々は関係ない!」
「ゲヘナって勝手だよね。 なのに、こんな連中とも平和条約結ばなきゃいけないって本当?」
本当に村人が煩い。
今や神殿跡地に集結して好き勝手なハァンが飛び交っている。 弾丸が飛び交うよりマシだが、土地の再建や修繕作業が捗らないから困る。 取り敢えず松明は刺しておくも。
村人とはそういう生物だ。 とうに知り得た話。 尚も記憶に残る愚かしさ故に。
「本当に愚かだね聖園ミカ。 常のように衝動で動いて事を過つ。 それが君の悪癖だよ」
「セイアちゃん、相変わらず何言ってるか分かんないよ。 本当に偉そうだし、心底ムカつく。 何度も懲らしめたいと思った。 でも……来てくれたんだね。 ありがとう」
「……言葉を紡ぐには、些か時間が足りないかもしれないね」
どうせハァンの域を出ない。
水と溶岩のように相容れぬ存在なのだ。
かといって筆談による歩み寄りは面倒だ。
本と羽ペンはストック出来ない為にインベントリを圧迫するのだし。
声無き声。 言葉無き本。 ならば絵本ともいえず。 我々を束縛するそれら偏食的表現に反抗するように、ひたすらに創造力を働かせるのみ。
つまり建築である。 目下としてはこの土地の修復だ。 それなりに良い造形だから磨けば光ると踏んでいる。 これら再建活動は泥棒も荒らしも逃した分の責任や義務にも感じた。 勝者の特権ともいえよう。
「ミカさん……アリウスと通じていた貴女が1番責任を負わねばならないのでは? 全校生徒への示しもあります。 聴聞会には出なければなりませんよ」
「ナギちゃんはヒステリーが酷すぎ! っていうか、こんな所まで紅茶を手放せないのちょっとどうかと思うよ? カフェイン中毒? それとも強迫症? でも、そんなナギちゃんが大好き」
「い、いえ……これは緊張してしまって……えっ?」
「───うん、2人とも、大好きだよ。 2人ともありがとう……そして勝手な事して、ごめんね……」
「ミカさん……」
軍事部は此処を魔改造して基地にしていく。
建物の懐古趣味な煉瓦造りの外観はそのままに内部を綺麗にくり抜いて、戦車の格納庫に。
或いは兵舎や拠点にする。 元々そのような建物もあるが、使用していた荒らし陣営は建築に対する愛がなかったらしい。
照度が確保されていないのは当然で、エンダーマンに襲撃されたかの如く壁も天井も穴が目立ち、ベッドも家具も申し訳程度で寂寥感が酷い。
基本的に元ある建物や備品は作品として、あるがままでいて欲しいと願うクラフターだが、それが悲惨な場合はその限りではない。 アビドスもそうしてきた。 此処もそうするだけだ。
ナンセンスな村人に感謝や反省なんて求めないが、願わくば、建物を2度と壊すなよとツルハシを振るい直す。
「……いや、寧ろ謝るのは私の方だよ……すまなかった、ミカ。 いつも君に謝ろうと思っていたんだ。 だが、子供みたいな意地が邪魔をして、果たす事ができなかった……ミカ、君がアリウスと和解したいと言い出した時、私は……」
「ううん、何も言わないで……大丈夫だから。 ごめんね……私が悪かったの……」
「ミカさん……」「ミカ……」
ただ今回の件で学びも多い。
創造と破壊は表裏一体。 切り離せないと。
キヴォトス人の破壊活動は絶え間無いが、それだけ都市部の新陳代謝は激しいとも捉えられる。 転じて息づく成長の証だ。
創造とは未来だ。 思い遣りだ。 創造するのをやめたとき、破壊が生まれるのだ。 そして新たな発見が生まれては建物が生えていく。 姿形を変えようとも作り手は常なる世界と繋がっていくのである。
「……SRTは、こうした場面に対しても見て見ぬ振りをしなければならないのですか?」
「私的な行動は許されない。 命令があればその限りでは無い」
「今回の派遣、当初は疑問でしたが……こうした事態に対処させる為だったかにも思えます」
「余計な事は考えなくて良い。 立派な隊員になりたいなら、現場には柔軟、上には忠実であるべきだ」
「立派な正義って……なんですか。 悪い大人がいても手を出さずに誇れるものですか」
爪痕を恥じるべきではない。
それが修復可能なら尚更に。 あいや前より立派な建造物に生まれ変わらせて魅せよう。
逃した荒らしへの腹いせもある。 連中がまた戻ってきたら、その変貌振りで驚かす。 それもまた1種の復讐である。 復讐は虚しいという者もいるが、屈託を晴らし自尊心を回復する手段として有用だ。 堂々としたい。
「ぐへへ……見なよこの大きさ! キヴォトスの外から来た巡航ミサイルじゃない!? 爆発したら凄い派手な花火が上がるって! 弾頭だけでも学園に持ち帰れないかなぁ!?」
「いくら予算に難儀するからって、過剰な火力はSRTに不要だろう。 かといって放置も危険だしな」
「ば、爆発物処理班の人を呼ぼうとしているのですが……中々私に気付いてくれなくて……」
いつかの兎村人が太い棒の前で群れている。
それがナニかは不明だが、何やらとてつもない気がして……シルクタッチのダイヤツルハシを振るう。
一瞬でインベントリに入った。 やってみるものである。 クラフターはその場で愉快な腰振りを披露した。
「ええっ!? 消えた!?」
「あれだけの大きさが!?」
「……本当に何者なんでしょうか?」
「ま、まぁ……処理の手間が省けたな?」
「そんなぁ〜! 欲しかったのにィ!!」
持ち帰りゆっくり研究したい。
研究したい、といえば他にもある。 額縁エンダーのドロップ品だ。 何やらブロック状の機械部品だが、爆弾ではと憶測されている。
それとアツコという個体が使用していた仮面だ。 何やら未知のエンチャントを感じる。 詳細不明だが、防御力が格段に上がるようだ。 複製出来れば、既存のヘルメットを凌駕する防具となる可能性がある。
「アツコ、良かったのか?」
「うん。 アリウスを救ってくれた人たちだもの。 きっと悪い様にはしない」
「どうかな。 マダム派が隠し持っていた巡航ミサイルも回収したようだけど」
「えへへ……貧しいアリウスが差し出せるものなんて、後は土地と体くらいですからね。 きっと払えない分は体で返せとか言われちゃうんです。 うわぁああん、もう終わりです!」
「……ヒヨリ、食べるか喋るかにしろ」
しかしここも村人が一気に増えたなぁ。
アビドスも多方面から流入して、多種多様な村人と文化が入り混じった。 ここもか。
元あるものが駆逐されないにせよ、何となくテーマと融合していく過程は見ていても楽しいものがあるから嫌いじゃない。
「一時はどうなると思ったけど。 クラフターさんがアツコちゃんも、アリウスの皆も助けてくれてめでたしだね!」
「そうだね。 やる事も多いけど……おや、ゲヘナの給食部の車を、初等部の子達が追いかけてるね。 チョコレートを配ってるからか。 私も何か差し入れを持ってくるべきだったな」
「美食研と温泉開発部もいるみたい」
「ヒナもいるのに珍しい組み合わせだね……まさか将来への投資、部員勧誘かな?」
「良い事じゃないの?」
「……たぶんね」
ユメと先生は優しく見守るのみ。
皆、これくらい大人しければ良いのに。
キヴォトス人は銃や爆弾で語り過ぎる。
「あれ? ユメ先輩がもう1人……?」
「ん、確かに似てる」
「本当ですね〜。 髪色がそっくりです!」
「そうかしら? オドオドしてるけど」
「あの方はアリウススクワッドのヒヨリさんですね。 対物ライフルを運用出来る凄さをお持ちのようです」
ホシノ達もいる事である。
暫く祭りは続きそう。 ハァン合唱が煩いのは敵わないが。 銃や爆弾騒ぎよりマシとする。
「防衛室長の命令で調査をしてみれば……何故ここにカイザーPMCの装備が提供されている?」
「さぁね。 どうせ碌なモンじゃないでしょ」
「それを調べるのがヴァルキューレです!」
今更ながら、我々側の荒らしはこの土地を欲していたのではないかと考察している。
外部に漏らさなかったのは、ここを独占する為であろう。 残念ながら努力は徒労に終わり目論見は果たせなかったが、またどこかで騒ぎの渦中に現れそうである。 その時こそ御礼参りだ。 荒らし許さん慈悲は無い。
「……ひっぐ、うぐっ……」
「泣くほどマダムに忠誠を誓っていたか」
「違う……お前達レジスタンスが、こんな、美味いものばかり食べていたなんて……そりゃ勝てる筈が、ないって……!」
この地の騒動も、やがて終息に向かうだろう。
残滓もあるが、時間の問題だ。
寧ろ多少の問題はつきもの。 ある方が興奮する。 それでこその人生だ。
「サオリ!」
「アズサか。 お前もよくやってくれたな。 これでアリウスは自由になるだろう」
「そうか。 だが私は、アツコも救えてスクワッド全員が無事である事が何より嬉しい」
「……その変なぬいぐるみは?」
「これか! ヒフミという友人から貰ったモモフレンズのペロロだ! 奇妙な顔、どこを見てるかも分からない目が癖になるんだ!」
「そ、そうか……お前にも友人と呼べる者が出来たか。 私も嬉しく思う」
「……ミサキは可愛いものに興味がありそうだものな。 どうだ、モモフレンズは良いものだぞ!」
「もうそういう歳じゃ……って、そんな目で見ないでよ!? 本当最悪だから!?」
開けた穴から日が差し込む。
見上げれば、そこにはどこまでも白混じりの空。 気が付けば清々しい夜明けの到来だ。
「空だ……」
「青いな」
「そんな時間か」
「夜明けだ。 我々共々」
「新生アリウス。 苦難を越えて続くのか」
ボスのいた建物。 その頂点に掲げられた新たな旗が陽を一杯に浴びて輝き、下界を照らす。
それは村人が拵えたもの。 我々の真似なのか、髑髏と薔薇を組み合わせた絵の上に、太陽を模した円とツルハシとシャベルがクロスしている。
旧体制を否定しているようで、掻き消えぬ罪と経験、過去を背負いつつ、それでも未来を開拓する意志を感じられた。
クラフターは満足だ。 その場でジャンプした。
「後日、改めてエデン条約の調印式を行います。 我々も前に進まないと」
「そうだ。 現在に注力しないと。 私たちは先生とマインクラフターの力を借り続けてはならない。 彼の人の道先に光を灯せてこそ、理想的な関係足り得るからね」
「うん。 さて、もう少し頑張ろっか!」
「今までのように力を合わせ───努力を重ねて、その試練を乗り越えよう」
ハァン合唱の中、今日もツルハシを振るう。
元の日常に命と建物が芽吹いていく。
いつだって、クラフターは溌剌なのだ。
後書き
更新常に未定。