前半蛇足。
筆談出来るのに描写が少ないので、その理由付けや、他所でしている話。
後半に本編。真実とやらを聞きます。
マインクラフターは村人との取引や筆談を面倒に考えて、頻繁な交流は控えてきた。
お互いにやりたい事が合致しなかったり、同じ言葉でも微妙に意味が違うからだ。
そこから誤解が加速して厄介になるのも眉間に皺を増やす要因である。 法だ規則だと創造の自由を阻害してくるのも悪い。
何かを得る算段が無ければ、情で動く真似もいよいよしない。 折角の筆談にも陰りがあるように思える。
けれど面白い事なら別だ。 物作りに関与するなら俄然興味あるのもクラフター。
例えば、気が付けば闇市の支配者になっていた時の事。 キモい鶏愛好会なヒフミがやってきて、生徒手帳越しに像の建造を提案してきたのだ。
「ブラックマーケットの環境を改善した皆様にお願いです! 再開発の過程で、ペロロ様のオブジェクトを建ててくれませんか!?」
相分かった。
頷きやってみた。 案外、楽しかった。
「突如として、ビルほどのペロロ像が!?」
「材質は羊毛か! これ程を一瞬で!?」
「ありがとうございます! 敢えて名付けるなら、ペロロジラ様です!」
拘りはどこを見てるかも分からない目だ。 再現には実物と家畜の豚を参考にしている。
中身は拠点か倉庫に利用しようかと空洞に。
取り敢えず松明で照度を確保し、メンテナンス用の階段や足場を設けておいた。
すると、ヒフミが観光地にするなどと張り切り、人を呼び寄せるではないか。
我々の建造物を村人が利用するのは今に始まらないが、闇市に活気が戻っていくようで見ていても心地良い。
創造物を通して新たな創造が生まれる。 これもまた1つのクラフトであろう。
今はペロロ饅頭だの、ペロロサブレだの、鶏を模したお菓子が土産にと売られる始末だ。 器用だ。 村人に学ばされる事然りである。
「おかしいだろ!? 荒廃したスラムな雰囲気や、アウトローな気配が消えた次は、訳分かんねぇ鶏だらけになるわ、それで商売が始まってんじゃねえよ!?」
「だが、お陰で市場は回復してきたぞ!」
「イカれた方向にだがな!?」
因みに菓子だけでなく、鶏を模した家具や衣服までクラフトされ始めた。
あのキモい鶏も、見慣れると癖になるのだろう。 ヒフミほどの情熱は持ち得ないが、納得して頷いておく。
そうだ。 そうしなさいと。 己が信ずる道を進みなさい。 我々もそうするから。
此処以外でも進展は見られる。
ラァメンの修行を続けている同志は、またも失敗し、蕎麦だのスパゲッティだの、パチモノを生み出し続けていた。
だがその過程は無駄では無い。 そうした麺類や他様々なレシピを発見した功績は大きい。 それらは広く共有され、今なお料理分野の開拓は続けられている。
最近だとD.U.を中心に展開する肉屋、その内の1店舗であるゲヘナ店から着想を得た。
刺激的な香辛料が効いた、サーロインのアウトロー風焼きなるものを学んだのだ。
調味料という新進気鋭な可能性は盲点だった。
我々は今まで砂糖程度の知識しか無かった。
悔しい。 けれどこれからだと拳と肉を握る。 そのまま食う肉は美味かった。
「あの人達の物作りへの熱意は凄いですね。 料理分野であれなんであれ、興味さえ湧けば何でも学ぼうとする姿勢には感銘を受けました。 我々も応える為、そして負けない為にも彼等の本拠地とされる、アビドスにも出店を考えています」
「いいんじゃない? 楽しそうだし!」
「マインクラフターに目をつけられると面倒だと思うんだけど。 店長さんが良いのなら」
「私たちは良くないわよ!? 柴関ラーメン爆破の件を根に持たれてる所に行くのは気が引けるっていうか」
「あ、アル様に歯向かう者は、私が全員殺しますから……へ、へへへ」
「……社長。 感性が違くても筆談は出来る相手だし、アビドス生徒会に仲介して貰って、仲直りしたらどう?」
そんなゲヘナでも学びが多い。
火山も興味深いが、食のクラフトに関してなら、フウカという料理人からアレコレ学べる。
美食研からは食に関する美学や熱意が伝播した。 ただ建物を爆破する件は度し難いと揉めたが。
「値段相応であれば、安さや高さに関わらず建物を爆破するまで至りませんわ。 あとはあなた方のように毒を盛るなんて尚更許されない事でしてよ」
「あの時は珍味を要求したからよ。 コイツらの文化じゃフグや蜘蛛の目は珍味扱いだったんじゃない?」
「成程。 彼等の美食とは、死を厭わない覚悟と共にあるのですね。 感服致します」
「それで牛乳バケツを一気飲みすれば食あたりも何でも直る理屈は謎だけどね!?」
肉屋で知見を得た、上質な牛とやらの育て方や肉の手に入れ方とやらにも興味を示す。
その地は山海経とかいう。 名前的に千尋な土地であろうか。
キヴォトスに来て2年の間に到達した同志がいる筈なので、何かしらの情報を誰かは得ているとは思う。
いつか聞き出すか直接現地に向かいたい。
幾星霜を経ても学びは多く世界は広い。 そう思わせてくれる俗世に感謝した。
村人からの啓蒙を噛み締め、我々は今日もツルハシを奮い、物作りに励むのだ。
かくして、各地に散るマインクラフターの日常は緩やかに、時に刺激的な調味料のような冒険と建築と料理や何やらの中にいたのである。
一方で世界の危機に意図せず対処している者共もいるのもまた然り。
或いは滅んだ並行世界の都市再建であり。 或いは救済と青春の創世記。
その先に待つ終着点の光景は如何に創るか。
それはマインクラフターと先生達の行動力にかかっているのかも知れない……。
一方の要塞都市エリドゥ。
都市観光という誘惑に克己したマインクラフターは、中央に一段と聳える建造物へ突入した。
何故とは考えない。 故にと動く。 チビもユメもそこにいる。 益々迷う理由はない。
「シャーレの先生、そしてマインクラフター。 あなた達にここまで攻め込まれるのは想定外だったわ」
今、目の前には黒服を纏い、エンダーマンモドキな格好をする村人がいて、周囲を銃口が並んでいる。
持ち手は開発部と目付きの悪いチビ。 陣頭指揮はユメと先生。 皆して険しい顔だ。
相手が相手だから仕方ない。 飛び道具とは相性が悪い。 その癖に目線を合わしているのは理解出来ない。 次の瞬間には目の前や背後に寄られても文句は言えない。
「あなたが生徒会長さんのリオちゃんだね」
「ええユメ先生。 ミレニアムサイエンススクールの中枢、セミナーを率いる者。 そして千年難題の解決を望み、星を追う者。 本来ならシャーレの先生とは、正式に挨拶を交わす席を設けたかったわ」
そして例によりハァンと鳴くエンダーモドキ。
もう驚愕もない。 慣れた。 来るなら来い。
取り敢えず今のうちに食事をして回復しておく。 ポーションの節約になる。
「どうして私たちがここまで来たのか分かるよね。 アリスちゃんについて、そしてこの地下について、色々聞きたいからだよ」
「そうね。 真実を伝えれば、もしかしたら私の理解者になってくれるかも知れないものね」
ハァンを他所にステーキを食べて腹を満たす。
自然治癒に任せ、腹が空く度に頬張る。 美味い。 地下アビドス産だ。 どこで育てようと牛は牛だ。 牛乳に革にと用途も多い。
「その前に建築魔を何とかしよ!? 肉を鷲掴みにして食べカスを散らすわ、ゲップしまくるわ汚いんだけど!?」
「会長じゃなく建築魔を撃ちたくなります」
「アリス知ってます! 建築妖精は食べ物をお腹いっぱいに食べる事で、HPを回復出来るんです!」
「そんな簡単に……本当に治るの……!?」
「大物なのは認めてやるよ」
「あの、クラフターさん? ごめんね、今大切なお話し中だから、少し待っていてね?」
「……呑気な人たちね。 この緊迫した空気で行儀悪く食べ散らかすなんて。 間違ってもキーボードや端末の前ではやらないでね」
村人は何処でも騒がしい。
最後のゲップを合図に輪から外れる。 合唱に混ざる気はない。 我々の興味は既に建造物だ。 作品の評論会だひゃっほい。
「察してか席を外してくれたね」
「それじゃ聞かせて? この街のこと、アリスちゃんに酷い事をしようとする理由を」
見れば見るほど分からない。 それが楽しい。
村人技術自体、用途も一目瞭然とはならない物ばかりだ。 硝子細工なんて尚更に。
……どうして光ってチカチカする?
「もう察しているのではなくて? あなた達がアリスと呼んでいる友人が、実はそうではないのかも知れない、と。 そうでしょう、シャーレの先生?」
「リオ、一体何を……」
「単刀直入に言えば、少女の外見をしたソレは普通の生徒じゃないわ。 ゲーム開発部がアリスと名付けたソレは、未知から侵略してくる不可解な軍隊の指揮官であり、名も無き神を信仰する無名の司祭が崇拝したオーパーツであり、古の民が残した遺産」
「アリスには……理解できません……」
「そうですよ! 何を言ってるんですか! 一方的に脳内の独自設定を話さないでください!」
「み、ミドリ……」
「ごめんなさい。 私の配慮が足りなかったわね。 もっと理解し易いよう、あなた達が好きなゲームに例えましょう。 つまりアリス、貴女は、この世界を滅ぼす為に生まれた魔王なのよ。 そしてここ、要塞都市エリドゥとパワードスーツのアビ・エシェフは、その終焉に備えた設備なの。 マインクラフター相手には無力だったけれど」
視線を感じる。 クラフターは無視する。
振り返ったら最後、目線が合ってワープしてくるからだ。 備えなき衝撃は辛い。
「アリスが魔王?」
「どうしてそんな事を言うんですか!」
「いったい何を企んでるの!」
「企んでなどいないわ。 寧ろ逆に聞きたいのだけど、貴女たちは直接見たのではなくて? アリスの暴走を。 不可解な軍隊を」
「あの変なロボットのこと?」
「その通り。 貴女たちが接触したソレらは廃墟から溢れ出した災禍。 ミレニアムに、ひいてはキヴォトス全土に終焉を齎す悪夢。 そしてアリスの存在が廃墟からヤツらを呼び寄せているという事が証明された。 今回は何とか収められたけど、次は簡単にはいかないでしょうね」
けれどクラフターは困難を愛した。
どうにもならない事をどうにかする。 その度に創造力は鍛えられたのだから。
「この脅威を解決する方法は1つだけよ、アリス。 あなたはこの世界に存在してはいけない」
「そ……んな……アリスはみんなと一緒にゲームを、したかっただけなのに……」
「いいえ、それは叶わないわ。 あなたは己を勇者と呼んでいるけれど、勇者とは友人に剣を向ける存在かしら? 寧ろあなたのやった事は悪役ではなくて?」
「アリスちゃん! 聞かなくて良い! 生徒会長が変わり者だとは聞いていたけど、こんな人だとは思わなかった!」
「せ、先生……」
挑戦が全て無駄だとは思えない。
これからもそうしていく。 その先の成功と栄光を掴む為に。 そしてその度に思う。 やはり我々は間違えていなかったと!
「リオちゃん。 それは違うよ」
「違う? 何が? 事実から目を背けるのは思い遣りではないわ、ユメ先生。 それは単なる現実逃避に過ぎない。 負うべき責任の放棄は、極めて非合理的な行動よ。 寧ろこうした事は、生徒より感情の抑制が出来る大人が対処するべきだったのではなくて? その自覚が足りないのではないかしら?」
「私ね、アビドスで生徒会長をしていた時にホシノちゃんって子に似た事を言われ続けていたの。 でもね、こんな方法は良くないよって教えてきて今がある。 だから繰り返し私は言うよ。人を信じてあげて。 危ないと思った生徒を傷付けて、追い出して。 それで自分が納得出来ても、きっと望む光景にはならないって」
「そう。 そういえばユメ先生は建築魔の本拠地があるアビドスの出身だったわね。 そしてホシノ……今のアビドス生徒会長。 急速に復興、発展を続けさせる手腕は確かに評価に値する。 けれども、他所の話をしても仕方ないのよ」
確かにどうしようもない時は諦めも肝心だが。
ジュリの料理再現辺りがそうだろう。 我々には未だ猛毒ポーションが限界だ。 悔しい。 どうすればあの域に至れるのだろうか。
「……アリスは。 アリスはどうすれば……」
「全ての元凶はアリス。 なら、あとは簡単でしょ。 爆弾は安全な場所で解体する。 つまりヘイローを破壊する」
「なっ!?」「そんな!」「ッ!」
「黙って聞いてりゃテメェ! そこまでするかよ!」
「ああ、でも、それは本当にヘイローかしら。 生徒ではないあなたが、どうしてヘイローを持っているのか理由は分からないけど……ただの機械であるあなたがヘイローを持っているのは、そう、狂気に包まれたあのAIと同じ。 尚更、放置など出来ない」
「リオ。 それ以上の言葉は許せないよ」
「私の言動が不愉快なら謝罪するわ。 昔から私の事が嫌いな人は多かったもの。 それは私に問題があるという事でしょうから。 でも理解されなくても構わないわ。 私は皆を守りたいだけ」
「やってられるかよ! 今までの依頼も気に入った事は無かったけれどよ、もうこれ以上付き合う義理はねぇよリオ!」
「ネル。 あなたはいつもそう。 気分次第で命令違反するその姿。 いつ爆発するか分からないのが長所であり短所だった。 ただ、それ以上に厄介だったのがマインクラフターだったのだけれど。 もう全てが後手に回ってしまったわ」
また冷たい視線を感じる。 無視する。
今はそんな気分じゃない。 エンダーパールは元の世界からの取り寄せで間に合っている。
「せめて……願わくば。 アリス、あなたの深層に眠るトリガーAIのkey。 もう1つの人格を隔離したい。 そうすれば脅威は先延ばしには出来る。 爆弾を解体出来ないのなら、安全な場所に封じ込めたいの」
「……どうするかはチビ、お前が決めろ」
「アリスは……誰も悲しませたくありません。 何故なら勇者だからです」
「私としては生徒会長こそ隔離が必要かと思いました。 野放しにきたら、またアリスちゃんを狙いに来るかも知れませんから」
「そんな事はどうだって良いの! ゲーム開発部が今まで通り活動出来ればね!」
「モモイ……たぶん、そういうことじゃ……」
しかしまぁ、都市を見れば見るほどアビドスの地下より機能的で綺麗だ。
けしからん。 是非創造手と仲良くならなきゃ。
「困った時にあなたに科学。 完璧で究極の病弱天才美少女系ハッカーの私をお忘れではありませんか?」
「あなたは全知のヒマリ先輩!?」
「私も傍で濁った汚水の声を聞いていましたが、そろそろ聞くに耐え難く。 専用の隔離端末を用意致しましたので、そちらにkeyを移し隔離する事を提案します。 その上で色々と情報を聞き出せれば、お互いの利益になるかと」
「それは危険な賭けよ。 あのAIのように、ミレニアムのファイヤウォールが一瞬で突破されたら、今度こそ被害がどこまで波及するか」
「リオ。 あなたの考えが全てではありませんよ。 かといって私だけでもありません。 例え有事が起きても、この場には全てをパァに出来るジョーカーなマインクラフターの皆さんがいます。 それに1度ならず2度も無力化に成功した実績もあります。 どうとでもなりますよ」
「それは責任の丸投げではなくて?」
「あら。 汚い口にチャックが必要ですか?」
「よくわかりませんが、アリスは2人も信じます。 悪者が改心して仲間になる展開はあるあるですから」
一瞬の静寂。 村人の合唱がやっと終わったか。
そう油断した。 振り返らなきゃ良かった。
『おのれマインクラフタアアァッ!! 1度ならず2度までも! 3度目の正直という言葉を今こそ証明する時です!』
「あ、あらあら〜? あとはお任せします」
「2度ある事は3度あるともいうわ。 だから引き継ぎの程、お願いするわ」
「ふざけんなよ!? 結局こうなるじゃねえか!」
「あ、アリスウウゥ!?」
「またアリスちゃんが乗っ取られた!」
変なヘルメットを被ったアリスが、目を赤く光らせて攻撃してきた。
電磁砲直さなきゃ良かった。 後悔先に立たず。
後書き
更新常に未定。
前半の肉屋の話は便利屋68業務日誌ネタ。
牛の育て方&どこでもいっしょ→個性